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講師業者のための「イチから確定申告」【キャリアコラム#67】

 講師業者のための「イチから確定申告」【キャリアコラム#67】

こんにちは。プロ講師の黒磯直行です。


黒磯 直行 くろいそ なおゆき

新卒で早稲田アカデミーに入社。営業部門長などを歴任し、その後スクールIEにて個別指導塾の運営マネージャー、Z会進学教室およびZ会東大進学教室にて講師として小中高に渡り幅広く指導を続ける傍ら、私立学校教員としても活躍。講師としてのキャリアは当然のことながら、運営サイドでの実務経験も豊富。20年以上塾業界に身を置いている超ベテラン講師。「社会人としての講師育成が業界には必要だ」との思いのもと、後進育成にも積極的な姿勢で取り組んでいる。


 一部の公立高校と国立大学の後期日程を残して、中高大入試の結果がほぼ出揃いました。同業の皆様、状況はいかがでしょうか。大手塾や予備校などでは、実績の公表も進んでいますが、この結果をもって次年度の生徒獲得の呼び水にする塾も多いと思います。実績カウントの独自ルールなどもありますので、正しい数字で公表をしてほしいと思っています。

この2月3月というのは、塾や予備校では新学年のスタートとなり、学校では次年度の準備に取り掛かる時期でもあります。そんな慌ただしい中ではありますが、我々個人事業主にはもう1つ大切なイベント(?)があります。

それが「確定申告」です。

この確定申告、私のような個人事業主や経営者だけのものではありません。

アルバイト(時間講師)をはじめとする給与所得者であっても、確定申告が必要な場合や、申告をした方がお得な(つまり、納めた税金が返ってくる(還付))こともあります。(※払いすぎた税金の還付を受けるのは、5年間さかのぼることができます。今からでも遅くありません。)

ぜひご一読頂き、正しい理解を深め、ご自身に有利に運用頂ければ幸いです。

目次
1.そもそも確定申告って、何を「確定」させるの?
2.塾や予備校講師で、確定申告が必要な人(絶対しないといけない人)
3.【重要】確定申告を『した方がいい』人
4.講師業で経費で控除できるものは??〜給与所得者でも控除できる可能性も〜
5.まとめ

 

1.そもそも確定申告って、何を「確定」させるの?

正式名称を「所得税の確定申告」と言います。

1年間の所得(儲け)を取りまとめて所得税を計算し、国(税務署)に納めるべき税額を報告する手続きを指します。1年に1度行うもので、1月1日~12月31日までの所得と納税額を、翌年の2月16日~3月15日の間に税務署に報告・納税するまでがセットになります。(期限の日付は、それぞれ土日祝日の場合、休日明けの平日になります)

「確定申告」で確定させるものは、「納税額」です

昨年1年間における、個人事業主であれば「売上」、給与所得者であれば「給与額」から各種控除や経費を差し引いて「課税所得」を算出します。そこから導き出される「税額」を確定させるのが、この確定申告の目的です。ここで確定した税額よりも、源泉徴収されている額が多ければ「還付」、下回れば「清算(不足分を納税)」ということになります。

勘違いされがちなのですが、ここで確定する税は講師業の場合「所得税」のみです。国に納める分ですね。

後に、この確定申告に基づいて住民税(県・市民税)、また個人事業主の場合は国民健康保険税の額が決まり、5~6月ごろに役所から通知が来ます。(※会社員の方の社会保険は、この確定申告によらず、4,5,6月の給与額から算出されます。)

特に、これをご覧になっている会社員や時間講師の方にはあまり馴染みがないし、そんな申請したことないという方も多いかもしれません。いわゆる「給与所得者」の場合、会社がこの一連の作業を肩代わりしてくれています。これを「年末調整」と言います。

 

給与所得者

個人事業主

収入

支払われた給与の合計(年収)

売上として計上する額

所得

収入から給与所得控除額を差し引いた額

売上から経費を差し引いた額

課税所得

所得から、各種控除(社会保険控除・扶養控除・基礎控除など)を差し引いた金額。この金額に所定の税率を掛けて、所得税を算出します。

源泉徴収

給与や支払い金のうち、会社が一定率の金額を天引きして預かり、これを納税者本人に代わって納税する仕組みです。

 

2.塾や予備校講師で、確定申告が必要な人(絶対しないといけない人)

収入がある場合には、もれなく全員確定申告を行わなくてはなりません。

ただし、「給与所得者のうち、年収2000万円以下で、1か所からしか給与を得ておらず、それ以外の収入が年間20万円以下の場合」など、特定の要件を満たす場合は確定申告をしなくてもよいとされています。

正社員や契約社員、または時間講師として1つの塾で勤務している場合は、先述のとおり会社が肩代わりをしてくれている、ということになりますので、個人的に申告をする必要はありません(もちろん、個人で申告しても構いません)。

逆にそれ以外であれば、もれなく確定申告をしなくてはなりません。

塾や予備校講師の場合、具体的に以下のような人が確定申告が必要です。

 フリーランスで講師業をしている/塾を経営している(=個人事業主)

所得が48万円(基礎控除額)以上である場合は、確定申告が必要です。私はここに当てはまります。

なお、住宅ローンの申し込みや幼稚園の申請などを行うには「所得証明書」が必要とされますが、個人事業主やフリーランスの場合、確定申告をしていないと証明書が発行されません。仮に48万円を超えていなくても、必要な場合には確定申告をしておくことが賢明です。

2社以上から給与を得ている人

いわゆる掛け持ちをしている場合ですね。それぞれから源泉徴収をされているので、還付になる可能性もあります。

その他

・ 不動産・株取引の所得がある人
・ 一時所得がある人
・ 退職所得があり、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合

などがありますが、講師業の場合該当する方は多くないと思いますのでここでは割愛します。


3.【重要】確定申告を『した方がいい』人

簡単に言うと、「税金が戻ってくる(還付される)可能性がある人」です。

先述の2に当てはまらない場合には、基本的には確定申告は不要ですが、もちろん確定申告をすることは可能ですし、確定申告をした方が節税できる場合も多々あります。

それは「余分に税金を納めてしまっている場合」です。

この場合、確定申告を行うことで、払いすぎた税金が還付されます。これを「還付申告」といいます。そして、多くのサラリーマンの方たちが税金を多く支払ってしまっている可能性が高いと私は思っています。

なお、還付申告は、1月1日から申告が可能です。また、期限も申告可能になった日から数えて5年以内であれば、いつでも還付申告ができます

具体的には、以下のようなケースが当てはまります。

個人事業主で、赤字が出ている

個人事業主やフリーランスは、所得が48万円以下であれば確定申告は不要です。

しかし、事業で赤字がある場合は、払いすぎた税金の還付を受けられる場合があるので、確定申告がお勧めです。

仕入れや在庫という概念が講師業にはないので、事業単体で赤字になることはあまりないのですが、個人で塾を経営している場合などはあり得ると思います。

青色申告事業者であれば、赤字を3年間繰り越すことができたり、損失額を前年に繰り戻して還付金を受け取ることもできます。

医療費が10万円を超えた(交通費含む)

これは該当する方が非常に多いと推測しています。

後述しますが、個人ではなく生計を一とする家族全員の合算で10万円を超えた場合だからです。個人では超えなくても、家族合算となると超過する可能性があるご家庭も多いと思います。(繰り返しになりますが、還付申告は5年間遡ることができます。今一度ご家族の合算の医療費をご確認することをおすすめします。)

確定申告の対象期間に支出した医療費が原則として10万円を超えた場合(所得200万円以下はその5%を超えた場合)、確定申告を行うことで基準を超えた分の医療費控除を受けることができます。

対象は「自己または自己と生計を一とする配偶者やその他親族のために支払った医療費」なので、個人ではなく家族単位での計算になります

また、この医療費には医療費を支払った場所に出向くのにかかった交通費も計上できます(自家用車やタクシーは対象外です)。

私も今年は歯の治療を本格的に行ったので、かなりの額を控除することになりました。今一度、ご家族全ての1年間でかかった医療費を交通費と共に計算してみてください。還付の可能性があります。

※また、この他に「セルフメディケーション税制」というものもあります。薬局などで「特定一般用医療薬品等」を1万2000円以上支払った場合、1万2000円を超えた分を控除できる制度です。医療費控除と比較して、ご自身に有利な方を申告してください。

株式や FXなどの投資で損失が出た

株取引で損をした場合には、翌年以降の株式の売却益から損失を控除できるので、確定申告をして損失を繰り越した方が良い場合がほとんどです、控除仕切れなかった損失は繰り越して、翌年以降3年間の利益から控除することができます。

この制度を利用するためには、損失となった年度でも確定申告をする必要があります。

その他、住宅ローンを組んだ場合(住宅借入金特別控除)、ふるさと納税などの寄付をした場合、年末調整で控除し忘れたものがあった場合などは、ご自身で確定申告をすることで、払い過ぎた税金を還付できますので、ぜひもう一度ご確認ください。


4.講師業で経費で控除できるものは??〜給与所得者でも控除できる可能性も〜

フリーランスの場合、仕事をするにあたってかかった費用は経費として収入から控除できます。

一般的な小売業の場合、モノを仕入れて売ることで利益を得ているので、この仕入れにかかったものが「経費」となります。

しかしながら、我々講師業には、この仕入れの概念はありません。では、どんなものが経費となりうるのでしょうか。

交通費(旅費交通費)

塾や予備校の教室まで行くのにかかった交通費は、経費として計上できます。自動車を利用している方であれば、授業中に止めておいた分の駐車料金なども含まれることになるでしょう。

また、仕事のためにホテルに宿泊した場合なども、その宿泊費は控除できます。 

車両費

上記で自家用車が出てきましたが、仕事をする教室まで使用する自動車自体も経費の対象となる可能性があります。プライベートと併用している場合には、仕事で使う割合を設定し、按分することになります、

ただ、モノが高額なので、1年で経費とするのではなく、決められた年数に分けて経費計上します。これを「減価償却」と言います。

これは自動車に限らず、10万円以上の固定資産は同じような計算をして経費に計上します。 

パソコン・タブレット類

授業で使うプリントを作ったり成績を管理したり、また、近年はリモート需要も高まっていますので、 PCの類は絶対必要となります。これも経費として計上できます、

通信費・事務所家賃

もし、自宅でも仕事をする場合、その時間や利用する面積によっては自宅の賃貸費用などを一部経費にできる可能性があります。これも利用している割合に応じて按分することになります。また、そこで発生した光熱費も対象になる可能性があります。

利用している光通信やスマホの料金の一部も、使用割合によっては同様に経費になり得るでしょう。 

図書費・消耗品

授業で必要な資料を購入した場合は図書費、ペンなどの消耗品を購入した場合は消耗品の購入費。仕事を遂行するのに必要なものですから、当然経費となり得ます。また、先述の自動車での移動に際するガソリン代は、この消耗品の扱いになります。

その他、取引先企業への贈り物や打ち合わせで必要になった費用(接待交際費)、書類を取引先へ送った際の郵送費用(荷造運賃)、事務所を直した場合の費用(修繕費)などが挙げられます。

仕事をするために必要となったものは、常識を超えない範囲で基本的に経費として認められ、収入(売上)から差し引くことができます。

給与所得者は経費が計上できないのか

給与所得者の場合は、この経費控除が基本的にできません

代わりに、収入に応じて一定割合を自動的に控除することになっています。これを「給与所得控除」と言います。サラリーマンだったら、大体これくらいを仕事のために使うよね、という割合が予め決まっているということですね。この控除があるため、給与所得者は基本的に経費を計上することができません。

しかしながら、サラリーマンだって個人事業主と同様に仕事をする上では通勤費や図書費、交際費やスーツ代などの費用がかかります。そしてこれらの経費が給与所得控除の範囲内で収まるとは限りません。

そこで、税法ではこの給与所得控除を超えた部分の支出のうち、以下の特定のケースで必要経費として認めています

①通勤費
②転居費
③研修費
④資格取得費
⑤帰宅旅費(単身赴任者など)
⑥勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費)

ただし、特定支出控除を受けようとした場合には、まず国税庁のHPから「特定支出に関する証明の依頼書」をダウンロードして、それに必要事項を記入の上、会社の捺印をもらう必要があります。また、確定申告の際には領収書やレシートを添付して提出することが求められています。

会社に認めてもらった上で、さらに自分で確定申告をするということになりますのでちょっとハードルが高いですが、会社に認めてもらえる分に関しては控除の対象となりますので、チャレンジする価値はあると思います。


5.まとめ

確定申告とは、所得税を確定するための申告

確定申告をすると、納めすぎた税金の還付がある可能性がある

サラリーマンでも、確定申告をしたほうがいい場合がある

還付申告は5年間遡って申請できる

細かくは、白色申告・青色申告など種類があったり、事業収入と農業収入は分けて申請する制度であったりと、複雑な部分はあるのですが、講師業や塾・予備校の講師として日々業務に向き合っている我々にとっては、以上のことを抑えておけば十分だと思われます。

また、サラリーマンの方でも、一度ご自身の年末調整を見直して、確定申告について考えてみることをおすすめします。個人的には、多くのサラリーマンの方々が必要以上の納税をしていると思っています。

さらに、先日の記事の通り、2023年10月よりインボイスがスタートしますので、フリーランスの個人事業主は、来年の確定申告の際には消費税の確定申告を加えて申請することになり、負担増となります。直前になって慌てることのないよう、知識の武装も含めてしっかりと準備をしていきましょう。

講師業・塾経営者も社会の一端を担っています。正しいことを正しく認識し、損をしないよう正しい行動を心がけたいですね。 

それでは、また次の記事でお目にかかります。ありがとうございました。


 

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黒磯 直行

記事執筆者:黒磯 直行

新卒で早稲田アカデミーに入社。営業部門長などを歴任し、その後スクールIEにて個別指導塾の運営マネージャー。退任後は、Z会進学教室およびZ会東大進学教室にて講師として小中高に渡り幅広く指導を続ける傍ら、私立学校教員としても活躍。講師としてのキャリアは当然のことながら、運営サイドでの実務経験も豊富。20年以上塾業界に身を置いている超ベテラン講師。「社会人としての講師育成が業界には必要だ」との思いのもと、後進育成にも積極的な姿勢で取り組んでいる。

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