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BSCを使おう!ー教室運営編ー【ビジネスツールを応用する】

2021/12/17

とにかく便利なバランススコアカード(BSC)を使ってみよう!

今回紹介するのはバランススコアカード(BSC)と呼ばれるツールです。

おそらくビジネスツールといっても、自己啓発本とか仕事術の本としては紹介されていませんので、知っている方はそんなにいないと思います。

BSCはもともと会計で用いられるツールのことで、企業内部を管理するために用いられます。

なので、学校や塾のような教育現場では見る機会が少ないかもしれませんね。

以下がBSCのサンプル、そして説明になります。 

参考URL:http://www.itl-net.com/bsc/image/ITLBSC.pdf


【BSCとは?】バランススコアカード(BSC)は、1992年ハーバードビジネススクールのロバート・S・キャプラン教授とコンサルタント会社社長のデビット・P・ノートン氏により「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌上に新たな業績評価システムとして発表されました。バランススコアカードは、企業のもつ重要な要素が企業のビジョン・戦略にどのように影響し業績に現れているのかを可視化するための業績評価手法です。 参考URL:http://www.itl-net.com/product/qpr/qpr1/

ようは「業績評価システム」ですね。

比較的最近開発されたシステムですが、実はこのシステムは塾にも十分活用が可能なシステムです。

業績評価というのはある意味、生徒の勉強計画の進捗を測定するものとして活用できます。

生徒の勉強計画だけではありません。

教室長であれば教室運営に役立てることだってできますし、教室の運営に携わる学生も、自分自身の何かしらの目標を達成するために十分に活用できます。 

BSCは誰のため?どんなメリットがあるの?

まずBSCを作成するメリットなのですが、

BSCを策定する過程で、曖昧な目標を具体的なアクション・プランに落とし込める

BSCの表を確認することで、進捗(目標達成にどれだけ近づいているのか)を把握できる

 

の2点が上げられます。

そしてこれらのメリットは、教室運営に大きく関わってくるはずです。

基本的に塾講師は授業を行うのが主な業務ですが、最近の教室では講師に意見を求めることも少なくありません。

私自身、集団指導・個別指導・チューターと、いろいろな場所を渡り歩いてきましたが、

どこでも、運営そのものについての相談がけっこうあります。

教室によっては、保護者とのやりとりは室長がやりつつ、教室内の運営を一部講師に委任するところもあります。

 

今回の記事は、そういった人たちに、大変有用なツールとして活躍するでしょう。

 

もちろんそれだけではありません。

自分が所属するこの教室を良くしたいという思いがあったとき、このツールを知っているか知らないかで提案力に大きな差が出てきます

そんなBSCとは一体なにか?以下、BSCを解説していきます。


BSCはどのように作成されるのか?

BSCは企業のビジョンを明確にし、そこから達成可能となるような戦略を立案します。

さらにその戦略の進捗を示してくれるような、視点と重要成功要因(CSF)を設定し、それに応じた指標(KPI)も設定します。

ざっくりというだけではわかりにくいので、もう少し詳しく見て行きましょう。


①ビジョンを明確にする

まずはビジョンを明確にします。

企業であれば、市場シェアを40%に拡大するといった目標があるでしょう。

塾の教室であれば、生徒数を10%増大させる、あるいは講習の受講コマ数のノルマがそれに該当します。

利益を生み出すための数字と考えてもらっても構いません。

基本的に上から課されたノルマを設定するのが無難であると思います。

けれどもそうでなければ曖昧な目標で構いません。「塾を大きくする」だとかでもいいのです。

もちろん、具体的な方がいいんですけどね。

②戦略を立案する

次に必要なのは戦略です。本当に目指したいものを設定したら、それを達成するためにどのようなストーリーが作れるかをイメージしてください。

先の例でいえば、「塾を大きくする」という目標がある場合、もちろん大きくすることを可能にしうる武器を、教室は備えている必要があるのです。

例えば、武器を「生徒が講師を頼りにする教室」と設定すれば、それが戦略となります。

戦略ときくと、少し仰々しいかもしれませんが、「ビジョンをより明確にしたストーリー」、「そこに辿り着くまでの道筋」といった捉え方で大丈夫です。

ちなみに企業の場合は、市場シェアの拡大のために、品質の向上、最新技術の導入といった方向性を戦略として位置づけます。

③視点を設定

次に設定しなければいけないのが視点です。

視点とは、物事を考えるときのポイントです。

企業が設定する視点というのはだいたい決まっていて、組織(良い組織か)、業務(効率的な業務か)、顧客(反応は良いのか)、財務(収入はちゃんと入っているのか)の4つです。こ

れをそのまま教室の運営に適用してみると…

 

  1. 組織の行動:どれだけ良い教室運営ができているのか
  2. 講師の行動:講師個人個人の能力がどれだけ優れているのか
  3. 生徒の行動:生徒からの反応はどんなものか
  4. 財務の状況:最終的に教室に入ってくるお金はどれだけか

 

という4つの視点から考えるといいかもしれません。

 

④戦略目標の設定

次に必要なのは、各視点から考えて、どのような目標を掲げて、それを達成すればいいのかを考えます。

BSCの強みはこのあたりから出てきます。

一つの戦略を達成するために、何か一つの施策を徹底しようとするのではなく、

複数の目標を掲げ、それを同時に達成しようとする横断的な計画を考えさせてくれるのです。 

ここで戦略目標というのを考えます。

4つの視点から、戦略を達成するために必要な目標をとにかく洗い出しましょう。

ただし、その目標というのは独立しているものではなく、因果関係を持っていることを忘れてはなりません。

ここで、戦略マップという手法が登場します。

戦略マップとは、それぞれの戦略目標と他の戦略目標との因果関係を表したマップのことです。

以下、その例です。

 

 

1番目の階層にあるのは、組織の視点です。

組織が情報共有をきちんとやっていれば、講師は生徒の情報をきちんと把握するようになり、コミュニケーションをとりやすくなります。

また、チームワークがあれば、わからないことを互いに教えあい、事務面・指導面において講師の実力を高めることができます。

うした講師間の関係のみならず、さらに上、つまり企業としてのサポート体制もきちんと充実させることで、様々な能力を担保することができるでしょう。

2番目の階層にあるのは、講師の視点です。

講師がコミュニケーション力と授業力を高めれば、生徒から一定の信頼を勝ち取ることができます。

3番目の階層にあるのは、生徒の視点です。

生徒が講師を信頼するようになれば、講師がいる塾に自習しにくるようになりますし、あるいは、質問をするようになります。

生徒が自分から声をかけるようになるのも、信頼の証でしょう。

また、刺激し合う仲間がいれば、自分は他の生徒に勝ちたいという思いで講師に頼るかもしれませんし、自分で勉強計画を立てたら、それを実施する上でのメンターとして講師を活用してくれるでしょう。

この時点で、戦略は達成されたといえます。 

4番目の階層にくるのは、財務の視点です。

財務といっても資金のことは講師にもわからないと思いますので、生徒がどれだけ塾を続けているのか、あるいは講習をどれだけ申し込んでくれているのかを測定するのがいいでしょう。

ここに出てくる金銭が、戦略の成果(利益)ともいえるのです。



さて、気づかれたでしょうか。

実は③であげた4つの視点というのは、因果関係を持っているのです

財務は生徒の満足があってのことですし、生徒の満足は講師の実力あってのこと。

そして講師の実力は組織に起因する部分が大きいのです。

視点を設定するときは、こうした因果関係を十分に考慮する必要があります。

⑤重要成功要因(CSF)の設定

次に行うのは、各目標を達成するのに必要な重要成功要因を分析します。

つまり、その目標を達成するためには何が必要なんだろうと考えます。

とにかくそれを徹底して洗い出し、その中でも特に重要なものを2~4個選び出しましょう。

例えば、先ほど戦略目標の1つに授業力を掲げましたが、授業力を上げる要因には何があるでしょうか? 

ここで間違ってはならないのは、ここで考えることは、研修、反省会を行うとか、そういった具体的なアクションではなく、何が向上すれば授業力が上がったといえるか、ということです。

時間配分のうまさ、説明のうまさ、あるいは生徒をマネジメントする力など、いろいろあります。

「授業力をあげる」というのを、さらに細分化するのが、この重要成功要因の分析です。

⑥業績評価指標(KPI)の設定

次に行うことがKPIの設定です。

ようは、重要成功要因で洗いだした要因を達成したといえるための、具体的な指標を考えることですね。

例えば「授業力をあげる」のCSFである「説明力」というのはどのように測定することができるでしょうか。

おそらく直接測定することは難しいので、月1に研修会を行い、その際、あるテーマについての解説のうまさを第三者が測定するといったことはやってもいいかもしれません。

「講師との信頼関係」はわかりやすいですね。

どれだけ質問してくれるかがある意味信頼を表しているので、生徒1人あたりの質問回数が信頼度を表しているともいえるでしょう。

その質問回数がKPIに該当します。

そうした指標を設定し、さらに目標指標を設定するまでやると、BSCっぽくなってきます。

⑦アクション・プランの設定

最後の仕上げはアクション・プランの設定です。

つまり、KPIのターゲットを達成するためにはどのような施策を打ち出せばよいのかを考えるのです。

説明力の向上でいえば、説明に関する研修会を行うのもいいかもしれません。

質問回数を上げるためならば、必ず質問しなきゃわからない問題を、あえて出すことを強制するといった施策でもいいかもしれません。

①~⑥で積み上げてきた分析に従えば、アクション・プランは考えやすいはずです。

以上の流れを踏まえたBSCは以下のようになります。

少々手荒なところはありますが、このフォーマットに従って戦略立案をすると、すごく地に足のついた計画を立てることができます。

特にアクション・プランは、その行動がどのように戦略に貢献するのかもひと目でわかりますので、すごく便利です。

教室運営にきっと役立つはずですし、大学生の皆さんもこれを使っておけば将来社会人になったとき、

必ず役に立つはずです。自分自身のスキルアップもかねて、是非使ってみてください。

 

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