多くの高校生、受験生が苦手な“比較構文”
"比較構文"と言われて頭に浮かぶのは、「覚えることが多い」「教えることも多い」「苦手だった」
などの、マイナスイメージが多いと思います。
生徒は覚えることが大変であるのに、先生はそれをうまく解説しなくてはなりません。
受験生の頃、比較構文をひたすら覚えて受験を乗り切ったという先生の方なら、
余計、説明は難しいと思います。
今回は、生徒に比較構文を理解してもらうために、先生の方々に比較構文を
(再)理解していただきたいと思います。
そして、そこから生徒にわかりやすい説明をしていただきたいと思います。
比較構文は、not 単純暗記 but 理解!
上でもしつこく言っていますが、比較は“理解”することが1番です。
扱う範囲が広いので、その分、単純暗記をすると、
生徒に膨大な量を覚えてもらわなくてはいけなくなってしまいます。
覚えるべき点、言い方を変えると、ある種本質的な部分を理解することによって、
暗記項目を減らしていきます。
そのことをこれを読んでいただいてる先生方に理解してもらい、
生徒にも伝えてください。
"not"と"no"の違い!!
”not”と”no”の違いとはなんでしょう?
"not"は、もちろん否定ですよね。
こちらに関しては、特に問題はないと思います。
では、"no"とは何でしょうか?こちらも、否定なんでしょうか?
こちらは否定ではなく、「0(ゼロ)」を表します。
言われればわかると思います。1つ例文です。
ex)I have no money.「私はお金を持っていない。」
お金を0持っている、つまり、持っていないことになりますね。
今日の比較で出てくる"no"は、だいたい「no + 比較級」という形だと思いますが、
"no"は比較級との差を表す(差が0であることを表す)副詞的な役割がある と、
理解させてください。
ここを生徒が理解できれば、だいたいは応用がききます。
no+比較級+than
まず、no + 比較級 + thanです。
①This question is no easier than that one.
このようにno + 比較級 + thanが出てきたら、一度"no"を取ってみましょう。
→This question is easier than that one.
「この問題は、あの問題よりも簡単だ」
「この問題の方が簡単です。」言い方を変えると、「あの問題の方が難しいのです。」
つまり、that one(question) is difficult. が前提におかれます。
では、this questionは、that questionよりも、どの程度、簡単なんでしょうか。
その程度、差を表すのが"no"です。
①の英文を直訳すると、
「この問題は、あの問題よりも0の程度、簡単だ」
→「この問題とあの問題の難易度の差は、0である」
ということになります。
「あの問題は難しい」という前提があったので、
⇒ 「この問題はあの問題と同じくらい難しい」
という訳になります。
したがって、①の英文と=(イコール)関係にあるのが、
=This question is as difficult as that one.
ということになります。
もう1つ。
②She is no less beatuiful than Madonna.
これも"no"を取ってみましょう。
→She is less beautiful than Madonna.
「彼女はマドンナほど美人ではない」
つまり、マドンナが美人であること(Madonna is beautiful.)が前提にあります。
では、彼女とマドンナの美人な程度の差はどのくらいあるのでしょうか?
それが、”no=0”です。
②の英文では
「彼女はマドンナよりも0の程度、美人ではない」
→「彼女はマドンナと美人な程度の差が0だ」
マドンナの美人の程度を100だとすると、彼女の美人の程度は
100-0=100
よって、
「彼女はマドンナに劣らず美人だ」
ということになります。
②の英文と=関係にあるのが、
=Shi is as beautiful as Madonna.
これは、Madonna is beautiful. が前提にあったために成り立ちます。
not + 比較級 + than
次は"not"です。
③This question is not more difficult than that one.
まず、"not"を取ってみましょう。
This question is more difficult than that one.
「この問題はあの問題より難しい。」
問題の難易度(難しさ)を不等号を使って表すと、
this question > that question
"not"は、「否定」を表します。
つまり、notで③の文全体を否定します。
「this question > that question」
notで否定→「this question ≦ that question」
「この問題はあの問題より難しい」
notで否定→「この問題はあの問題ほど難しくはない」
このようになります。
もう1つ。
④She is not less beautiful than sister.
”not”を取ると、
She is less beautiful than her sister.
「彼女は妹ほど美人ではない」
美人な程度を不等号で表すと、
「she < her sister」
"not"で④文全体を否定するので、
「she < her sister」
→「she ≧ her sister」
したがって、
「彼女は妹ほど美人ではない」
→「彼女は少なくとも妹くらいの美しさはある」
と、こんな感じになります。
no + 比較級 + thanよりは、難しくはなかったと思います。
自分がまず理解をし、生徒に伝えてあげましょう。
数字が入る場合
上のものに数字が入った場合です。
⑤I have no more than 1,000 yen.
⑥I have no less than 1,000 yen.
⑦I have not more than 1,000 yen.
⑧I have not less than 1,000 yen.
まずは、⑦から行きます。
"not"を取ると、
→I have more than 1,000 yen.
「私は1,000円より多く持っている。」
不等号で表すと、
「所持金 > 1,000yen」
"not"で文全体を否定するので、
「1,000円より多い」をnotで否定
→「1,001円以上持っていない」「MAX1,000円」
つまり、
「所持金>1,000yen」をnotで否定
→「所持金≦1,000yen」
「私は1,000円より多く持っている。」をnotで否定
→「私が持っているのは、多くて(せいぜい)1,000円だ。」
「MAX1,000円」とは、「多くて1,000円」ということなので、
not more than = at most
ということもわかります。
次は、⑧です。
"not"を取ると、
→I have less than 1,000 yen.
「私は1,000円以上持っていない。」
不等号で表すと、
「所持金 < 1,000yen」
"not"で文全体を否定するので、
「1,000円より少ない」をnotで否定
→「所持金が999円以下ではない」「Min1,000円」
つまり、
「所持金 < 1,000yen」をnotで否定
→「所持金 ≧ 1,000yen」
「私は1,000円以上持っていない。」をnotで否定
→「私は少なくとも1,000円は持っている」
「Min1,000yen」とは、「少なくとも1,000円」ということなので、
not less than = at least
になります。
では、少し難しい"no"が入った方です。
⑤番の英文。
"no"を取ると、
「I have more than 1,000yen.」
↓
下線部より、「1,000円より多く持っている」ことを期待しています。
では、1,000円より多くどのくらい持っているのか。
その"差"を表すのが、"no"です。
つまり、「所持金は、1,000円との差が0」
例えば、みなさんがお小遣い5,000円(1,000円より多く)もらえると期待しています。
しかし、もらった金額は1,000円でした。
みなさんは、どう思いますか?
おそらく、
「1,000円しかもらえなかった。」
と心の中で言うと思います。
これと同じで、⑤の英文の訳は
「私は1,000円しか持っていない。」
になります。
この下線太字「~しか」とは、英語で「only」です。
つまり、no more than = only
になります。
最後に⑥の英文です。
"no"を取ると、
「I have less than 1,00 yen.」
下線部より、「(所持金が)1,000円より少ない」ことを期待しています。
では、どのくらい1,000円より少ない金額を持っているのか。
その"差"を表すのが、"no"です。
つまり、「所持金は、1,000円との差が0」
例えば、みなさんがお小遣い500円(1,000円未満)しかもらえないと期待しています。
しかし、もらった金額は1,000円でした。
みなさんは、どう思いますか?
おそらく、
「1,000円ももらえた。」
と心の中で言うと思います。
これと同じで、⑥の英文の訳は
「私は1,000円も持ってる。」
になります。
この下線太字「~も」とは、英語で「as much as」です。
つまり、no less than = as much as
になります。
クジラの公式シリーズ
いよいよ最後です。
ここまで理解できていて、なおかつ、生徒に理解してもらえそうですか?
1つ1つ丁寧に説明してあげてください。
では最後に有名な「クジラの公式」の例文を生徒にぜひ理解してもらい、
例文ごと覚えてもらいましょう!
☆A whale is no more a fish than a horse is.
「馬が魚でないのと同様にクジラも魚ではない。」
なぜ、このような訳になるのか。
これは、いままで上に書いた"no"に関係しています。
毎度ながら、"no"を取ってみましょう。
また、☆の英文で、「is」で終わるのはおかしいので、
省略されているものを埋めてみましょう。
完全文と完全文の間にある"than"は接続詞なので、その前で1回切りましょう。
A whale is more a fish / than a horse is (a fish).
省略されていたのは、a fish ですね。
than以下の「a horse is a fish.(馬は魚である。)」というのは、
明らかな間違いです。
thanより前の文から、
「クジラが魚である」ことを期待します。
しかし、thanの後ろの文と前の文の差は、"no"があるため、0になります。
つまり、than以下の「馬は魚である」という明らかな間違いと同じくらい(差が0なので)、
「クジラが魚である」という前文も、間違いであることが表されています。」
したがって、「馬が魚でないの同様に、クジラも魚でない」という
訳になるということです。
最後にもう1つ。
これはクジラ公式の逆バージョンです。
☆A whale is no less a mammal than a horse is.
「馬が哺乳類であるのと同様に、クジラも哺乳類である。」
こちらも、"no"を取ってみましょう。
また、クジラ公式文と同じで、「is」で終わるのはおかしいので、
省略されているものを埋めてみましょう。
完全文と完全文の間にある"than"は接続詞なので、その前で1回切りましょう。
A whale is lese a mammal / than a horse is (a mammal).
省略されていたのは、a mammal ですね。
than以下の「a horse is a mammal.(馬は哺乳類である。)」というのは、
明らかに正しいことです。
thanより前の文から、
「クジラが哺乳類でない」ことを期待します。
しかし、thanの後ろの文と前の文の差は、"no"があるため、0になります。
つまり、than以下の「馬は哺乳類である」という明らかに正しいことと同じくらい(差が0なので)、
「クジラが哺乳類である」という前文も、正しいことが表されています。」
したがって、「馬が哺乳類であるの同様に、クジラも哺乳類である」という
訳になります。
どうでしょうか?
一見、膨大な量ですが、"no"と"not"の違い、特に"no"の意味を抑えれば、
訳し方も、その場で導き出せると思います。
やはり、単純な暗記よりも、本質の理解をすることで、
覚える量は減らせると思います。
以上で、比較構文の指導方法の説明は終了です。
みなさんが、今までの知識よりもより教えやすく、理解しやすくなっていただければ
非常にうれしいです。
これを読んでいただいた塾講師の皆さんの授業がうまくいくことを祈っております!