【塾講師対象】いじめ対策!塾講師ができること~教室の健全な運営を続けるために~
塾の中もいじめが起こりうる場所
2012年度の文科省の調査で全国の国公私立の小学校・中学校・高校などが把握したいじめは、19万8000件にも上り、過去最多を記録したことは記憶に新しいと思います。
調査で発覚しただけであっても、この数字ですから潜在的な数はさらに上乗せされるだろうと言われています。現在、学校ではこうした事態に対応するため校内研修やスクールカウンセラーを雇ったりするなど取り組みがなされてきていますが、中々塾ではまだ大掛かりな取り組みがなされていないのが現状です。
私は塾の教室運営のためにもいじめへの対策を練ることが喫緊の課題であると考えています。決してこのいじめ問題は対岸の火事ではないと思うのです。その理由は以下の3点です。
<塾でいじめへの対策をする理由>
①いじめはどこでも起こりうる
②近年、小学校から塾に通う生徒が増えている
③塾では、テストの成績で順位がつきやすい
いじめは被害者を自殺に追い込んでしまう可能性を常に持っています。もし万が一、生徒が自殺してしまうようなことが起これば内外問わず教室へのイメージが下がり、運営を維持することが難しいくらいの相当なダメージを受けることは間違いありません。
よって本稿では、いじめの防止、起こってしまった場合の対応策について述べていきたいと思います。
いじめの基礎知識
そもそもいじめはどのようにして起こるのでしょうか?結論から言うと、
○「当事者の主観的世界における被害性の存在」
○「力関係の非対称性(アンバランス)」の乱用
の2つが大きな要因であると言われています。
1つ目の「当事者の主観的世界における被害性の存在」は、やっている相手が面白い、楽しいなどを理由に面白半分に言葉の暴力を投げかけたり、肉体的苦痛を与えることで、被害者が「嫌だ」や「痛い」などの「被害性」を感じた時の受身(被害者)側からの視点。
2つ目の「力関係の非対称性(アンバランス)の乱用は、主に加害者側の視点からです。肉体的な力ないし精神的な力関係に不釣合いがあることによる弱者への加害行為を指しています。塾の場合は特に、テストによる成績の順位で精神的な力関係の非対称性へと発展する可能性が高いと言えます。
つまり、いじめは「どこにでも」「誰にでも」起こりうるものなのです。
いじめの見え方
先ほどの冒頭の部分でも調査について少し述べましたが、調査方法によって、いじめの認知件数が異なっています。つまり、いじめは本当に見えにくい構造をしています。さらに言えば、加害者や被害者、周りの子供や大人、それぞれの立場によっても見え方が変わってきます。
まずは、塾の教室内でいじめがおこっていないかじっくり観察してみましょう。ポイントとしては
・多様な情報収集(生徒への聞き取り)
・家庭との連携
・いじめられている(であろう)生徒の立場に立って生徒数人で固まっているグループを観察し
てみる。
などです。中々見えにくい構造をしていますが、粘り強く観察していけばふとした拍子に尻尾が見えることがあります。じっと目を凝らして辛抱強く見てみましょう。
中々見えにくいと述べたのは、意外と仲間内でのいじめが少なくないからです。
専門的な説明を加えるとこうした仲間内でのいじめは、
・「被害が屈辱的で第3者に打ち明けられない」
・「被害ながなかったかのように装う」
・「いじめられた本人が『自分が悪い』と思う」
というようなことがあるために、表面化しないことが多いのです。仲間がいるから何もないと思わず出来る限りその子たちがその仲間内に対してどんな言葉をかけられているかなど気にかけてあげると良いですね。
いじめへの対策
では、次にどのように対策していけばよいのかについて述べていきたいと思います。
未然防止の基本となるのは、児童生徒が周囲の友人や講師と信頼できる関係の中、生徒全員がきちんと「規律」正しい態度で授業を受けるような教室作りをしていくことです。
生徒がもし被害にあってから勇気を出して相談しようとしても信頼できる講師がいなければ相談することはできないからです。
また、生徒に集団の一員としての自覚を芽生えさせることにより、互いに認め合える人間関係の雰囲気を作っていくことができます。
そして「規律」というのは非常に重要です。授業をしっかり受けるような態度を日頃から鍛えておけば、生徒たちも「正しいことを正しい態度で」しようという空気が生まれます。
治安が悪い地域に多く共通している、ゴミが散らかっている状態にならぬよう、教室の中にいじめがあってもいいような雰囲気にしないことが重要なのです。
そうしたことの具体的方法として、私は生徒の会話に対して聞き耳を立てることをよく勧めています。
先程も少し述べましたが、仲間内でのちょっとした侮辱的発言からいじめに発展することはほんとうによくあることです。
なので、会話の中で少しでもそういう兆しが見えたら、講師が「ちょっと待った。今の発言はどういうこと?」と毅然とした態度で生徒の間に入ってしまっても、いじめを防ぐためなら良いと思うのです。
いじめへの対処についてもこれからまた述べていきますが、まずは「いじめを許さない」雰囲気を作っていくようにしましょう。
いじめへの対処
では、次に実際にいじめが起こってしまった場合にどのように対応をすればよいかについて説明します。
結論から言うと、以下のようになります。
①被害者の安全確保
②教室全体での共有
③いじめられた生徒、保護者への支援
①被害者の安全確保
肉体的被害であっても、精神的被害であってもこれを最も優先させてください。冒頭でも述べましたが、いじめは被害者の自殺へとつながる可能性を常に持っている上に、加害による死という最悪の事態も起こりうるものであるからです。
安全確保は早くて早過ぎることはありません。むしろ気がつくときにはいじめの深刻さが増してきているケースがほとんどなので何よりも優先するようにしましょう。
②教室全体での共有
事態を必ず教室長に報告し、教室全体の問題として捉えましょう。教室長と他の講師の方とこれまでの加害者と被害者の情報を共有した上で事後策を考えるようにしましょう。
また、心理学を専門としてきた講師がいなければ必ず専門の医師と連絡を取りましょう。こうした事実が他の生徒に伝われば、様々な影響があることが考えられます。
2次被害を最小限に留めるためにも専門の医師に状況を説明して事後策のアドバイスを貰うとよいでしょう。
③いじめられた生徒又は保護者への支援
そして、②と並行して被害にあった生徒から事実関係の聴取を行いましょう。この部分も②で説明した専門の医師のアドバイスを基に対応していただきたいのですが、
何より大事なのはいじめられた生徒にも責任があると思わせないことです。「あなたが悪いのではない」とことをはっきり伝えてあげ、自尊心を高めてあげるような声かけをしてあげましょう。
その上で最終的には加害者も被害者も親を呼び、今後の対応を相談して決めていきましょう。
まとめ~教室の健全な運営を続けるために~
ここまで、いじめへの対策と起こってしまった場合の対応について述べてきました。
いじめというのは
身体、生命、財産の安全を脅かし人格を傷つける加害行為であり、人権侵害です。
塾に通う生徒が安心してのびのびと勉強をしていくためにも、
いじめを許さないのだという『信念』を持って指導していくようにしましょう。中途半端な指導では事態は絶対に改善しません。いじめの行為には毅然として対応し、一方で行為の背景や抱えている課題には別途対応し、その子の成長につなげる指導を目指しましょう。
以上です。ここまで長文ご精読ありがとうございました!