植物テーマを扱うときに、絶対に知っておくべきことは2つ!
講師の皆様こんにちは!
今回より植物の最強指導法について、連載形式で扱ってまいります。
各論に入る前に、今回は
植物分野はどうやって教えればよいのか
中学受験で植物分野はどのように出題されるのか
についてお伝えしてまいります。
植物テーマの教え方
植物は比較的興味を持ってもらいやすい
「植物」は理科の中でも、比較的動機づけがしやすいテーマです。
多くの生徒は小さい頃から公園などで遊んだことがありますし、学校でも“生活”という科目で、植物について取り扱っています。
今日は植物について勉強するよ!と伝えると、喜んでくれる生徒はたくさんいます。
ですが、これが勉強となると話が違ってきます。
特に課題になるのは二か所。
一つは、実験考察問題やワセリンの計算問題など、一見複雑に見える問題への対応。
もう一つは、丸暗記の量が多い部分への動機づけです。
この対策として有用なのが、「学術的興味への誘導」です。
以下に私が使う、いくつかのキーフレーズをご紹介します。
植物は身近な生き物だけど、詳しいことは何も知らないよね?
なんで葉っぱが緑色なんだろう?
どうして秋になると葉っぱが赤や黄色になるんだろう?
タンポポは綿毛がある理由はなんだろう?
植物は水をあげないと枯れるのはなぜ?
そんな一つ一つの疑問を、きちんと授業では扱っていきます。
だから休まずに、楽しみに授業にくるんだよ!
…いかがでしょうか。
ポイントは“身近な現象”を“学術的興味”に変えるために、素朴な問いかけを繰り返すことです。
1つなら辞書などで知っていることがある生徒がいても、複数の質問を連続的に問いかけると、答えられることはほぼありません。
ここから「知りたい!」と思わせることができれば、授業の導入は成功です。
また、裏ワザとして「食べ物から入る」ことも良いアイデアだと考えています。
嫌いな食べ物を言ってもらい、そこから動物がどうして食べ物(植物)をえり好みするのかを考えさせると、面白いでしょう。
ハイコースであれば、食物連鎖の話や人体に絡めると、生徒の好奇心を更に刺激できますよ。
(かつて、この話を聞いた後、”自分の好き嫌いが合理的である!”と主張するために、自由研究で20枚も作文を書いてくる小学3年生がいました!)
観察から入ることを強調する
先述したように、植物は非常に身近なテーマです。
ですが、きちんと自然を“感じている”生徒は、近年少なくなっていると痛感しています。
例として、以下のようなケースが挙げられます。
・朝、朝顔が咲いている姿を見たことがない
・紅葉をテレビでしか見たことがない
・ドングリを割ったことがない
・スーパーで買ってきた野菜を、自分で調理したことがない
塾にくる生徒たちは、基本的にはまじめに勉強すること=良いこと、と家庭で教えられています。
すると、生徒の一部は勘違いして「勉強さえやっていればよいんだ!」と思ってしまうのです。
その結果として、自然に興味を抱くのではなく、辞書に載っている情報だけを読んで、わかった気になってしまっているのが現状です。
この傾向は受験校でも危惧しており、入試問題に変化がみられるようになってきました。
具体的には「きちんと観察したことがないとわからない」質問が増えてきたのです。
(例)
1、アブラナはだいたい、どれぐらいの高さまで成長すると思うか。
2、タンポポの花の形を記述せよ。
3、アサガオの種の大きさを実寸大で書きなさい。
このような問題は、テキストに答えが載っているわけではありません。
ですが実際に自然に触れ合っていれば“なんとなく”わかるものです。
従って、体験から答えを導く問題が増えていることを、講師側も知っておくとよいでしょう。
個人的には、細かい知識ばかりを丸暗記しなくても、得点しやすくなったことは良い傾向だと感じています。
暗記科目ではあるが、理論を知っていると暗記速度が全然違うことを伝える
最終的に植物は丸暗記が必要な部分がどうしてもでてきます。
そしてその時に、過度な説明はしないほうがよいでしょう。(植物名一つ一つの意味付けを考えさせることは、基本的にお勧めできません)
なぜなら、私たち塾講師は受験対策として講義するのであって、雑学博士を生み出すためではないからです。
もちろん興味を持ってもらうことは重要です。
ただ、それを深掘りするのは“生徒が自ら学習してきた場合”に限ってください。
講師は限られた授業時間を通して、生徒の学力(得点力)を上げなければなりません。
そのため、どうしても丸暗記が必要な部分が出ることを、最初に伝えてあげるとよいでしょう。
加えて、授業を聞いてから覚えるほうが、家で黙々と解いて覚えるよりもいかに効率的か、きちんと説明してあげましょう。
すると、生徒が「自宅でやること=暗記」「授業でやること=理解」ときちんと分けて考えることができるようになります。
中学受験での出題形式
では、中学受験での出題方法を見ていきましょう。
最初に全体的な特徴について触れたのち、問題別に重視しなければならない指導ポイントをお伝えしていきます。
全体的な特徴
・身近な生物観察問題が多く出題される
高校受験・大学受験と比べ、より観察を重視した問題が出題されます。
これは、ただ教科書・参考書だけでまじめに勉強した生徒よりも、実際に好奇心を持って観察できる生徒を欲している証拠でもあります。
そのため、講師は常に身近な植物に注意を払うよう、指導する必要が出てきます。
・幅広く知識が出題される
季節に絡めて、幅広い知識が出題されることも、中学受験の特徴です。
例えば、春に絡めて以下のようなテーマをつくることができます。
・さなぎで冬を越した昆虫について
・ツバメ等、渡り鳥について
・桜や梅の開花前線について
・なぜ春になると気温が上昇するのか
・温度や気温によって変化する開花条件
・ヘチマの育ち方
見ていただくと分かる通り、植物のみならず気象や動物など、複数の単元に広く出題されることがわかります(特に、昆虫がここまで出題されるのは中学受験だけの特徴です。)
ですから、授業では出題分野に合わせた関連知識を膨らませることを心がけましょう。
1、知識を確認する問題
あまり偏差値が高くない学校では、知識の確認問題が頻出です。
植物の分類や名前、部位の名称などは確実に覚えるように指導しましょう。
知識定着を促進するために、ドリル形式の課題も有効です。
また、ここで点数が悪い生徒は強く叱ってもよいでしょう。
(学力的に十分高得点が取れる範囲を指定しているにも関わらず、低い点数である場合に限ります)
2、典型的な実験問題
知識だけでは差がつかない、中堅校で頻出のテーマです。
具体的には
・太陽の動きと季節の関係性(日照時間含む)
・大豆種子と石灰水を使った呼吸実験
・アルミニウムはくとヨウ素液を使った、光合成に光が必要であることを確かめる実験
・ワセリンを使った蒸散量の計算問題
・対照実験を用いた発芽観察
・長日植物と短日植物について
・光合成の応用(光飽和点、補償点など)
などが挙げられます。
いずれも、多くの塾教材に掲載されているテーマです。
きちんと授業で取り扱えば、多くの生徒は理解してくれますので、理解を促進させる授業を心がけましょう。(光・てこのように、複雑な問題はあまり出題されません。)
また、類題演習を通じて、パターンに当てはめることができるようにしましょう。
3、その場で考える問題
難関校を中心に、受験生の多くが見たことがない・知らないデータを用いて、その場で考えさせる問題が出題されることがあります。
例としては、2014年の明星中学校の問題が挙げられます。
※ 著作権上、そのまま問題を掲載することができないため、参考URLよりご覧ください。
問題と解答:http://www.nichinoken.co.jp/column/shikakumaru/2014/1410_ri.html
また、社会問題の解決法を考える、他教科との融合問題も設定されることがあります。
いずれも既存知識があまり役に立たない難問です。
さて、私たち講師はどのように教えればよいのでしょうか。
答えは、問題の読み取り方、そして設問者の意図を考えさせることです。
中学入試問題は高度すぎる、と批判されることもありますが、実は問題のヒントが、文意から読み取れる(=予め提示してある)ように作問されています。
つまり、きちんと問題文を読み取り、その問題に対し自分がどのようなアプローチ(考え方)ができるのか、を問うているわけです。
(コンサルタント入社試験で見られる、ロジカルシンキングやフレームワークに近い考え方です)
もし、お読みいただいている方がハイレベルな生徒をご担当される場合は、テキストの内容を教えたり、解答を示すだけでは不十分です。
どこに着眼すればよいのか、そして何を意図してこの問題は作られているのか。
その背景を伝えながら、演習を繰り返すことで、着実に成績は伸びていきます。
今回は植物分野の全体像をお伝えしました。
単に暗記すればよい、というテーマではないことがご理解いただけたのではないでしょうか。
次回より、一つずつテーマごとに、わかりやすく指導のポイントをお伝えしてまいります。
まとめ
植物への純粋な興味を、学術的興味にまで昇華させるのが講師の仕事である
受験に出題される分野に的を絞り、関連知識に触れる授業を展開するとよい
問題難易度により、教え方を変える必要があることに留意する
【併せてお読みいただくと効果的な記事】
・理科とはどのような学問か
http://www.juku.st/info/entry/657
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