【塾講師の専門性は授業力!】生徒を授業に飽きさせない方法とは!?~社会科を例として~
生徒を授業に集中させ続けるには
社会科の授業を行っていて、自分の説明が上手くいっているつもりなのに板書から振り向くと、
生徒が何人も寝てしまっていた・・・こんなご経験はありませんか?
授業というのは講師が教えるだけでなく、生徒がやる気をだして学ぼうとする意欲を示さないと成り立たないものです。
眠ってしまうのには部活など様々な要因があるかもしれないので、
生徒の居眠り=講師の責任と短絡的に結びつけることは出来ません。
しかし、その光景を見て自分の授業に対する自信がなくなる、という経験をした方はいるかもしれません。
実は、筆者も塾講師として働き始めた頃、授業で生徒を惹きつけられずクラスの半分近くの生徒が寝る状況を作ってしまったことがあります。
当時勤めていた塾の先輩に対してこの相談を持ちかけると、
「途中で雑談などして空気を和ませるといいよ」とか
「授業とは関係ない笑えるような話を1つ2つ盛り込んだら?」
というアドバイスをもらいました。
しかし、もらったアドバイスをありがたく考察しても、やはり自分は最終的にこの手段は用いるべきではないと判断しました。
授業と関係ない話で生徒の興味を引っ張り続けるよりも、授業で教える内容の魅力で生徒の興味をひきたかったからです。
私の尊敬していた先生が教えてくれた「塾講師の専門性は授業力」という言葉が座右の銘になっていたこともあるかもしれません。
このような経験を経て、いろいろな工夫を取り入れるようにしました。
本稿で後ほど詳述しますが、様々な工夫を凝らした結果、この状況をかなり改善することが出来たのです。
本稿ではこうした筆者の経験をもとに
生徒が授業に飽きないための授業の工夫
を筆者の専門である社会科を例にご紹介します。
飽きるとは
まずは、生徒が授業の集中について考えてみましょう。
これはもう周知のことかもしれませんが、人間のみならず動物は同じ刺激を与え続けると反応の強さが最初その刺激を味わった時よりどんどん薄くなり、飽きていくものです。
つまり、授業で講師がずっと説明を続ける講義形式だと、生徒は聞き続けることそのものに飽きてしまうのです。
授業というのは、講義形式だと意図せずとも、講師が主体で生徒が客体になりやすいものだからです。
それでは一体このような状況にならないようにするにはどうすればよいでしょうか?
以下、そのポイントについて述べていきます。
生徒に授業の目標を意識させる
まずは導入の部分で最も大切なことがあります。
それは、生徒にこれから行う授業の意識付けを行うことです。
詳しく説明する前に具体例をご紹介します。
社会科の公民分野では「バブル景気」について扱う項目があります。
その際には、「バブル景気とは何か」ということを生徒に説明できるくらい理解させる目標を講師は練ります。しかし、実際の授業では生徒がより問題意識を持って授業に臨めるような問いかけを作ります。
筆者は『タクシー初乗り2kmで1万円?バブル景気の謎を追え!』というテーマで設定しました。
こうすることで生徒は
「現在だと700円くらいで乗れる距離を当時は1万円も払っていた?一体バブル景気では何が起こっていたのだろう?」と疑問に思います。
わずか30年ほど前の日本で、現代の金銭感覚からは考えられないような事態に、生徒は興味を示してくれます。
このように授業の入り口で講師と生徒が目標を1つにするということはとても重要なのです。
生徒が問題意識を持つことで、生徒が主体的に学ぼうとする意欲につながります。
生徒の目線になってみてください。
もし授業の時間になって教室に講師が入ってきて、
①「はい、じゃあ今日はバブル景気について勉強しますよ。ノート開いて。バブル景気というのはね、1985年のプラザ合意に端を発した・・・」と講義がはじまる場合
②上記の下線部のように生徒に対して問題意識を持たせてから授業の中身に入る場合
の2つではどちらが授業に入り込みやすいでしょうか?
おそらく学びたいと思う気持ちが強いのは後者であるはずです。
ちなみに、ここではこの当時実際にタクシーを1万円札を使って呼ぶシーンが入っている当時のニュース映像も生徒に見せて、視覚的にも印象付けるように実践しました。
「変化」をつけること
さて、次に重要な事は授業に「変化」をつけることです。
冒頭の部分で人間は同じ刺激を与えられ続けるとどんどん反応が薄くなっていくという話をしました。
しかし、それは視点を変えてみれば、「刺激を変えれば反応は薄くならない」ということでもあるのです。
これは少し違う具体例を提示しながらご説明します。
授業テーマ:「今なお問われる自衛隊の位置づけ!あなたは違憲派?それとも合憲派?」
(1)最新の「集団的自衛権」に関する新聞を読む【資料読みこみ】
(2)「自衛隊」が生まれた背景やそもそも何故今「集団的自衛権」が問題になっているのかを講師が説明し、板書する【ノートを取る】
(3)「集団的自衛権」に関する自らの意見をノートにまとめる【自らの意見をまとめる】
cf.関連資料も配布
(4)実際に違反だと思うグループと思わないグループに分かれて議論する【ディベート】
(5)今日の授業を踏まえてリアクションペーパーを書く【まとめ】
いかがでしょうか。
あくまで一例ですが、【】の部分を見ていくと、
「資料読み込み→ノートを取る→自らの意見をまとめる→ディベート→まとめ」といった順番で、
内容・活動に変化があることがお分かり頂けるのではないでしょうか。
実際に授業を行った経験上、各項目にかける時間を8分~12分くらいでイメージすると良いと思います。
そうすることで、生徒は1つの活動に飽きてくる前に次の活動に移ることが出来ます。
ただし、各活動はバラバラになるのではなく「歴史的背景を踏まえて現代にもつながる自衛隊の問題をどのように位置づけるべきか」というような1つの軸があることが前提です。
現実的な話を加えさせていただくと、これを行うには相当な準備が必要です。
それぞれの活動に必要な資料や指導の仕方を考えなければなりませんし、上記の例であればディベートをする際のルールの確認なども行わなければなりませんから、時間を省略化するために説明のプリントを作っておくことなども必要になります。
なので、出来る限り引き出しをたくさん持てるよう日頃から教材研究や資料集めにアンテナを是非張ってみてください。
まとめ~わかりやすさとは~
さて、本稿では生徒が集中し続けるように大事なポイントを2点ご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
最後に、この2つのポイントを実践できても、授業の内容がわかりやすくなければその努力も無駄になってしまいます。
なので最後にこの2つポイントの土台となる「わかりやすさ」について述べて本稿の締めにしたいと思います。
①論理的にわかりやすいか(内容)
説明の仕方に飛躍はないでしょうか?
授業で教えたいことの核心に辿り着くまで、1つ1つ生徒が登りやすいステップを設定しているか、初習者の気持ちで授業計画を練るようにしましょう。
その際に具体例や、規模を示す数字などを用いても良いと思います。
②視覚的にわかりやすいか(形式)授業では、視覚的なわかりやすさもとても大事になります。
例えば筆者は「保険」の仕組みについて以下の様な図を用いて説明したことがあります。
このような図は時として言葉による説明よりも効力を持つことがあります。
あえてこのような図を出してから、生徒に説明させてみる、というのも手段の1つではないでしょうか。
③実例
実例は説得力を持たせることにとても有効です。
私は、「宗教を学ぶことの重要性」を伝えるために、海外旅行の際に行った経験を話しました。
この点に関しては以前執筆した拙稿「宗教をわかりやすく教えるために」という記事をご覧いただければと思います。
生徒にとって、そして講師にとって授業の時間をより有効にするために何かお役に立つことができれば・・
そんな思いから本稿を執筆させていただきました。
長くなってしまいましたが本稿は以上です。
皆さんのご活躍をお祈りしています。
【あわせて読みたい記事】
・ノートチェックでクラスが変わる〜本質的理解と実践へのヒント
・【個別指導】授業時間が短い・あまりお金をかけられない家庭に対する5つの指導ポイント!