「円高ってなぜ起こるの!?」もくじ
1. はじめに
最近円高がニュースで騒がれるようになりました。
2016年の6月に発生したイギリスのEU離脱を受けて、円高が進んでいる現状もあります。
しかし、「そもそも円高ってなに?」「なぜ起こるの?」と疑問に感じる方も多いことでしょう。
政経でも円高の解説はありますが、そこにある説明は少し現実離れしているように感じてしまいます。
そこで、本記事では政経での説明をベースに、
できる限り現実味を帯びるような円高の解説
について、わかりやすく紹介します。
2. “通貨”の需要と供給
為替とはいわば通貨の需要と供給の一致する点のことを指します。
よって、需要と供給を知らなければ為替のこともすっきりしません。
簡単に復習しましょう。
物の価格を決定するのは、需要と供給です。
需要とは「世間の人がどれだけ欲しいと思っているか」であり、供給とは「世間でどれだけそれが提供されているか」です。
その関係をグラフにすると以下の様になります。
為替を考える際、ポイントとなるのは縦軸と横軸の定義です。
横軸はいわば“量”を表します。
そして縦軸はいわば“価格”なのです。
その価格の単位は、当然のことながら日本の話をしている限り、円です。
しかし、為替ではそうとは限らないのです。
為替を考えるにあたり、商品名はドル、価格単位は円であったり、逆に商品名が円、価格単位がドルだったりします。
為替を考えるにあたって重要なことは「商品となる通貨」は何なのか、そして「価格の単位となる通貨」は何なのかなのです。
そしてその均衡点が、いわば為替レートになります。
では、どういうときに円高・円安が起こるのかを考えていきましょう。
3. どういうときに円高が起こるのか?
円高・円安を考えるために、まずはその言葉を定義しなければなりません。
円高:円の価値が高い(みんなが欲しがる)
円安:円の価値が安い(みんなが欲しがらない)
という簡単な定義で結構です。
面白いことは、円高・円安はあくまで相対的なものだということです。
いずれも「どの通貨とくらべて」みんなが欲しがるのか、みんなが欲しがらないのかを考えなくてはいけないのです。
例えば円高・ドル安という状況と円安・ポンド高という状況が同時発生する可能性は十分にあります。
円高・円安の定義を単純にしてしまえば、わからなくはないことなのです。
どういうときに人々は円を欲しがるでしょうか?
①“円”の価格がついている商品が人気のとき
第1にあげられるのは、“円”の価格がついた商品をみんなが欲しがるときです。
典型的なのは株価です。
日本の企業価値があがるということは、その株も上がるということになります。
当然上がりざかりにある株はみんなが欲しがるわけですから、外国投資家はその株を得るために、円が欲しくなります。
あるいは不動産。
日本の土地の価格がうなぎ上がりになると、それを狙う投資家たちは、その土地を買うために、ドルやポンドよりも円が欲しくなります。
②世界的な不況が起こったとき
日本国内の要因が円高を引き起こす場合に対して、日本国外の要因が円高を引き起こす可能性もあります。
それは世界的な不況が始まった時です。
投資家はドルやユーロを避けて、円に投資する傾向があります。
③貯蓄
“預金”の考え方も重要な要素になります。
投資家は集めたお金を必ず“何かしらの通貨”で貯蓄する必要があるのです。
ドルでもポンドでもユーロでもいいです。けれども、必ずどれかを選ばないといけない。
仮に投資家がドルで貯蓄をしたとしましょう。
ドル高・円安が起こった場合、「円から見て」投資家の貯蓄額は増えることになります。
一方でドル安・円高が起こった場合、「円から見て」投資家の貯蓄額は減ります。
円やドルであれば、比較的安定している通貨ですが、世界恐慌の際、ドルは大幅に下落するということはよくあります。
投資家はその場合、ドルのままで貯蓄していると損失が大きくなるので、他の通貨にかえます。
利子も重要な要素です。
その国での利子率が高ければ、その国で貯金するとよりお金が増えるということですので、利子率が高い国にお金を動かすことはよくあります。
実際にグラフを読み解く
上は円ドル為替相場の年間のグラフです。
最初の方は固定為替相場制であったため、1ドル360円で固定されていました。
しかし、変動為替相場制となったため、円・ドルのそれぞれの需要供給で決定されるようになりました。
まず、注目すべき点は、①の1984年ごろの動きです。
今まで円安が続いていた傾向が一気に下落しました。
1989年ごろまでその傾向は続いています。
これは1985年のプラザ合意が原因です。
日米が円ドル為替レートに介入し、意図的に円高を引き起こすことになりました。
こうしたバブル景気も、1989年に弾け、当然株価等の証券価値、さらに不動産の価値が下落していきます。
日本国内の商品、つまり“円”の商品の価値が下がり、円安を引き起こすことになります。
しかしそれもつかの間。1990年までという2年間しか円安傾向は起こりませんでした。
1990年から1995年までは円高傾向になっています。
“円”の商品が下がっているのに、なぜでしょうか?
内に原因がなければ、外に目を向けてみましょう。
当時の世界経済では1991年の湾岸戦争やメキシコ通貨危機、さらにクリントン政権による円高・ドル安の政策があります。
世界経済が不安定にあったことで、投資家はリスクの高いドルやユーロを避けて、円に投資するようになりましたので(おそらく預金等も動かされています)、円高が引き起こされるようになったのです。
③の2011年は東日本大震災のときです。
株価の下落、日本経済の落ち込みにともない円安が起こっています。
ドル・円・ユーロは世界で最も注目される通貨です。
ゆえに欧州が打撃を受けた場合には円に逃げ込みますし、円が打撃を受けたらユーロまたはドルに逃げ込みます。
4. 円高になったときのいいこと・悪いこと
円高のときを考えてみましょう。
例えば1ドルが70円のときと1ドルが120円のときを考えます。
これはすごく大きな差になります。例えば10万円をドルにしようと思ったら、前者のレートでは、1428ドル程度。後者のレートでは833ドル程度。およそ600ドル程度の差が出るということになります。
一方で、円高ということは、他の通貨が円を買うことが難しい、つまり“円”で価格がついた商品を買うことが難しいということです。
これは「輸出が難しい」ということになります。
輸出が難しいので、企業にとって不利だということになります。
マクロ経済の観点から言えば、円安が最も望ましいのです。
円安だと輸入が難しくなりますが、これは原材料を国内のものを使うことを意味します。
国民や企業はできるだけ国内のものを消費しようとし、一方でその商品が海外にも輸出しやすいという状況です。
当然、日本のマクロ経済はうなぎ上がりになるのです。
しかし、最近ではそうとも言えなくなりました。
商品を日本で製造すれば確かに“円”の札がつくのですが、工場を海外に移転したため状況が変わりました。
例えばタイで製造した自動車は“バーツ”の価格がつき、それは直接また別の国に運ばれる形になります。
このような場合、円を経由していないので、円安になったからといって輸出が増えるわけではないのです。
重要なのは、その商品に“円”がついているかどうか、ということです。
5. まとめ
いかがでしたでしょうか。円高・円安は海外旅行をする人にとってはすごく身近な問題となります。
もちろん短期的な予測は難しいでしょうが、長期的な予測であれば、普段から新聞を読んでいるだけでかなり予想することができます。
しかもこの円高が起こる論理は、ドル高やユーロ高が起こる論理と同じことですので、他の国の経済状況からその通貨を予想することができます。
この記事を参考にしていただければ、こうした予想ゲームを楽しみながら新聞も読めることでしょう。
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