ある元講師のフィリピン留学[講師目線編2]
はじめに
私は以前フィリピンへ英語を学ぶために留学したことがあります。フィリピンでの英語の授業の多くは欧米とは違いマンツーマン授業が多いのです。私の場合は全8コマの授業のうち6コマがマンツーマン授業でした。そこでのマンツーマン授業はまさに日本の個別指導そのものだったのです。4年間日本で個別指導講師として働いていた私は、ほかのどの生徒よりも日本の個別指導との違いに目が行きました。日本がよいところもあればフィリピンがよいところもありました。なかなか、塾講師を経験してから自らが個別指導塾で教わるということは少ないと思います。そのような経験からぜひ日本の多くの塾講師(特に個別指導塾講師)の皆さんにこの経験を伝えたいと思い今この記事を書いています。私はもう塾講師ではないのでここで経験したことを活かすことはできません。しかし、この記事を通じて一人でも多くの講師が何かを感じてくれたら非常にうれしいです。
今回は前回の講師目線編1の続編となります。講師目線編1を書いていて気づいたのですが、私が目に行くところはかなり基本的なところが多いようです。しかし、基本がおろそかであったらやっぱりすぐに目が行ってしまうし、基本がしっかりとできていればやはりその講師をすごいと思いました。このシリーズを書いていて基本の大事さを改めて実感しています。
なおこの記事は私が実際に経験したことを基に書いている経験談です。すべてがその通りというわけではありません。フィリピン留学のあくまでひとかけらです。また、この記事はフィリピン留学について書いているものではありませんので予めご了承ください。
当たり前のことをキチンとする
当たり前のことをしっかりと守れているでしょうか?塾に長く勤めれば勤めるほど基本をないがしろにしていませんか?私がフィリピンで体験した様々な体験からもう一度基本について考えてください。
①挨拶
挨拶をきちんとできていますか?担当生徒を迎える時やブースに担当生徒が来たときしっかりと挨拶を言葉にしていますか?こちらの講師は必ず挨拶をしてくれます。やはり挨拶から始まると気持ちがいいです。また、挨拶がきっかけで話が進行することも多々あります。その話で講師は生徒のことをよく知ることができますし、また生徒も講師のことをよく知ることができ信頼関係を構築できるのです。私も最初のころはなかなか英語で返すことができず世間話もできませんでしたが、慣れてくると世間話もできるようになり、そこから講師の私生活や趣味など様々なことを知ることができ、より密な信頼関係を築くことができ授業自体も非常に楽しいものとなりました。
また、担当生徒以外の生徒にも挨拶をしていますか?こちらの講師は非常に気さくなのでいろんな生徒に挨拶をしてくれます。また、臨時で一度でも授業をしてくれた講師は名前まで覚えてくれています。自分の生徒以外にも挨拶をすることで教室全体の雰囲気がよいものとなり生徒も通いやすくなります。
②体調管理
国民性なのかこちらの講師は必ず毎日欠席の講師がいます。様々な用事があるのでしょうが、やはり臨時で休むというのは生徒に非常に迷惑をかけます。私の場合、8コマ目にリスニング問題の解説を行う予定だったのですが、その講師が臨時で休んだためにほかの講師が授業をすることになりました。しかし、その講師は臨時なのでリスニングを教えることができずに英会話で1コマが終わってしまいました。臨時で休むのは生徒の学習の進み具合に非常に迷惑をかけますし、また他の講師のも負担をかけます。必ず体調管理はしっかりしてください。
かといって体調が悪いのに塾に来るのはもっと生徒に迷惑です。私の先生のなかには、完全に風邪のようなだるい状態で来た人がいました。ある意味無理をしてでも来たプロ根性はほめるべきかもしれませんが、授業中常にだるそうにしている姿をみるとこちらも勉強する気がおきませんでした。また、異国の地では非常に健康に敏感になります。なのでもしかしたら自分に移るのではという危機感ももちながら授業に臨んでいたので常にハラハラしていました。
体調管理に気を付けながらも絶対に無理はしない。どの選択肢が一番生徒に迷惑をかけないのかを常に考えるべきだと思いました。
③その他
あたりまえですが、生徒が問題を解いている最中に暇だからといって業務以外のこと(携帯をいじる、雑誌を読むなど…)をしてはいけません。こちらの講師は携帯をいじることは当たり前のようにしています。やはりこれはかなり気分が悪いです。またいい先生と感じる講師ほど、携帯をいじったりせずに常に授業に集中しています。
また、生徒が問題を解答している最中に皆さんはどうしていますか。生徒として授業を受けていると集中したいときに先生が見ているのは非常に気が散りますし、正直いるのも気が散ります。自分が一番いいなと思ったのは制限時間まで講師がいなくなることです。これは塾によって禁止しているところもありますので絶対にできるかといえば分りませんが、生徒としては解答中(特に長時間に及ぶテストのようなとき)は講師にいてほしくない、もしくはほかのことをしていてほしいなと感じていました。
上記のようにやむを得ずや戦略的に退席をすることがあると思います。そんな際には生徒に一言かけていってから出ていくと生徒はものすごく安心します。私も初めのころはその一言にすごく安心していました。一体どこに行ったのだろう?という不安が初めには常にありました。「制限時間までには戻ってくるね。」や「教科書をとってくる。」など必ず声をかけて出て行ってあげてください。
講師が自信を持つ
自信を持って教えている講師ほど頼もしいと思うものはありません。講師の自信が生徒のやる気を引き出すといってもいいのではないでしょうか。
留学した学校のTOEICの授業の講師が非常に頼もしかったです。とにかく私を信じなさい、信じれば大丈夫と常に言っていました。この言葉を今打つことは非常に簡単ですが、実際に堂々と言えるかどうかは分かりません。しかし、この言葉を言うことができるならば生徒は必ずあなたを信頼してついてきます。得意科目を教えているときには常に自信を持ちこのくらいの言葉を生徒にかけてみてもいいのではないでしょうか
演習中心か解説中心か
授業にもさまざまな形があると思います。私はここにきて演習中心の授業と解説中心の授業の二つを受けました。これも塾の方針や授業スタイルによって大きく異なると思います。しかし、単元によって授業スタイルをどうするか考えるべきでしょう。
私は1日に8コマの授業を受けています。そのうち解説中心の授業が4つで演習中心の授業が4つとなっています。解説中心授業の2つはリスニングで前日のうちに予習としてテストを解きます。そしてこの2つの授業で間違えたところを中心に解説を行ってもらいます。この形は非常に効率的でサクサク授業が進みますし、わからないところを解説してくれるので非常にありがたく感じます。これこそが個別指導の醍醐味であると再認識しました。集団ではすべての問題を解説するので1つのテストを終わらせるのに時間がかかりますし、解説も薄いものになってしまいます。それに比べるとやはり個別指導での解説は非常に良いものです。しかし、この予習が前提となる授業では生徒のやる気や性格を考えなければならないというのも事実だと思います。予習前提で進めても生徒がやってこなければ意味がありませんので…。
演習中心の授業では問題を授業中に解くのでやってこなかったので授業ができないということはありません。しかし、この演習の時間に非常に重きを置くこととなります。せっかくの個別指導であるのに授業1つをつぶして演習をするように言われるのは少し違うかなと思いました。時間的な問題ですべての授業が予習必須だと寝る時間がなくなるので無理なのですが、個別指導のメリットを考えるとやはり時間がもったいないと思いました。やはり、演習中心にしてもしっかりと時間を区切って授業をしないと演習だけで終わってしまいます。
私の塾は演習中心の授業が売りだったのでなかなか解説中心の授業ができませんでした。しかし、それでも演習7の解説3程度になるように時間をしっかりと区切りなるべく解説を増やす努力をしていました。また、予習中心は生徒の性格を考え、高校3年生か真面目な中学3年生のみにしていました。時間がない受験生はどうしても短時間で多くのことをこなさなければならないので予習型はニーズに合っていました。また、過去問題を解く際は生徒と保護者の了解のもと授業の時間すべてを使用して解答してもらうこともありました。これは、時間をしっかりと計り少しでも本番に近い雰囲気で解いてもらうという目的で行っていました。
おわりに
フィリピンでの英語学習で多くの講師に会いました。今までも多くの日本人講師には出会いましたが外国人の講師にはほとんどであったことがありませんでした。そのためにフィリピンでの体験は非常に興味深いものでした。塾講師を経験し、曲がりなりにも人に教えることをしていたからこそ気づけたことが多かったです。この経験を自分自身の人生に活かすのはもちろん、この記事を読んでくださった講師の皆さんが少しでも日ごろの仕事に活かすことができるのであればとても幸せです。
最後までご覧いただきありがとうございました。