【科目・学年別】宿題これだけ! -中1 数学編―
宿題管理、きちんとできていますか?
講師の皆様こんにちは!
人材教育コンサルタントの上田です。
講師の重要な役割の一つとして「宿題管理」が挙げられます。
ですが、宿題管理というのは実に奥が深く、難しいものです。
“生徒一人ひとりに最適な量を出せばいいんだよ!”と言われたところで、「最適」がどれぐらいを指すのか、わからない方も多いのではないでしょうか。
また、生徒は基本的に宿題をやりたがらないですから、仮に「できるだけやってきなさい」と伝えると、どうしても量は少なくなりがちです。
そこで、「学年」「科目」「学力」「意欲」の4つの軸に注目して、具体的な宿題の出し方をお伝えしてまいります。ぜひここで宿題の出し方を学び、自分の生徒の成績を上げられるように頑張りましょう!
【ルール】
・タイトルで教科と科目を示しています。
・受験生を対象としています。
内部進学、非受験(補習)の生徒に対しては、適宜量を調整してください。
・学力と意欲は、以下の4つの軸に分けて説明しています。
|
意欲 |
||
高い |
低い |
||
学力 |
高い |
秀才型タイプ |
天才型タイプ |
低い |
努力型タイプ |
不安型タイプ |
中1数学の学習範囲
正負の数
数の性質
文字と式
一次方程式
比例・反比例
角の二等分線、垂直二等分線(作図)
空間図形の基礎
資料のちらばり
(参考)指導要領
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu/su.htm
各単元でつまずきやすいポイント
正負の数
学習内容はとても平易で、取り組みやすいテーマです。
ただし、中学1年になったばかりに扱うため、まだ環境適応できていない生徒がこれを習うことになります。
最初に、数学において「=(イコール)とは左右が等しいことを指す」というルールをしっかり理解してもらいましょう。(13÷5=2…3、という書き方はもうしないことを強調しましょう)
また、ここでの中間考査の点数が、教科の好き嫌いを分けてしまうことにもなります。
焦らずにじっくり取り組ませることで、数学でよい点数がとれる感覚を掴ませてあげましょう。
宿題で絶対に確認する部分
・マイナスを2回かけると、プラスになる -×-=+
・交換法則 ○×□=□×○
・結合法則 (○×□)×△=○×(□×△)
・分数の割り算は、割る数の逆数をかけることと同じ ÷5=×0.2
・正負の数の文章問題で差がつく!
数と性質
小学校からの発展内容です。
素因数分解、公約数・公倍数については、きちんと繰り返し解かせることで、大半の生徒はできるようになります。
しかし、「倍数の個数を求める」「最小公倍数を利用する」文章題は、努力してもなかなか成績に直結しないテーマになります。(ヒラメキと慣れ、両方が必要であるため)
宿題で絶対に確認する部分
・最大公約数と最小公倍数
・奇数と偶数の分類方法。できれば3.4.5.9の倍数も扱いたい。
・素因数分解の利用
(例)タイル80枚を隙間なく並べて長方形を作る。何種類の長方形が作れるか。
文字と式
ここで生徒は初めて「×の記号を使わずに、掛け算を表す」ということを学びます。
慣れるまでは戸惑いますので、計算演習を繰り返すことを意識しましょう。
また、代入の考え方は、次の一次方程式につながる重要な考え方です。
併せてきちんと解ける状態にしていきましょう。
宿題で絶対に確認する部分
・複雑な数量を文字であらわす
・代入と式の値
・様々な計算演習
一次方程式
一次方程式の解き方は、文字と式がしっかり理解できていれば、難しく感じる生徒は少ないでしょう。
問題は、一次方程式における文章題。
何を「X」とおくべきなのか、1問ずつしっかり確認することが求められます。
また、ここで移項の考え方をしっかりマスターさせたいところです。
この段階で“計算式を自由自在に変形できる”ようにさせましょう。
宿題で絶対に確認する部分
・移項して解を求める
・年齢算
・食塩水の問題
・速さ、割合の問題
比例・反比例
小難しい表現が多く、生徒がだれやすい単元です。
講師としては“比例・反比例が今後学ぶ関数の基礎になる”ということを強調し、動機づけを行いましょう。
また、比例・反比例をグラフ化できることは、今後の学習に必須となります。
座標の書き方から丁寧に指導するとよいでしょう。
宿題で絶対に確認する部分
・比例と反比例の基本的な考え方
・比例関係のグラフ化
・座標の点から面積を表す問題
平面図形
まずは線対称・点対称をきちんと押さえましょう。
そのうえで、作図の基本公式である「角の二等分線」と「垂直二等分線」がしっかり描けるように、宿題を出していく必要があります。
なお、本テーマは問題慣れが必要です。作図自体は時間がかからないですから、やや多めに問題を出すとよいでしょう。
宿題で絶対に確認する部分
・線対称・点対称
・角の二等分線
・垂直二等分線
・図形の回転・対照移動
立体図形
苦手な生徒が多い分野です。
まずは、解きやすい「円柱・円錐の展開図から面積・体積を求める」ことができるようにしましょう。
次に、投影図や回転体の切り口を考える問題など、比較的取り掛かりやすい空間図形問題を扱います。
最後に、「空間における平面と直線」について、可能な限り自分の頭で考えられるように指導しましょう。
宿題で絶対に確認する部分
・円柱・円錐の面積・体積
・立体の投影図と展開図
・立体の平行な辺や垂直な辺を調べる
資料のちらばり
比較的平易ですが、用語の違いを理解していない生徒が目立ちます。
特に平均値、中央値の違いはきちんと押さえさせましょう。
また、有効数値の考え方は他教科でも用いますので、ぜひ確認しておきたいところです。
宿題で絶対に確認する部分
・平均値と中央値
・相関表の読み方
・有効数値の考え方
具体的な宿題量と、生徒に伝えるときのポイント
秀才型タイプ
宿題時間は2~3時間/週を目安とする。(数学のみ)
1問5分で採点・解き直しをすると考えると、約24問~36問。
但し、繰り返し似たような問題を解かせる場合は、やや多めに出しても構わない。
このタイプでは、まさに模範となるような学習を、自宅でやってくれることが多いです。
特段注意しなければならないことはありませんが、気を付けてほしいことは「全部の宿題が週の半ばに終わってしまった」とならないようにすること。
多くの塾では、中1は塾生の負担があまり多くならないよう、課題は少なめに設定されていることが多いです。(見開き2ページだけ、など)
せっかく意欲もやり方も正しいのに、量が少なかった結果成績が伸びない…ということがないように、「ここは絶対にやる」「ここはできたらやる」と2段階に分けて宿題を出しましょう。
月に1回ぐらい「全部できたよ!」となるぐらいの量が理想です。
(もちろん、その時は思いっきり褒めてあげてくださいね!)
天才型タイプ
宿題時間は1~2時間/週を目安とする。(数学のみ)
1問3分で採点・解き直しをすると考えると、約20問~40問。
ただし雑にやってきたり、興味のある問題だけを解いてきたりすることが多い。
このタイプは、まず勉強ができるにも関わらず、雑なやり方で損をしていることが多いタイプになります。(一般的には字も汚く、ノートの使い方も雑です…)
そのため、学習習慣をつけることが、いかに自分の才能を発揮できるか、を強調して伝えましょう。(勉強が成功することでモテるようになるよ!と伝えると、特に男子生徒に効果絶大です)
また、少しでも勉強のやり方が丁寧になってきたことを褒めるようにしてください。
まるで小学生のようですが「赤ペンで○つけできるようになった!」「きちんと宿題の範囲をメモするようになった!」など、細かい点を一つ一つ褒めましょう。
加えて数学では「式を書いていること」を重視して声掛けしても良いかと思われます。
ただし、数学において一番面倒な「解き直し」はほとんどやってくれません。
なので、予め宿題を出すときに「“解き直す”時間はこれぐらいかけてね!」と、具体的な時間を伝えましょう(目安としては宿題を出した時間の20-40%ぐらい)
努力型タイプ
宿題時間は2時間/週を目安とする。(数学のみ)
1問6分で採点・解き直しをすると考えると、約20問。
このタイプだと「努力しているのに成績が伸びない…」と言われてしまうことが多いです。
ただ、中1数学では「正負の数」や「文字と式」など、きちんと取り組めば才能に関係なく、成績が伸びる部分が目白押しです。
数学からしっかり取り組ませることで「努力により学力が向上するんだ!」と感じてもらえるようにしていきましょう(ここで意欲を失わせてしまうと、一気に学習不安タイプになる危険性があります)
なお、このタイプの生徒は“自分のノートがきれい”であることを誇りに思ってしまうことも。
あえて、宿題をきれいに書いてくることを評価しないスタイルで臨むのも良いでしょう。
不安型タイプ
宿題時間は1.5時間/週を目安とする。(数学のみ)
1問4分で採点・解き直しをすると考えると、約23問。
このタイプは小学校から既に勉強につまずいてしまっているケースがほとんどです。
そこで、まずは基本的な小学校の復習から入りましょう。
やさしい4科総復習教材を使うか、小6範囲だけを集めた算数教材を使って、補習から入ることをおススメします。
小学校6年間の算数が6時間でわかる本 PHP研究所
中学入学準備小学の総復習全科英語つき 学研教育出版
また、簡単でサクサク解ける問題を選んであげることで「勉強ができない」という先入観をなくすことができます。(そのため、1問4分で終わると仮定しています)
逆にコツコツ勉強できるタイプではないので「同じ問題を3回解き直して!」といってもやってきてくれません。
似たような問題を講師が作ってあげることで対応しましょう。
まとめ
|
宿題量(週あたり) |
ポイント |
注意点 |
秀才型 |
2-3時間 |
量を確保する |
課題量に注意する |
天才型 |
1-2時間 |
勉強姿勢を褒める |
適当なやり方なら叱る |
努力型 |
2時間 |
コツコツやらせる |
成果で評価する(姿勢でほめない) |
不安型 |
1.5時間 |
小学復習から始める |
意欲を引き出す |