文字式の利用、という単元
筆者は現在、塾講師ではありませんが、家庭教師として、生徒を受け持っています。
その家庭教師業で今受け持っている2人が、思いきりつまづいていたところを紹介しましょう。
それが、
文字式を使って数量を表す
という分野になります。
……と言ってもおそらくはピンと来ないでしょうから、
最も単純で身近な例を紹介します。
「偶数をnを使って表しなさい。」
というものです。
当然答えは「2n」となる訳ですが、
この応用になると、生徒は理解に苦しんでしまうようです。
偶数は2n、奇数は2n+1というのは言わずと知れたものですね。
しかし、
それですら生徒、特に数学的な思考回路が完成していない生徒は違和感をぬぐえないようです。
おそらくその違和感は、
そもそも何故nなんか使わなければならないのか。
という疑問に基づくものです。
例えば、こんな単純な問題は実際には無いでしょうが、
「偶数を2つ足した場合は、必ずその和が偶数になることを証明せよ」
と言われたなら、
「2と4を足すと6で、6は偶数じゃん」
という風に考えてしまう生徒が普通に多数存在するのです。
実はこれが最も厄介な反応です。
なぜなら、それ自体が間違いではないからです。
なので、生徒は先生にしっかりと教わらないとそれではいけないことに気付けず、
また、詳細に教わると面倒くさくて嫌になる、
というジレンマが潜んでいるのです。
「具体的にではなく一般化しなければならない」というのがこの問題の根本なのですが、
いきなり根本から伝えるのは、生徒の「めんどくさいなー」という気持ちを増すだけです。
まずは、
「文字を使って表さなければならない理由」からしっかりと理解してもらう必要があります。
何故文字を使って表すのか
「偶数を2つ足した場合は、必ずその和が偶数になることを証明せよ」
問題文には大体「証明しなさい」か「説明しなさい」と書かれています。
「2+4は6になるよ」
と言われたとき、どのように返すべきでしょうか。
…まずはそれは間違っていない事を告げましょう。しかし、その後が問題です。
「でも、偶数って2と4だけじゃないよね。偶数って何種類ある?」
と聞いてみましょう。
当然、偶数も奇数も無限に存在します。
ここで、
「じゃあ、2と4の組み合わせだけじゃ足りないよね」ということに気付かせる必要があります。
ただルールを教え込むよりも、自然に(半ば)自分で気付いたように誘導していくのが大切です。
そうすることで「じゃあどうすればいいんだろう?」という方向に自然に考えが動きます。
その後、
「無限の組み合わせを全部確かめるのは出来ないよね。ということは、1個1個普通に足し算してちゃいけないってことだ。じゃあ、他の方法を探さなきゃだね」
と方法自体を変えることにまで誘導したら、次は文字を使う段階に移行します。
2nでnが自然数である限り、2nは偶数である事は理解できていることを前提とします。
「2nは偶数だけど、どの偶数かとははっきりしてないよね」
と2nが偶数と言う範囲内であればどの偶数にもなり得ることを話します。
2mも同じです。
つまり、ここで使われる2nと2mは、
偶数であることは分かっているけどどの偶数かは分かっていない数ということになります。
それは1ケタかもしれませんし、100ケタ位のとんでもない数かもしれないのです。
生徒がそれを分かれば、もうひと踏ん張りです。
偶数同士を足すのですから、
2n+2m = 2(n+m)となります。
もちろん、n+mは整数同士の和整数で、2(n+m)は偶数であることが分かります。
このとき、
この式は、[偶数であることだけは分かっていて、それがどんな大きさの数かは全く不明の2つの数の和が偶数であったこと]を表しています。
ということは、
[2n+2mはそれぞれnとmがどんな大きさであっても、偶数同士を足し合わせた式]であると言えますね。
よって、
文字を使う事で非常に数多く存在するパターンの全てを網羅する事が出来るから、文字を使って表すことが必要になる、
というのが、
何故(nなどの)文字を使わなければならないのかという問いに対する答えになります。
では次に、その文字を使って色々な数を表すときに必要な考え方についての教え方です。
文字を使って数を表すというのは、普段行わない行為です。
苦手な人にとっては、なかなか苦痛な部類に入るようですので、少しでも簡単になるような考え方を教えていきましょう。
よくある問題が、
- 「連続した3つの整数」「連続した3つの偶数」といった連続した数を扱うパターン
- 「2ケタの数とその10の位と1の位を入れ替えた数」といった複数の数字を扱うパターン
です。
これら2種類についての簡単な考え方について書いていきます。
これらに該当しない問題も、多くはこれらを応用して考えることが出来ると思います。
連続した数
大切なのは、「連続した」などと言う部分ではなく、その後に続くものです。
連続した「どんな数」なのかです。
まずは、問われているのが「どんな数」なのかをしっかりと理解しないといけません。
偶数であれば先述の通り2nですね。
これは、偶数が2の倍数であるという根拠に基づくものです。
これが3の倍数なら3nですし、奇数なら2n+1です。
数単体をどう表すかはその数がどういう意味を持つ数なのかをしっかり理解すれば難しくはないはずです。
そして「連続した」ですから、初めに求めた数の「次の数」が存在します。
しかし、それを求めるのは簡単なはずです。
「次の数」が「どんな数」なのかは、既に1つ目の数字を出すことで理解しているはずです。
偶数なら次の数は2大きい数です。
xの倍数ならx大きい数になります。
特定の数列であれば(n+1)番目の数になります。
すなわち、連続しているか否かではなく、
その1つ目に該当する数がどのような数なのかを正確に表すことが出来れば、
連続する数を文字式で表す事はそんなに難しくはない、ということですね。
ですから、生徒さんにはまず「どんな数」なのかを書けるように教えてあげると良いでしょう。
複数の文字を扱う
先の2つの偶数の和でもnとmを使いましたが、
特定の条件では文字を2つ以上使わなくてはならない場合もあります。
その代表格の問題の1つが、
2ケタ以上の数を文字式で表し、それを用いた計算結果を使うパターンです。
しかし、こちらも根本的な部分を話してしまえば、
「どんな数なのか」を理解することで困難を失くすことが出来ます。
例に挙げた2ケタの数を使って説明していきます。
2ケタの数というのは、「10の塊の数がa個と1がb個集まって」出来ています。
小学生の頃に2ケタの数を学んだときのことを覚えているでしょうか。
このような感じでしたよね。
1が10個集まることで1の位が0に戻り、1つ繰り上がるのでした。
例えば、
これなら58という数になります。
a=5、b=8というパターンですね。
ということですから、上の図の10の数と1の数をそれぞれaとbとすれば良いわけですね。
それによって、10の位がaで、1の位がbの数が出来上がります。
10がa個あるのですから「10a」と、1がb個で「b」。
それらの和が今回の数ですから、10a+bが、作りたい数になります。
このように、数字を複数使いたいのに、それらに相互関係が無い場合は文字も複数使うことになります。
複数使う可能性があることに考えが至らない生徒は決して少なくありません。
この場合だと、1の位も10の位も同じ数、ゾロ目限定の2ケタの数を作ってしまったりする訳ですね。
そういうことにはならないように指導してあげてください。
「複数使うこともある」と分かっているだけでもだいぶ違いますから。
まとめ
どのような場合においても、文字を使って数量を表すというのは、
「一般化する」ということになります。
つまり、自分がどのような数を作るのかを正確に理解することが最も重要なことであり、
そして、最も簡単な近道にもなる訳です。
「偶数は2nって表せるだろ? だから~」や
「2けたの数は10a+bと表せるんだ。それを使って~」などと言うように、
その「表し方」を省略して教えることはしないで上げてください。
それを理解することが、今後、たくさん解かなくてはならない文章題全般に通じる力を育てることになります。
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