地図を用いてしっかり理解!
初めに
GPSやGoogleマップなど、「地図」は私たちの生活の身近にあります。特に近年では、パソコン・スマートフォンやカーナビの復旧により、一層手軽に使うことができるようになったと言えるでしょう。それほど「地図」とは、人々の生活において欠かすことのできないものであるのです。そして社会科の学習においても、「地図から読み取る」というのは、ひとつの重要な単元であると言えるでしょう。「地図を用いた問題」は、入試問題では2つのパターンで出題が予想されます。
「地理問題の中に組み込まれている場合(Ex.東北地方に関する問題で、岩手県の一部地域の地図が描かれている)」と、「受験する高校の所在する都道府県の総合問題に組み込まれている場合(Ex.千葉県にある高校の問題で、千葉県に関する総合問題の中に、県内の一部地域の地図が描かれている)」です。
聞かれる可能性のある問題は決まっていて、基本的に暗記してしまえばそれで済む単元です。もちろん例外的な場合もありますが、暗記するだけで十分に太刀打ちできる単元です。しかし暗記が苦手な生徒もいるでしょうし、得意苦手や好き嫌いも関係してくるでしょう。より有効な指導を行うことができれば、それに越したことはありません。
そこで「より良い指導を行うためにはどうしていくべきか」を今回の記事では扱っていこうと思います。「ただ暗記させる」のではなくて、「暗記させるためにはどうするのか」「どのような指導を行えばわかりやすいのか」という観点から行っていこうと思います。また、この記事で使用する地図資料は以下に載せておきます。この地図資料を解説に使う場合もあるので、その都度参考にすることをおすすめします。
地図資料
指導手順①:「基礎知識」
まず地図の知識として、「表記がない限りは上が北」になることを覚えさせてください。意外と抜けていることが多いです。
また「縮尺ごとの地図の特徴」を知らない生徒も見かけるので、最初に指導していきましょう。
「1/25000の縮尺」の場合、「1/50000の縮尺」の地図と比べて、「狭い範囲の地図」になってしまいます。その代わり、「細かな部分まで地図に描く」ことができます。
さらに「1/50000の縮尺」の場合、「1/25000の縮尺」の地図と比べて、「広い範囲の地図」になります。その分、「大まかな地図」が描かれ、細部まで表すことができません。
この「縮尺ごとの地図の特徴」については、折り紙などで実際に折ってみると生徒にとってはわかりやすいかもしれません。これらの知識は、以下の指導手順では常識の範囲でもあるので、生徒にしっかり確認してください。また、本番のテストでは、「地図自体が見づらい」ことも多いです。なので、普段からある程度地図から読み取ることに慣れさせておくべきでしょう。
指導手順②:「縮尺計算」
一番生徒たちがつまずく可能性がある範囲といえば、やはり「縮尺計算」に関する問題でしょう。この問題は、主に2つの出題パターンに分かれます。
「地図上での長さを実際の距離に直す問題」と「実際の距離を地図での長さに直す問題」です。後者はあまり見かけないパターンですが、出ないこともありません(難関私立などでは、普通の知識だけでは太刀打ちできないように出題されることもあります)。
計算式を暗記してしまえばいいのですが、2つの計算式をそのまま暗記させるのは至難の業です。数学ではないので、計算式が文字だらけになってしまうということもあり、暗記しづらいというのもあります。ですが、慣れてしまえばそれで得点できる問題でもあるのです。では、どのように指導するべきなのでしょうか。まずはそれぞれの式を見てみましょう。なお、ここでは地図資料を元に考えてみます。
「地図上での長さを実際の距離に直す問題」…地図上の距離÷縮尺(Ex.1/25000など)÷単位の変換(Ex.「cm」を「km」に直すのならば、「÷100と÷1000を行う」など)
「実際の距離を地図上での長さに直す問題」…実際の距離×縮尺×単位の変換(Ex.「km」を「cm」に直すのならば、「×1000と×100を行う」など)
このように、文字で見るとなかなかわかりにくくなってしまいます。そこで、「論理的に考えさせる」という指導法を取ってみましょう。これは、何も難しいことではありません。
「地図上での長さを実際の距離に直す」
縮尺で割って元々の距離に戻す必要があります。そして、それだけでは単位がおかしなことになってしまうので(実際の生活で、駅まで2000000cmなどと表記されることはなく、「m」か「km」で表されるハズです)、問題文で求められている単位に直すことが求められます。
この一連の流れをしっかり指導することで、「計算式の丸暗記」ではなく、「印象づけることによる自然な記憶」を狙いましょう。文字で覚えようとするから難しいのであり、「どのような手順を踏めばいいのか」を示してみると、理解しやすくなるのではないかと思います。
「実際の距離を地図上での長さに直す」
この場合は、まず縮尺をかけて、地図での長さに直す必要があります。また、単位が「km」「m」のままでは地図として役に立たないので(0.00005kmと言われてもピンと来ないでしょう)、単位を「cm」にする計算をしなくてはなりません(「mm」にするような問題は出ることはないかと思います)。この手順で答えを出すことができるでしょう。
まとめ
そしてどちらのパターンであっても、「答えの単位」はしっかりと確認してください。縮尺の計算だけで満足してしまう生徒は例年見かけます。「地図上の長さ」や「実際の距離」を表現するのに「適した単位」に直すことは指導の際に念を押して、そうしたミスは防ぐようにしましょう。
では、地図資料を用いてみましょう。ここでは、A―B間の実際の距離を、kmで求めてみてください。また同じ縮尺の地図上では、10kmは何cmになるかを計算してください。それと同時に、地図資料を眺めながら、どのように指導するのかイメージしてください。
指導手順③:「地図記号」
地図記号を直接問うような出題はないと思っていただいて構いません。出題は、「地図を読み取れるかどうか」に焦点を当てて問われます。例えば地図資料について、選択肢に「D山の斜面には、針葉樹林が広がっている」というような形で書かれます(斜面にあるのは広葉樹林なので、この場合は×になります)。このように、「地図記号」を踏まえたうえで、問題をとく必要があるのです。
地図記号は、暗記してしまえばそれで済んでしまいます。しかし、問題は「地図記号は似通ったものが多く、暗記しづらい」ということです。そこで、暗記しやすくするための指導は、どうすればよいでしょうか。
「似ている地図記号はそれぞれ抜き出して暗記する」のが有効です。
バラバラにしておくよりも、「何と何が似ているのか」「どこで見分けるのか」を理解する必要があります。教科書などには一覧表が載っていると思いますので、それを眺めながら、紛らわしいものは、あらかじめ生徒本人にノートに抜き出させておくといいでしょう。
指導時に「規模やグレードが上がると、地図記号に○がつく」と説明する。
例えば、「交番」に「○」をつけると「警察署」、「小中学校」に「○」をつけると「高校」といった具合です。
「覚えづらいものは、由来を指導する」
例えば、「消防署」はかつて、火事の際に用いられた「さすまた(サツマタ)」をモチーフに地図記号にしている、といった感じです。由来の話と、関連する画像などを組み合わせて説明することで、理解を促すといった方法です。これは、見分けがつきにくいもののにも利用することができます。例えば、「田」「畑」「茶畑」は覚えづらいですが、それぞれの視覚的な様子をそのまま記号にしています。写真で見比べてみるとわかりやすいでしょう。ほかにも、「針葉樹林」「広葉樹林」なども同様です。記号をそのまま覚えさせるのではなく、視覚も利用して、少しでも暗記しやすいように指導していくべきでしょう。
指導手順④:「等高線」
最後に「等高線」について扱います。まず「等高線」には、「1/25000の縮尺ならば10mおき」「1/50000の縮尺ならば20mおき」に描かれています。このことは参考程度として、覚えさせる必要はありません。なぜならば、大体の地図は区切りのいい標高の数値が書かれているので、そこから計算ができるからです。この知識から縮尺を答えさせる問題も、見たことはありません。
しかし、等高線によって、「斜面の急さ」と「川の流れの向き」が求められることは、必ず指導してください。
「斜面の急さ」
等高線の「間隔」から求めることができます。「間隔」が「狭い」ほど、斜面は急になっています(「間隔が狭い」=狭い範囲で標高がすぐに変わる⇒「斜面が急」であると、順を追うとわかりやすいでしょう)。地図資料を例に考えると、①―②間のほうが、③―④間よりも急斜面であることがわかります。基礎知識として指導してください。
「川の流れの向き」
等高線を目安として考える問題です。物は、高いところから低いところに落ちます。水も同様で、高いところから低いところに流れるのです。つまり、「等高線の低い地点が下流」になることを示しています。地図資料では、C川は北西の上流から、南東の下流に向かって流れていることになります。少し応用的ですが、選択肢ではよく見かける問題ですので、指導しておくべきでしょう。
まとめ
指導手順は以上です。例年、入試では2~3問ほどしか出ないかもしれませんが、難しい範囲ではありません。裏を返せば、2~3問必ず出題される単元であるとも言えます。しっかりと得点元とするためにも、指導を行っていくべきでしょう。