高校英語の文法は複雑そのもの
英語で一番厄介なことは、紛らわしいものを頭の中で整理することです。
たくさんの英単語を覚えるのでさえ精一杯であるのに、さらにそれを頭の中で微妙な違いをしっかり認識し、整理しなければならないのです。
その作業を怠ると大学受験突破は難しいものになります。なぜなら、その微妙な違いこそが、各大学が問題で狙ってくるところだからです。今回は各分野につき一つ例を挙げ、その指導法を紹介していきます。
almost/nearly/barely
・almost「ほとんど~」(あと少しのところである状態に達していない)
・nearly「ほとんど~」(もう少しである状態に達しそうである)
同じ「ほとんど」の意味でも、この違いを知っている生徒は少ないと思います。同じ意味でも一つ一つの意味に隠れているニュアンスをしっかり生徒に確認させましょう。
そしてこれらのニュアンスから言えることをまとめるとそれぞれに適した表現は次のようになります。
語順において何が可能で何が不可能か
almost+not、no、none、neverなどの否定語はOk
nearlyは否定語の前に置くことが出来ない
very+almostは不可だが、very+nearlyは可。
生徒が受験対策のために何を明確にすべきなのかをしっかり考え、それを明確にさせて指導しましょう。
ただ、てきとうに違いを教えればいいというわけではありません。
違いの中でも、その中で特に何に注意すべきなのか、どのようなときに気を付けるのかを同時に生徒に伝えながら、指導してください。
先程のニュアンスの違いなんかはよく英作文の時に減点されがちです。今説明した文法の可否は誤字正誤、文法問題で頻出です。時間がなくせっぱつまっている生徒には、頻出度から言って、この文法の方を重点的に指導するべきだと思います。
では残りのbarelyはと言うと
・barely「かろうじて」(…するに足る)
I barely see that.(かろうじてそれが見える)
これは肯定的なニュアンスをもちます。では否定的なニュアンスは(かろうじて~できない)何かというと生徒のほとんどが知っているhardly、scarcelyなどになります。
文法問題で出題される代表的なものは熟語の穴埋めです。だから生徒はこのようなものをおろそかにしてしまいがちです。
このような語法問題は結構でます。mostとalmostや、eachとeveryなど、これらは英熟語の参考書ではなく英文法の参考書にあります。ですがテストでは英熟語と一緒に出題されます。そこが生徒がめんどくさくなってしまい片方だけに特化してしまう理由なのかもれません。
また、センター試験で言うと問2の部分ですね。やはり毎年熟語ではなくこのような語法で落としている生徒が目立ちます。早いうちからこの二つを並行させて勉強するように指導しましょう。授業の最初にこの手の問題を毎回一つ解かしたりしてみるのもいいかもしれません。
確認問題は必須
違いの説明を終えた後は必ず、忘れずに確認問題を解かせてください。問題が解けてこそ、はっきりとした違いがつけられていることになるのです。
<例題>「老人は危うくトラックにひかれそうになった」
An old man was very [ ] run over by a truck.
<nearly/almost/barely>
答えはnearly。very almostは不可でしたね。説明のすぐ後ならできる生徒は多いと思います。定期的にやってこそ、本当に意味のあるものです。今やった確認問題は、説明を理解したかの確認、時間をおいてやる確認問題は覚えているかの確認、どちらもできて、ようやく覚えたことになります。講師の方は時間をおいての確認問題も忘れずに行うようにしましょう。
動詞<合う>の使い分け
超頻出match/go with/suit/fit/becomeの使い分け
match=go with
matchは「<ある物の色や柄など>が<別の物>と調和する」という意味。
These cushions match this room very well.
(これらのクッションはこの部屋によく合っている。)
×A far coat doesn't match Alice.
(毛皮のコートはアリスには似合わない。)
matchの後は物がこなければならないので、人がくるのは誤りになります。
suit=become
suitは「~に似合う」の意味ではbecomeより口語的になります。また、「サイズや型が合う」という場合には使えません(fitとの混同に注意)。目的語には<人、物>どちらがきてもOKです。似合う以外の意味では知っている生徒は多いと思いますが<スーツ>、<…着>です。後者のほうはしらない生徒は多いかもしれませんね。例えば、
a gym suit =運動着
こういった使い方になります。英作などで使えそうですね。講師の方はこの表現も確認しておいてください。
ではメインで用いられるほうの例文です。
The name Violet suits that elegant cat.
(バイオレットという名は、あの優雅な猫にぴったりだ。)
fit
fitは「<サイズ・型>が~にぴったり合う、一致する」という意味になります。
Tom's new coat doesn't fit him.
目的語は人です。
(トムの新しいコートはサイズが合っていない。)
単語 |
目的語 |
match=go with |
物(主語も物) |
suit=become |
人、物 |
fit |
人(サイズや型がぴったり合う) |
イコールなものでまとめられるものはまとめるように指導しましょう。また、この単元では目的語に何をとるか、それとfitとsuit=becomeの意味の違いを特に生徒にはっきりさせましょう。
<確認問題>
As I have gained weight, my clothes don't < > me.
[suit/match/fit]
答えはfit。suitとfitで迷わなかった生徒にはもう一度一から説明してください。目的語にme(人)がきてる時点でmatchは選択肢から消せます。問題はfitとsuitです。この人は太ったと言っているので柄が似合っていないという話ではなく、サイズや寸法が合わなくなったという話であると推測できます。よって答えはfitになるのです。
訳<私は体重が増えたので服のサイズが合わない。>
英語では、一つの意味に複数の単語が存在することがあります。目的語などによって使い分けなくてはいけないのです。他に代表的なものと言えば「借りる」でしょうか。数はそうありません。指導の手順としては、
同じ意味の単語をとりあえず並べる。
⇩
その後に来る目的語と共に分ける。
⇩
特に紛らわしいものを問題で解かせ、確実に覚えさせる。
as far asとas long as
このふたつもまた、狙われやすい箇所であり、生徒が混乱してしまう熟語の1つです。では、簡単に一つ一つの意味を見ていきましょう。
as far as
=前置詞語句として<~まで>
接続詞として「~と同じくらいまで」
「~の及ぶ限りでは」
<例>
as far as the eye can see[reach]=見渡す限り
as far as I am concerned=私に関する限りは
as long as
=前置詞語句として<~もの間>
接続詞として「~する限りは」
「~さえすれば」
<例>You can go out as long as you are back before noon.
=正午までに戻ってきさえすれば、外出してもよい。
これらがごっちゃになってしまうのは講師が生徒にすべて教えようとするからです。このような意味や使い方がたくさんあるものは、削るべく所は削り、しっかり覚えるべきところは覚える、熟語の入試頻出度を理解している講師の方だからこそできるものです。
というよりこのようなことが指導できなければ講師の存在の意味がありません。熟語帳全部覚えればいいわけですからね。ですがそれが出来ないから生徒は塾に来てるのです。文法のぶ厚い参考書を何十回も読めば簡単に文法は完璧にできます。
ですが、それが出来ないから塾に来るのです。生徒は全部覚えるということを嫌います。なぜならたくさん覚えて、その部分がでなかったら時間の無駄であったと感じるからです。まあ、単に忍耐力がないというのもあると思いますが。だからこそ経験のある講師の皆様が、今までの経験から分析し、覚えるべきところとそうでないところを見分け、指導するのです。
講師の皆様でもぶっとい文法の参考書を眺めているとき、こんな表現あるんだと目が点になることがあると思います。
参考書に書いてあることが全部が全部出題されるわけではないということは講師の方は理解していると思います。上の熟語を指導するとすれば上のまま生徒にノートに書かせるだけではただ単に熟語帳の写しにすぎません。もっとシンプルにまたいらないところは削ることが出来るはずです。
(例)接続詞
as far as |
距離の限界や程度の範囲(~の及ぶ限りでは) |
as long as |
条件(~でありさえすれば) |
<例文>as far as the eye can see=見渡す限り
as far as I am concerned=私に関する限り
<例文>You can go out as long as you are back before noon.
=正午までに戻ってきさえすれば、外出してもよい。
肝心な所を表でまとめます。、またこの用法は前置詞としても使えますが、例文からも分かる通り、接続詞として使われるのが主なので接続詞として覚えさせてしまってよいでしょう。
それから例文は絶対に忘れないで下さい。例文をつけるだけで実際にどのように使われているか、逆にどのように使えばいいのかがわかります。「私の知っている限り」などの表現も例文を少し変えるだけで簡単に表現できます。
<例題>下線部での誤りはどこか
I don't care if we ①have to stand here all afternon,② as far as we ③get to see the princess when she ④comes out.
実際はこのような形式で出題されることが多いです。実際に出る確率の高い出題の形式を用いて確認問題をするととても効果的です。これは意味的に<~でありさえすれば>条件のas long asが適切ですね。
文法を授業中指導する中で熟語や慣用表現を指導しなくてはいけないことも出てくると思います。そんな時、テキストに線を引いて終わりにするのではなく、自分の経験に基づいて、よりわかりやすくシンプルにし、例文などを用いて実践でも使えるぐらいにさせましょう。
熟語、単語は覚えるもので、指導する講師の方は少ないと思いますが、紛らわしいもの、複雑なものなどは指導範囲になりうるということを覚えておいてください。