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松下幸之助に学ぶ塾講師としての心得①~松下幸之助著実践経営哲学を読んで~

2021/12/17

はじめに-松下幸之助の教えを講師業に生かす-

みなさんは松下幸之助をご存知でしょうか?今のパナソニック株式会社である「松下電器産業」を一代で築き上げた、別名「経営の神様」と呼ばれている人です。

亡くなってから20年以上経ちますが、京セラの創業者で日本航空の立て直しにも尽力した稲盛和夫にも多大な影響を与えたように、いまだに日本のビジネスマンたちに大きな影響を与えています。

そんな松下幸之助は多くの本を出版しています。

筆者は、今年の正月の読書に、松下幸之助著PHP文庫の『実践経営哲学』という本を選びました。

200頁に満たない薄い本ですが、松下幸之助がどのように考えどのように経営を行ってきたのかがよくわかる本となっています。その本を読みながら、もちろんさまざまな場面で応用可能ですが、

  • 塾講師や塾経営という観点でもかなり有用性のある教えが多い

と感じました。

そこで、今回はこの本を読みながら、これは塾講師や塾経営で使えると筆者が独断で判断した名言を挙げていきたいと思います。

基本的なことが非常に多くなっていますが、そうだからこそハッとさせられることが多いのではないでしょうか?この記事が、少しでも日ごろの業務に役立てば、大変ありがたいです。

 

1 経営理念をはっきりさせる

 この会社は何のために存在しているのか。この経営をどういう目的で、またどのようなやり方で行っていくのか(松下幸之助著『実践経営哲学』(株式会社PHP研究所、2013年12頁)

この本では最初の項目に「経営理念を確立すること」(前掲、松下幸之助 2013年 12頁)を挙げています。

経営には重要なことがたくさんある、しかし、その中でも基礎にあるものは経営理念だ、と述べています。そして、その理念は自然の摂理にも続いていなければならないとも述べています。

もちろん、一塾講師である我々にとって、このような大きな経営哲学は必要でないと思われます。(もちろん中には塾経営に参加している人や将来企業を目指しているという人もいるかもしれませんが、ここでは一般的な塾講師を対象としていきます。)

しかし、この経営哲学をもっと身近なレベルに落としてみたいと思います。会社というものを、自分というレベルに落として考えてみましょう。経営を仕事に変えて考えてみましょう

つまり、

なぜ自分は塾に存在しているのか。

そして、

自分はこの塾講師という仕事をどのような目的でどんな指導方法で生徒に教えていくのか

をもう一度考えてみる必要があると思うのです。

松下幸之助は事業を始めたころは生きていくために仕事をしており、そんな経営哲学なんて考えることはできなかったと言っています。なので、入塾して間もない講師は、そんなことを考える暇もないくらいに忙しいかもしれません。また、入塾して間もないと希望に満ち溢れており、そんなことは言われなくともしっかり考えているよという人も多いでしょう。だからこそ、ある程度勤務している講師に考えてほしいところであります。

 

筆者の場合2年目くらいでこれと同じようなことを考えていました。2年目ながら、講師を指導するような立場にいました。また、なかなか授業数が増えなかったため、収入が安定しませんでした。そして、責任がとても重く厳しいこの仕事に今のままいていいのかと思っている時期でもありました。

しかし、少し立ち止まって考えてみました。

・なぜここにいるのか・・・生徒の将来が少しでも良くなるようにお役に立ちたい。勉強ができなかった自分でも、自分の思い描いた進路先に進学できたのだからやればできるということを証明させたかった。

・どのような目的・・・上記と同じ理由。

・どのような方法・・・個別指導なので生徒一人一人の夢を聞き出し、それに対して、目上でもない大学生である自分が斜め上からアドバイスをしていく。また、授業もそうであるが進路相談のようなものをなるべくとるようにして生徒に進路について真剣に考えてもらえるような環境を整える。

以上のようなことを考えました。

これがいわば自分の塾講師としての経営理念のようなものでありました。こ

れを考えることによって、なぜこの仕事をしているのかを明らかにすることができました。

表面上ではお金のことで悩んでいました。しかし、自分が塾講師になったのはお金のためではありませんでした。

そのために、これからはお金云々ではなく自分が塾講師になった理由を追求し、また自分のやりたいことを塾講師という職業を通じて成し遂げていこうと決心することができました。

 

2 人間観を持つこと

経営は人間が行うものである。[中略]したがって、その経営を適切に行っていくためには、人間とはいかなるものか、どういう性質をもっているのかということを正しく把握しなければならない。いいかえれば、人間観というものをもたなくてはならないということである。だから、正しい経営理念というものはそういう人間観に立脚したものでなくてはならないといえる。そのことは単に企業経営だけでなく、[中略]人間が行ういっさいの活動についていえることである。(松下幸之助著『実践経営哲学』(株式会社PHP研究所、2013年30頁~31頁)

ここで述べられている人間観という言葉は、塾講師としても、塾でも大いに必要になるものです。

ただし、これらの場合「人間観」では少し広すぎるかもしれません。

筆者は、これを塾講師に関しては、

「生徒観」と「保護者観」

に分けるべきだと考えます。この2つをしっかりと持っていることが塾講師では非常に重要になります。

 

生徒観について

塾講師になってまず戸惑うのは、生徒についてだと思います。

講師が勝手に作り上げている生徒観は実際の生徒とは全く違うということです。

講師は自分の中学校や高校時代を想像して生徒観を作り上げていると思います。

しかしながら、時代も変わっているし何より自分とはまったく違う生徒も数多くいるのです。

そのため、講師の生徒観とのあいだでギャップができてしまいます。

そこで私は以下のようなことを心がけました。

①生徒との距離をつめることに専念する

多くの生徒とさまざまな話をしたり、授業外でもコミュニケーションを図ることで、生徒との距離を縮めるように努力しました。授業中にするようなまじめな話だけでは生徒の内面を理解できません。表面だけの生徒観を掴むのではなく、生徒の内面も掴むように努力しました。

②生徒の考え方を理解する

上記の方法からさまざまな生徒情報を得ることができます。そこから生徒の考え方を理解します。私が多くの生徒と関わっていてわかったことがあります。

Ⅰ勉強はしたくないけどいい点数を取りたい

Ⅱ部活や遊びがまず優先

Ⅲなんとなく将来のことは考えているが、まだぼんやりしていて目の前のことが最優先(テストなど)

全生徒ではありませんが多くの生徒はこのような、「好きなこともしたいし、努力なしで勉強もできるようになりたい」という欲求をもっています。

つまり、「木を見て森を見ずな状態」で通塾しているのです。

ここから、1で書いたように、生徒が長期的な進路を描きにくいのであれば、先輩である筆者がそれに対して助言するようにしようと考えるようになったのです。また、甘い考えを捨てさせるように働きかけたのは言うまでもありません。

 

保護者観について

 多くの講師はこのような生徒観というものを日々の勤務の中で掴んでいることと思います。

実は、意外と「保護者観」が抜けている講師は多いのではないでしょうか。

もちろん塾講師が相手をしている直接的なお客様は生徒です。

しかし、生徒は保護者からの資金を供給されているからこそ塾に通うことができているのです。

乱暴な言い方をすれば、保護者の一声で担当講師の交代や退塾という可能性もあり得るということです。

そのため、しっかりとした「保護者観」を持ち保護者の方々とも関わっていかなければなりません。

そのためにも保護者観を作り出す必要があると言えるでしょう。

私は以下の方法で保護者観を作り上げていきました。

 

①自分自身の考えをしっかりと持つ

保護者観を作るためには保護者の方と接しなければなりません。保護者の方々は講師の想像以上に私たち講師をかなり信頼しています。大学生やアルバイトという見方は一切していません。そのため、保護者の方にお会いする際には、自分自身の考えをしっかりと持ち、その考えを伝えるようにしなければ、信頼はすぐに揺らいでしまい、保護者との関わりを断たれてしまいます。

②自分自身の考えと両親の考えを振り返る

講師自身が中学生高校生だった頃、自分の両親はどのような考えを持っていたでしょうか。その考えはイコール保護者観と考えてもらっても大丈夫だと思います。筆者も、自分の親が自分たちのことをどのように考えていたかを考えながら保護者の方と接するようにしていました。

また、大人になった自分自身がどのように生徒を考えているかということも保護者観と通ずるところがありました。

以上のことから私は以下の保護者観を作り上げました。

Ⅰ子供たちの幸せを願っている

Ⅱ保護者自身が進路や学習に関しての持っている情報はあまり多くはない

Ⅲ学習に関しては講師に一任

 

そのため、私は保護者面談の際には数多くの進路に関する情報を保護者に供給し、子供の幸せのために検討できる材料を提供するように心がけました。

また、勉強面では一任されていたので、細かい話はせずに概略だけお話するようにしました。ただし、高額のお金を払ってもらうこととなるので、なぜこのくらい金額がかかってしまうのかということはしっかり話すように心がけ、料金の透明性を保つようにしました。

 

おわりに

いかがでしたでしょうか。まだまだ紹介した言葉がありますが、それはまた後日とさせていただきたいと思います。

今回挙げた「生徒観」「保護者観」はあくまで私自身の経験から作り上げられたものです。ぜひみなさんは、みなさん自身の経験や思考で作り上げていただけたらと思います。

松下幸之助に限らず日本、世界にはさまざまな偉人が存在しています。また彼らは多くの著作を残しています。塾講師としてさまざまな考えをしているときは、さまざまな刺激を受けると思います。ぜひ、世界中の人の本を読んでほしいと思います。

 

 

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