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生徒の”気付き”を強化する!仮説思考【ビジネスツールを用いる】

2021/12/17

問題解決の基本は仮説思考

はっきりいって、解き方を教えることは簡単といっていいでしょう。生徒がわからないところ、ひっかかるところがどこかを探り当て、それを生徒の思考能力に合わせて生徒の知っている知識を用いて説明する。けれども生徒の思考能力に合わせた説明というのが難しいがために、「教え方に関する記事」というのが有用になるわけです。

しかし、私が思うのは、本当に難しいことは問題の「解き方」それ自体ではなくこの解法を使おうと「気づく」ことではないでしょうか。あなたはなぜ加法定理を使おうと思ったのですか?あなたはなぜ解の公式を使おうと思ったのですか?皆さんからすれば当たり前な発想、”気付き”は、生徒にとっては当たり前ではないのです。

この記事では、生徒の”気付き”を強化するための指導法について解説していきます。

仮説思考とは

気付きの基本は、仮説思考です。

就活の時期になると、この言葉を聞く人が増えるのではないでしょうか。しかし仮説思考という言葉を聞くのは大学生になってからでも、その思考法は中学生のころから訓練されているはずなのです。

仮説思考とは、何か物事を考えるために、仮説をたててそこから論理を組み立てようとする行為のことです。そしてこれは現代人からしたら、実に当たり前の思考なのです。もちろん、科学においても仮説思考が当然とされています。

なぜ仮説思考が便利と言われているのでしょうか?

それは、仮説思考はwhyを考える思考法だからです。人間は往々にして、理由を探すことが得意です。逆に、「これはどういうことか?」といったso whatを考えることが難しいです。そしてwhyを考える思考とは、過去を遡る思考法で、so whatは未来を予想する思考法なのです。以下の問いを考えてみてください。

問題1「そこに石がある。その意味はなにか?」

問題2「太郎はこけた。なぜか?」

 

おそらく、問題1を解けた人はいないでしょう。この問題には答えがあるわけではないのですが、まず解けるはずがありません。というのも、それがもたらす意味というのは石そのものについて考える必要がありますし、そしてそれが他者にどのように影響するのか、無から色々と考えなきゃいけないのです。

一方で問題2については頭の中に「石があったから」と答えることが簡単にできます。もちろんそれが正解なのかどうかは、太郎の状況を確認して、石があれば大方正解ということがわかります。

このように、過去を遡る原因を考えることは簡単で、未来にもたらす意味を考えることは難しいのです。

 

さらにいえば、仮説思考とはwh-の疑問文をYES・NOで答える質問に変えることができるものともいえます。

問題3「人とはなにか?」

これを直接考えることは難しすぎます。人という要素をとにかく考えたとしても、そこから何か言えることはありません。むしろ「人って神に似てないか?」といった直感を働かせて、

問題4「人とは神に似せて作られたものなのか?」

といった問いを立てた方が、話が早いのです。問題3は難しいのですが、問題4はYES or NOで回答できるので、ディベート形式にして議論することができますし、考える論点もはっきりしていてわかりやすいのです。

 

ちなみに実験というのは、問題3のようにwh-の疑問を考えるのではなく、問題4のようにYES・NOの質問を積み重ねて行われるものといえます。

生徒は証明問題を解くときに、与えられた式をじっと見たり、与えられた条件をいじくりまわすことが多いですが、それはもはや未来を予想しようとしているようなものなのです。そうではなく、まずはゴールから逆算しましょう。ゴールを分解して、仮説を作るべきなのです。

条件だけを見るな。問題だけを見るな。とにかく仮説を作れ。

仮説の立て方

では、どのように仮説を立てればいいのでしょうか?

実はこれについては、直感の話なのでなんとも言えないのです。仮説って発想そのものですからね。しかしあえて言うならば、経験の類似がうまい仮説を作る材料と言えるでしょう。

あなたが今解いている問題は、あれに似ていないですか?

あなたが今考えていることは、あの話に似ていませんか?

あなたが今しようとしていることは、過去の経験と似ていませんか?

こういった問いが頭の中をめぐるのです。数学を得意とするためには青チャートを一周しなさいだとか、問題集をきちんとこなしなさいと言われるのはこのためです。できるだけオーソドックスな問題を経験としてきちんと習得することで、それを武器にうまい仮説を立てることを、より難しい問題に向けて実行するのです。

もちろん数学だけではありません。歴史だって同じで、今日本でバブルが起こらないのは、誰もが物価がすごく上昇し始めるとバブルを警戒するからなのです。「この物価の上昇は、あのころに似ていないのか?」って心配するわけですね。

仮説が正しいとは限りませんが、経験に基づいた仮説は正解であることが多いです。

経験を参考にした仮説は正答率が高い

証明問題に応用する

それでは仮説思考を現場にどのように応用するのかを見て行きましょう。

 

△ABCの辺BC上に点Dを取ります。∠ABDの二等分線と線分AD、辺ACとの交点をそれぞれE、Fとします。∠BAE=∠BCFのとき、△AEFが二等辺三角形であることを証明しなさい。(北海道:類題)

ゴールを明確にする
ゴールの確認

「△AEFが二等辺三角形であることを示せ」というゴールがあります。しかしこれはさらに明確にする必要があります。「△AEFが二等辺三角形とは、つまりどういうことか」という問いをたて、AE=AFを示すのか、あるいは∠AEF=∠AFEを示すのか、自分で決断する必要があります。

ゴールと情報を一致させる

では、どのように明確にするか。この場合、与えられている情報とゴールを一致させたほうが後々楽になります。今回の場合ですと、与えられている情報は基本的に角度です。ゆえに、ゴールも、AE=AFを示すよりも、∠AEF=∠AFEを示した方が良いということになります。

仮説思考開始

さぁここから仮説思考開始です。というってもそんなに難しいこと考えなくていいのです。とにかく自由に考えましょう。

まず、

「 ∠AEF=∠AFEが成立するためには、どことどこが等しいことが望ましいのか?」

を考えてみてください。すると、

「∠AEFと∠BED同じだな。∠BEDと∠AFEは同じにならないかな...」

とか

「∠AFEと∠BAE似てるな。これが同じってことと∠BEDと∠ACD同じってことにならないかな...」

とか。

このように、「この角度とこの角度が同じならいいのに...」といった願望をとにかく探すのです。これは出来る限りたくさん思いついたほうがいいです。ただし、基本的にその先の発想がどうしても思いつかなかったり、所与の条件に合致することがなければすぐに別の仮説に移るようにしましょう。するといつかは、

「∠AEBと∠BFCが同じになればいいな」

という願望にいきつき、そこからさらに証明を試みようとします。

 さらにここで仮説思考を用いて、

「所与の条件とつながるんじゃないか?」

とかんがえるのです。すると、

「∠AEBは、180°ー青丸ー紫丸だ!∠BFCも同じだ!」

と気づくようになります。つまり、仮説の証明のために、所与の条件が使われることに気づけるのです。



本当に大切なのは知識ではなく、心の動き

日々指導をしていて気づくことは、生徒は決して頭が悪いわけではないということです。彼らは彼らなりに何かを考えているわけですし、あまり多いとはいえない経験の中で悪戦苦闘しているわけです。

しかし彼らに本当に必要なのは、知識ではありません。心です。

それは精神論とかそういった意味ではなく、「自分がどういった発想をしているのか?」「どういった感情を抱くのか?」とういった内面的な精神活動のことを指します。

あなたが「これが答えだ!」と気づいたとき、それはどのような感覚に陥っていますか?あなたが問題を解き進めている中で「あ、この解き方間違いじゃないか?」と気づいたとき、それはどのような感覚ですか?どうして気づいたのですか?

その気付き、感覚のレベルでの話はどんな参考書にも載っていません。私がこの記事を書いたのは、「問題を解ける人は、頭の中でこういうことをしている」ことを明確にしたかったからです。

皆さんが自分の心の動き、思考の動きを意識して、それに基づいた指導をしたら、より高品質なサービスを提供できることでしょう。

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