センター試験|上手くいかなかった生徒にどんな言葉をかけるべき?
センター試験が終わった今大切なこと
今年もセンター試験が終わりました。今年は世界史で正解が2つある問題があったり、翻弄された受験生も多かったと聞きます。いまや大学進学を目指す学生の殆どが受験するセンター試験。センター試験が受験において占める重要度は依然高く、全国の受験生たち共通の第一の関門と言えるでしょう。
センター試験で高得点を取った生徒に対しては、ここで気を抜いてしまわず、志望校合格まで一気に走り抜けられるよう愛ある檄を飛ばしてあげましょう。
もちろん、満足の行く結果であったことはしっかり評価してあげ、今までの努力を誉めてあげるべきです。しかしセンター試験が好調だったからといって、志望校に必ず合格できるとは限りません。中には得点が圧縮され、せっかくのセンター試験で付けた差がほとんどなくなってしまう大学もあります。油断するのは塾講師も同じで、「この点数なら、あの子はきっと大丈夫だろう」と慢心を見せてしまう人もいます。
「勝って兜の尾を締めよ」の言葉通り、決して油断せず最後まで頑張れるようにサポートすることを心掛けましょう。
問題は、センター試験で思うような成果を出すことが出来なかった生徒に対してどのような言葉をかけるか、です。実力を発揮できなかった、そもそもちゃんとした努力をしてこなかったなど、原因は色々あると思いますが、本人がとても苦しむことに変わりはありません。
生徒が苦しむ様子を見ていられず、「まだ大丈夫。これからしっかり頑張ろう」と優しい言葉をかけ続ける塾講師を、僕はたくさん見てきました。
もちろん、励ましは大切です。点数が悪かったことに対し頭ごなしに怒鳴っては、生徒の意欲を必要以上に削ぎ、坂道を転がり落ちるように状況がどんどん悪化しかねません。
しかし、単に優しい言葉をかける”だけ”なら誰にでもできるのです。それはその生徒の両親だったり、クラスの友人だったりするかもしれません。塾講師という、『誰よりも親身になってその生徒の進路を勉強面からサポートすべき存在』だからこそかけられる言葉、取れる行動もあります。
今回はこの、「塾講師だからこそかけられる言葉」について、お話していきたいと思います。
まずはじめに、「塾講師だからできること」を考えてみましょう。励ましや叱責は親にもできます。単に勉強を教えるだけなら、それは学校の先生の仕事です。塾講師にしかできないこと、それは『生徒個人の状況を正確に把握し、昨今の受験事情に照らし合わせ、各々に合った勉強法を提示する』ことです。生徒の両親は自分の子供を重点的に気に掛けることができますが今の受験事情や効果的な勉強方法については詳しくないし、勉強や受験に関してプロであるはずの学校の先生は多くの生徒を見なければならないため個々人にぴったりのカリキュラムを綿密に組み立てることが出来ません。
生徒の置かれた状況や想いを正確に把握し、合格までの道筋を示してあげることが最もできるのは、受験事情を知り、且つ生徒個人に集中的に目を掛けられる塾講師というポジションなのです。以上のことを踏まえて、話を進めていきましょう。
現状をしっかり理解させる
センター試験失敗後は、子どもも親も冷静さを失い、パニックに陥っていることが少なくありません。その結果、思い切った決断をくだし(いきなり受験校を一気に増やす、希望を捨てて来年に向けて勉強を始める、など)、心身ともにボロボロになっていくケースも見受けられます。
塾講師による1歩引いた視点からの的確なアドバイスが、受験生に正しい努力の仕方を教えます。
「センター試験の点数は○○点に圧縮されるから、A大学に合格するにはこの科目で△△点伸ばす必要があるね」
「ランクを下げてこの受験校を新たに受けることにしても、出題傾向が今までの勉強とは全く違うから危ないよ。それよりはむしろ、受験校を増やさずに数を絞って集中的に取り組んでみよう」
「今の点数ではギリギリだから、小論文の勉強も始めて後期日程に備えよう」
などなど、「がんばれ!諦めるな!最後まで挑戦だ!」などとただ闇雲に無責任なエールを送り続けるのではなく、現実をしっかり理解させたうえで具体的な努力の仕方を教えることが、真に生徒のためになる指導になります。特に「受験校を大幅に増やす、浪人を見据え始める」などの、賢明に見えて実はその場限りの安心にすぎない選択を取る受験生は多いので、それが間違っていると感じたら即座に修正してあげることが必要です。
学習計画を見直し、「これなら頑張れば大丈夫そう」と思わせる
生徒に正しい努力の仕方を教えるのが塾講師の役目である以上、そのアドバイスは常に具体的であり、今すぐにでも迷わず実践できるものであるべきです。学習計画を見直し、生徒が「この計画通りに勉強すれば、志望校に合格できそう」と思い、自分からその努力を始める後押しをしてあげてください。
センター試験失敗後は無気力になったり、何かと言い訳を見つけて勉強に力を入れなくなる生徒も中にはいます。具体的な頑張り方を示すことで、そんな言い訳をさせずに努力をさせ続けることが容易になります。やることは既に決まっているため、後はそれを愚直に実行にしていけば何とかなる、と早い段階で思わせるのです。忙しく勉強していれば、センター試験失敗で受けたダメージも自然と薄れてきます。例えば、部活の大会で大敗してしまった時はすごく悲しく思い、先のことが全く考えられなくなるものですが、再び日々の練習を忙しくしているうちにその心の傷が薄れてきて、状況を冷静に受け止め敗因を分析し次に活かせるようになるプロセスと似ています。
「この教科をあと何点伸ばせば合格に近づくから、そのために苦手なこの単元を克服しよう」
「この章までの内容がよく出題される傾向にあるから、重点的に取り組もう」
など、今すぐ実行可能なアドバイスをすることにより、悲しみに暮れる暇を生徒から奪うのです。
アドバイスは具体的であればあるほどよく、「何の科目を、どんなテキストを使い、いつまでに、どのくらいの点数が取れるように」まで、詳細に伝えてあげるべきです。計画を立ててあげる際には、「これなら間に合いそう」と思うような無理のない分量を指示することがコツです。
混乱して迷っている生徒を救い上げ、正しい道に戻すための手助けを、塾講師であるあなたが差し伸べてあげてください。
最後まで向き合う覚悟を伝える
ここまで、どちらかと言えば感情を抜きにして、冷静で現実的な策を提示してきました。しかしもちろん、センター試験失敗の負の感情はかなり重くのしかかり、生徒の心を押し潰しかねません。「今までの努力は何だったんだろう…」―そう思って意気消沈してしまう生徒もいます。
だからこそ、塾講師であるあなたが、「自分は最後まで一緒に戦う覚悟がある。先生も一所懸命頑張るから、最後まであきらめずに頑張ろう」と、生徒の目を見て、真剣に伝えてあげてください。誰しも経験があるとは思いますが、自分のことを気にかけてくれる人の存在はかなり大きく、とても心強いものです。受験は孤独な戦いです。
「一人で頑張っているわけじゃない、先生の応援に応えられるようしっかり頑張ろう」―そう思ってもらえたなら、もうその生徒はセンター試験の失敗から立ち直りつつあるはずです。
熱意ある応援、冷静で理論的なアドバイス、どちらか片方だけでは不十分です。両方あってこそ、生徒を失意の淵から救いだし、真に合格へと近づけさせることができるのです。
ここからの立ち直りの早さが、本試験での明暗を分けます。センター試験後の今だからこそ、自分の生徒と今一度、真剣に向き合ってみてください。