天体運動の授業:実況中継第5回!
年周運動の第3回に入ります。
地軸の傾きと季節の変化という分野で、太陽の南中高度を求める問題の解き方が中心となります。
難しい問題が多いのが、この分野の特徴です。
最終的には「ここをこうやって覚えておけばいいんだよ!」という形でまとめます。
ただ、そこに至るまでのプロセスとして、少なくとも講師の側は内容を理解しなければいけません。
図表をたくさん用意しましたので、適宜ご活用ください。
【中学理科授業の実況中継でわかりやすく解説】シリーズ
★日周運動の授業★
★年周運動の授業★
地軸の傾きと季節の変化
公転面と地軸の傾き
まず、テキストを見てみよう。図1を見てくれ。
図1
地球は太陽の周りを回っているんだった。その運動を何というんだっけ?
→生徒「年周運動!」「違うよ、公転だよ!」
「1日1周運動」「1年1周運動」のインパクトが強烈なのでしょう。またここで「運動」という言葉を使うときれいに引っかかってくれます。場合によっては、軽く復習します。
はい、公転だよね。
春夏秋冬、と地球が太陽の周りを回っている様子を表したのがこの図だ。
この公転によって季節が変わることをまず勉強するよ。
で、テキストに「公転面」って言葉が出てくるよね。
でも、公転面って何だ?という説明は載ってないんだな。
太陽の周りを地球が公転するときの公転軌道を含む平面を公転面っていうのね。
ま、図1に書いてあるところが公転面だ。
公転面のことをきちんと説明したテキストは、自分は見たことがありません。さらっとでも説明すると、生徒は納得します。要するに、図1の灰色の部分が公転面だと分かれば十分です。
図2
さて、図1を赤い矢印の方向から見た図が図2だ。
春と秋の地球は重なって見えるということにしよう。
で、地軸って言葉が実は以前に出てきたんだけど、誰か覚えてる?
→生徒「なんか、北極から伸びた棒みたいな?」
こんなリアクションでも返ってくればOKですね。
そう、きちんと言うならば、北極と南極を結んだ線を伸ばしたものだよね。
図2にも地軸が書いてあるわけだけど。
で、テキスト確認。「地軸の傾き」について書いてあるよね。
地軸は公転面に立てた垂線に対して約23.4°傾いている、とね。
ここは丁寧に説明した方が良いところです。
図3
図3を見て。図3は図2から春と秋の地球を消したものだ。
地軸はわかるよね。公転面がどれかもわかるね?
公転面に立てた垂線、というのは、公転面に垂直な線、ということだ。
図3だと点線だ。
この点線と地軸の間の角度が、23.4°なんだな。
この数字は覚えとく。
2・3・4だから覚えやすいよね。
ちなみに、90°から23.4°を引くと、66.6といういわゆる「悪魔の数字」になる。
場合によってはここで少し脱線します。
地軸の傾きと季節の変化
さて、この地軸の傾きのせいで、季節が変わるんだな。そのことを説明するよ。
まずは夏と秋だ。
図4
図4は、AとBの地球に赤道を引いたんだ。
うん、ここで突然AとBに変わるんだ(笑)。
すると、Aの地球では、北半球と南半球のどちらにたくさん光が当たっているかというと?
→生徒「北半球!」
そういうこと。
図5と比べてみるとわかりやすいかも。
図5
図5は、もしも地軸が傾いていなかったら、という図なんだね。
それに比べると、図4では、Aの位置では北半球の方が太陽の方に傾いているよね。
だから、図4のAの位置では、北半球にたくさん日が当たって夏になる。
反対に、図4のBの位置では、北半球は太陽から遠ざかるように傾くから、あまり日が当たらない。
だから冬になる。
では、南半球ではどうなるかというと?
→生徒「逆になる!」
ね、そういうこと。
だから、オーストラリアのサンタクロースは、アロハシャツ着てサーフィンやりながら登場するらしいよ!
→生徒(笑)
さて、春と秋はどうなるのか。
ちょっと、地球や太陽の話とは離れるけど、図6を見て。
これわかるかな?
図6
実際に、ペンでも棒でも使って、「横から見ると点になる」ということを示してください。
じゃあ、図7、わかるかな?
図7
この3本の線を、矢印の方向、紙の真横から見たら、3本とも同じように見えるんだけど。
これも、実際に実演してみるといいかと思います。生徒は面白がってくれます。
では、図1を冬の地球の方向から(青の矢印から)見た図が図8だ。
図8
こうなるの、ぴんとくるかな?春と秋は太陽の光の当たる量は同じになるってこと。
わからない生徒は、本当にわからないようです。理科が得意な生徒の中にも、ここが納得いかない生徒がいたりします。なので、場合によっては軽く触れるにとどめ、結論をしっかり覚えさせればよいと思います。
夏と冬は、それぞれ太陽の方に傾いたり太陽から遠ざかるように傾いたりするから、光の当たり方が変わった。
春と秋は、どちらも太陽の方には傾いていないでしょ?だから、光の当たり方は変わらない、という理解で大丈夫だよ!
え!まだ不満かい(笑)
じゃ、これでどうだ。
図9を見てくれ。
図9
左は、図5のとき、地軸が傾いてないときの地球だ。
地球に顔を書いておいた。
右は図3のとき、地軸が傾いているときの地球だ。
この地球の顔に当たる日光の量は同じでしょ?
だから、春と秋の位置では地軸が傾いていようといなかろうと、地球に日光の当たる量は変わらないんだ。
え、かえってわからなくなったって…
ほどほどのところで切り上げるのが良いと思います。普段の授業ではここまでやりません。
太陽の南中高度
ポイント
さて、太陽の南中高度です。
これについては、結論としては、
春分の日・秋分の日 90°-緯度
夏至の日 90°-緯度+23.4°
冬至の日 90°-緯度-23.4°
これを覚えさせればOKです。
南中高度の公式の覚え方
まず、春分の日と秋分の日を覚える。
イメージしてくれ。
緯度というのは図10のように求める。
図10
すると、北極は北緯何度?
生徒→「90°!」
赤道はどうかというと、北緯なのか南緯なのかわかんないけど、とにかく0°だよね。
春分の日と秋分の日の赤道と北極の南中高度を考えてみる。
北極は90-90=0 ということになって、太陽は昇らない。地平線のあたりを一周して終わるんだ。
(生徒ざわめく)
四谷大塚の予習シリーズ理科5年によい写真が載っていました。が、著作権の関係で掲載できませんので、紹介のみにとどめます。
じゃ、赤道は?
生徒→「90°-0°=90°?」
そうなんだよね。こんな感じ。
図11
で、この南中高度の公式を覚えるわけ。
春分の日・秋分の日 90°-緯度
夏至の日 90°-緯度+23.4°
冬至の日 90°-緯度-23.4°
赤道が90°、北極が0°になるには、「90°-緯度」じゃん?
で、夏至ったら、「夏」ってくらいだから、太陽の高度は高い?低い?高いよね!だから23.4を足すわけ。
冬至は逆に引くわけ。
これを覚えておけば普通の問題は解ける。
ここで終わりにしたいものなのですが、きちんと説明する学校もあります。そういう場合に、以下の説明をします。ただ、結局は、上の3つの公式へのあてはめれば解けるくらいの問題しか定期試験では出題されていませんね。
南中高度の公式の説明
そうか、○○中の先生は、きっちり説明したんだ。ならば、説明しよう。
図12
図12は、北緯x°の地点Xの秋分の日の地球を、図1の青の矢印、夏の地球の方から見た図だ。
秋分の日なので、地軸はまっすぐにして考えるよ。
この地点を中心とする天球を考えてほしい。図13は、太陽が南中した状態だ。
図13
太陽は天球上を図14のように動いて行くんだったね。
図14
南中したときの様子は、図12のようになるんだったけど、このとき、太陽の光は赤道と平行になる。春分・秋分の日の赤道の南中高度は90度になるわけだ。
図15
さて、図15を見る。緯度x°のところで太陽が南中したときの天球の図が上にある。
で、天球の中心を地球上の観測者の位置に持ってきたのが下の図だ。
赤の線と青の線がそれぞれ対応しているよ。
図16で、緯度のx°と同位角があるね。南中高度は90°からその同位角を引いた部分だ。だから90°-xになる。
図16
では、夏至の日や冬至の日はどうなるか。
図17を見て。
図17
上の図は、秋分の日。下の図は冬至だ。冬至の方が北半球に太陽の光が当たっていないことがわかる。
北極あたりを見ればよくわかるよね。
なんで、太陽の光が当たらなくなるかというと?
生徒「傾いたから!」
そう、地軸が傾いたからだね。
で、図18だ。
図18
上の図を、右方向に23.4°回転させる。
青い線も、赤い線も、赤道も地軸も、右方向に23.4°回転する。
でも、太陽と太陽の光(黄色い線)は動かない。
そこで、x°→x+23.4°となり、南中高度の90-x°は90-x-23.4°となる。
夏至の日はこの逆になるんだ。
…ついてこれなくなる生徒もいます。そういう生徒には、3つの公式を覚えればいいんだよ、とフォローします。実際、この後に練習問題をやれば、3つの公式で解けるものくらいしか出てきませんので。「わからない」というストレスを抱えたまま帰宅させないようにしないといけません。
まとめ
地軸は、公転面に立てた垂線に対して約23.4度傾いている。
春分の日・秋分の日の太陽の南中高度は 90°-緯度
夏至の日の太陽の南中高度は 90°-緯度+23.4°
冬至の日の太陽の南中高度は 90°-緯度-23.4°
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