経済学の知識を使って生徒のやる気を上げる!?
インセンティブデザインを講師業に生かす
ビジネスマン(特に金融関係者)はだいたい知っているであろう理論を今回は用います。
この視点を用いることによって、生徒のやる気を引き出す手段を得ることができます。
今回の記事は少しマニアックではありますが、
塾講師以外のところでも応用の効く理論ですので、すごく読み応えがあると思います。
今回用いるのは「インセンティブデザイン」と呼ばれるものです。
経済学の知識を使って、生徒のインセンティブを分析します!
1年後の1万円と今日の千円、どっちがいい?
インセンティブデザインを考えるにあたって、まずは前提知識を確認する必要があります。
みなさんは、1年後に1万円もらうのと、今日千円もらうのでは、どちらが嬉しいですか?
単純に額だけを見れば、1年後にもらったほうが嬉しいのですが、
人によっては、今日千円欲しいという人もいるのではないでしょうか?
ここで、ある人が、この2つの選択肢を同じ価値だとみなす(これを無差別と呼びます)場合、
1年後のお金の価値は今の価値にすると10分の1になるということになります。
つまり、割引率は1/10になるのです。
また、1年後にもらう方がいいという人は、割引率は1/10よりも大きいということになります。
例えば、割引率が1/2だとしたら、1年後の1万円は今の価値に修正すると、5千円になるので、今日の千円よりも価値があるということになるのです。
一方で、今日千円もらいたいという人は、割引率は1/10よりも小さいということになります。
例えば、割引率が1/100であれば、1年後の1万円は100円となり、今日の千円のほうが価値が高いということになるのです。
ここで重要なのは、
将来の価値は現在の価値に修正しようとすると、幾分か割り引かれるということです。
これは生徒のインセンティブに大きく影響します。
投資の話も大切
現在と将来のお金の価値の関係は、割引率だけではありません。
他に、投資という考え方もあります。
投資とは、
将来より大きな価値をもたらしてくれると期待できる場合に、今得られる価値を犠牲にすることを指します。
例えば、先ほどの例を用いると、割引率が1/100であったとしても、今日千円投資することによって、1年後に50万円得られるのであれば、もちろん投資を選択することになります(50万円を現在の価値に修正すれば、5千円となり、千円を上回ります)。
このように、今の価値を犠牲にすることで、将来得られる価値を増やすことが可能な場合があるのです。
まとめ
価値の決定は2つの理論に影響されます。
1つ目は、価値は将来のものであればあるほど減少するということ。
2つ目は、現在の価値を犠牲にすることで、将来の価値を増大させる可能性があるということです。
その話を生徒に適用したら...
さて、これら2つを生徒に適用したら何がわかるのかを見て行きましょう。
生徒はお金を持っているわけではないので、視点を少し変える必要があります。
生徒は時間を持っており、それを今どのように使い分けるのかを考えるのです。
選択肢は2つ。
遊ぶか、勉強するか。
遊ぶということは、時間を今の楽しみのために消費するということです。
一方、勉強するということは、時間を将来のために投資するということです。
また、1日は24時間ですが、生活に必要な時間を差し引けば、持っている時間はおよそ12時間ぐらいです。
この12時間を、遊びあるいは勉強に振り分けることを考えます。
生徒はどちらを選択するでしょうか?
今、勉強しておけば将来より良い職業につくことができ、素晴らしい生活を送ることはできます。
しかし、今勉強すれば遊び時間が減り、友達との楽しみが失われてしまいます。
12時間全部遊んじゃえとか、12時間全部勉強しちゃえとか、そんな単純な意思決定ではないはずです。
ここでポイントが2つあります。
将来の価値は基本的に下がる
今の努力が将来につながると言われたところで生徒が勉強しないのは、これが原因です。
生徒も普通の人間と同じで、将来得られる価値は幾分か割り引かれているのです。
将来のために頑張るよりは、今遊びたい。
これは人間として当たり前なので、しからないであげてください。
将来における価値は今日の勉強時間によって変化する
しかし、問題なのは「将来の価値は今変わる」ということです。
割引率だけを考えれば、勉強しないで今遊ぶことが合理的なはずです。
しかし、勉強しなきゃいけないのはなぜでしょうか?
それは、今の勉強が将来のための投資になっているからです。
よく言われるのは学歴です。
学歴というのは今の勉強量に依存しますが、学歴が効果を発揮するときに得ようと思っても得られるものではありません。
ゆえに、今勉強しなきゃいけないとされています。
もちろん、塾や保護者からしたら、
遊び時間を多少に犠牲にしてでも勉強してもらったほうがいいわけなのですが、そうは行きません。
生徒の視点で考える必要があります。
「今勉強することによって将来どれだけ儲かるんだろう」
「今日遊びたいなぁ」
とか、そういった欲望が渦巻いています。
そして勉強に対するインセンティブが勝ったときに、勉強しようと思えるのです。
以上の論理から、生徒のインセンティブを見極める際、3つの視点があるといえます。
- 生徒が持っている割引率(αとします)とはどのようなものか?
- 生徒が今の1時間あたりの勉強量で、将来どれだけの満足(pとします)を得られると思っているのか?
- 生徒が今の1時間あたりの遊びで、どれだけの満足(qとします)を得ているのか?
最も勉強してくれる生徒というのは、αが低く、pが高く、qが低い生徒です。
つまり、今より明日のことを考えて、現実をすごく悲観しており、今がんばれば将来たくさんのお金をゲットできると妄想している人です。
これの詳細は、記事の後ろのほうにある参考をご覧ください。
ちなみに3つの視点をより深めると以下のことがわかります。
αについて
割引率のイメージは、その人がどれだけ将来のことを大切にしているかです。
例えば、宿題をできるだけ早く済ませようとする生徒は、将来の楽しみを再優先しますので、割引率が高いと言えます。
一方で、宿題を後回しにする人は、「今遊びたい」を重視するということなので、割引率が低いと言えます。
pについて
夢を持っている人はpが高いと言えます。
一方で将来をあまりイメージしていない生徒はpが低いと言えるでしょう。
qについて
今がすごく楽しい生徒は、勉強をしない生徒であると言っていいかもしれません。
例えば、授業中は友達とおしゃべりを楽しみ、通学途中でファストフード店やカフェに寄り、土日は外にお買い物するというような生活を送っているような生徒です。
誰が見ても「理想の学生生活」と思える状態にある場合、qは高く、勉強に対するインセンティブを下げます
。その一方で「何もすることがない~」ってだらだらしている状態ですとqはかなり低いですので、「暇だし勉強するか」といったことが起こる場合もあります。
ちなみに私はそのパターンでした。
勉強させるためには?
勉強させるためにはαとpを向上させ、qを下げる必要があります。
αを向上させる方法
将来が大切だということを訴える必要があります。
しかし、「今よりも将来が大切」という価値観を植え付けることはすごく難しいことです。
少し悪魔的な手段ではありますが、現実に失望している生徒は勉強させやすかったりします。
例えば、最近失恋しただとか、仲の良い友達がいなくなっただとか。
そういった場合、現実逃避をしたがっていますので、そこで少し囁き、将来に目を向けさせることができたらいいのかもしれません。
pを向上させる方法
pが低い生徒は、将来についてあまり考えていないことがあります。
一度将来について深く話し合ってみてください。
そのときに大切なのは、理論や理屈で固めて説明するのではなく、将来について強いイメージを植え付けさせてください。
将来どこに住んでいるのか、どんな仕事をして、どんな通勤ルートを通り、どんな人間に恵まれているのか...そういった細かいイメージさせることが大切です。
qを減少させる方法
自分の家から漫画を全て駆逐する。
これは典型的なqを減少させる方法です。
つまり、「遊びの質を下げる」手段は全てこれに該当します。
とにかく今遊ぶことについての魅力を徹底して奪います。
これを実行するためには保護者の協力も必要となるのが欠点かもしれません。
参考:生徒のインセンティブを数式化してみた
もう少し詳しく説明するために、数式を用いてみます。
数学が苦手な方は飛ばしてくださって構いません。参考程度と思ってくだされば、幸いです。
まず、生徒が将来と現在の行動から得られる満足度をπとします。
そして将来得られる満足度をmfとし、今得られる満足度をmnとします。また、割引率をαとします。
・・・①
将来得られる満足度は、現在どれだけ勉強したかの時間(B)にある定数(p)をかけ合わせたものと定義できます。
また、現在得られる満足度は、
現在どれだけ遊んだかの時間(G)にある定数(q)をかけ合わせたものと定義できます。
pとqが難しいと思うかもしれませんが、単位時間あたりに得られる将来または現在の満足度の係数と思ってください。
ちなみに遊ぶ時間と勉強時間の合計は、24時間から生活に必要な時間を差し引いた時間、12時間だとします。
・・・②
②を①に代入してそれを整理すると、
と求めることができます。
さて、この式を見ると何がわかるでしょうか?
あくまで塾講師・保護者の視点から考えれば、
もちろん生徒の満足度が最大になることが望ましいわけですが、
本当に望むことは、Bを最大化することです。
この最終式において、生徒が自らBを最大化するためには、αpーqを正にする必要があるのです。
もしこれが負だった場合には、Bが大きければ大きいほど満足度に対して負の効果が大きいことになります。
逆に、正であれば、勉強すればするほど、満足度が高くなるという結果になるのです。
つまり、αとpはできるだけ大きく、qはできるだけ小さい方がいいということになります。
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