コロナ禍で必須のスキル 〜プロ講師のオンライン授業のやり方〜
こんにちは!国語科講師の中林です。
この1〜2年で、多くの塾・予備校・学校が、コロナ禍の中で感染拡大を避けるために対面授業を停止し、その中で少しでも子供達の学びの機会を確保する為に、zoom等を利用したオンライン授業を実施してきました。
しかし、多くの先生方がこの新たな教育ツールを前に、体系的なマニュアルも無い中「どうやって授業を展開していこうか?」と、日々試行錯誤しながら授業を行っていると思います。
中林 智人 なかばやし ともひと
高校教師から塾講師・予備校講師に転身し、現在は河合塾・早稲田予備校にて国語を担当しつつ、都内の高校で非常勤講師としても活躍。講師業だけでなく執筆なども行う。「納得できる知識・論理的読解技術」「制限時間内に問題を解き偏差値を上げる戦略」「楽しく国語を勉強できる面白ネタ」をモットーに日々生徒に向き合っている。
今回は、私が今まで行ってきたオンライン授業のやり方・マル秘テクニックを思い切って公開致します!
コロナが収束したとしても、おそらく対面授業と並立したオンライン授業は今後も実施されると思いますので、プロとしてこの新しい教育ツールを自信を持って使いこなせるようにしていきましょう!
目次
・オンライン授業のメリット・デメリット・注意点
・生徒の管理方法
・必殺!譜面台戦法!
・終わりに 〜新たなツール・スキルと伝統との共存〜
オンライン授業のメリット・デメリット・注意点
オンライン授業はご存知の通り、zoomやgoogle classなどのweb会議・授業システムを利用し、離れた所にいる生徒複数名(もちろん単数もあり)相手に授業をするやり方です。
ipad・スマートフォン・PCなどの電子機器があり、インターネットにさえ繋がっていればどこでも授業ができる、まさに情報化社会に合った授業スタイルと言えるでしょう。
一方で、実際にこの授業を行った方はご存知でしょうが、まだまだ対面授業と比べて不便な点、気をつけるべき点などが色々あります。
まずはこのオンライン授業のメリット・デメリット・注意点をまとめておきます。
オンライン授業のメリット
①濃厚接触・感染拡大を避けられる
言うまでもないですね。元々これを目的として広まったスタイルですしね。新たな変異種なども発見され、完全なコロナの収束もまだ見てない中、今後も新たな感染症などの蔓延に対して不安を抱いているのは生徒も保護者様も、もちろん講師側も同じです。
私個人としては、このメリットがある限り、オンライン授業が完全に無くなることは考え難いでしょう(もちろん、対面授業が完全に無くなることもおそらく無いでしょう)。対面授業とオンライン授業のハイブリッドスタイルに対応できないといけませんね。
②自宅を含め、自分がやりやすい環境で授業ができる
これは大きいですね。私もやってみて実感しました。
私の自室はデスクの周りに本棚がいくつもあるので、授業中に必要に応じてすぐに参考書等を引き出せますし、教室内と違ってマスクを着けて大声で話す必要もないので喉への負担も少なくて済みます。
また、後述する私独自のやり方で授業をすると、教えたいことを効率的に教えることができます。状況に応じて、PCを持ってどこにでも出張して、そこで授業することも簡単です。人によってはお気に入りのカフェなどでおしゃれに授業してしまう人もいるみたいですね。
③授業データをアーカイブで残したり、録画することも簡単
アーカイブとは元々『保存記録・保管所』というIT用語で、授業のデータなどが専用の保存場所に圧縮保管され、整理されていくシステムです。非常に便利な機能ですし、自分で授業を録画しておくこともできます。
対面授業でしたら、いちいちビデオカメラなどを持って録画しなければいけないのですが、オンライン授業でしたら簡単に授業データが残せますし、googleドライブなどの機能を生徒と共有すれば、プリントとして紙媒体で配布したい資料をデータとして簡単に配布できます。
他にもzoomの「共有」機能をなどを駆使して、デスクトップ上でデータ化されたプリントに引いた線を生徒に示すこともできますし、使いこなせば便利な機能が沢山あります。
対面授業以上に、講師の創意工夫が求められる授業スタイルと言えるかもしれませんね!
オンライン授業のデメリット
①生徒の受講態度を確認できない
講師側からするとこれが一番気になるのではないでしょうか?
対面授業なら生徒や教室の全体を見渡せるので生徒が授業中に何をやっているのか簡単に確認できますが、オンライン授業では表示されるのは画面に映った生徒の顔だけです。したがって、画面外で別のことをやっていてもこちらからは分かりません。
集団授業ですとマイクやカメラをオフにして受講している生徒もいます。その場合、さらにこちらからは生徒の状況を確認できません。
対面だと生徒の反応から理解状況を確認して、講師側も説明の仕方をその場で工夫したりもできますが、生徒の反応を読み取り辛い状況での授業はやり辛さを感じる先生も多いでしょう。
②ネット環境が安定しない
オンライン授業はあくまでインターネットを利用して行うので、特にWi-Fiを利用する場合は、接続が安定しないと声や映像が途切れて授業をストップせざるを得ない場合があります。
ひどい場合ですと、回線に負荷がかかってzoom等のシステムが停止してしまい、再度ログインし直す必要があることもあります。
特に集団授業ですと、講師と生徒全員が安定したネット環境を授業時間内ずっと維持するのが結構大変だったりしますね。その場合、例えば「自宅のWi-Fiの調子が悪くて授業に参加できなかった」という生徒を出席扱いにするか欠席扱いにするかなどの教務上の問題も発生する上に、上記の理由で授業に参加できなかった生徒へのアフターフォローもまた必要になってきます。
③自宅などのプライベート空間と仕事場の境目が曖昧になる
「自宅で授業が行える」というメリットは、裏を返せば「自宅を仕事場の一部にする」ということになります。
自宅内に自分の個室をもっている人はまだしも、リビングなどで授業を行わざるを得ない人は、授業中に家族の声や生活音が入ってこないように様々な工夫をこらす必要があります。
Zoomなどでは「バーチャルスクリーン」などの機能もありますが、PCのバージョンが古いと正しく使用できなかったりしますし、ホワイトボードなどを利用して授業したい人は使えないでしょう。
同居している家族の方々にも、授業中はなるべく邪魔にならないように気を遣わせてしまうことになります。それが1日に複数コマとなってくれば、御家族の方々にもストレスを感じさせてしまうことにもなってしまいます。プライベートと仕事は、やはり分けたいですよね。
気をつけること
生徒の保護者が授業を見ている場合がある
場合によりますが、オンライン授業の場合、大半の生徒が自宅で受講しています。
その際忘れてはならないのは、自宅には保護者の方がいらっしゃるので、講師の授業を保護者の方もお聞きになっている可能性があるという事です。
だからと言ってあまりかしこまる事もありませんが、普段の生徒相手のフランクな話し方をあまり出しすぎると、その講師の授業を聞いていた保護者の方から不信感を抱かれる可能性もあります。毒舌系の授業を売りにしていらっしゃる先生は注意した方が良いかもしれませんね。
生徒管理の方法
これらのメリット・デメリットも、考え方や工夫次第で乗り越えたり、効果的に利用する事が可能です。
まだまだ発展途上の授業スタイルですので、講師1人1人に創意工夫の余地がありますよね。
そして、この「デメリット」の中の1つ、「生徒の受講態度を確認できない」について、お話しておきたいことがあります。
画面の向こうの受講生に、正しく授業を受けさせ、しっかりと教授内容を定着させるにはどうすれば良いか?ということです。いくつかのやり方が考えられます。以下の通りです。
オンライン授業をより活発なものにするために
①発問をする
対面授業と同じです。授業の要所要所で生徒を指名して発問しましょう。
こちらが喋っている時は向こうはミュートにしていても構いませんが、発問した時はミュートを外させて答えさせます。zoomなら「チャット」というLINEのトークルームみたいな機能があるので、それを使って答えてもらうのも良いですね。
全体に問いかけたい時は「では分かった人はチャットに書き込んで下さい!」と指示すれば、普段は発言の苦手な生徒でも発言しやすくなります。
私はよく演習授業の解説をした後、「では自己採点した点数をみんなチャットに書き込んで教えて下さい!」と指示したりします。ちなみにチャットは自分の書き込みを見れる対象を限定できますので、「講師宛て」に指定して書き込めば、他の生徒には見られないようにしてメッセージを送る事もできるので、生徒は自分の点数を私だけに報告できます。対面授業と同じく、「質問される」という緊張感があると、生徒もちゃんと授業を受けようという気になりますよね。
②課題を提出させる
先ほどのチャットですと短い会話しかできないので、授業の内容に関する課題などを生徒に提出させたい場合は、別のツールを使うと良いでしょう。
貴方が所属する会社がロイロノートを取り入れている場合は、それを使ってどんどん生徒に課題を指示して提出させましょう。
ロイロノートの使い方に関してはいずれまた詳しくお話ししますが、複数の生徒に課題を出したり、提出を受け付けたり、あるいはこちらから資料を送ったり、生徒の出した課題を添削したりと、様々なことができる非常に便利なツールです。特に多人数の授業の場合は、対面やオンライン授業と併用して活用すると効果的です。
また、googleドライブやgoogleクラスなどを生徒と共有して、データで生徒に課題を提出させるのも良いですね。とにかく生徒に能動的に授業を受けさせることが大事です。
③zoomの「使用状況レポート」を確認する
zoomの場合、「誰が何時に授業にアクセスしたか」がクラウドに保存されます。それを「使用状況レポート」というところで確認できますので、多人数の授業の出欠を確認するのに使えます。参加時刻と退出時刻も表示されるので、ちゃんと参加していたかはっきり分かります。
これらを効果的に利用して、オンラインだからといって生徒の学びが低下しないように、しっかり生徒を管理しましょう!
必殺!譜面台戦法!
いきなりわけのわからないタイトルで困惑された方もいらっしゃるでしょう。なんてことはありません。私がオンライン授業でよく使用している授業スタイルです。
説明するよりまずは御覧頂いた方が早いと思います。次の画像を御覧下さい。
画面左端には譜面台に乗せたipadが1台。これでzoom授業を行なっているのですが、このipadは真下の机を写しています。
つまり、机の上に置いたテキストに、直接ボールペンで私が書き込みながら説明し、その手元をzoomで配信しているというわけです。
これだと自分の顔を写す必要もありませんし、まるで家庭教師としてすぐそばで講師が説明してくれているような距離感で説明できます。自分のノートに書くのと同じスピードで書けるので、黒板やホワイトボードより効率的ですし、自分の手元をipad越しと肉眼で同時に確認できるので、生徒側からどう見えているかも同時に確認しながら授業できます。
そして画面右側のPCには、同じくzoomがインストールされていて、こっちは生徒用のアカウントで自分の授業に参加しています。つまり、生徒目線で自分の授業が実際どう見えるかを確認しているということになります。まあ、「ミラーリング」に近いイメージですね。
さらに、右側のPCでは、受講している生徒の顔を確認しています。これによって、「この子に発問してみよう」などを考えて授業を組み立てて行きます。
「なぜ譜面台なのか」と言われると、私が元々吹奏楽部出身で、その時使っていた譜面台を見て思いついた方法だからです。なので、この記事をご覧の方はちゃんとしたipadスタンドを購入された方が多分良いでしょう(笑)。
「生徒に顔を見せないで大丈夫か?」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、意外となんとかなるものです。
要するに、一般的にイメージされる映像授業みたいな形を必ずしもとる必要はないということです。もちろん、ちゃんと黒板やホワイトボードを用意して撮影する方もいらっしゃいますし、私もそういう設備のある場所でオンライン授業をやることもあります。以下の図はホワイトボードのある環境でzoom授業を行った時の画像です。この場合は、ホワイトボードを撮影するために固定したipadと、実際に生徒とやりとりするPCの2台体制ですね。
後は、テキストに直接書き込みながら説明するより、生徒側の見やすさとしては「画面共有」という機能を使ってあらかじめPDF化した資料にPCの絵画機能を利用して線を引いたり、あるいはパワーポイントによるプレゼンテーションみたいにあらかじめ提示用の資料を用意しておくのも良いと思います。
ただ、私の場合は「手で書くこと」と「口で説明すること」の力の入れ方が連動しやすいので、力強くペンやチョークで文字を書いて線を引きながら説明すると、自然と説明にも力が入って話し方にも抑揚が入り、授業全体に熱を込めやすいので、この譜面台戦法が合っているのです。
心を込めて書いて、熱を込めて話す、例えオンライン授業でも、そのスタンスを崩したくないのです。
終わりに ~新たなツール・スキルと伝統との共存~
いかがだったでしょうか?
前述したように、オンライン授業は新しい授業の形ですので、まだまだこれから新たなやり方・新たなツールが出て来るはずです。
それに合わせて様々なマニュアルが後から出て来て、それらを勉強する必要も出て来るわけですが、一番大事なことは、新しいからといって安易に飛びつかず、自分に合った使い方を考えることかなと思います。
新しいものが必ずしも最良というわけでもなく、時には昔からあるものの方が自分のスタイルに合っている場合もあります。
古くから生き残っているものがなぜ生き残っているのかを考え、その理由である長所を理解し、そこに新しいツールのメリットを組み合わせて、自分の長所と照らし合わせて自分なりの最高の指導法を模索していく、こういうことができる人が、時代に流されずに長期的に活躍できる、真のプロ講師なのかなと思います。
私もそれを目指しますし、この記事をご覧の皆様にも目指して頂きたいと思っております。
それではまたお会い致しましょう!
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