否定語の位置
否定語の意味を理解するのは簡単です。また、高校英語になると否定を表す語句が増えますが、どれも否定を表すことには変わりありません。
では、否定語において、いったい何が厄介で、何が生徒を混乱させるのか。
それは、否定語の位置です。
また、根本的な英語と日本語の違いから生まれる否定語の認識です。まずはこの否定語の位置を生徒にわかりやすく指導する方法を紹介していきます。
英作で迷うnot
どこを否定するのか
①I don't think (that)she is so talented.
(彼女にそれほど才能があるとは思いません。)
②I hope (that)it won't rain tomororow.
(明日雨が降らなければいいんだが。)
二つの文、両方を見比べてみてください。
もうお気づきだと思います。そうです。これこそが生徒があやふやにしている否定の表現なのです。どちらの文も一文に否定の意味が込められていますね。
文の最初の動詞を否定する場合
think、believe、supposeなどの主語の意思や判断を表す動詞のうしろにthet節や語句がくる場合、そのthat節や語句を否定形にするのではなく、最初の動詞を否定するのが普通です。他にはexpect、imagineもこの形をとります。
I don't expect that he will accept my offer.
(彼が私の要求を受け入れるとは思っていません。)
またseemもこの形で使われることが多いです。
It doesn't seem that he knows my secret.
He doesn't seem to know my secret.
(彼が私の秘密を知っているようには思いません。)
that節の中の動詞を否定する場合
hope<(好ましい事態)を想定する、思う>、be afraid/fear<不都合(心配な事態)を想定する、思う>の場合は、動詞の後に続くthat節を否定形にします。
I am afraid that they won't be able to get there on time.
(彼らが時間通りにそこに着くのは無理なんじゃないだろうか。)
これらが生徒が英作するときに最も減点をくらってしまう箇所であり、生徒がほったらかしにしていることです。
どれもよく使う表現ですね。that節を使わなければ言えないことはたくさんあります。それなのにせっかく使ったthat節で減点されるのはとてももったいないです。これらは動詞は決して難しいものではないので、簡単に表にまとめて生徒に書かせれば十分だと思います。
<文の最初の動詞を否定>
think |
I don't think that~ |
expect |
I don't expect that~ |
imagine |
I can't imagine that~ |
suppose |
I didn't suppose that~ |
believe |
I don't believe that~ |
seem |
It doesn't seem that~ |
ついでによく使われる例も簡単に書いてあげると実に実用的だと思います。
<that節の中の動詞を否定>
be afraid |
I'm afraid that you don't~ |
hope |
I hope that you will not~ |
否定する範囲
否定する範囲というものを受験前に必ず生徒に覚えさせましょう。これはとても重要なことですが学校では指導されません。講師の皆様で必ず理解させましょう。
①I just don't like him.(私は彼のことがまったく好きではない。)
②I don't just like him.(私は彼のことがどうしようもないくらい好きだ。)
この文を正しく訳せない生徒はたくさんいます。二つとも同じ意味に訳してしまうのが、とても多い間違いの例です。間違える生徒は、否定があるとその文の内容そのものが否定されると考えているのです。ですがそれは間違いであり、否定にもしっかりとしたルールがあるのです。では上の例文を解説していきます。
①の文では、just「まったく、完全に」がdon'tという否定表現を修飾しています。そのため否定が強められる結果になっています。
それに対して②の文では、否定語notがjust「ただ単に」を修飾しているため、「私は単に彼のことが好きだというだけではない」➡「私は彼のことがどうしようもないくらい好きだ」という意味になるのです。
notには、その文そのものではなく、notの右側を否定するという決まりがあるということををしっかりと生徒の頭に叩き込んでください。またこの決まりはnotだけでなく否定語すべてに言えます。
I scarcely know her.(ほとんど彼女を知らない)
We could barely see where we were going.
(どこに行っているのかほとんどわからなかった。)
これが理解できたなら次の文を正しく訳せるはずです。
<例題>
I don't really like my English teacher.
I really don't like my English teacher.
<答え>
英語の先生それほど好きじゃないな。
英語の先生本当に好きじゃない。
上は「本当に好き」が否定されて「それほど好きじゃない」、下はreallyが否定されず、「本当に好きじゃない」となりますね。このようにnotの位置によって意味が簡単に変わってしまうのです。次の例を見てください。
The rich are not always happy.(金持ちはいつも幸せとは限らない。)
The rich are always not happy.(いつも不幸せ。)
これは生徒たちは多分、部分否定だなんだと教わったかもしれません。私は高校の時そう教わりました。しかしそんな用語覚える必要は全くないのです。「notは右側を否定する」ということさえ覚えさせれば簡単な話です。
・必ず覚えさせること
否定語があるからといって、その内容すべてが否定されるわけではないということ
notなどの否定語はその語の右側のみを否定するということ
notは勘定にいれない
これは私が洋画を鑑賞中、字幕を見ていて気づいたことです。気づいた時は、「おいおい、こんなの教わってないよ」と思いました。なぜ字幕を見てあれ?と思ったのかは決定的な言語の違いがそこには存在したからです。
<例文>
Of course not.
A:You are drunk. you are not going to drive home, are you?
(君は酔っている。運転して帰るつもりじゃあるまいね。)
B:Of course not.(もちろんさ。)
例文はなんでもよいですが、notを加えるセンスを必ず生徒につかませてください。
英語は受け答えにおいてnotを勘定に入れないのです。
なのでof courseと受けるとnot以外の部分を受けているので、of course I'm going to drive home.という意味になってしまうのです。「もちろんしないよ」なら、もう一度notを明示しなければなりません。
これは気づいた時は驚きましたが、実際に受け答えするときは相手のnotを無視すればいいだけのことです。
生徒にもそのように指導してください。長文中、リスニング中に出てきたとき、あれ?と混乱しないようにしっかり受験前に指導しておきましょう。ではもう一例、よく試験に出てくる表現を使って理解を深めましょう。
<例文>
Why not?
A:I don't want to go to the party.
(パーティー行きたくないよ)
B:Why not?(なんで行きたくないの)
まったく同じです。日本語だと何で?で済みますが、英語ではnotを加えるのが標準的なのです。