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塾講師レポートvol.6「非常勤講師の採用基準」

2017/08/07

採用難だからこそ、採用基準を見直しましょう

皆様こんにちは。
人材教育コンサルタントの上田一輝です。

数回にわたり業界全体の動向を考えていく「塾業界レポート」。

「正社員としての就職で、塾業界はアリなのか?」と考えている方

既に塾業界で働いているが、将来が描けず転職や離職などを検討している方

経営層として業界全体に課題意識を持っている方

といった方を対象に、連載しております。

(参考)
vol.5「求人難の現状」
http://www.juku.st/info/entry/1759
vol.4「就活と塾業界」
http://www.juku.st/info/entry/1744
vol.3「塾業界の希望と未来」
http://www.juku.st/info/entry/1735
vol.2「塾業界の真相~ブラック批判について~」
http://www.juku.st/info/entry/1725
vol.1「塾業界の現状と課題」
http://www.juku.st/info/entry/1705

前回は、求人難の現状が当面の間解消されないまま続くこと、そして採用担当者がしっかりと施策を打ち出さないと、採用が年々厳しくなっていくことをお伝えしました。

とはいえ、採用難でも応募者全員を採用するわけにはいきませんよね。
ある程度の選抜が必要です…が、今お持ちの採用基準は、本当に最良といえるでしょうか。
ついつい、学生に高いレベルを求めすぎてはいないでしょうか。

今回は、定期的に採用・補充する必要がある、非常勤講師の採用基準をどこにもってくればいいのか?という問いについて、一緒に考えていきたいと思います。
(正社員については、後日改めてレポートしてまいります)

絶対に採用してはいけない応募者とは?

応募者の92%である大学生が重視するものは「給与」であることは、前回お伝えしたとおりです。
別の調査を見ても、講師として応募する方は、給与の良さ・勤務地が近いことを特に優先し、「効率よく」お金を稼げることを重視していることがわかります。


 
出典:
http://weban.jp/contents/an_report/wp-content/themes/weban/contents/repo_cont/trend/images/vol74/graph06_01.png

ここで気を付けなければならないことは
非常勤講師に応募してくる=教育に興味がある・子供が好きであるとは限らないということです。

最近の大学生は、授業の出欠管理が厳しくなったり、インターンや学生向けイベント・資格取得などたくさんのやるべきことがあり、とても多忙。
だから短時間で効率よく稼ぎたい!と思っている人は増えており、採用側にとっては良い状況といえます。

しかし、「効率よく稼げそうだから」という理由のみで応募する方が増えているのも事実。
他のアルバイトに比べ、個人の責任が重い・シフトに融通が利きづらい等のデメリットを考えずに応募する方もいます
仮にそのような方を採用してしまうと「効率よく稼げるはずなのに、そうでもないな…」と思われて早期離職に繋がったり、生徒に熱心な指導をしてくれず、顧客離れに繋がるリスクを会社が負うことになってしまいます。

そこで面接では
なぜ講師になってみたいと思ったのか

どうして他社ではなく、自社に応募したのかの2点について、きちんと受け答えができるか…ということを確認してください。
ここで言葉に窮してしまう学生は、責任感を持って働いてくれない可能性が高いです

また、初めて非常勤講師として仕事をする人には、
最初は予習が大変で、意外と割が良いとは感じにくいこと

すぐに希望通りのコマ(授業)に入れるとは限らないこと

継続して勤務してもらうことで、効率よく稼げるようになることの3点を、きちんと伝えるとよいでしょう。
とにかく人材が足らない…という場合、ついネガティブな部分を話さずに採用してしまいがちですが、結果的に塾の信用を損ないかねません。

効率よく稼げることが、塾の魅力のひとつであることは事実です。
ただ、それだけを目的にして、生徒・保護者の為に努力できない方は講師として不適格です。
採用担当の皆様は、ぜひ「この応募者は熱意をもって指導してくれるだろうか」、という視点をもって面接を行いましょう。

採用時、持っておいてほしい素質

次に採用時にあまり気にしなくてもよい特徴を考えていきましょう。

塾講師に必要なスキルは何でしょう?と人事の方に伺うと

  • 学び続ける力
  • プレゼンテーション力
  • 基礎学力の高さ
  • 対人関係を円滑に構築できる力
  • 言葉遣い・マナーの丁寧さ

など、様々な要素が出てきます。
私も採用側として、その気持ちは十分に理解できます。

しかし、皆様の要望を全て兼ね備えている応募者は、ほとんど存在しません。
ですから、採用側としては「これだけあれば、他はいらない!」と言える基準が必要です。
では、具体的にどのような要素が必要・不必要といえるのでしょうか。

人の話を素直に聞けること

塾業界=話がうまいことが重要、と勘違いしている応募者がいたら要注意
多くの大学生が応募している個別指導塾では、何より生徒の話を聞いてあげることが求められます。
なぜなら、生徒の成績アップに最も不可欠なモチベーションを上げるためには、まず生徒の状況を聞いてあげることが重要だからです。(ただ一方的に自分の考えを伝えるだけの人は、生徒が定着しません)
また他にも、保護者の要望や業務の手順など、人の話を素直に聞かなければならない場面はたくさんあります。
「自分の主張しかしない人」は、採用を見送ったほうがいいでしょう。

向上心

責任者が授業の状況を追いかけるのは難しいもの。
そのため、ほとんどの場合、授業力は講師自らが向上させていく必要があります。
しかし、教える相手が子供の場合「先生、授業力低すぎ!」とはなかなか言えないですから、手を抜く気になれば、実は可能なのです。

とはいえ、手を抜いたツケは必ず出てきます。
生徒の学力を上げることができなかったり、難しい質問をされると逃げてしまい、生徒・保護者の不信を買ってしまったり…。

予習に給与を払える会社はほぼ無いからこそ、ここで「より良い授業を生徒に提供したい」と考えている人を採用することが重要になります
採用時には「人から言われなくても、自らを高めようとした経験」を聞いてみるとよいでしょう。

(業務に必要な部分における)コミュニケーション力

サービス業である以上、コミュニケーション力は必要不可欠な能力であるといえます。
とはいえ、コミュニケーション力、といっても観点は複数あるため、短時間の面接ですべてを確認することはできません。
そこで、業務に必要な部分に絞って確認をするとよいでしょう

例えば
集団指導であれば、1対1の面接ではそこまで上手に話せなかったとしても、しっかり予習をして先生として演じる力があれば、十分かもしれません。

保護者対応を学生非常勤講師に任せないのであれば、面接時に楽しく話ができれば多少の言葉遣い・敬語のミスには目をつぶってもいいでしょう。

社会人としてのコミュニケーション力を学生に求めると肩透かしをくらうことになります
あくまでも相手は1~2年前には高校生だった!ということを理解して、面接を行うようにしましょう。

採用時、持っていなくても大丈夫な素質

続いて、採用時に必要ない要素について、見ていきましょう。

理念への共感

まず、正社員採用だと絶対に求められる理念への共感ですが、非常勤講師には不要です。
理念への共感が直接顧客評価に繋がるとは限りませんし、そもそもアルバイトに求めること自体が難しいです。

勤務の柔軟さ

前回お伝えした通り、応募者の多くは週2回程度の勤務を希望しています。
そのため、いきなりこちら側で「週4以上は入れる人が良い!」と思って募集要項などに書いてしまうと、応募者が極端に減ってしまう可能性があります。
採用後、仕事が楽しくなったり、関係性が深まってくれば「どうしても助けてほしい!」と責任者が言ったときに、比較的応じてくれるものです。

基礎学力

現在の大学生のAO・推薦入試の割合は年々増え、今は実に4割程度の学生は一般入試を受けていません。

 

 

出典:http://www.toshin.com/parents/ao_suisen/img/graph_percent_L.jpg

加えて昔ながらの3教科受験ではなく、1・2教科受験で合格できる大学も増えています。
そのため、残念ながら、大学生だからといって必ずしも学力が担保されているとは言えません。
従って、なんらかの筆記試験は課したほうがいいでしょう

ただし、学力が低いからといって悲観することはありません。
中1の英語や低学年指導など、学力が高くなくても指導できる学年・科目はあります
そして予習を十分にしてくれれば、解決できる問題でもあります。

筆記試験の成績が悪かった応募者には、成績が芳しくなかったことを正直に話し、
そのうえで、予習を頑張ってくれれば採用する旨を伝えてみるとよいでしょう。

参考:事務スタッフ・試験監督求人について
会社によっては、校舎運営を支援してくれる方を募集されているところもあると思います。
この場合のコツは2つあります。

1、 講師向け求人サイトで求人を出さない
塾講師と比べると、どうしても時給は安くなる事務職。
そして講師募集サイトを見る方の多くは、講師応募を前提に求人を見ています。
従って、講師向け求人サイトではなく、一般のアルバイト求人として出した方が効率が良いでしょう。

2、メリットを強調する
一般アルバイト求人サイトでは、数ある仕事と比較されることになります。
その際は「塾で働くメリット」を強く押し出すとよいでしょう。
例えば
・肉体労働がほとんどないこと
・子供たちの成長を間近で見られること
・(小規模校舎の場合)様々な業務に触れられること
・(大規模校舎の場合)役割ごとにしっかり業務を学べること
などをお伝えするとよいでしょう。

まとめ:短期間で変えられる能力は見なくてよい!

今回は採用時に注目するべき要素について、論じてきました。
まとめると以下のようになります。

短期間では変えづらい(指導しづらい)素質を中心に見る

素直さと向上心が良い講師になるうえで必須である

学力とコミュニケーション力は、業務レベルに応じて見極める

さて、せっかく採用した講師は、なるべく成長し、長く定着してほしいですよね。
そこで次回は、「学生講師をレベルアップさせ、長く定着し続けてもらうテクニック」についてお伝えしてまいります。

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