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前置詞upとdownの概念①

英会話

2021/12/17

up、downの概念

前置詞は英会話において、とても重要な要素です。いくら名詞や動詞を正確に使えていたとしても、文中の前置詞が正確なものでなかったら、その表現のニュアンスが変わってしまうことが多々あります。また、たくさんの動詞を覚えなくても、前置詞のみで言いたいことを表すこともできます。生徒にはまず、英語を話すうえでの前置詞の重要度を理解させてから、説明に入っていきましょう。会話の中で正確に使えるように、そこらへんのテキストに載っているよりも、さらに深く内容を掘り下げて、前置詞を紹介していきます。今回は上に挙げた、この二つの前置詞に重点を置いて説明していきます。では、さっそく内容にはいっていきましょう。

up、 downは基本的に、何かの上、下の空間を表します。この上下の概念は英語に限ったことではなく、日本語にも「上機嫌」・「下手」などの表現があります。英語や日本語以外の言語でもこのような表現は見られますが、それは上、下と言った空間が、人間が生きていく上で欠かすことの出来ないものだからです。私達人間は、空間的な上下を元にして多くのことを理解しているのです。このように生徒におおまかなイメージ(概念)を教えるときは、日本語の例を出すと、英語だけでなく、どの言語でもそうなんだなと英語を学ぶ抵抗感が少なからず軽減されると思います。ではこの2つの前置詞をいろいろな観点から見ていきます。

身を起こすから創造へ

空間では、上と下を表しているという点で対照的なupとdownですが、それぞれに違った経験が結び付いています。まずはupとdownの基本的な意味の広がりから説明していきましょう。

身を起こすup

まずはupからです。普段からわれわれ人間は二足歩行をしていますね。この人間の最も基本的な「歩く」という経験と切り離せないのが、歩く前にしなければならない「身を起こす」という経験です。upは<上向きに>立ち上がる経験と密接に結びついています。下の例文を見てください。典型的なupの例です。

Please stand up when you are called your own name.

(自分の名前を呼ばれたら起立してください。)

 

現れるup

人間は地面を踏みしめ立ち上がると、遠くまで見渡すことが出来ます。また、太陽のような、高いところにあるものは、障害物がないのでよく見えます。

The sun came up.(太陽が現れた)

My father came up to me.(父が私のところにやってきた)

「太陽が現れた」の文では、太陽は地平線の向こうから、実際に<上向きに>昇ってきます。そして、地面の下から地平線を超えて目の前に現れます。私たちは日々の経験から<何かが上昇する(up)>と、<視界に入りやすくなる>ということを知っています。このことから、upは、今まで見えなかったものが視界に入って見えるようになったり、誰かが現れたりするような場合にも用いられます。後者の方が二つ目の文、「父が私のところにやってきた」の例ですね。この例では、実際に「上がって」やってくるわけではなく、ただ近づいてくるだけです。しかし、遠くにあって見えないものも、接近するにしたがって大きく見えるようになります。何かが現れるということは、遠くにあった見えないものが、<視界に入り>➡<接近し>➡<大きくなり>➡<高さが増す>ということです。このような言葉の広がりを生徒に意識させつつ指導していきましょう。

turn up(現れる)、show up(現れる)などでupが使われるのも、upのこの「視界に入る」イメージからです。What's upも同じように考えられます。今までなかった問題が浮上して目の前に出てきた、というイメージです。他にも生徒にupの出てくる熟語を挙げさせ、それらも同様に説明していきましょう。

また、出現は何も空間的なものだけではありません。映画の予告でよく使われるupcoming(近日公開)や、インターネット上などで見るup-to-date(最新)は、空間ではなく、時間上で現在という時点に接近してきて、人の視界に入ると言えます。生徒にはこのupの、視界に入るいう意味を意識させて下の例文を見させましょう。

A good idea came up.(いい考えが浮かんだ)

She came up with a good idea.(彼女にいい考えが浮かんだ)

We dug up a lot of money.(私たちはたくさんのお金を掘り当てた)

 

一つ目の文の「いい考えが浮かんだ」では、考えが心の中に現れていると言えます。

また、came upには二つ目の文のような、came up with…という慣用表現もあり、日常的によく使われます。二つ目の文で重要なのは、主語ではなく目的語が「現れている」ということです。

三つ目の文でも、現れるのは目的語のたくさんのお金です。upするのが主語でも目的語でもいいところがupのいいところでもあり、厄介なところでもあると思います。ところで、dig upは、掘る方向としては普通は下向きや横向きですから、upが理解しづらいかもしれません。ですが、upは掘る方向よりも、今まで見えなかったお金が徐々に「現れる」様子や、そのお金を見て喜ぶ私たちの「上向き」の気持ちをとらえていると言えます。前置詞を学ぶ際はおおきなイメージこそ必要ですが、あまり自分の中で定義づけないように、生徒には注意させましょう。

高揚するup

先に物が出現し、接近し、大きくなるという一連の事態をupが表わすことを見ました。次に、私たち人間が大きく見えるのはどのようなときかを考えていきましょう。

まず、upはその基本的な意味として、起きて活動していることを表します

Get up right now.(今すぐ起きなさい)

I'm up already(もう起きてるよ)

人はたいてい、心の底から嬉しいときや興奮した時には立ち上がって喜びます。また、希望に満ち溢れている人なんかも上を向いて歩きます。一方、落胆した時や気分が滅入ったときは、肩を落とし、うなだれます。このような、上を向く行動と下を向く行動は、私たちの体調や心理状態と結びつきます。

では次の例を見てください。上を向くときの気持ちをよく表しています。

I'm feeling up.(気分は上々だ)

She is keyed up.(彼女は緊張/興奮している)

生きていないものがupになるときもあります。

The system is up.(システムは作動中です)

「システムが動いている」状態は、人間でいうと健康な状態ですね。このように指導すると生徒も納得してくれると思います。

体積が増すup

一般的に物の高さが増すと、その分だけ体積も増えます。このことから、<体積の増大>もupによって表されます。

Her ankle swelled up.

(彼女の足首は腫れ上がった。)

I've got to gas up my car.

(車のガソリンを満タンにしなきゃ。)

上の例では、足の膨らみや、ガソリンの満タンをupが表しています。台風が来ると、川の水位が上がったりしますが、それと同じで、ある物の容積や体積が増えると、そのものの高さが増します。このように体積の<増大>がいつも高さの<上昇>と同時に起こるため、やがて<増大>と<上昇>が本質的に同じようなことのように思えてきたので、上昇を表すupの意味に<増大>が含まれるようになったのです

このような言葉の意味の広がりを素早く読み取れるようになれば、熟語なんて覚えなくても、感覚で言いたいことをうまく伝えることができるようになります。会話の際のみでなく、筆記試験や外国の友人に手紙を書くときで行き詰ったら、少し観点を変えて前置詞のイメージを使ってみるのも一つの手段であることも指導しておきましょう。

完了するup

最後です。何かが視界に入り接近すると、最終的には見ている自分に到達します。この目標への到達、「完了」もupで表されます。

She used up a whole can of paint.

(彼女はひと缶分のペンキを使い果たした)

Time is up.

(もう時間切れだ)

一つ目の文は、ペンキがすっかりなくなったと言っています。upは完了を表し、事態が強調されるのです。Time is upは海外ドラマ、洋画などでよく聞くフレーズです。ここでもupが一つの事態の完了を表しています。私が外国人の友達の家に遊びに行ったとき、友達の母親がdinner is up(夕食ができたよ)と呼びにきてくれたことがありましたが、この用法もupの完了のイメージから理解できます。

また次の例も完了を表すupになります。

Her long hair is bound up in a ponytail.

(彼女の長髪はポニーテールでまとめられている。)

You can fold up this umbrella.

(この傘は折りたためます。)

一つ目の文では髪を「きっちり」まとめたというニュアンスがあります。また、髪形をアップにしたという解釈もできます。二つ目の文では、「傘をたたんで小さくできる」ということをupが強調しています。この完了のupこそ一番重要なものだと思います。なので、もし生徒が今回紹介したいくつかの感覚を覚えられなくても、この完了の感覚だけは必ず覚えさせてください。また、この二つの例文を新しい熟語と捉えさせないように注意しながら指導を行なって下さい。あくまで感覚であることを強調してください。熟語というひとくくりでとらえてしまうと、会話で使える範囲が大幅に狭まってしまうのです。

 

今回はここまでにします。このような一連の動作の流れになっているのが言葉の広がりと言うものです。今回紹介したupは少し覚えるべき感覚が多めでしたが、これらの感覚は絶対に覚えさせてください。これらの前置詞の感覚を覚えるだけで、無数の熟語や動詞を覚えるよりも、はるかに英語で会話をする際の引き出しが増えます。

upとdownの指導法を紹介すると言っておきながらupだけしか紹介できず申し訳ありませんでした。次回ではdownを紹介した後にupとdownを比較していきます。この記事を読んで少しでも役立てていただけたら幸いです。

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