【第1回】塾講師が生徒・保護者と良い三角関係を築くには?生徒のタイプ別解説!
勉強するのは生徒本人
とても当たり前のことですが、「勉強するのは生徒本人」という事を私たち講師がもう一度認識する必要があります。現役講師の中にはなぜ、わざわざこんな事を言う必要があるのかと困惑している人もいることでしょう。しかし、生徒のモチベーションをあげる為にも、私たちがこのことを再確認してから授業をする必要があるのです。
【生徒が頑張る3つの理由】
- 将来の夢や目標・自ら燃やす闘争
- 物理的ご褒美
- 精神的ご褒美
大きく分けると、生徒のやる気が上がる理由はこの3つに分類されます。どのような生徒がどのカテゴリーに属すか、それぞれの対応の仕方とその注意点も交えてお話していきます。
①将来の夢や目標・自ら燃やす闘争心
元からある程度やる気のある生徒に多い傾向
自分で決めたゴールに向かって進む生徒には、モチベーションを上げる為に講師や保護者がけしかける必要はそれほどあまりありません。将来お医者さんになりたい・学校の先生になりたい等の具体的な夢があればあるほど、その夢に向かって自ら努力をします。そのような生徒には、わざわざ「勉強しなさい!」と言う必要がなく、そのような言葉は逆効果になってしまうこともしばしばあります。
さらに、ライバルがいると燃える等と言う生徒もよく見かけます。そういう生徒たちは、生徒同士で上手に競い合う精神を初めから備えています。講師は、テストの結果を塾に掲示したり、今回のテストで一番だった生徒の名前を発表したりするなどして、さらにライバル心を引き出すことが大切です。講師や保護者が上から物を言うより、圧倒的に効果的です。
※ここで注意! 自ら闘争心を燃やす生徒以外には、この方法は絶対に禁止です。自分にあまり自信がない生徒に対してやってしまっては、さらに自信を喪失させてしまう可能性があります。生徒の性質をよく見極め、充分に注意して行ってください。
②物理的ご褒美
あまりやる気のない生徒に効果的
特に将来の夢がまだ決まっていない生徒の場合、何を目標に頑張れば良いのか分からないという悩みを持っています。そのような生徒は、「勉強してどうなるの?」「なんで勉強するの?」という疑問を常に抱いています。将来的にその勉強が役立つことを伝えることはもちろん大切です。しかし、それを簡単に伝えることがなかなかできないのも事実です。そこで、このような考えの生徒には物理的なご褒美が必要です。例えば、「漢字テスト満点を1ヶ月続けたら図書券をもらえる」や「英検3級を合格したら好きなゲームソフトを買ってもらえる」など…遠い将来を想像させて勉強の意義を訴えかけるより、まずは目先のご褒美の為にモチベーションを上げて頑張ってもらう、というのも一つの方法です。
※ここで注意! このようなご褒美は、金銭が絡んでくることがあります。講師が生徒にノートやチョコレートをあげるくらいでしたら大きな問題にはなりませんが、金額が大きい時は要注意です。だからと言って口約束だけでは生徒との信頼関係は築く事が出来ないので、その点に関しては勝手に決めず、上司や保護者ともよく話し合ってから決める必要があります。
③精神的ご褒美
自分に自信がない生徒に効果的
②の場合と少し似ていますが、ご褒美を必ずしも物質であげる必要はありません。部活と勉強を両立している生徒、毎日宿題を欠かさずやってくる生徒等には、ぜひ褒めてあげましょう。特に今まで自分に自信がなかった生徒に対しては、褒めてあげることによって自信を持たせてあげることが大切です。そうすることによって、生徒たちは「私は見られているんだ」という意識が生まれます。一番望ましいのは自分の目標の為に自ら頑張ることですが、注目されているから頑張るというのも勉強習慣をつける最初の一歩としては充分な動機になるでしょう。
※ここで注意! 褒めすぎてはいけません。褒められて不快に思う子供はいないと思いますが、褒める時はしっかり気持ちを込めて、適当には言葉をかけないことです。それが教育の基本です。上の空で話していると、生徒はそれに気づきます。
十人十色の生徒たちの中には、上記に挙げたような3つの枠に当てはまらない生徒もいると思います。むしろ、全員をこの3つだけに分類することは不可能ですし、型にはめた教育ではとても浅いものになってしまいます。ですのでここでは、大きく分類するとこの3つのカテゴリーになる、という認識で読み進めていって下さい。
知識という財産
先にも述べたように、自ら闘争心を燃やす生徒に対しては、モチベーションを上げる為の苦労はさほど必要ありません。以下では、物理的または精神的なご褒美を期待している生徒たちに対して、講師が何をするべきかをもう少し深く考えていこうと思います。
確かに、将来の夢がまだ決まっていない生徒に対して、将来のことを想像させて勉強をするように促すのは無理のある話です。高校生にでもなってくればある程度「社会人」が見えてきますが、小学生や中学生にとっては、まだまだ見えない先のことです。それにもちろん、将来の夢がまだ決まっていないことを焦らせる必要も全くありません。
よって「テストで満点をとる」や「クラスで5位以内になる」等の身近な目標を立てることが大切です。何年も先の事をイメージさせるのではなく、2週間後のテスト、1ヶ月後の成績発表に向けて一つずつしっかりと努力をしていくように促す方が、生徒にとってはモチベーションが上がります。
そうやってコツコツ勉強する習慣をつけていけば、いつしか自ら勉強の楽しさに気がつく時が来るでしょう。
それまでは講師たちが寄り添う必要があるのです。
目標としての「クラスで5位以内になる」は素晴らしいことです。そして、将来がまだ見えない生徒たちに「クラスで5位以内になったらケーキの食べ放題に行く」というご褒美は目標に向かって頑張る動機付けになるでしょう。しかし、この動機付けに癖をつけてしまっては危険です。
一度この方法が当たり前だと生徒が思ってしまっては、今度はご褒美がなければ頑張らない生徒が生まれてしまう危険性があるのです。確かに私たち大人も、報酬の為に働いています。これは全世界共通の認識でしょう。世の中にはボランティア活動も多くありますが、同じ「労働」ならば「無益」よりは「有益」を求めるのは人間の根本的欲求です。大人の世界の場合、その報酬は金銭的なものであることが多いです。しかし、それと子供たちの勉強とは異なります。
勉強は、金銭的報酬を受ける為にやっている訳ではありません。
子供たちは、勉強することによって「知識」というとても高価なものを得ることが出来ているのです。
大人になってから何かを勉強したいと思った時に、自分で働いたお金で学校に通ったり通信講座を受けたりします。「学生の頃にもっと勉強しておけば良かった」と社会人になってから嘆いている大人は世の中に多くいることでしょう。
しかし子供たちは、その保護者のお金で学ぶ機会を得られているのです。小学生、中学生、高校生の中には、知識が財産であることを理解している人はそうそういません。それは、誰しもが大人になってから気付くのです。私たち講師側にはその事を理解している人は多いと思いますので、その自分たちの経験や体験談などをしっかり話し、もう一度生徒たちに「誰の為に勉強をしているのか」を認識させてみましょう。
その事を伝え続ければ、ご褒美の為に勉強をしている訳ではないと気が付いてもらえるでしょう。その認識が出来るようになれば、それはもう生徒たちが自分自身でモチベーションを高く保つ術を習得したということです。