講師の皆様こんにちは!
今回から理科の指導法について、連載を書かせて頂きます。
というのも、中学受験理科の指導ができる先生を、一人でも増やしていきたいと考えているためです。
私自身、小学生から中学生までのほぼ全ての教科を教えてきましたが
その中で最も苦しんだのが、理科の指導でした。
心当たりがある先生、大丈夫です。
私は「どうすれば生徒の成績を上げられるだろうか」と毎日試行錯誤を続けてきました。
そのノウハウを、ぜひ皆様にお伝えしてまいりたいと思います。
特に「文系だけど理科を教えている」先生は、ぜひ参考にしながらご指導頂ければと思います。
理科とはそもそもどんな学問なのか?
皆様は「理科って何ですか?」と生徒に聞かれたら、どうお答えするでしょうか。
少し考えてみてください。
・・・
・・・
・・・
よろしいでしょうか。
では、最初に辞書の定義を見てみましょう。
wikipedia
日本での学校教育(小学校・中学校・高等学校)における科学教育全般を指している(日本以外の類似する教育分野は主として「科学教育」と呼ばれる)。自然科学に関する教育活動全般の他、環境教育[1]や食育なども理科教育に含められることがある。また、理科教育振興法で規定される「理科教育」には学校教育の「理科」に加え「数学」の分野も含まれている。
引用元:http://urx.nu/dbSu
大辞林第三版
① 学校教育で,自然界の事物・現象を学ぶ教科。
② 自然科学の学問。また,それを専攻する大学の部門。理学部のほか,工学部・医学部・農学部などを含めていう語。
引用元:http://urx.nu/dbSp
デジタル大辞泉
1 人文科学・社会科学以外の学問分野。数学・自然科学など。⇔文科。
2 大学などで、1の分野を研究・教育する部門。⇔文科。
3 学校教育における教科の一。自然現象・自然科学を内容とする科目の総称。
引用元:http://urx.nu/dbSp
いかがでしょうか。
いずれにも共通している「自然科学」というキーワードに気づいたでしょうか。
そう、実は理科というのは自然を学ぶ学問のことを指します。
てこも、光合成も、化学反応も、星も、全ては「自然現象を理解する」ための基礎学問として、理科を学ぶことになっているのです。
このことを知らないで指導をしてしまうと
「月は公転図さえ書ければ良い」
「植物は暗記科目である」
「溶解度は計算で解くものである」
などと教えてしまいがちです。
でも、入試で聞かれるのは暗記ができる生徒ではありません。
自然現象に興味関心を持ち、理解する下地を持っている生徒を採りたいのです。
ここをまず間違えないようにしましょう。
私はこれを自分なりに解釈して、以下のように定義しています。
理科とは、自然に興味・関心を抱かせ、その上でその仕組みを論理的に考察できるようにする学問である
もしよろしければ参考にしてみて下さい。
中学受験理科における3つの種類
では、中学受験ではどのような意図をもって、問題を作る(これを作問と言います)のでしょうか。
これは、理科の学問特性を考えればわかります。
少し考えてみましょう。
・・・
・・・
・・・
わかりましたでしょうか。
理科は自然科学を考える学問でしたね。
言い換えると「暗記に頼っている」「自然に興味が無い」「適当な推理をする」
といったことをしている人は、理科の素養がない!ということになります。
その素養を測定するために問題としては、以下の3パターンに集約されます。
1、最低限の基礎知識
どんな優秀な人でも、何の前提知識も無しに考えることはできません。
ですから、考察するための最低限の知識の確認を入試問題では行います。
2、前提条件を与え、考えれば解けるように作られた考察問題
ただ覚えているだけの人を区別するためには、知っている知識をベースにドコまで考えられるのかを問う問題をつくることが最適です。
そのため、教科書に載っている知識を元に、新しい実験データや知識を与え、まとめることにより答えがでるような問題が数多くでてきます。
3、科学的発想力を問う問題
俗に言う「フェルミ推定」や「ロジカルシンキング」といった内容を確認する問題です。
科学をベースに発想力を問い、その論理性や発想力を評価します。
これだけではちょっとわかりにくいと思うので、植物を例に挙げてみます。
知識:光合成とは何か、100文字で説明せよ。
考察:今と比べ、中生代は光合成が盛んだったと言われています。なぜ盛んだったのか、理由を説明しなさい。
発想:人間が光合成できる技術を有すれば、食糧問題は解決すると思うか。根拠を示して考えを述べなさい。
いかがでしょうか。私が作った拙い設問ではありますが、これで大体のイメージが掴めると思います。
(答え・解説は本文末尾にあります。もしよろしければご参照下さい)
では、この中で私たちは授業内で、どの部分を重点的に教えればいいのでしょうか。
教えるべきポイントは?
知識問題は、日々の勉強量により左右されます。
そのため、低学年(4年~5年前半)や学力が低い生徒に対しては、ココを重点的に教えます。
また、あまり偏差値が高くない学校ではほとんどがこのタイプの問題で占められています。
ですから、自ずとドリルやテキストによる、反復学習を行っていきます。
考察問題は、まさに合否を分ける内容になります。
しかし、自発的に考える時間を家庭で確保するのは至難の業です。
そこで私たち、塾講師の出番となります。
適切な問いを与え続け、その場で考える訓練を施す。
これは塾でしか培えない、しかし受験指導に必須の考え方になります。
発想問題は、御三家を中心に難関校で散見される問題です。
難関校を受験されない生徒をお持ちであるならば、このような問題は必要ないでしょう。
しかし、難関対策を任されるなら話は別。
一からこのような思考法の教え方について、学ぶ必要があります。
(今回の読者層は講師歴3年未満と考え、この内容は割愛します)
まとめ
今まで述べてきた内容をまとめると以下の通りとなります。
これだけは忘れずに、理科の指導に臨むようにしましょう。
理科は、自然科学をベースに「考える」力を育成する学問である
理科の指導では楽しみながら考える時間を作ることが必須である
指導方法をきちんと検討することが、理科を好きにするきっかけ作りとなる
次回より、各単元で確実に押さえるべきポイントや、指導上のコツについてお伝えしてまいります。
お楽しみに!
(今回の解答)
知識問題
光合成とは、植物が葉緑体で行う化学反応である。養分(でんぷん)を作ることを目的として、土から水、葉から二酸化炭素を吸収し、光エネルギーを用いて養分を合成する。その際副産物として酸素が発生する。
必要な用語は
・光合成
・葉緑体(葉緑素でも可)
・でんぷん(養分でも可)
・水(水分でも可)
・二酸化炭素
・光エネルギー(日光、光でも可)
・酸素
です。どれか一つでも抜けていたら減点になる可能性が高くなります。
そして、重要なこととして「酸素は副産物である」ということを明記しているか確認して下さい。
光合成の目的が記述されていないと大幅な減点です。注意しましょう。
考察問題
二酸化炭素が多かったため
光合成の基礎知識を元に、考えさせる問題です。
以下に正しい思考の流れを記載しましたので、ご確認下さい。
生徒に指導する際には、どこでつまったのかをきちんと確認することが重要です。
(思考の流れ)
光合成は、光エネルギー・水・二酸化炭素が必要。また、葉緑体で行われる(前提知識)
↓
光エネルギーは現代と中生代で変化がない。 また、水分が著しく違うとは考えられない。
一般的に、植物の葉の付き方は裸子植物より被子植物のほうが効率的であり、体積あたりの葉緑体は今の方が多い
↓
恐竜は温度変化に対応できずに絶滅した。
ということは、二酸化炭素は多かったと推測できる(地球温暖化効果のため)
↓
現在の植物の「限定要因」が二酸化炭素だとわかる
発想問題
人間が光合成技術を有しても、問題は解決されない。なぜなら、そもそも人間が光合成をできるとしたら皮膚から光エネルギーを吸収することになるが、既に服を纏う文化をもっている人類が光合成を行う機会を得ることは少ないと考えられる。また、人類全体が光合成を行ったとしても、必須ビタミンなど不足する栄養素が存在すると考えられるため、光合成単体では解決できないと考えられる。
これは半分お遊びの問題ですが、様々な解答を作ることができるように作問しました。
実際の授業では「光合成ってすごいよね!じゃあ人類が光合成できたら最高にハッピーだね!」と生徒に問いかけると良いでしょう。そうすると大半が「えーやだ!」と返ってきます。ここで「どうして光合成できてもダメなの?」と聞いてみて下さい。生徒の発想力を思う存分、知ることができるでしょう。
つい私たちは固定観念の元「人類が光合成できるとか馬鹿らしい」と考えてしまいがちです。
ですが、そういう観念を壊して質問してみると、良い授業が展開できます。参考にしてみて下さい。
運営部おすすめ記事
理系のあなたに!国語ってどうして勉強するか知ってますか?
【塾講師必見】国語の教え方はこれだ!そもそも国語って何を教えるの?