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【数学講師向け】正負の数の四則演算をわかりやすく教えるポイント

中学生

2021/12/17

正負の数の四則演算

中学数学は正負の数から始まります。方程式にも関数にも、面積にもベクトルにも数列にも確率にも、あらゆる分野に於いて必須の大前提となるのが、正負の数の四則演算です。

 

 

足し算、引き算、掛け算、割り算の4つが理解できていない人間に数学的な幸せは絶対に訪れない、にもかかわらず、この分野の理解はつい適当に流されがちです。

 

 

何故、+ ( -n )が、-nになるか分かっていますか?

そもそも負の数同士の乗法が正の数になる理由は?

 

 

 

確かに、そこまでの理解は無くても勉強を進めることが出来たかもしれません。しかし、生徒にそれを尋ねられたらどうしますか? 「これはそういうものなんだ」としか言えないのでは教科書を読むのと大差ありません。


この記事では、

正負の数の四則演算のルール

 

そして

どのように考えればそれが簡単になるのか

についてお話ししていきます。

 

 

その際、気になるであろう要素についても併せて解説を加えていきます。

 

学習の順序

さて、通常であれば四則演算は、足し算→引き算→掛け算→割り算の順で学びます。小学校で学んだこの順番は中学数学になっても変わらず引き継がれます。塾にも方針がありますから、大方この順番通りに教えていらっしゃる方がほとんどでしょう。

 

 

ですが、相手は中学生で、正の数の四則演算は殆どの場合問題無く回答する事ができる人達を相手に、わざわざその順序でなければならない理由はありません。そして、筆者はこの順番が1つ大きな理解を阻害していると感じています。

 

 

本稿では、その学習の順序を変更して記述致します。

 

つまり、掛け算→割り算→足し算→引き算という順番です。

 

そしてこの2つを学習して初めて、「なぜ負の数同士の掛け算は正の数になるのか」を証明する事ができるようになりますので、それを証明して四則演算はおしまいです。

 

数学はピラミッド型教科、とは聞いた事がある言葉かもしれません。すなわち、基礎を積み重ねる事で次の分野に入る事ができる分野だという事です。

 

先に述べたとおり、四則演算はその中でも最も基礎的な部分になります。そしてそれ故にあらゆる分野にわたって必要とされる能力です。この単元を理解しないまま、感覚にも合わないであろう負の数同士の掛け算まで適当に流しておいて数学が出来るようになったなどと誰が言えるでしょうか。

 

基礎は単純だしなんとなくでも分かるから、と流して複雑化した時に分からなくなるようでは無意味です。しっかりと根幹から理解できるように、教えましょう。

 

 

 掛け算の計算

という事で宣言通り、掛け算と割り算から入ります。割り算は、すぐに省略してしまいますが。

 

ひとまず計算を始めてみましょう。nとmはそれぞれ異なる自然数だとしましょう。

 

(+m) × (+n) = mn

 

 これが基礎の基礎、通常の掛け算ですね。「m個の集合がn個ある」という概念でした。これが負の数を含むようになると、

 

 

(-m) × (+n) = -mn

 

になります。順番の入れ替えは不要です。交換法則がありますので。この時、ルールは一旦感覚での理解に留めましょう。しっかりと概念を把握するには足し算が必要です。ただ、「マイナスが沢山ある」という図式で解がマイナスを持つ事は理解に難くはありません。下の様な図を用意すれば、殆ど理解と同義の所まで引き上げる事も出来ます。

 

 

 

 

そのまま、正の数の頃使っていた掛け算モデルです。-5が4つ集まって、というイメージから考える生徒にはこのような図が良いでしょう。

 

もしくは、こちら

 

 

のように、数直線を用いても同じ結果が得られます。この考え方だとほぼ間違いなく理解までこぎつけると思います。

 

どちらを使うにせよ、既に掛け算という概念自体には出会っている生徒には、そこまで大きな困難ではないでしょう。とは言っても、掛け算が足し算の延長である以上、やはり足し算から始めるのは自然に見えるかもしれません。しかし、この正負の掛け算と次の負の数同士の掛け算が分かっていないと、それこそ丸暗記を強要する事になってしまいます

 

 

それでは最後の負の数のみの掛け算がこちらですね。

 

 

(-m) × (-n) = mn

 

負の数同士の掛け算が正の数になる概念は、直感から最も離れたものだと思います。「そういうものなんだよ」と教える人が多いのではないでしょうか? しかしそれではいけません。

 

証明をするのは現時点では困難です。初めに述べたとおり、その証明は四則演算全てを学んでから(また、証明を経験してからだとより理解しやすいでしょう)です。しかし、理解の助けを用意する事は出来ます。

 

それが方向を用いる事です。

 

かけられる数の符号を向いている方向(プラスとマイナス)、そしてかける数の符号を歩き出す方向(前と後ろ)だとします。

 

正×正であれば、「プラスの方向を向いて前に歩く」のだから答えはプラス。

正×負であれば、「プラスの方向を向いて後ろ向きに歩く」からマイナス。

負×正は、「マイナスの方向を向いて前に歩く」のでマイナスになり、

負×負だと「マイナスの方向を向いて後ろ向きに歩く」のでプラスに向かって歩く事になります。



実際に生徒に体を使って動いてもらうのが最も体感的に理解できるでしょう。 



割り算について

さて、ここまで正負の掛け算について書いてきました。次は割り算ですが、そもそも割り算をする必要はありません。割り算は掛け算に直せる、というのは小学校でやっているからですね。

 



 足し算と引き算

では次に、大本命の足し算と引き算です。特に引き算が問題になりがちです。

 

まず足し算についてですが、殆ど割愛します。数直線を使えばすぐなので。先の掛け算の時と同様に、符号を方向性として扱いましょう。加算する数がプラスならプラス方向へ、マイナスならマイナス方向へ進みます。

 

この時、

n + (-m) が n – mと同じになる事を認識させましょう。引き算に繋がる大事なポイントです。

 

これはつまり、「足し算と引き算は互換性を持っている」事を示します。すなわち、引き算も足し算に直せることを意味しているのです。

 

 

見ていきましょう。パターンは2通りです。マイナス(プラス)とマイナス(マイナス)です。

 

 

 n – (+m)

 

 

この式を足し算に直します。すると、

 

 

 n + (-m)

 

になります。先程行った足し算を引き算に変換したもののそのまま逆の変換です。勿論数直線上で証明しているものですが、この後のマイナス同士の理解の為に式の形に直します。-mはmに(-1)をかけたものと言えますからそのように変換します。すると、

 

 

 n – (+m) = n + (-1) ×(+m)

 

というものになります。つまり、マイナスの後に括弧を入れる式は、「+ (‐1)×(x)」を省略しているのです。これを踏まえて、最後の式を見てみましょう。

 

 

 n – (-m)

 

これを変換すると、

 

 n – (-m) = n + (-1)×(-m) = n + m


 

となります。先程の掛け算の項で、負の数同士の掛け算は正の数になる事は分かっていますから、最終的な答えが正の数同士の足し算になります。

 

引き算を足し算に直すときに、-1をかける。この仕組みを理解すれば、計算結果が正になるか負になるかで迷う事は無くなる筈です。

 

最後に:負の数同士の掛け算

最後に、何故負の数と負の数をかけ合わせると正になるのか、それを証明して本記事を締めましょう。生徒さんに質問された時に説明してあげてください。疑問に思ってない生徒に初めからこれを教えるのはあまりお勧めしません。正負の数を学んでいる段階では証明をやるには少し早いと思いますので。

 

 

(-1) + 1 = 0

= {(-1) + 1} × (-1) = 0

= (-1)×(-1) + 1×(-1) = 0

=(-1) ×(-1) = 1

 

以上です。

基礎基本たる四則演算で、生徒さんたちがつまづかないよう、理解を支えてあげてください。

 

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