どう教える!? 地学の難問
講師の皆様こんにちは!
前回は地震の基礎理論について扱いました。
(参考:http://www.juku.st/info/entry/1140)
今回は地学分野の中でも、頻出の
・地震の計算問題
・地層の傾きを等高線から読み取る問題
の2点について、
どうやれば生徒が理解できるのかを
考えていきたいと思います。
特に生徒がやってしまう失敗
地学=暗記分野さえできればよい、
と思っている
地震の計算問題を見た瞬間、飛ばしてしまう
地層の傾き問題の解法を知らない
このあたりは中堅~難関中高に
頻出のテーマです。
多くの場合、堆積岩や火成岩は
自力で勉強しやすい為、
あまり差がつきません。
ですが計算問題や空間把握を必要とする問題は、
極端に差がつくテーマになります。
生徒には
“全問取れなくてもいいが、
捨てずに喰らいついていく”
と伝えてあげてください。
その1問が受験の合否を分けることに繋がります。
授業で伝えるべきポイント及び伝え方
地震問題の基礎知識
最初に、地震の計算問題に絡めて出題される、
基礎知識を確認しておきましょう。
・震源と震央
地震の発生した場所を震源、
その真上の地表面の地点を震央と言います。
この2つの違いを説明できない生徒が多いので、
授業のたびに質問してもよいでしょう。
・P波とS波
P波=primary wave(最初の波)
S波=secondary wave(2番目の波)
という意味です。
P波とS波は震源で同時に発生しますが、
P波のほうが早いことを伝えてください。
P波は固体・液体・気体すべてに伝わりますが、
S波は固体しか伝わりません。
(そのため、船や飛行機に乗っているときは
P波のみ伝わることになります)
・初期微動と主要動
P波は初期微動、
S波は主要動を引き起こします。
S波の方がP波に比べエネルギー量が大きい為
揺れが大きくなることに注意してください。
このP波とS波は速度が違うため、
揺れが小さい時間(P波は届いているが、
S波が届いていない時間)があります。
これを「初期微動継続時間」と呼びます。
難しいですが、これはすべて
漢字で書くように指導しましょう。
・緊急地震速報
P波とS波が来る時間に
差があることを利用した、
地震の発生を知らせるシステムです。
注意してほしいのは
“地震予知”ではないこと。
そのため、被害が大きくなりやすい震央付近では
あまり役に立たないことが難点です。
・地震の伝わり方
地震は波ですから、
同心円状に伝わっていきます。
よって、震源に近いほど震度が大きく、
初期微動継続時間が短い
ということになります。
但し、地盤の固さによっては
一部地域において、
大きな揺れが発生することもあります。
「どうして等震度線は
きれいな円にならないのかな?」
と生徒に質問し、考えさせてもよいでしょう。
地震の計算問題
では、いよいよ地震の計算問題を扱います。
例題から考えていきましょう。
(例題)
以下の図を見たうえで、設問に答えなさい。
但し、P波の速度を8km/s、S波の速度を4km/sとする。
(1)最初にある、弱い揺れの名前を答えよ。
(2)最も強い揺れを引き起こす原因の波の名前を答えよ。
(3)震源からB市までの距離は何kmか。
(4)震源では何時何分何秒に地震を観測したか。
(5)240km離れたC市では、最初の揺れは何秒間続いたか。
【解答】
(1)初期微動
(2)S波
最初の揺れは初期微動でP波、
一番大きい揺れは主要動でS波です。
何を問われているのか、
よく判断して解答するように指導しましょう。
(3)
A市、B市の初期微動が
始まった時間に注目します。
A市:12:05:00
B市:12:05:10
であることから、P波が10秒到達するのが
遅れていることがわかります。
よって、8×10=80km、
A市よりも離れているため
80+80=160kmであることがわかります。
(4)
震源では地震と同時に
初期微動が始まっていたはずです。
ですから、80kmのA市よりも
80÷8=10秒分だけ
早く地震が始まっていることがわかります。
よって答えは12時4分50秒となります。
(5)
初期微動継続時間を問うている問題です。
この時間は比例関係にあることから、
以下の式が成り立ちます。
80km:240km=10秒:□秒
よって、□=30秒とわかります。
以下の図を板書するとよいでしょう。
地層の傾き
「ボーリング調査の問題」を解けない生徒は
たいへん多く、いつも質問されるテーマです。
その最大の理由は、
テキストに解法が図示されていないためです。
(きちんと説明するためには、
多くの図を必要とするため、
説明が省略されてしまっているのです)
ですがこの問題には、特有の解法をあります!
これを理解して頂き、かつ生徒に効果的に
教えるテクニックを伝授してまいります。
(例題)
それぞれの地点でボーリング調査を実施したところ、以下のようになった。
(問題の都合上、凝灰岩以外の層は白塗りにしてある)
これを見て、次の問いに答えなさい。
(1)地層の傾きはどのようになっているか。
(2)D地点を掘ると、何mから凝灰岩の層が見つかるのか。
※ただし、この地層には凝灰岩の層は1つしかないものとする。
(3)なぜ凝灰岩に注目して地層の傾きを調べるのか。
【解き方】
ボーリング調査の問題で、
真っ先にやらないといけないこと。
「標高(海抜)を図に書き入れる!」ことです。
この作業を生徒には
徹底させるようにしてください。
次に、そこから下に順を追って
標高を書き表していきます。
ただすべての地層に
数字を書き入れると大変です。
ですから、設問になっている地層に注目して、
そこだけ標高を書くように教えましょう。
(完成図では青でしています)
これで地層の傾きがわかるようになります。
例題を見てみると、A地点とB地点は
同じ80mの海抜に凝灰岩の層がありますから、
東西方向には傾きがないことがわかります。
対してA地点とC地点では
10mの違いがあるため、
南北方向には傾きがあることがわかります。
また、C地点のほうが高いことから、
北の方が高く、南の方が低いことも
ご理解頂けると思います。
生徒によっては地層が傾いている、
という事実自体が理解しにくいこともあります。
そこで、講師が下敷きや黒板消し、
ノートなどを用いて、全員がわかるように
視覚化してあげると理解が深まります。
また、黒板の端に以下のような
図を書いてあげることも有用です。
ぜひ試してみてください。
なお、強調してお伝えしたいのですが、
ここで諦める生徒を撲滅することが講師の役割です。
諦めてしまう理由は
「解法がわからない」と思い込んでいるから。
これをなくすためには
「問題を解く手順をパターン化してしまう」
テクニックが有効です。
ボーリング調査の問題は、
実はパターンで解くことができます。
ぜひ”何も考えずに”反射で”
海抜を書きいれるよう、お伝えしてください。
ちなみに、
「どうして標高線の高さを使って
地層の傾きを考えてはいけないの?」
と聞かれることがあります。
これは、標高の差がどのような原因で
起こったのかわからないためです。
しゅう曲でできたのか、
積み重なってできたのかがわからない以上、
もっと深いところ(=過去にできた層)で
地層の傾きを判定することになります。
【解答】
(1)
東西方向には傾きはないが、
南に向かって傾きがある。(北の方が高い)
(2)
D地点はC地点と東西方向が同じであるため、
凝灰岩の層が海抜90mの地点に
あることがわかる。
(東西には傾きがないため)
しかし、D地点はC地点に比べ、
10m海抜が高いことがわかる。
よって、140-90=50mであることがわかる。
※C地点では40m地点から
凝灰岩の層が見つかることから、
40+10=50mと考えてもよい。
(3)
噴火がめったに起こるものではなく、
普通凝灰岩の層は一層しかないから。
あるいは
凝灰岩の層は広い範囲に分布した
特徴ある岩石の層であるから。
なお、設問になりやすい地層は
「化石が含まれている層」か
「凝灰岩の層」です。
理由は、ボーリング調査の問題で主題される
100m分ほどの調査において、
一層しか現れない可能性が
極めて高いからです。
最後に
さて、ここまで解説すれば
問題はほとんど解けるように
なっていると思います。
そのあとは、必ず生徒に時間を与え、
実際に手を動かしてもらいましょう。
自分の力で難解な問題を解くことができた!
という達成感を与えることは、
生徒のモチベーションを上げることになります。
加えて、
(特に優等生タイプの子に多いのですが)
理解して終わり、とならないよう
注意してあげてください。
理解することと解けることは違います。
計算問題や空間把握問題は、
類題をたくさん解いて
はじめて解けるようになるものです。
ぜひ、その点を強調してあげてください。
地学編はいったん本記事で終了となり、
次回より「植物編」に入ってまいります。
引き続きのご愛読、よろしくお願いいたします。
まとめ
地震の計算問題は、
比を使って解くことができる
地層の傾き問題では、必ず標高を書き入れる
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