宿題をやってこない生徒と闘うには?【超裏ワザ有】
生徒が、宿題をまったくやってこなくなったら、かなり危険な状態です。
ここでは、毎回宿題をやってこないことが習慣になってしまっている生徒への対処方法を紹介します。
学校行事が重なったり、家の用事などで、偶然今回だけは宿題が手付かずだった、などという一時的な場合は除きます。あくまでも、生徒本人にやる気がなく、「塾の宿題はやらなくてもいい!」と自分で勝手にマイルールを作り始めてしまった状態の生徒への対処方法です。
この状態は、いつ退塾を決めてもおかしくないくらい、生徒のモチベーションが下がっていることを意味しています。このときの講師と生徒との関係は、大きく2パターンに分けられます。
- この先生は宿題をやっていかなくても怒られない、と、生徒にナメられてしまっているパターン
- 反対に、毎回宿題をやっていかなかった事実を、頭ごなしに怒られる状態に落ち込んでいるパターン
どちらの場合でも、早急に対処が必要なのは言うまでもありません。
私と周囲のベテラン講師の経験から、「宿題はやらない!」と心に決めてしまった生徒のモチベーションを上げる方法を生徒の年齢ごとにまとめました。
~目次~
小学生(中学受験生)の生徒の場合
中学生(中高一貫校補習、高校受験)の生徒の場合
高校生(大学受験生)の生徒の場合
番外編:超裏技! 短期集中! 生徒のモチベーションアップ術。
小学生(中学受験生)の生徒の場合
小学生の生徒の場合は、まずは、講師側で宿題の分量に無理がないかを再度検討し直しましょう。
中学受験専門の大手塾などでは、残念ながら完全にカリキュラムが決まっているので講師一人の裁量では、生徒ひとりひとりに合わせた宿題の量は決めにくいです。ですが、その大手塾の補習的な役割の個別指導や、家庭教師として指導中の場合は、講師は一度宿題の量を再検討する必要がありそうです。
昨今の中学受験の小学生について言えることは、とにかく忙しい!ということです。大手中学受験塾のスケジュールは、六年生になれば、土曜日を含む週に5日、1日2~3時間の授業に加えて、日曜日は模試の受験、というものが一般的です。
また、小学生は、中学生や高校生のように過密スケジュールの運動部などがないかわりに、唯一の休みの日にお稽古事を続けている場合もあります。その合間を縫っての、補習指導の講師が、新たな宿題を出してしまうと、物理的に時間が足りなくて宿題が終わらない!という事態に陥ります。
また、小学生はまだ精神的に幼いため、自分の状況をうまく講師に説明できる生徒ばかりではありません。良く言えばとても素直で、悪く言えば、自分自身では見通しが全く立てられません。
塾講師や保護者といった周囲の大人に指示されれば、どう考えても自分にできるはずのないことでも、「できる!」と答える以外にない状況に自分を追い込んでしまいます。タイムスケジュール上で1時間の時間があれば、自分の体力回復や気分転換に必要な時間を考慮せずに、前向きな見通しと立てる生徒が多いでしょう。講師は、小学生のこの実態をきちんと認識するべきです。
生徒の一週間の具体的なスケジュールをしっかりと把握し、無理のない範囲でできる宿題を出すことがとても重要です。
生徒のスケジュールをしっかりと把握し、できる範囲の宿題を出す
またこれは小、中、高校生すべてに言えることですが、勉強が苦手な生徒に出す宿題の鉄則は、「自宅で、自分ひとりで、大きなストレスなく解くことができる宿題を出す」ことです。つまり、応用問題や予習ではなく、復習問題や、単語帳の作成や、まとめノート作成などの次の授業へ繋がる準備を宿題に出します。
応用問題を予習に出すと、いくら真剣に取り組んでもまったく手付かずのままという場合もあります。また、本来わからないことを教えてもらうためにいるはずの講師から出された宿題を、親に教えてもらわなくてはいけない、という、本末転倒の状態になります。
応用よりも復習・単語帳作成・まとめノート作成を重視させる
モチベーションが下がっている生徒には、できる限り生徒の精神的な負担にならず、自分だけの力で全て仕上げることができる、達成感を感じることができる、宿題の出し方に工夫が必要です。
中学生(中高一貫校補習、高校受験)の生徒の場合
思春期の中学生は、極端に学習へのモチベーションの低い生徒が多発する年代です。私の経験からすると、「宿題をやってこない」生徒は、この年代、中学生の生徒が一番多いように思えます。
中学生のカリキュラムの特徴は、定期テスト前に、学校の問題集のテスト範囲を宿題に出す学校が多いことです。この時、その学校の宿題の提出期限は、定期テストの当日である場合がほとんどです。
つまり、学校としては、テスト範囲の宿題を出すことで、提出物を期限以内に出すことの大切さを教えると同時にテスト勉強もさせる、という効率化を考えています。特に、公立中学では、内申評価のためにテストの点数だけではなく、授業態度や提出物の提出状況を重視しますので、この傾向が強くあります。
このような場合は、少なくとも定期テストが近い時期の宿題は、学校から出された宿題と同じものにする配慮が必要です。
学校と同じ内容の宿題を出す
塾講師は、テストの点を重視してしまいがちですが、生徒の内申点を上げることも、大事な仕事のうちです。特に、極端に苦手科目があり、定期テストの点がかなり危険な状態になると予想される生徒の場合は、提出物をしっかり提出することでテストの成績以上の評価をもらえる可能性があります。
生徒にとって「宿題」とは常に胸に引っかかっている心配事のようなものです。テスト範囲を網羅した学校の宿題、というこれ以上ない教材が揃っている状態では、塾講師側が新たな宿題を出すメリットはありません。私は、特にモチベーションの低い生徒の場合は、テスト直前は「学校の宿題を仕上げる」ことだけを目標に、授業を行いました。
生徒のほうにも「学校の宿題を仕上げなくては」という目的があるので、集中力も普段の授業とは全然違います。生徒が「塾に行くと、期日までに提出しなくてはいけない学校の宿題が進むから、精神的に楽になる」と考えてくれるのを、指導の目標にしていました。
高校生(大学受験生)の場合
高校生になって、宿題をやってこない生徒は、中学生の時のように一筋縄ではいかない生徒が多いです。学校生活、部活動、将来の進路など、生徒の置かれている状況も様々です。私が、宿題をやってこない高校生の生徒の指導にあたった際は、「とにかく話を聞く」ことを心がけました。そんな生徒は、だいたいが、普段の生活で大きなストレスに晒されています。
生徒によっていろんなシチュエーションがあるかと思いますが、塾講師が仕事の上で解決してあげられるのは「受験へのストレス」のみです。「受験へのストレス」を払拭するために必要なのは、小学生の場合と同じく「達成感」を感じることのできる状況を、塾講師が意図的に作ることです。
私が高校生の生徒に試していた宿題は、とにかく薄い問題集を宿題に出す! ことです。
- 河合塾出版のマーク式基礎問題集シリーズ
- シグマ基本問題集シリーズ
- 「センター試験~~日で完成!」などと銘打った、一単元につき見開き一ページ分程度の分量のもの
などの、問題集がオススメです。
正直なところ、これだけでは、即大学入試に対応できる能力が付くわけではありません。しかし、薄い問題集を一冊仕上げることで、入試で出題される範囲を一通り網羅したという自信が生まれます。
逆に言うと、モチベーションの低い生徒には、受験の良書として超定番の「チャート式」などの、解説が多くて分厚い問題集は、分厚い問題集を見ているだけで気持ちが負けてしまう場合があります。受験のストレスとうまく付き合っていくために、生徒の「達成感」を刺激する宿題管理を心掛けましょう。
薄い問題集を宿題に出して「達成感」を刺激させる
番外編:超裏技! 短期集中! 生徒のモチベーションアップ術。
ここからは完全に番外編になります。私が授業の中で気付いた笑える裏技なので、半分遊び、気晴らし程度に試してみてください。
- 授業の、最後の15分を、意図的に時間が余るようにスケジュールを組みます。
- その際、生徒に、わざと15分の時間を余らせたことを気付かれないようにします。あくまでも、偶然時間が余ってしまった、という設定を作ります。
- ここから、「時間が余ったから、特別に、今日出した宿題を、今、塾にいるうちに進めてもいいよ」と言います。
- 既におわかりだと思いますが、宿題は、あらかじめ少し多めに設定しておきます(笑)
いついかなる場合でも、宿題が気がかりで少しでも早く終わらせてしまいたい気持ちは、すべての生徒に共通です。この裏技を使うと、普段、授業中にほとんど集中している姿を見せてくれないような生徒でも、「家で勉強をしたくない」一心で、かなり真剣に取り組みます。ただ、この裏技は、あまり頻繁に行うと全く効果がない上に、こちらの真意が生徒にバレてしまうと今後の信頼関係にかかわります。
あくまでも、たった15分間の集中力アップの裏技です。
いろんな応用がききますが、万が一、その場で次回までの宿題が全部終わってしまった場合でも十分に褒めるだけにして、決して宿題を追加するようなことはしないほうがいいと思います。
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