光
光の単元といえば、反射、屈折、凸レンズなど図を用いて説明されることが多い単元です。逆に、計算するようなことはほとんどありません。このことから、図やグラフを基にした出題が考えられます。主なポイントは光の屈折・凸レンズ ですので、この2点についての入試問題を取り上げてみます。
光の屈折
岩手県では次のような問題が過去に出題されました。
光の屈折を調べるため、次のような実験を行った。
① 図Ⅰのように、レーザー光を水と空気の境界面に向けて入射させ、入射角を10度から少しずつ大きくし、屈折角が90度になるまで入射角と屈折角を測定した。
② ①で測定した入射角と屈折角の関係を、表1のようにコンピュータを使って表にした。
③ 水と空気の境界面に向けて、入射角60度でレーザー光を入射させた。
このとき、次の問いに答えなさい。
(1) ③でレーザー光が境界面に達した後、レーザー光の進む道筋が境界面となす角度はいくらか。表1を参考にして考え、その値を数字で書け。
(2) 光の屈折によって起こる身近な現象を1つ述べよ。
先生としての目標解答時間は3分です。まずは自分で解き、次に生徒に生徒に解かせるようにしましょう。おおまかな目安として、平均的な生徒であれば自分が解いた時間の2倍を制限時間にするとよいといわれています。
解答・補足
(1) 30° (2)・水を入れたコップの底にコインを置き、コップの上からコインをのぞくとコインが浮き上がってみえる。・虫眼鏡で物を見ると物が大きくなって見える。 ・水を入れたコップの中に入れたストローが折れ曲がって見える など
凸レンズの話も実は光の屈折と関連しています。細かいところまで理解していましたか?やはり先生という立場の上では屈折とは「空気とガラスの境界で光の進む方向が変わること」としてしっかり理解しておかなければいけません。しかし!生徒に教えなければいけないことではありません!まずはコインが浮き上がって見える話のほうが問題でよく取り上げられるのでそちらを重点的に教えていきましょう。
生徒が今後テストなどで役に立つことを教えることを最優先に!!!
それでは解答(1)の解説を行います。
(1) 表1より、レーザー光の入射角が約48°(この角度を臨界角と呼ぶ)以上になると、全反射することが分かる。反射するとき、入射角=反射角 が成立する。③の入射角は60°なので、反射角も60°である。したがって、反射光線が境界面となす角度は、90° - 60° = 30° である。
このように、入試問題の解説を行う際には光の分野でも全反射、反射の法則(入射角=反射角)、屈折の法則などに触れることができます。逆にいうと、それだけ全体を知っておく必要があるということを強調できる機会です。
凸レンズ
沖縄県では次のような問題が過去に出題されました。実際の入試問題では図が記載してありますが、今回は図を省略して載せました。図が必要なのか不要なのかを判断してもらうためです。問題文を読んだら一度自分で紙に概略図を書いてみましょう。
とつレンズによる像のできかたについて実験を行った。これについて、あとの問いに答えなさい。
[実験] とつレンズの位置を固定し、ろうそくとスクリーンを動かしてスクリーンにできる鮮明な像を観察した。このとつレンズの焦点距離は15cmである。
(1) ろうそくをaの位置においたら、スクリーン上に実物より小さい倒立の像ができた。このような像を何というか。
(2) ろうそくをbの位置においたら、スクリーン上に実物と同じ大きさの倒立の像ができたこのときのろうそくと、とつレンズの距離として正しいものを次のア~エから選び、記号で答えよ。
ア 7.5cm イ 15cm ウ 22.5cm エ 30cm
(3) ろうそくをdの位置に置いたら、スクリーン上に像ができなくなった。このときスクリーンを取り除いてとつレンズを通してろうそくを見たら実物よりも大きな正立の像が見えた。このような像を何というか。
先生としての目標解答時間は4分です。
解答・補足
(1) 実像 (2) エ (3) 虚像
a ~ d と図がないのに解けるのか?と思った方もいるかもしれません。しかし、実際はスクリーンにできる像を実像、実物よりも大きな正立の像は虚像と判断することができます。焦点より外側に実物を置くと、スクリーン上に倒立の実像ができます。実際にスクリーンに映る像、略して実像です。
また、実物と同じ大きさの実像ができる距離を(2)では問われています。とつレンズから焦点距離の2倍離れたら同じ大きさになるので、答えは15×2 = 30 (cm) となります。これは実際に図を書いて説明するのがいでしょう。
①光軸に平行な光線はとつレンズを通る瞬間焦点に向かって光は曲がる。
②とつレンズの中心を通る光線は曲がらずにそのまま直進する。
③焦点を通る光線はとつレンズを通る瞬間光軸に平行に曲がって進む。
これら①~③を統合すると下図のようになります。
授業時にもこのような絵を描いて説明すると分かりやすくなるでしょう。また、実像と虚像に関する補足説明ですが、実像は映画の映写機でスクリーンに映された像、虚像はルーペなどで見ている像です。身近な例で親しみを持たせましょう。
音
音に関する問題は ・モノコードを使った実験に関する問題 ・オシロスコープの波形から音の高さや大きさを考える問題 ・音速に関する問題 が代表として挙げられます。特に、オシロスコープの波形から音の高さや大きさを考える問題はよく出題されています。実際、大きさを表している部分と高さを表している部分は生徒は勘違いしやすく、注意して教えましょう!!
それではオシロスコープの入試問題を取り上げます。鳥取県の入試問題の改題です。
先生としての目標解答時間は4分です。
音について次のような実験をした。これについて、下の問いに答えなさい。
実験1 モノコードを用いて、弦の長さ、弦を張る強さ、弦の太さを変え、弦を同じ強さではじいて音を出し、音のちがいを調べた。
実験2 音さをたたいて、音さの出す音の振動の様子をオシロスコープで調べた。
実験3 300m離れたA地点とB地点の間で、ピストルの音がトランシーバーから聞こえた時ストップウォッチをスタートさせ、空気を伝わってきた音が聞こえた時、ストップウォッチを止めた。そのとき、ストップウォッチは0.87秒を示していた。
(1) 実験1において、弦を張る強さを同じにして、弦をはじいたとき、いちばん低い音が出るのはどの場合か。もっとも適当なものを、次のア~エから1つ選び、記号で答えよ。
ア 細い弦で、弦が長い場合 イ 細い弦で、弦が短い場合
ウ 太い弦で、弦が長い場合 エ 太い弦で、弦が短い場合
(2) 実験2において、たたく強さだけを変え、より弱くたたいた。このときの振動のようすは実験1と比べてどのようになるか。オシロスコープの波形の山の数、山の高さについてそれぞれ述べよ
(3) 実験2と同じ実験条件で、別の音さを用いて同様の実験を行ったら、実験2よりも低い音が聞こえた。このときの振動のようすを表した波形は実験1と比べてどのようになるか。(2)と同様に山の数、山の高さについて述べよ。
(4) 実験3の場合、音が空気中を伝わる速さは何m/秒か。小数第1位を四捨五入して、整数で求めよ。
解答・補足
(1) ウ (2) 山の数 変わらない 、 山の高さ 低くなる
(3) 山の数 少なくなる 、 山の高さ 低くなる (4) 345m/秒
(1)振動数が少なくなるほど低い音になります。弦が太くなるほど重くなり振動しにくくなり、振動数が少なくなります。従って、低い音になります。また、弦が長くなるほど重くなり振動しにくくなり、振動数がすくなくなります。従って、低い音になります。
(2)たたく強さしか変えていないので、音の高さは変化しません。机を強くたたいても弱くたたいても音の高さは変わりませんよね?したがって、山の数(振動数)は等しいままです。振動数とは、1秒間に振動する数、オシロスコープの波形では、「山の数」にあたります。弱くたたいたという事は、山の数が変わらず、山の高さ(振幅)は低くなります。
(3)低い音が出たということで、振動数が少ないので山の数は少なくなります。
(4) 300 ÷0.87 = 344.8・・・ = 345[m/秒]
速さ = 距離 ÷ 時間です。
振動数や波長などの言葉は高校物理の音の分野になれば頻出するワードですが、中学理科ではほとんど出てきません。特に波長は全くと言っていいほど出てこないので、教える必要のないことはできる限り省略しましょう。最優先で教えるべきことは 振動数が大きい(山の数が多い)=高い音が出る ということです!
音に関してはすでに次のような記事があるのでさらに詳しく知りたい方はこれらを参照してください。
「[中学理科]音の理解に役立つ知識を紹介!①」(http://www.juku.st/info/entry/390)
「[中学理科]音の理解に役立つ知識を紹介!②」(http://www.juku.st/info/entry/395)
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