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高校古文でも時制は大事!過去の助動詞「き、けり」と完了の助動詞「つ、ぬ、たり、り」

高校生

2024/08/15

頻出分野!「助動詞(過去と完了)」

今回は過去と完了の助動詞について見ていきます。

 

古文のなかではとても基本的な助動詞であり、

それほど理解が難しくないわりには試験問題への登場頻度がとても高いのでぜひ覚えてしまいましょう。

 

 

また、高校入試レベルの古文の読解でもこれらを知っているととても読みやすくなります。

 

ですので高校受験生の国語を指導されている先生も必見の内容です!

 

過去の助動詞 「けり」と「き」

まずは助動詞の中でも基本中の基本とも言える「けり」について見てみましょう。

 

  未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
けり (けら) けり ける けれ

 

未然形の「けら」は奈良時代のみに見られる用法で、あまり登場しません。

 

また、○のところは活用形が存在しません。では意味について見ていきましょう。

 

①過去

その名の通り過去にあったことを表します。「~た」と訳しましょう。

 

例文1:今は昔、竹取の翁といふものありけり。(竹取物語)

例文1:今となっては昔のことだが、竹取の翁という人がいた。 

 

②詠嘆

詠嘆というのは

「きれいだなぁ!
「嬉しいなぁ!

などと心の中で思った、

あるいは感じた驚きや感動の気持ちなどをそのまま口に出してしまった、という意味です。

 

詠嘆は「~だなあ」「~なことよ」と訳しましょう。

 

またこの用法は和歌でよく使われています。

 

なので和歌を解釈していて「〜けり」が現れたものの、

なんだか「過去」の意味でで解釈してもよくわからないなあというときに

詠嘆で訳してみましょう。

 

例文2:あさましう、犬などもかかる心あるものなりけり。(枕草子)

例文2:驚きあきれた、犬などにもこのような心があるものなのだなあ

 

 

続いて「き」について見ていきましょう。

 

  未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
しか

 

「き」について気をつけたいことは、なんといっても未然形と連体形、已然形の形です。

 

せ、し、しかと活用します。

 

慣れていないと文中に出てきたときに

「あれこのさしすせそはなんだ?」

となってしまうことがあると思います。

 

なので「き」の活用は
「せまるきししかまる」と呪文のように唱えて覚えてしまいましょう!

 

他に注意することは、未然形「せ」は「ば」と接続して「せば」という形でしか使われません。

 

助詞の「ば」の用法はとても大事なので近々まとめます。

 

 

また、カ変とサ変に接続するときには多少ややこしい接続をするのですが、

筆者が今まで古文を読解してきた上で特に問題に感じたことはなかったのでそんなに気にしなくてもよいかと思います。

 

 

「き」の意味は過去です。例文を見てみましょう。

 

例文3:世の中に絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし(古今集)

例文4:京より下りときに、みな人子どもなかり。(土佐日記)

 

やはり未然形や連体形になったときに過去と見抜けるかがポイントです。

 

例文3:世の中に全く桜がなかったとしたら、春の人々の心はのどかであろうに。

例文4:京から下ったときに、みな子どもはなかった

 

「けり」と「き」の意味の違い

なぜ過去の助動詞が二種類あるのだろう?

 

どっちかでいいじゃないか、という意見もあるかと思いますが、
古代人はこの2種類の助動詞をしっかりと意識して使い分けていたようです。

 

 

では「けり」と「き」の意味の違いは何でしょう?

 

ずばり答えは、

「けり」は間接体験
「き」は直接体験である、

ということです。

 

「き」は自分が直接経験した過去の事実を回想して述べられるのに対し、

「けり」は伝聞、伝来した事実を回想的に述べる(つまり自分が直接行ったわけではない)ときに使われます。

 

細かいニュアンスの違いですが、
この意味の違いが読解の決め手になることもありますのでしっかり覚えておきましょう!

 

 

完了の助動詞① 「つ」 「ぬ」

続いて完了の助動詞について見てみましょう。

完了の助動詞は4種類ありますが、その意味の違いで2つのグループに分けることができます。

 

まずは「つ」と「ぬ」について見てみましょう。

 

  未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
つる つれ てよ
  未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
ぬる ぬれ

 

①完了

過去と似た用法ですが、動作が確実に完了してしまうことを表します。

 

例文5:送りに来つる人々、これよりみな帰り。(更級日記)

例文5:送りに来た人々は、ここから皆帰った

 

②強意、確認(確述)

例文6:乳母かへてん。いとうしろめたし。(枕草子)

例文7:黒き雲にはかに出でき。風吹きぬべし。(土佐日記)

 

さて、「つ」「ぬ」で注意するべき難しい用法はこの強意、確認(確述)です。

ある動作を強める言い方で、「きっと~する」「必ず~する」と訳します。

 

この用法で多いのは、完了の助動詞の下に意志や推量の助動詞「む」や「べし」が接続しているときです。

 

つまり、「てむ」「なむ」「つべし」「ぬべし」などという形を見たら、まず強意とみて間違いありません。

 

 

例文6は「てん」、例文7は「ぬべし」という形が現れており、これは強意で訳します。

 

では実際に訳文を見てみましょう。

 

例文6:必ず乳母を変えよう。大変心配である。

例文7:黒い雲が急に出てきた。きっと風が吹くだろう

 

③並列

「~つ~つ」「~ぬ~ぬ」のように完了の助動詞の終止形を2度繰り返すことで動作の並列を表します。

 

例文8:数度入らむとするに、閉ぢ開き入ることを得ず。(今昔物語)

例文8:何度も入ろうとするが、閉じたり開いたりして入ることができない。

 

完了の助動詞② 「たり」「り」

続いて2グループ目の「たり」と「り」について見てみましょう。

 

また「り」については以前の記事もぜひ参考にしてみてください。
(→らりるれろの助動詞をしっかりと区別しよう!

 

  未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
たり たら たり(と) たり たる たれ たれ
  未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形

 

①完了

1グループと同様に動作が完全に完了したことを表す意味を持っています。

 

例文9:疎き人のうちとけたることなど言ひたる、(徒然草)

例文9:あまり親しくない人がうちとけたことなどを言った場合、

 

②存続

もともと「たり」「り」はこちらの意味が主だったようです。

動作が完了したというよりも、まだ続いているということを表します。

 

「~ている」と訳します。

 

例文10:むらさきだちたる雲の細くたなびきたる。(枕草子)

例文10:紫がかっている雲が細くたなびいている(のがよい)。 

 

最後に

今回紹介した助動詞は古文を読んでいて本当によく出てきます。

 

実際に古文を読解しているときに折に触れて意味や用法を紹介すれば
自然と覚えられるのではないかと思います。

 

 

古文の学習では文法を覚えることがもちろん大切ですが、
古文に楽しく触れ合うということが非常に大事なのではないかと思います。

 

 

古文アレルギはとてももったいないです。ぜひ色々な古文に触れて読んでみてほしいと思います。

 

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