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中学受験における非常勤講師の保護者対応とは【キャリアコラム#55】

中学受験における非常勤講師の保護者対応とは

秋も深まり中学受験準備もいよいよ佳境に入ってきました。プロ講師の大久保です。

今回は中学受験において切っても切れない「保護者との関係」について考えたいと思います。

小学校受験ほど「親の受験」ではないけれど、高校受験ほど手を離せるわけではない中学受験は「親子二人三脚」と言われるくらい実は親の役割が大きい受験です。

それ故に講師は生徒と同じくらい、場合によってはそれ以上に保護者の気持ちのケアをする必要があります。その中で保護者対応としてやるべきことは何か?保護者が期待していることは何か?等を紐解いてみたいと思います。

目次
保護者対応としてやるべきこと、保護者が期待していること
常勤講師と非常勤講師で、保護者対応に違いはあるのか
非常勤講師としてやるべきことは?・してはいけない、好ましくない保護者対応5選
保護者対応力を高めるために
最後に 

 

保護者対応としてやるべきこと、保護者が期待していること

そもそも「保護者対応」とはどのようなことなのでしょうか。

講師間では保護者の子供の受験に関して尽きない不安や悩みを面談や電話によって聞き出し、それについて一緒に解決策を考えていく作業が「保護者対応」と呼ばれています。

保護者対応を行うことにより、生徒からは見えない親の考えや悩みを知ることが出来、保護者側も自分の子供がどう評価されているか、教育方針と齟齬がないかなど確かめることが出来ます。電話であったり面談であったり手段は様々ですが「保護者対応」とはわかりやすくまとめると「保護者の相談に乗る」ということであると言えます。

では具体的に相談内容にはどのような内容が含まれるのでしょうか。

1.普段の教室での生徒の様子を知りたい
2.科目ごとの勉強方法(苦手科目の克服)
3.受験校について

主にこのような内容になります。学年によってそれぞれの項目の重要度は変わってきますが、主にこの3つの内容について第三者でありプロである塾講師のアドヴァイスをもらうことを保護者は期待しています。

次にどのような場面こういった内容を聞き出していくのでしょうか。

1.立ち話
2.電話やメールなど非対面での対応
3.面談

面談>電話・メール>立ち話の順番に、機密度や深刻度が大きくなります。

立ち話は、送迎時や保護者会などで軽く相談したい、質問したいなど少し話をしておきたい程度の対応になります。電話やメールは、具体的に相談したい事案がある場合で、教科の質問やデータを見る必要がある時はこの対応になります。面談は、個別に時間を設け生徒一人一人を深く掘り下げる場合で受験校の決定などはこのような時間で対応します。内容によって手段は変わりますがこのように塾側は保護者対応をしていきます。

 

常勤講師と非常勤講師で、保護者対応に違いはあるのか

先ほど述べた保護者対応は、社員として勤務する常勤講師が主に行います。多くの塾では常勤講師の中で学年担当や個人担当に振り分け、担当ごとに対応します。

常勤講師のこのような対応によって生徒と保護者にとって通塾、受験の満足度を上げることが結果的に会社の業績を上げることにつながります。常勤講師は、いわば二人三脚の受験をリードし、サポートする監督のような役割をしているのです。

一方、授業給で勤務する非常勤講師ですが「授業に専念」と業務内容に記載してある場合、保護者対応は仕事に含まれません。 

では本当に非常勤講師は保護者対応をせずに済んでいるのでしょうか。

生徒や保護者から見れば常勤講師も非常勤講師も「先生」です。送迎時に保護者から生徒の様子を聞かれる、常勤講師から授業の様子を電話するように頼まれる、保護者会などで学習方法について相談を受ける…担当している生徒であれば非常勤講師であってもこのようなところで対応することが出てきます。

特に生徒数が多い塾であれば常勤講師の目が行き届かないところが増えるため、非常勤講師の手が必要になってきます。保護者対応は中学受験の現場では授業と同じくらい重要と考えられているのです。

求職要項を見るとほとんどの塾が仕事内容を「授業のみ」「授業に専念」としているので、非常勤講師の保護者対応は本来業務外であると言えますが、塾側からみると、高い時給には「保護者対応や授業準備も含まれる」と考えている塾もありますので、面接時に時間外で保護者対応した場合に給与が発生するかは必ず確認しておいた方がいい事項であると言えます。

 

非常勤講師としてやるべきことは? 

一般的な常勤講師の簡単なスケジュールを示すと
出社
:講師間ミーティング・学校関係者との打ち合わせ等・保護者への電話掛け・面談
休憩
:保護者への電話掛け・面談
授業
補習・質問対応

このように業務の隙間で保護者対応の時間を取っていることを考えると一人一人に割ける時間はほんのわずかであることがわかります。

先ほど述べたように非常勤講師は、ほとんどの塾では保護者対応は業務外とされていますが、常勤講師からヘルプがあった時は出来る範囲内で対応すると、塾側は非常に助かるでしょう。講師も4教科のチームで動いて受験を迎えます。業務外でも少し支える存在になるとチームとしてよりよいチームになるのではないでしょうか。 

しかし、いざ常勤講師を支えるとなるとどこまでやればいいのか悩みどころになってきます。

次に、してはいけない、好ましくない保護者対応について考えてみます。

 

してはいけない、好ましくない保護者対応5選

常勤に許可なく積極的に接触(電話がけ、面談)する

いけない対応のトップです。あくまで常勤講師のサポートだということを忘れないようにしましょう。万が一トラブルが起きて退塾につながるようなことになれば、サポートどころか足を引っ張ることになります。電話や面談などは必ず指示を受けてから行うようにしましょう。

保護者の要望を聞かず受験校候補を挙げる

生徒を見ているとついこの子はこういうところが合いそうだ、こんな学校がいいのではと思いを巡らせてしまいがちです。それ自体は悪いことではないのですが、中学受験をする家庭は口には出さなくても子供のビジョンを持って入塾させています。学校名を出す時は必ず家庭側の意見をくみ取った上で慎重に出しましょう

特定の学校に対して負のイメージのみを与える

上記に通じるものですが、学校だけでなく男子校、女子校なども含めて例え自分が通ってネガティブなイメージを持っていたとしても、それのみを伝えることはやめましょう。受験する時代によって学校のイメージは目まぐるしく変わります。経験談として話すことは良いことだと思いますが、自分の受験した時代であることを強調してポジティブな話も出来るようにすると充実した保護者対応になるでしょう。

生徒間の関係について言及する

通常授業を受け持ち、ある程度固定のメンバーになってくると生徒間のパワーバランスや人間関係が出来てくるようになります。そのことによって生徒間のトラブルになることも珍しくなく、解決をしなくてはならない場面にも遭遇します。当然、校舎内で起きた場合は保護者に報告をしますが、そういった事柄を非常勤講師から保護者に直接伝えることは、多くの場合何故かトラブルになることが多いので避けた方が無難です。「伝え方が悪い」「他の保護者の前で伝えられた」「自分の子だけが悪いと言われた」など言った言わないの不毛な時間になるだけなので建設的ではないでしょう。常勤講師に細かく報告し、何らかの形で伝えてもらいましょう。

改善策を挙げずに生徒のダメ出しをする

上記にも通じることですが、保護者は一人の親でもあります。わが子を謙遜して悪く言うことはありますが、改めて第三者から言われると気分のいいものではありません。授業態度や勉強への姿勢は必ず改善策を提案しながら一緒に取り組んでいく旨を伝えましょう。

 

保護者対応力を高めるために

そもそも授業以外は業務外であることがほとんどなのですが、保護者や生徒からみれば常勤講師も非常勤講師も「先生」であることには変わりません。対応をする時は大人として堂々と対応しましょう。

受験相談などは立ち話などでも出てくることも少なくありません。中学受験においてマークしておくべき学校、エリアにおいて重要な学校、教科において特徴的な学校は頭に入れておくのがよいでしょう。

一番重要なことは、返答に時間がかかるものは常勤講師に引き継ぎ、会話をしっぱなしで終わらせないことです。そして細かなことでも常勤講師に報告を必ずし、補うべきことがある場合はフォローしてもらいましょう。

 

最後に

非常勤講師が保護者対応する場面は、多くの場合送迎時の見送りなど軽く立ち話をする程度の対応がほとんどです。しかし、ほんの少しの時間だからこそ、保護者の耳には言葉が残りやすくなります。いつも話をしないような非常勤講師の先生であればなおさらです。

ですから、話をする時は短い間でも真摯に対応しましょう。そして、明るく前向きに!

絶対暗い顔で帰宅させてはいけません。こちらも生徒を応援してますよ、頑張りましょうというような声がけが保護者にとっても力になるはずです。

生徒と保護者が前向きに進んでいける後押しこそが保護者対応として一番重要なことなのです。

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大久保 礼子

記事執筆者:大久保 礼子

県立高校普通科を卒業後、都内の音楽大学の音楽学部音楽学科器楽(ヴァイオリン)専攻卒業。演奏活動や音楽教室にて楽器を指導する傍ら、進学塾にて中学受験の理系科目を非常勤講師として担当する。
現在も二足のわらじを履き続け、右脳と左脳をフル回転する日々を送っている。
座右の銘は「健全な身体に健全な偏差値は宿る」

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