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【教育の未来を考える】iPadが塾の授業にやってきた!授業で効果的にタブレット教材を使うには?

2021/12/17

情報技術の発展に伴って,学習塾でもタブレット端末の導入が進んでいます。タブレットは手軽に持ち運べ,操作性も向上し,日常の様々なシーンで活用されていますね。ここでは,学習塾の集団授業におけるタブレット端末導入のメリットとデメリット,そして効果的な活用法についてお話ししたいと思います。

なお,授業形式として,講師がタブレットなどを使わずに講義ないし学生と対話をしながら進めていく授業(以下,これをライブ授業と呼びます),映像のみを使った授業,ライブ授業にタブレット端末を取り入れた授業などがありますが,ここでは最後の,ライブ授業+タブレット端末型の授業についてお話していこうと思います。

タブレット端末を授業に導入するメリット

 授業へのタブレット端末導入のメリットは大きく分けて3つあります。

  1. 楽しんで学習できること
  2. 授業の質を標準化できること
  3. わかりやすく伝えられること

楽しんで学習できること

1つ目は共感される方も多いと思います。子供に限らず,人はゲームや音楽,映画が好きですね。テレビやラジオ,ゲームなどをやる感覚の延長線上でタブレットの活用ができると思います。実際,英単語や日本史など,多くのアプリ教材も出ています。ゲーム要素を学習に取り入れることで,学生のやる気を引き出すことができます。

授業の質を標準化できること

2つ目のメリットとして,授業の質を標準化できることが挙げられます。例えば,学習単元の説明動画などを活用することで,新人,ベテラン問わず,画一化された内容の授業を展開することができます。新人の講師はこれに沿って授業を展開すればいいし,ベテランの方はさらにオリジナリティのある説明を付加することで,学生の満足度を上げられると思います。

分かりやすく伝えること

3つ目は,わかりやすく伝えることができるという点です。これは,口頭や黒板,ホワイトボードでは伝えにくい部分を,たとえばタブレットの動画を使って説明することで,よりイメージしやすく,臨場感をもって理解させることができると思います。

このように,エンターテインメント的な要素や,授業の質の担保,従来では難しかった説明をより簡単にするといった多くの可能性をタブレット端末は秘めていると考えられます。

 タブレット端末を授業に導入するデメリット

 しかし,授業へのタブレット端末導入にはデメリットもあります。

  1. 生徒が端末を忘れてしまうこと
  2. その場の空気感が伝わらないこと
  3. ライブ授業において,講師の説明とタブレット利用の切り替え時に発生するタイムラグ

生徒が端末を忘れてしまうこと

1つ目は,そもそもタブレット端末を忘れてしまっては授業が成り立たないということです。これは,教科書を忘れてしまう学生がいつの時代でもいるように,避けがたい問題です。その他にも,付属のイヤホンを忘れてしまったり,充電が切れていたりと,授業インフラが整わないという点で問題が発生します。

その場の空気感が伝わらないこと

2つ目はその場の空気感がタブレット端末だけでは伝わりにくいことです。授業で説明をするとき,講師は論理的な説明を心掛けなければなりませんが,伝えているのは論理だけではありません。通常コミュニケーションは,論理に加えて意識的・無意識的に相手の情動に訴えかけています。それは表情であったり,ジェスチャーであったり,言葉が担う役割以外の部分で訴えかけます。

アップル社のCEOであった故スティーブ・ジョブズ氏は,言葉以外にも表情,間,ジェスチャーなど,プレゼンをトータルで演出することで,新製品を人々の記憶に強く焼き付けました。これは機械でなく,その場にいる人間にしかできないことです。ここにタブレットによる説明の限界があると思います。

タイムラグの発生

そして最後に,ライブからタブレット,あるいはタブレットからライブの切り替え時に発生するタイムラグの問題です。学生一人一人に端末を配布して授業を行う場合,機械に慣れている学生もいればそうでない学生もいるため,いくらタブレット自体の操作性が優れているとはいえ,処理スピードにばらつきが出ます。そうすると,処理が速い学生にとっては,他の学生を待つ時間が無駄になってしまいます。

授業時間は,学習塾によって様々だと思いますが(50~90分が通常でしょうか),いずれにしても時間的な制約があり,話すことも限られてきます。そのため,講師の方はなるべく無駄な時間をなくしたいと考えているでしょう。授業のテーマに直接関係のない話をする時も,学生のモチベーションを上げる話だったり,最終的にテーマの理解を助けるものであったりすると思います。しかし,この切り替え時のタイムラグが生み出す空白の時間は,ネガティブなものしかありません。結果,授業全体のクオリティの低下につながります。

以上のように,タブレットの活用には多くの問題もあるのです。

タブレット端末の効果的な使い方

それでは,以上を踏まえたうえで,ライブ授業に効果的にタブレットを導入する方法を考えます。なぜなら,「タブレットでの学習は基本的に楽しい」ため,うまく活用することができれば,大きな学習効果が期待できるからです。

切り替え時のタイムラグの問題は非常に大きな問題ですが,これはなるべく授業時間内での切り替えを行わないとすることで解決できます。具体的には,標準化された説明が内蔵されているため,これを予復習教材として活用することが挙げられます。とにかくどこにでも持ち歩けてどこでも見られるのがタブレットの利点ですから,この点を活かさない手はありません。さらに,映像などを見せた方がわかりやすい場合のみに限定する,授業の最後10分程度のところで確認テストとして活用するなどが考えられます。

そして当然,授業インフラの問題として,貸し出し用の予備の端末,イヤホン,充電設備などを完備することが必要です。情報漏えいの観点から,インターネット機能には制限をかけておくことも必要でしょう。

やはり主役はライブ授業

最後にまとめると,ライブ授業+タブレット型の授業では,ライブ授業がメインであり,タブレットは補助的に使うというのが理想だということです。あくまでも,講師の説明がメインであり,学生の情動に訴えかけ,オリジナリティ溢れる授業を展開することが望ましいです。そうでなければ,わざわざ安くない人件費を払って講師を雇う意味がありません。完全な映像授業に切り替えてしまっても問題はありません。ですから,その場の空気感を大事にすることです。

こうした「心構え」に加えて,標準化された説明を予復習教材として使う,必要な場合のみ授業中の活用をするといった「仕組み」を組み合わせることが,この形式の授業を成功に導く鍵だと考えます。

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