国会はどうでしたか?
中学校の生徒たちは、国会のことをどのくらい知っているのでしょうか?
試しに、公民の政治分野の授業で「国会を見たことがある人?」と生徒に質問をしてみると、必ずと言ってよいほどほぼ全員手が上がります。
特に首都圏の小学校出身の中学生に限っては、小学校の頃の社会科見学などで実際に国会を見に行ったという
経験を持っているのです。筆者も例外ではありません。
小学生時代、同じように国会へ社会科見学で行きました。
授業では筆者がその次に「その時どんなことを感じましたか?」という質問をします。
すると、
「テレビで見ている場所に入れて有名人になった気分だった」「意外と小さかった」という思い思い
の感想を述べてくれます。
しかし、中々国会という場所を「国政」と関連付けて感想を述べられる生徒は多くありません。
もちろん、これを聞く時に、当時小学生だった生徒たちから
「国の税金の使い道や政策を決める国会に行くことが出来て感激した」
というような100点の答えを期待しているわけではありませんが、
中学生が学ぶ「国会」では少なくとも学んだ後、「国会」の重要性が伝わってくるような感想を
持たせたいですよね。
国会というのは私達の暮らしに関わる税金や法律を審議している場所です。
つまり、
国の政治と、国民の生活は深く結びついているのです
本稿では、上記のことを理解してもらうために、生徒にどう授業をすればよいのか、指導法を通して
講師の方に考えていただけるような情報を提供したいと思います。
目次
国会とは
まず、そもそも国会とは何のためにあるのか。生徒に考えてもらい、説明することから
授業を始めていきましょう。
生徒がよく耳にする「国会」を説明させてみると中々興味深い返答がきます。
例えば、「政治家が会議をするところ」「国の政策を決めていく場所」など何となく持っているイメージ
を語ってくれます。
これらのイメージは決して間違いではありませんよね。
しかし、意外と
国会が何をもっとも重要な仕事と位置づけているのか、となると意外と知らない生徒が多いようです。
国会の仕事について、憲法41条の以下の様な言葉で覚えた講師の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「国会は国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関である」
まさに、国会の役割を言い表しきった一文です。最終的に理解させたいのはこの部分です。
しかし、ただこの一文を提示されても初めて学ぶ生徒にはしっくり来ませんよね。
この部分までどうやって持っていくか、その具体的な方法をご紹介します。
三権分立
まず、「国会は国権の最高機関であり~」という部分から考えてみましょう。
「国権」=国の権力の最高機関であると言い切っていることからも、国会の重要性を感じられる部分です。
このことをもっと具体的に説明するために、筆者は授業で以下のような教材を提示しています。
国会の仕組みを説明する際には、こうした三権分立の観点からの説明が有効になってきます。
「三権」とは図にあるように、「国会」「内閣」「裁判所」の3つを指しています。
本稿は「三権分立」の指導法の記事ではないので、詳述は避けますが、
これらの具体的な仕事は以下の通りです。
・国会:立法権を所有(法律を作ったり、廃止する)
・内閣:行政権を所有(国会で決まった法律や予算に基づいて政治を行う)
・裁判所:司法権を所有(国会の法に基づき、裁判を行う)
この仕組が意味するものはなにか、それは矢印が示すように
お互いがお互いに監視しあうことで権力の乱用を防ぐ
ということです。
それぞれがそれぞれを監視する、ということは並列な関係のようにも見えます。
しかし、実はこれは並列ではなく、「国会」が一番重要な存在とされています。
根拠として、まずあげられるのが上述した憲法41条という法的背景です。
しかし、それ以上に「国会」が最も重要とされるのはもっと大事な理由があります。
ここは、この「国会」の授業の中でも生徒に最も考えてもらいたい山場です。
講師の皆さんだったらこれにどう答えるでしょうか?
実はここに民主主義の本質が隠れています。
民主主義の本質を思い出してみましょう。
読んで字のごとく、
「国民」が主権であるということでしたよね。
国民からの直接選挙という形で選ばれた議員たちが、構成している国会。
これが国権の最高機関あるということの根拠なのです。
ちなみに、政治学の用語でこの日本の政治の仕組みを「議会制民主主義」または「間接民主制」と呼びます。
授業をする際にはこの部分を必ずとりあげるようにしましょう。
つまり、この国会の議員を決める選挙がいかに重要であるか。ということもこれでわかります。
内閣がきちんと国民の実情を踏まえた上での政治を行っていない、という不信感が募り、
選挙によって選ばれた代表たちも世論を受けてそう判断すれば、
図にある通り
「内閣不信任案」を出すことも出来る。
このように政治の実権を握っているのはまさに我々国民であるということがこうした論の組み立てから
説明できます。
自分たちに与えられた最高の権力を行使する場、それが「選挙」であり、
国民の手によって「政治」は舵取りが決まる、ということもしっかり伝えましょう。
衆議院と参議院
日本の国会の仕組みを次に説明しましょう。
先ほどあえて国会の「構成員」という呼び方をして濁しましたが、次は、生徒たちにその具体的な中身を理解してもらいましょう。
日本の国会は衆議院、参議院による「二院制」という形をとっています。
法律案を通すときは、この2つの院を通過しなければ法律として成立しません。
さて、その仕組みを説明する前に1つ生徒に考えてもらいたいことがあります。
それは「何故この2院制を採用しているのだろうか?」ということです。
授業では1つ1つ「何故そうなのだろうか?」という疑問の目を生徒に持ってもらうよう、
発問していきましょう。
これは、選挙の仕組み・構成を見ていくことでわかります。以下の表をご参照ください。
衆議院、参議院はほとんどの仕組みが違うことがこのような表を作れば一目瞭然になります。
授業をする際は、このようなわかりやすく、整理しやすい教材を事前に作成するようにしましょう。
先述した「何故この2院制を採用しているのか」という部分の解説をします。
表を見ると分かる通り、衆議院と参議院は議員の数も、任期も選挙方式も違います。
法律案など、国民の生活に直接関わるような政策は色々な角度から吟味をしたほうが良いですよね。
それぞれ別の視点から見るのなら、議員もそれを選ぶ選挙も衆議院とは別の方式を
採用するほうが良いと判断するからなのです。
選挙に出馬できる年齢も違う、選挙方式も異なれば当然選ばれる人も衆議院とは異なってくる可能性が高く
なります。
参議院のことを「良識の府」という呼称が使われることが有りますが、
これも出馬できる平均年齢が高い=より学識がある大人が政治を考えている。
という事からそう呼ばれているのです。
ただ、法律を審議する過程で、一方がYESで他方がNOであっては、いつまでも政治は進みません。
次から次へと考えなければならない問題が出てくる中で、政治の停滞は痛手です。
こうしたことから、一般の大「衆」の代表者である「衆議院」が”優越”することが認められているのです。
まとめ
本稿では、国会とは何か?そして、なぜ2院制を採用しているのか?という2つのことについて
述べてきました。
今回の指導法を通してお伝えしたかったのは
知識をなぞるだけになりがちな制度は理由があってそうなっている。
ということです。
こうした仕組みを教えることで、生徒の記憶にしっかり定着させることができるようになるだけでなく、
生徒が将来例えば、いざ主権者となって参議院選挙へ投票するとなった際に、
「この人を選べば、衆議院だけではカバーしきれないことをできる参議院になるだろうか?」
というような具体的な、行動に伴う知識につながるのです。
そうした政治教育の重要性をお伝えしたい思いがあり、本稿で述べさせていただきました。
指導の際の参考にしていただけたらと思います。
以上です。ここまで長文ご精読ありがとうございました!
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