倒置は長文で頻出!
原則的な語順が変わることを「倒置」と呼びます。英文法の問題集で倒置が取り上げられている問題集はあまり多くありません。しかし、倒置は長文で頻出です!特に難関大の長文読解の日本語訳、主語を答えさせる問題の場合、かなりの割合で倒置が絡んだ部分を問題にしています。英作文・並び替えの問題などで倒置を用いることはほとんどありませんが、センター試験でも配点の高い長文で失点しないためにもしっかり教えておきましょう。
①否定を表す副詞(句)が文頭に出る
Never have I seen such a beautiful rainbow. (私はこんな美しい虹を一度も見たことがない。)
Rarely does she tell a joke. (彼女はめったに冗談を言わない。)
never(一度も~ない) , rarely(めったに~ない) のような否定の意味を持った副詞(句)が強調のために文頭に置かれることがあります。このようなとき、そのあとは疑問文のようにdo you, have I のような形になり、動詞句の先頭の語が前に来ます。1番目の例文では動詞句がhave seenなのでNeverの直後にはhaveがきて、それから主語のIがきています。また、2番目の例文では動詞はtellの一語しかないので、does tell とみなし、doesをrarelyの直後に、それから主語のshe がきています。
もしもNeverやRarelyが普通の位置にあるとき、すなわち、強調しない場合は以下のようになります。
I have never seen such a beautiful rainbow.
She rarely tells a joke.
2番目の例文ではdoesが消え、tellsになっていることに注意しましょう。
さて、否定の意味を持つ副詞(句)は他にもいくつかあります。頻出のものとして以下の4つが挙げられます。
・hardly(ほとんど~ない) ・scarcely(ほとんど~ない)
・seldom(めったに~ない) ・at no time(一度も~ない)
副詞句の例文としてat no timeを用いた例文を1つ紹介しておきます。
At no time did the actor mention his private life.(その俳優は一度も私生活のことに触れたことはなかった。)
また、否定語と副詞を含む節がまとまって文頭に出るパターンとしてuntilが挙げられます。例文を見てみましょう。
Not until I talked to her did I know she was homesick.
(彼女と話して初めて、彼女がホームシックになっていることが分かった。)
さっきまでの例文では否定を表す副詞句の直後に倒置が起こっていましたが、今回は"Not until I talked to her"の部分が先頭に来て、そのあとに倒置が起こっています。このように離れていると、どこが主語になっているのか分かりにくくなるので注意が必要です。元の文は
I did not know (that) she was homesick until I talked to her.
となります。直訳は(私は彼女と話すまでずっと彼女がホームシックになっていることを知らなかった)となりますが、untilの訳としては上のように「~して初めて」と表現することが多いのでここも注意して教えておきましょう。
②方向や場所を表す副詞(句)が文頭に出る
Down fell an apple. (落ちてきたのはリンゴだった。)
In my bag was his textbook. (私のバッグの中にあったのは彼の教科書だった。)
Here comes the bus. (ほら、バスが来るよ)
方向・場所を表す副詞句が文頭に来ることによって倒置を起こし、そのあとの名詞を強調しています。後ろに来るものほど英語では重要なものである傾向にあります。このような語順になるのは文脈による場合が多いです。実際、3番目の例文などはバス以外の他のことに夢中になっている人に対して呼びかける場合に使う文ですよね。逆にいえば、長文で狙われやすいという事です!!
それでは1つ長文からの抜粋の例文を見てみましょう。
Behind him, sleeping in the sunshine, lay Hannibal, Missouri, a little town hardly larger than a village.
さて、この文の主語と述語動詞はどれでしょうか。
否定を表す副詞句はありませんが、場所を表す副詞句がありますね。そう、Behind him (彼の背後には)です。sleeping in the sunshine(陽光の中で眠たそうに) は分詞構文ですので、主語も述語動詞も含まれていません。ということで、その次のlay Hannibal の部分が倒置になっているので、述語動詞はlay ,主語は Hannibal となります。日本語訳は
(彼の背後には、陽光の中で眠たそうに、ミズーリ州のハンニバルが位置していた。それは村と大差ない大きさの小さな町であった)
となります。
この例文は「倒置ってただひっくり返ってるだけでしょ?」となめてかかってる生徒に出すと倒置の難しさを痛感するはずです。この例文のように倒置だけでなく、省略・挿入・同格という技法も組み合わせて用いられます。省略・挿入・同格については近日公開の「長文で狙われる省略・挿入・同格について」という記事を参照してください。
補足ですが、主語がit やheのような代名詞のときは倒置は起こりません。なぜならば、代名詞は何を指すか分かっているものなのでわざわざ文末にまわす必要がないからです。したがって、3つの例文の主語がそれぞれ it, it, he となっていれば
Down it fell.
In my bag it was.
Here he comes.
という文になります。
③目的語が文頭に出る
Not a word did she say. (一言も彼女は口を開かなかった)
No hope did I have at that time. (あのとき、私にはなんの希望もなかった。)
強調のために文頭に出てきた目的語にno,not,little(ほとんど~ない)などの否定語が含まれていると倒置が起こり、疑問文と同じ語順になります。考え方としては①の否定の副詞(句)が文頭に出た時と同じです。今回は目的語だからすぐ分かる、なんて甘く考える生徒がいたらすかさず関係代名詞を付けて複雑にして見せてあげましょう!例えば1番目の例文では
Not a word which is splendid did she say (素晴らしい一言が彼女の口から出てこなかった)
となります。目的語がどれなのか、どこが関係代名詞になっているのか丁寧に解くように指導しましょう。
強調されていない場合は以下のようになります。
She did not say a word.
I had no hope at that time.
意外と2番目の文でdidを消すことを忘れやすいので、強調しない場合どうなるか、と問題を出してみてもいいでしょう。
④補語が文頭に出る
Wonderful was the view from the balcony.(素晴らしかったのはそのバルコニーからの眺めだった。)
Amazing was the show at the Mirage Hotel in Las Vegas.
(驚きだったのはラスベガスにあるミラージュホテルでのショーだった。)
Happy is the man who knows his business.(幸せなのは自分が何をすべきか分かっている人だ。)
補語になっている形容詞が文頭に出ると、倒置が起こります。このような倒置が起こるのは主語である名詞に前置詞句や関係詞節などの長い修飾語句がついている場合が多く、文のリズムを整えるためといわれています。
さて、倒置のシメとして、3番目のthe man をhe に変えるとどうなるか分かるか?という問題を出してみましょう。正解は
Happy he is who knows his business.
となります。代名詞の場合は後ろにもってきても仕方ないので、SVの語順のままでしたよね。また、主語が長くなるのを嫌う英語の傾向がありますので、 Happy he who knows his business is よりも Happy he is who knows his business.のほうがいいでしょう。
倒置、と分かってしまえば主語と動詞を入れ替えて読みとけばいいのですが、倒置かもしれない!と疑うには訓練が必要です。長文を読み解く中で詰まったら倒置じゃないか?と思わせるように強調して教えましょう。