ポイントを絞って「季節の特徴」を教えよう!
講師の皆様、こんにちは!
“中学入試ならでは”といえる、観察を中心としたテーマも3回目。
今回は「季節による植物・動物の変化(夏~冬)」です。
※「特に生徒がやってしまう失敗例」は春とほぼ同じであるため、省略いたします。
→理科の最強指導法20 -植物編- 「季節の特徴(春)」も参考にしてくださいね。
授業のポイント・伝えるテクニック
夏の植物・動物
草本類の様子
夏は植物にとって、養分を作るのに絶好のシーズンです。
なぜなら
- 梅雨の間に多くの水分を得ることができる
- 日照時間が長く、気温も高い
という特徴があるためです。
(ここはぜひ生徒に答えさせてくださいね)
そのため、どの植物も競うように茎を伸ばし、葉を広げていきます。
(参考)葉の付き方
少しでも効率的に光合成を行うため、葉はふつう規則的についています。
つき方により、以下の3種類に分けることができます。
ハイコースなら具体的に扱いますが、ミドルコース以下であれば“植物の葉の付き方は工夫されている”とだけ伝えれば十分です。
互生:葉が左右互い違いについているもの。一番ポピュラーな形です。
対生:2枚の葉がひとつの節に向かい合っているもの。カエデが代表的です。
輪生:3枚以上の葉がひとつの節につくもの。クルマユリが代表的です。
こちらのサイトに、図表が掲載されています。
また、この時期に花を咲かせる植物は覚えさせましょう。
入試対策上はアサガオ、ヒルガオ、エノコログサ、ヒメジョオンが重要です。
※アサガオは初夏です。春と勘違いする生徒がいますので注意!
ヘチマ
アサガオと並んで、学校でほぼ確実に育てる植物であるため、入試に良く出題されます。
その特徴を見ていきましょう。
ヘチマはアサガオと同じつる性植物ですから、支柱を立てることが必要になります。
また、茎ののび方と気温の関係性もアサガオと同様です。
以下の3点を、できれば図表や資料集を使って確認しましょう。
- 茎の先に成長点があるため、先がよく伸びること
- 晴れていて、気温が高い日ほど良く伸びること
- 昼に比べ、夜のほうがよく伸びること
続いて、ヘチマとアサガオの違いを扱います。
最大の違いは「完全花か不完全花か」という観点です。
アサガオは自家受粉可能な完全花ですが、ヘチマは雄花と雌花に分かれている不完全花です。
用語の復習も含め、しっかり扱いましょう。
なお、ヘチマの用途=たわし、と教わった講師の方も多いかもしれませんが、
今は日よけを目的としたカーテンに使われることの方が多いです。
(暑さと強い日差しに強く、生育が早いため)
「ヘチマの用途はたわしだよ!」というのはもう古い考え方ですので、言わないようにしましょう。
樹木の様子
草本類同様、最も光合成が盛んにおこなわれる時期です。
そのため、新しい枝を伸ばし、濃い緑の葉を繁らせています。
(参考)茎が長い=進化している、とは限らない!
ここで生徒に聞いてみると面白い質問があります。
それは「茎が長い植物ほど、進化しているのか?」という問いです。
実はこの答えは未だにわかっていません。ですから、生徒の“答え”に意味はありません。
しかし、自分なりに考え、理由をわかりやすく説明する力をつけさせる問いとして好適です。
ぜひ時間に余裕があれば、扱って頂きたいと思います。
ちなみに、私が実際に聞いた生徒たちの意見は以下の通りです。
進化していると考える理由
・光合成に有利になるから
・茎が長く、太い植物ほど、寿命が長くなる可能性が高いから。
進化していないと考える理由
・裸子植物は樹木(≒茎が長い)が、進化論的には古いと考えられているから。
・茎を伸ばすだけだと、乾燥や寒さへの抵抗力が弱まるから。
中には奇想天外な生徒の意見も出てきますが、頭ごなしに否定せず、ぜひ“考える訓練”をここで積ませてあげてくださいね。
なお、つる型植物は茎を極端に発展させた形であり、その対極にロゼット型(タンポポやオオバコなど)が挙げられます。
最後に、ダーウィンの名言である
「強いもの・賢いものが勝つのではなく、変化できるものが生き残る。これは植物も、君たちも同じだよ」と言って締めてあげるとよいでしょう。
動物の様子
春にお伝えしたとおり、変温動物は夏が最も多く活動しています。
ですから、夏は成長をして、交尾・産卵の秋に備えていく時期になります。
入試対策としては、
テントウムシ・バッタ・コオロギ・カマキリ・カブトムシの成虫を、
大きさとともにイメージできるようにするとよいでしょう。
※チョウは春から秋まで、ずっと卵から成虫までの流れを繰り返していることに注意!
温度が高いからこそ、早く成長できる”夏”ですが、
温度が高ければ必ず良い、ということはありません。
あまりにも高すぎると、
- 病気になりやすくなる
- 黒い体色の動物や表面積の小さな動物などは、昼間の直射日光で体温が過剰に上がってしまいやすい
といった欠点もあります。
加えて明るい昼間は天敵にねらわれやすく、捕食されやすい動物にとって危険が大きくなります。
そのため、少し涼しくなる、夕方~朝にかけて活動する夜行性生物がいるわけです。
カブトムシやカタツムリなど、
その代表例を交えながら、夜行性のメリットを伝えてあげるようにしましょう。
(参考)寒い地域ほど体が大きくなる?
実は同じ種類の動物でも、寒い地域ほど体が大きくなることが多いです。
これは、体重と表面積の関係が挙げられます。
寒いところで暮らす動物は、体温を維持することがとても重要になります。
なぜなら体温が低くなると、生命維持に必要な酵素反応が行われなくなってしまうからです。
(更に詳しく知りたい方は、酵素の最適温度について調べてみるとよいでしょう)
そこで、寒い地域では体を大きくしていくことで、体積当たりの表面積を小さくするように進化していきました。生徒には1cmと2cmの立方体の図をベースに、以下のように説明してあげるとわかりやすいでしょう。
|
表面積 |
体積 |
体積当たりの表面積 |
10cm |
10×10×6=600㎠ |
10×10×10=1000㎤ |
1.67倍 |
20cm |
20×20×6=2400㎠ |
20×20×20=8000㎤ |
3.33倍 |
これらの現象は、ベルクマンの法則(アレンの法則)と呼ばれています。
先ほど記述した「表面積の小さな動物などは、昼間の直射日光で体温が過剰に上がってしまいやすい」理由を説明するときに、この法則を用いると生徒の理解が促進されます。
ぜひ取り入れてみて下さいね。
秋の植物・動物
草本類の様子
涼しくなってくると、多くの草本類は実や種をつくり、冬越しの準備に入ります。
しかし、中にはあえて秋に花が咲く植物もあります。
(春から夏の間に十分に成長し、
秋になってから花を咲かせても寒くなる前に種子を作ることが可能だから、
と考えられています)
その代表例としてコスモス、キク、キンモクセイは最低限、覚えてもらいましょう。
樹木の様子
樹木は「落葉樹」と「常緑樹」に分けて考えます。
落葉樹(サクラやイチョウが代表的です)では、
葉柄と茎との間に“離層”と呼ばれる層が形成されます。
これが茎と葉の物質交換を阻害することで、葉の分解がすすめられます。
ここで必ず教えてほしいことが1点。
それは、紅葉(葉が赤く色づくもの)と黄葉(葉が黄色く色づくもの)は全く違うメカニズムで色づくということです。
紅葉:葉が分解される過程で、糖とアミノ酸から赤色色素をつくる
黄葉:葉に最初から黄色色素が含まれている。夏には葉緑体が多いため緑に見えるが、葉緑体が分解されるに従い、黄色が目立って見えるようになる
また、落葉する理由として、
- 蒸散量を減らし、水を節約することができる
- 葉を維持するエネルギーを削減できる
- 落ち葉が腐葉土の元となり、自らの成長を助ける
の3点を抑えておきましょう。
常緑樹はマツやスギのように、1年中緑の葉をつけています。
あまり入試に出題されることはありませんので、割愛してもよいでしょう。
動物の様子
秋になると昆虫は交尾するため、活発に動くようになります。
よく出題されるのが「鳴く昆虫」。
スズムシやコオロギ、キリギリスが代表的ですね。
いずれも鳴くのは「オス」ばかりであること、
目的はメスをおびき寄せるためであることを必ず確認しましょう。
なお、卵で冬越しをする生き物は、10月になると卵を産み、死んでしまいます。
春で扱ったツバメは、9月頃に再び暖かいところ(南)に飛んでいきます。
代わりにハクチョウやカモなど、冬鳥と呼ばれる渡り鳥が来ます。
冬鳥は寒さを求めて日本に来るわけではありません。
あくまでも“暖かいところ”を求めて、
シベリア半島など日本より寒いところから、北海道などにやってきます。
生徒は「夏鳥と冬鳥は正反対=夏鳥は暖かいところ、冬鳥は寒いところを求めている」
と勘違いしやすいので、注意しましょう!
まとめ
春と同様に、植物と動物を分けて説明すると分かりやすい
植物をテーマに、答えを想像できる問いを出すことができると、生徒の想像力を刺激できる
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