地学の最強指導法!ー地学に興味を持ってもらうにはー
講師の皆様こんにちは!
前回予告したとおり、今回からは地層・地震について扱ってまいります。
最初に、一番基本的な「地層とは何か」という点について、一緒に考えていきましょう。
(前回記事:http://www.juku.st/info/entry/900)
各論に入る前に、知っておくべきこと
地層・地震を学問として、きちんと体系立てて学んでいる人はかなり少ないのが現状です。
これは、地学を専門とする人材が極端に少ないためです。
そのため、化石、堆積岩、P波などの単語ばかりを教えてしまい、ストーリーとして地学を授業で触れられていない方も多いのではないでしょうか。
そこで、最初に地層・地震の全体像を、どうやって生徒に伝えればよいのかを考えていきます。
地学を学習する理由
最初に考えるのは、地学を勉強する理由です。
物理・化学は比較的生徒が必要性を理解しやすく、生物は身近で取り組みやすいことに対し、地学はいまいち学習意義を理解していない生徒が多い傾向があります。
では、皆様に質問させてください。
地学の1分野である「地層」は、どうして学習しなければいけないのでしょうか?
少し考えてみましょう。
(スクロールする手を止めて考えてみることをおススメします)
…
…
…
答えはいくつもありますが、私が一番使いやすい、と感じているのは
未来を予測できる学問であるから
という理由です。
地層は地球全体の流れを扱う学問です。
そのため、他の学問に比べ、非常に研究するスパンが長いことが特徴です。
例を挙げてみると
・地震や火山のメカニズム
・気候変動
・地球内部の変動と表層部分の変動
など、数十年~数百年単位で物事を考えていきます。
そのため、地学では「過去のデータから未来を予測する」ことを重視します。
そして、研究成果を生かして、未来に起こりうる課題に対処できる力を身につけさせるのが地学の役割です。
特に日本は、地震大国かつ四季に富んだ国です。
だから地学研究において、日本はかなり最先端を行っているといわれています。
ぜひ、地学を学習する意義をしっかり定義づけてから、本論に話を進めてあげてください。
地層学習の全体像
意識付けができたら、次に全体像を明示してあげましょう。
学習の流れとしては
石の積み重なり方
↓
川が作る地形
↓
地層
↓
堆積岩・火成岩
↓
火山
↓
地震
↓
ボーリング・演習問題
とすすめていくのがよいでしょう。
気象や天体と異なり、この順番を守ることで、理解がしやすくなります。
仮に「地震」の単元において、堆積岩をしっかり理解していない場合、戻って教える必要があります。
では、さっそく最初に教えるべき「石の積み重なり方」について、教え方を考えていきましょう。
石の積み重なり方
特に生徒がやってしまう失敗・石にそもそも興味を持たない
・テキストを丸暗記して、簡単な単元だと錯覚する
先述したように、地学に興味を持っていない生徒に「地学って役立つんだ!」と思ってもらうことが重要です。
授業で伝えるべきポイント及び伝え方
石に興味を持ってもらう
では、本論に入っていきましょう。
地学の核となるのは「石」です。
ぜひ、生徒に以下のように問いかけてみてください。
「みんなは毎日、どこかで石を見ているはずです。
(実際にはちゃんと見ていないので、気づかないことも多いだろうけど…)
じゃあ、その石はいったいどこからきたのでしょうか?」
このように聞くと、海!とか、もとからあった!と答える生徒が多いです。
その際、次のように聞いてみます。
「どうやって海から石が上がってきたんだろう?石が自ら動くことはないよね?」
「実は、昔は地球上に陸地がなかったっていうことがわかってるんだよ!だから元からあったわけじゃないみたいなんだけど…どうやってできたんだろうね?」
ここで生徒は迷います。
(ハイコースであれば、しゅう曲・プレートの移動と答えるかもしれませんが、そのテーマについては触れずに授業を展開しても構いません。)
そして、もう1つ重要なことを聞きましょう。
「石はぶつかると大きくなるのかな?小さくなるのかな?」
これは大半の生徒が安心して答えられます。当然、小さくなる、と答えます。
それに対して
「でも、そうしたら長い時間が経過すると、地球上のすべての石は砂になっちゃうの?」
この問いかけは答えが分かれます。
そうやってすべては砂に還るんだ!と演説する生徒。
あるいは、砂団子のように固まるんじゃないか?と発言する生徒。
大事なことは、地学に興味をもってもらうこと。
あくまで一例ですが、もし使える!と感じるのであれば、ぜひ真似をしてみてください。
粘土、砂、小石の違いをしっかり理解させる
さて、動機づけが終わったところで、教科書的な内容に入っていきます。
多くのテキストでは「粘土、砂、小石」が最初に教えるべき内容として記載されていることが多いですが、この落とし穴に注意してください。というのも、テキストを教えることはとても簡単です。
粘土、砂、小石を混ぜたビンを振ると、小石が一番下に、粘土が一番上にくる。
これは水中では大きい粒が沈むのが早いからです。
あと、水の通し方は粘土が最も遅く、小石が最も早い。
このことを覚えておきなさい。
…これで終了です。
しかし、これだけではあまりにも味気ない。
そして、以下のような質問が生徒から来たらどうしますか?
(1)図を見ただけでは、イメージできない!先生、わかりやすい例はないの?
(2)どうして空気中では大きさに関係なく一定速度で落ちるのに、水中では大きい方が早く沈むの?
(3)実際にペットボトルで実験してみたけど、そうならなかった!先生のうそつき!
いずれもぱっと答えるのが難しい問いですよね。
そこで、この問いから本質に迫ってみたいと思います。
(1)イメージできない
これは最近の生徒には多くなっています。
幼少期に、泥遊びや自然と戯れる機会があまりない生徒が増えているためです。
その際、私は
味噌汁
を使って説明するようにしています。
豆腐のお味噌汁を考えさせます。
かき混ぜて、一番下にくるのは?→豆腐。
次にしたのほうに味噌がたまるよね?→砂
最後に上の方は水っぽい、薄い液体がたまるよね?→粘土
このイメージをさせると、少なくとも図や黒板で説明するよりは、わかりやすいようです。
しかし、ここで「先生!わかめは浮くのはどうして?」と聞いてくる生徒がいます。
実にすばらしい質問です。
本当は浮力で教えたいところですが、ここでは一切数式を使わずにこのことを考えさせるテクニックを、(2)に絡めてお伝えします。
(2)水中で沈む速度と空気中で沈む速度の違い
空気中では、空気抵抗がなければすべての物体は同じ速度で落ちていきます。
これは、ガリレオの実験により考えられ、2014年11月の実験により証明されました。
参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=hbT5dbJhHzE
さて、それに対して水中の場合はどうして異なるのでしょうか。
これは、いくつかの要因があります。
1つは物体の密度。
物体の密度が大きければ大きいほど、早く沈むことは生徒でも理解できます。
(厳密にいうと、密度が大きくなると加速度が大きくなるということです)
しかし、ここで大きな間違いを教えてはいけません。
「小石のほうが粘土より密度が大きい」
これは誤りです。必ずしもそうとは言い切れません。
というのも
小石…2mm以上のもの
砂 …5um以上~2mm以下のもの
粘土…5um未満のもの
と定義されており、密度は何の関係性もないからです。
それであれば、石を砕いて砂にすると、沈む速度が遅くなる、という誤った理論が導かれてしまいます。
そこで、もう一つの要因をしっかり教えましょう。
それは、細かくすると表面積が増える→水の抵抗が増える、ということです。
(厳密にいうと水の粘性が関わりますが、割愛して説明しましょう)
このことから、物質を細かくするとふわふわ浮いているように見える現象も説明がつきます。
例として冷凍果実を使ったジュースを説明するとよいかもしれません。
水の中に凍らせた果実を入れると、そのまま真下に落下します。
しかし、ミキサーなどで粉砕すると、まるでふわふわ浮いているかのようにみえます。
これと同じ現象が、泥水なんだよ!おうちに帰ってミキサーがある人は試してみてね!
と話すと、翌週に実験成果を誇らしげに言ってくれるでしょう。
なお、表面積が増えるとなぜ抵抗が増えるか、という詳説はhttps://staff.aist.go.jp/a.noda/memo/settle/settle/settle.htmlをご覧ください。
当然、生徒にこの式を教える必要はありません。
(3)実験失敗?!その理由は…
このように質問してきた生徒に対しては、しっかり実験を行ったことをほめてあげましょう。
そして「君が正しい!」と伝えてあげてください。
実は、ペットボトルや瓶のような小さな容器内で行うと、十分に撹拌が行われず、きちんとした層が形成されません。
また、採取された土が表層であることを考えると、あまり粒の大きさに差異がないことも、実験失敗の原因になります。
そのため、生徒の実験結果のほうが正しいケースがほとんどです。
正しい実験手法としては
・明らかに大きな石を最低100粒ぐらい
・排水溝にたまっている泥をスコップ2杯
・校庭の砂場からスコップ2杯
を、4Lぐらいの大型瓶に入れて行うと、教科書通り結果が得られます。
生徒に気合と根性があれば、自由研究でやらせてもよいでしょう。
まとめ
地学(地層分野)はまず学問に興味を持たせることを意識する水中でものが沈む速度が異なる理由はしっかり理解させる
次回は川の働きから、地形のでき方についてお話ししていきます。
どうぞお楽しみに!
参考:理科とは何をする学問か
http://www.juku.st/info/entry/657
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