私たちの飲料水はどこから来ているのかの旅
今回は、水資源について学んでいきます!
今までとは趣向を変えて、ショートストーリー風に水が0.01%しかないことを確かめていきます。
「地球上の水の総量は約13.8億㎦と推定され、海水と陸水に分類されます。海水が96.5%で、陸水は3.5%です。」
海水は塩分濃度が高すぎてそのまま人間が飲むには適していません。
ということで陸水、つまり3.5%の水の中で私たちは飲料水を探すしかありませんね。
「さらに、陸水は地表水(湖沼水・河川水・土壌水)、地下水、氷雪原・氷河などに分けられます。氷雪原・氷河は2.45%、地下水は1.02%、地表水は0.03%です。」
氷河は氷ですからそのまま飲料水には利用できませんし、地下水も井戸などの設備が必要ですのでそのまま飲むことはできません。
ということで可能性としては地表水しかありません。
これで0.03%しか飲料水の可能性が残されていなくなってしまいました。
さらに土壌水というと地中にしみこんだ水ですからこれもそのまま飲めませんね・・・
ということで、人間が使いやすい水は河川水・湖沼水の0.01%であることが分かりました。
国土交通省の国連世界水発展報告書メッセージにも、「エネルギーと淡水に対する需要は今後数十年間で大幅に増加する見込みである。この増加のために、ほぼすべての地域で、大きな課題が発生し、資源が圧迫を受ける。特に開発途上国と新興経済国ではこの傾向が強い。」と書かれてあります。
水道からいつでも水が出てくることが当たり前と思うのではなく、世界は水不足であることを把握しておきましょう。
また、水の分布をまとめて図で示すと以下のようになります。
地下水について
陸水の一部は地中に浸透して土壌水・地下水となりますが、これらの一部は森林などの植物に蓄えられます。
地層は水を伝達できるかどうかで2つの層に分けられ、水を伝達できる層を透水層、水を通しにくい、または通さない層を不透水層と呼びます。
植物に蓄えられ、徐々に流れ落ちる地下水は地下の透水層を通り、不透水層の上を徐々に流れます。
図のように地表にもっとも近い不透水層上の地下水を自由地下水とよびます。
不透水層にはさまれた地下水は傾いた地層の中で圧力を受けるので被圧地下水とよびます。
また、不透水層上の局部的な地下水を宙水といいます。
以下の図は断面でみた地下水の模式図です。
乾燥地帯などでは地中から自由地下水をくみ上げるために掘抜井戸を作ることや被圧地下水の自噴井を利用することで生活しています。
また、宙水は地下水面が深い台地などでは貴重な水資源となります。
被圧地下水による自噴井が多く集まっているところを鑚井盆地(さんせいぼんち)と呼び、オーストラリアの大鑚井盆地(グレートアーテジアン盆地)は有名な一例です。
水の循環
図のように地球上では水の循環が常に行われています。
海・湖・河川水・地面などから蒸発、植物から蒸散した水蒸気は上空で雲を形成し、風に乗って移動します。
一部は海上から陸上に進入し、やがて降水(雨だけでなく雪などを含む)として地表に戻ってきます。
陸上で降った雨は地下に浸透するものもありますが、多くは河川水となって流出し、海に戻ります。
気温が高い熱帯では循環速度が速いのに対し、寒帯では遅くなります。
その理由は水の蒸発の進みが熱帯に比べて遅いからです。
高緯度地域や高地に冬季に積もった雪は貯水の役割を果たすとともに雪の下の植物などを冬の低温から守る役割も果たします。
世界の降水量分布
世界の年平均降水量は約1050mmですが、雨の降り方は地域で偏りが大きくなっています。
世界の湿潤地域は低緯度から中緯度にかけての沿岸域、とくに大陸の南東側のモンスーンの影響を受ける南アジアから東アジアにかけての地域が中心となっています。
また、海からの湿った空気が入ってきて山の斜面を上昇すると雲ができ、風上斜面に雨をもたらします。
これを地形性降雨と呼びます。
一方、世界の乾燥地帯は熱帯周辺地域に帯状に分布するほか、内陸部、とくに山脈や高原で囲まれた山間部の盆地では降水が少ない傾向となっています。
また、寒流が沿岸を流れるところにも分布しています。
この理由は前記事でも紹介したので詳しく知りたい方はそちらを参照してください。
次に、世界の河川の特徴をみていきましょう。
世界の河川
世界の河川における月平均流量の季節変化は流域の気候と密接に関係しています。
サバナ気候や温帯夏雨気候のように降水量の季節変化が激しい地域では川の流量の変化は大きくなっています。
一方、西岸海洋性気候や温暖湿潤気候地域では流量変化は比較的小さくなっています。
さて、日本の川の特徴は何なのでしょうか。次のグラフを見ると・・・
(出典:災害の実態 (社)砂防地すべりセンター)
ポイント
日本の川は急流で川の長さが短いものが多い!
日本は島国で、海に近いことから川の長さは世界の川に比べて短くなっています。
また、環太平洋造山帯に属しており、急峻な山も存在していることから急流になりやすくなっています。
ちなみに常識として覚えてほしい知識として、
- 世界一長い川・・・ナイル川
- 世界一流域面積が広い川・・・アマゾン川
は必須です。このほかにも国際河川などがありますが、後々地誌で取り上げるのでここでは割愛します。
大気の大循環
対流圏とは高度0kmから約11kmの部分の大気の層のことです。
この対流圏内において起こる全地球的な大気の移動のことを大気の大循環といいます。
海流と同じように大気の大循環も冷たいところから暖かいところへ流れ、地球の熱の地域的な不均衡を解消するのに重要なはたらきをしています。
さて、この大気の大循環によって1年中同じ方向に規則的に吹く風を恒常風といいます。
ここからは、この恒常風について模式図を見ながら解説していきます。
まずは赤道低圧帯、中緯度高圧帯、寒帯前線について整理します。
赤道低圧帯
日射が降り注ぐ熱帯地域を指します。活発な上昇気流がおき、積雲が発生して多量の雨が降ります。熱帯収束帯ともよばれます。
中緯度高圧帯
赤道低圧帯で上昇した気流が中緯度側へ向かい、緯度20度~35度のあたりで下降し、地表に戻る部分です。高温・乾燥地帯を作り出します。例えばサハラ砂漠、オーストラリア内陸部は中緯度高圧帯に属します。亜熱帯高圧帯ともよばれます。
寒帯前線
中緯度高圧帯からさらに緯度が高くなり、35~60度付近にある低圧帯です。亜寒帯低圧帯ともよばれます。
低圧帯では空気が上昇するので上昇気流が発生し、雲ができて雨が降りやすくなります。
高圧帯では空気が下降するので下降気流が発生し、雲はできにくく雨は降りにくくなります。
ポイント
赤道低圧帯、中緯度高圧帯、寒帯前線は動く!
模式図では赤道低圧帯、中緯度高圧帯、寒帯前線を大まかに図示しましたが、日本に四季があり、1年間で気温差があるように気圧帯も1年間で動いていきます。
気候の代表例としては赤道低圧帯、中緯度高圧帯に覆われる時期によって雨季と乾季があるサバナ気候が挙げられます。
貿易風
中緯度高圧帯から赤道低圧帯に向かって吹く風で、北半球では北東風、南半球では南東風と呼ばれ、それぞれ北東貿易風、南東貿易風と呼ばれます。
※「北東風」というのは北東から吹く風を意味しています。風の方向はどちらから吹いてくるかで決まるので教える場合には生徒が勘違いしていないか気をつけておきましょう!
偏西風
中緯度高圧帯から寒冷前線(亜寒帯低圧帯)に向かって吹く風で、中緯度の大陸西岸で顕著に見られます。日本で偏西風の影響が大きいことが身近な例です。
恒常風には他に極東風があり、これは極高圧帯から寒冷前線(亜寒帯低圧帯)に向かって吹く風のことです。周極風とも呼ばれます。
センター試験出題例を見る!
それではここで2013年のセンター試験出題例(図省略)をみてみましょう。
問 赤道付近から北極付近における大気大循環に関わる内容について述べた文として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 北極付近と赤道付近は、いずれも高圧帯となっている。
② 高圧帯や低圧帯の南北移動は、降水量の季節変化の一因となっている。
③ 北緯30度付近から高緯度側へ向かう大気の流れは、極東風とよばれる。
④ 北緯30度付近では下降気流が卓越し、湿潤な気候をもたらしている。
・・・分かりましたか?
正解は ② です!
①は赤道が低圧帯であることから間違いであることが分かります。
③は極東風ではなく北東貿易風の説明です。この説明は偏西風の説明です。
④は中緯度高圧帯の説明と合っていないので間違いとなります。
②は正しく、サバナ気候(次回詳説)などに雨季、乾季がある理由にもなります。
選択問題のポイント
選択問題は消去法で解く!
選択問題の文の中には間違ってはいないが、正しいとは言いにくい選択肢も存在します。
逆にちょっとした言葉の意味の捉え方で曖昧な選択肢に見えることもあるでしょう。
正しい選択肢を選ぼうとすると「早く解かなきゃ」や「最後のほうが合っている気がする」などの先入観をもって選択肢を選んでしまう恐れがあります。
きちんと選択肢を精査し、正解に最も近いものを導きだすには消去法です!
今回は水と大気について学び、選択問題の解き方にも触れました。
次回は地理の山場である気候の分類・判定です!近日公開ですので楽しみにしておいてください!!