【塾講師対象】授業研究の方法~より良い授業のために~
よりよい授業のために
<ある塾講師Aの一日>
研修を終えて早半年。ようやく1人前の講師として教壇に立つことに慣れてきた。
最初は緊張ばかりしてしまったけれど、今では大分やり方も身についてきたかな・・・
せっかくこれだけ頑張っているからには生徒をしっかり合格させたい。
でも、もっともっと良い授業を行うためにはこれから何を勉強すればよいのだろう?
塾講師をはじめて間もない頃は授業をすることで目一杯の方が多いと思います。
そういった時期を乗り越え、ある時から授業づくりにも慣れてくると、生徒たちに対して
「もっともっと成績アップさせたい」「苦手科目を自分の授業で克服させたい」「志望校に合格させたい」
などなど、様々な感情が芽生えてきますよね。
そういった生徒への思いを形にするためには、やはり授業が1番の腕の見せどころです。
講師の専門性は授業力にあるといえるでしょう。
ただ、授業者になると自分の授業は受けられないため、客観視する機会はあまり無いですよね。
「この資料は生徒の興味をひくだろうか?」「この説明で伝わっただろうか?」
授業をしていると必ず気になってくるポイントです。
こうしたポイントの良い点と悪い点を浮き彫りにし、
授業をより良くしていくためには、授業研究が必要不可欠です。
本稿ではこうした授業研究のために具体的に何をすればよいのかの方法について述べていきます。
授業研究とは
まず、授業研究とは何でしょうか?一言で言うなら
実際の授業を研究対象としてその改善を目的とする実証的な研究
です。そして、この研究には大きく2つの方向があると言われています。
①授業分析を通した研究
②授業評価を利用した研究
です。以下2つのポイントの詳細をご紹介しますね。
※ちなみに上記の2つは相反するものではなく、相互に補完し合うものです。
①授業分析
まずは「授業者」からの視点です。これは、授業の改善に関する理論を専門的に学ぶことを指しています。授業に関する一般的な知見や法則を導き出すための研究です。
皆さんも授業をしていると気づくと思うのですが、
教育の現場って思い通りに行かないことばかりですよね。
例えば、ある事柄について教えようと思っても、そのプロセスの段階で生徒には理解しづらい部分があって
立ち止まり、その部分を説明して、授業の目標とするところまで到達しなかった。
ということは塾講師をしている以上一度はご経験があると思います。
こうしたことが起こらないようにするにはどうしたら良いのか?それを理論的に研究することが必要になります。
こうしたことから授業分析を行い、理論化し、それをまた授業に還元してまた理論化し・・・
この繰り返しが必要になってきます。これをもっとわかりやすく言えば、
○授業の目標を達成出来た・出来なかったのはなぜかを傾向ごとにまとめて対策を練る
↓
○次の授業で実践
↓
○その授業でまた出来た・できなかった部分を傾向にまとめて考察し・・・
という流れになります。筆者は教育学が専門なので、ちょっとした小ネタをはさむと、
この現場の実践(塾講師・教員)と理論を専門とする研究者(大学教授など)はよく対立します。
現場からの「そんなに高い目標を達成することは出来ない」という意見に対し、「教育で高い目標を設定しないでどうするのか」というのが理論研究家からの意見例です。
理論を追究すると必然的にゴールは高くなりますからね。
もちろん、どちらが正しいということはありません。現場の事もちゃんとふまえなければならないし、
教育は高い目標を設定しないといけない営みです。
だからこそ、筆者はこの実践(授業)と理論(分析)を行ったり来たりすることが重要だと思うのです。
「理論」と「実践」、授業研究にはこの2つが重要なのです。
②授業評価
2つ目です。こちらは「受講者」に視点を合わせた研究ですね。
1つ目の授業分析が授業そのものの分析を指していたのに対し、この2つ目の授業評価では
生徒や受講者を対象としてノートやテストなどで事後調査を行います。
そして授業そのものがどのような効果があるのか、問題点は何か、その後の授業にその改善点をどう活かすのかを授業評価から分析する手法です。
特徴としては授業の事前準備・授業事中・授業事後という事前・事中・事後の3段階にわたってそれぞれがどう活かされたのかを洗い出します。
この3つの一連の流れの中で、講師および生徒の営みとそこに起こる現象を広く分析して考察の対象とする者です。
授業者としての自分は授業をうまくやり切れたと思っても、授業の後で理解度を確認してみたらそこまで正確に理解していなかった・・・というような経験がある方もいるのではないでしょうか?
意図した教育の目標が十分に達成されなかったとしたらそこにある原因は何なのか?一般化できる答えがないからこそ生徒の反応から分析しましょう。
とはいえ、一斉授業の形式だと中々1人1人が理解しているかを確認しながら授業をすることはできません。
そこで、この研究では「授業者」と「生徒」のほかに
第3者として他の講師や上司などに教室内に参加してもらいます。
授業中は授業の進行の妨げにならないことを条件に教室内を縦横無尽に動いてもらい、生徒の動きに照準を絞って観察してもらいます。
例えば、授業のどの部分で授業に身を乗り出しているかのように見えたか、どこで集中力が切れて筆をおいてしまったか、どこで先生の発言をメモしたか・・・などなど
出来る限り具体的に観察してもらいます。
(とはいえ、あまりジロジロみられると生徒も集中できなくなってしまいます。生徒にもあらかじめ第3者がいることを伝えて第3者の講師の方には空気のようになる意識でいてもらいましょう。)
そしてもう1つ、こうした授業観察をしてもらう際は必ずしなければならないことがあります。
授業を見てもらう講師の方には「学習指導案」を渡しましょう。
学習指導案については、筆者が依然書いた記事に詳細を載せているのでそちらをご参照いただけたらと思います。
「学習指導案」とは簡単に言えば
・その授業では何を”ねらい”としているか
・そのねらいのためにどのような授業展開を組むか
・板書計画
を書いたものです。なぜこれを渡す必要があるかというと
・授業者と観察者で授業内容をあらかじめ共有できる。
・他業務が終わってから授業を見に来てくれる他の講師の方にも”今授業のどの部分か”がわかる
というメリットがあるからです。こうして、授業終了後に観察してもらった講師から
「授業の中で生徒はこういう説明に興味を示していたよ」
「あの部分は講師である自分でもわかりにくかった。」
というような意見を貰って客観視することが出来ます。その上で良かった点・課題点を次にどう生かすか。
①で書いたように理論書にあたってみるもよし、塾の先輩などにアドバイスをもらうなど様々な事後策を練ることが出来るのです。
補足
以上「受講者」の視点から見た分析方法について述べてきました。とはいえ、塾の講師は仕事が忙しい事も多いため、中々授業を見てもらい、客観視することは難しいかもしれません。
なのでここでは授業者である講師が単独で取り組める授業研究について述べたいと思います。
授業者が日常的かつ簡単に生徒の状況を把握するためのツールが生徒のノートです。
このノートを通して、学習意欲があるかどうか、板書がちゃんと書かれているかという意欲を判断する事もできますし、学習のまとめを書かせたら具体的に何が分かっていないのかも把握することが出来ます。
塾の授業ではあまりノートを確認しない傾向がありますが、生徒の現状を把握するためにもやはり「ノート確認」は重要です。毎回でなくとも、定期的に行うようにしましょう。
まとめ
以上ここまで「授業者」「受講者」の視点から見た授業分析と補足を加えて説明してきました。
自分の授業を客観視することは研修が終わってからは中々機会を作ることは難しいのですが、理論書を読んだり客観的な視点からの意見をもらうとまだまだ自分に足りないことがあることを発見できると思います。
講師の専門性は授業力。この信念だけは忘れずに日々の授業力を磨き上げていってくださいね。
以上です。ここまで長文ご精読ありがとうございました!
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