社会科の授業づくり
生徒たちの社会科を受験で戦う強い武器とするためにはどのような工夫をしたら良いか、
社会科に限らないことかもしれませんが、講師の皆さんは日々模索する毎日だと思います。
授業をする以上は、生徒の力を最大限に伸ばせるような授業をしたいですよね。しかし、
50分ほどの授業で生徒にとって、最もわかりやすく、記憶に残るような授業にするためには何をしたら
よいのでしょうか?
生きた生徒が相手のため、これという正解はないものですし、一般化することも出来ません。
ただ、社会科という科目の特性を活かし、最低限おさえておかなければならないことはいくつか
ポイントが有ります。
本稿では、社会科を担当している講師の方を対象に、社会科の授業づくりで重要なことはなにか、
今後の授業に活かしていけるような情報を提供していきたいと思います。
社会科教師の力量
まずは、良い授業を作るにあたっての前提となる部分なのですが、
それを達成するために求められる社会科教師の力量から考えてみましょう。
筆者はこれまで、社会科教師の専門性とはなにかについて日本史を例に説明したことがありますが、(「日本史の授業準備について URL:http://www.juku.st/info/entry/650)
社会科教師の力量とは具体的に以下の2点だと考えています。
1つは地歴分野でも公民分野でも
教える内容の詳細な理解及び研究の最前線を把握しておくことです。
教える内容を深く理解していれば、それの伝え方・指導方法はいくらでも応用が効きます。
それよりもまずは教える自分が専門家のようにその分野に詳しくなっておきましょう。
その際にアドバイスとして伝えたいのが、高校生が使うような参考書の類はもちろん、
専門書も読むようにしましょう。
研究書や論文を読むと、どのような背景や研究をもとに教科書の記述となっているかがわかります。
受験生が使う参考書にはそこまでのものは求められていないので書かれていません。
教科書や参考書からもう1歩奥に踏み込んだ教材研究をするようにしましょう。
2つ目は、
目の前の生徒の状況を的確に見分け、様々なバリエーションで対応できるようにすることです。
冒頭でも述べましたが、授業は生きた生徒が相手です。
例えば、講師が1つのことを理解させるために自身の考えうる完璧な授業が準備出来たとしても
実際の生徒が関心を示さない・理解をしていなければ何の意味も持ちません。
そのためにも、1つ目で述べたような教材研究の段階で生徒の個人差を考えた上で
苦手な生徒にも対応できるような資料を準備しておくこと、そして生徒が興味を示すような教材・発問を
あらかじめ何パターンか考えておくようにすることが求められているのです。
例えば、桓武天皇が平安京へ遷都した理由を考える際に、講師がわかりやすい授業をしたとしましょう。
しかし、その前の奈良時代をちゃんと理解しているかいないかで生徒によって内容への理解は全く違う
ものになってしまいます。
そのような生徒には予め奈良時代を個人指導で再確認しておいたり、振り返りのプリントを作ってあげる
などして対応してあげるとよいでしょう。
それでは、具体的に授業づくりでは何を注意したらよいか次に述べていきます。
1つの授業は何のための時間なのか
問「1つの授業は何のための時間なのか」
まずは、講師がこの問に対する答えを明確に持っていなければなりません。
言い換えれば「この授業で生徒に何を伝えたいか」
さらに言えば授業を終えた時生徒が
「今日は??を勉強しました」の?の部分を考えることと言っても良いかもしれません。
ここで、具体的な目標をたてることが重要です。
- <例>
- ☓今日は乙巳の変を勉強した
- △乙巳の変が大きな時代の転換点となったことがわかった
- ◎乙巳の変は、蘇我氏の専横を防ぎ、天皇中心の律令国家を形成するための入り口であり、中大兄皇子と中臣鎌足によるクーデターであることがわかった。
というように、同じ乙巳の変でも☓と◎では生徒の中に培われているものが全く違うことがわかると思います。
授業では常に具体的に◎のような感想を生徒に持たせるようにしていきましょう。
授業の山場へ向かうまで
さて、歴史を例に進めてきていますが、◎のような感想を持たせるためには、歴史の流れに沿った
学習をしなければなりません。
ここで、このような感想に至るまでの最も有効な方法を紹介します。
授業で最もわかってほしい部分(◎のようなこと)をよく「山場」と呼ぶのですが、この山場に至るまでの
小さなステップを設定することが最も良い手段なのではないでしょうか。
先ほどの大化の改新で考えるなら、以下のようなステップを踏むことが考えられます。
- <例>
- テーマ:大化の改新までの道のり
- (1)隋の滅亡から唐の強大化
- (2)蘇我市の専横
- (3)大化の改新ー中央集権国家への道のり
本稿は指導法の記事ではないので詳述は避けますが、大化の改新はなぜ起こったのか?
どのような背景があったのか?それを達成することで先にあったものはなにか?
上記のような小さなステップを組み立てをすることで、これらの問に対する具体的な解答が出てきます。
ここまで設定することができたら後は1つ1つの項目を関連付けて説明しきれるように
教材研究をしましょう。
実際の授業で気をつけたいこと
内容をしっかり把握したら最後は伝え方を考えましょう。
講師の皆さんはすでにこのような経験をしたことがお有りだと思うのですが、
「伝える」ことと「伝わること」って全く違うものですよね。
自分では分かっていても、100%伝えきるのはなかなか難しいものです。
筆者も記事を書きながら、読んだ人にこれは伝わるだろうか?と常に気を配りながら書くよう心がけています。
授業でも以下のようなポイントに気をつけて伝えると、生徒にもわかりやすく伝わります。
- ●説明が抽象的ではないか?
- 具体的に説明しなければならない部分で抽象的な言葉を使ってしまわないようにしましょう。
- ●主語を明確に説明できているか?
- ☓「野球は、私が3歳のころから習っている好きなスポーツで9人で行います。」
- ○「私が3歳のころから習っている野球は、9人で行うスポーツです。」
- 主語と述語が遠くなりすぎると伝わりづらくなります。出来る限り1分を短く、わかりやすく
- 伝えましょう。
- ●どんな資料があればわかりやすいか?
- 口の説明では伝えにくいところや、イメージしづらい部分は積極的に資料を活用してイメージ
- とともに理解させましょう。
- ●どんな板書をすればよいか?
- 文章の羅列ではなく、各項目を見るだけで説明を思い出せるような構造しましょう。
- ●生徒たちの思考に沿った流れになっているか?
- 初習者の気持ちで、わからないことが順番に謎解きできるような順番になっているかを確認し
- ましょう。
しっかりとした専門性を身につけた上で上記のようなことにも気をつけることができれば、生徒に
必ず授業で伝えたいことを共有できるはずです。是非参考にしてみてください。
まとめ
ここまで、社会科の授業づくりにおいて重要な事をポイントを絞って述べてきましたが、いかがだったでしょうか?
読んでいただいてお気づきの方もいるかもしれませんが、講師が専門的な事を勉強することはもちろん、
わかりやすい授業をするには生徒の目線からも授業を考えなければなりません。
日頃の授業の中で生徒がどんな場面でどんな反応をするのか、細かく観察してみるとよりクラスにあった
授業を作っていくことが出来ると思います。
中々大変な作業ではありますが、その分やりがいも十分です。試行錯誤しながら自分だけのオリジナルな授業で生徒を惹きつけていって上げてくださいね。皆さんのご活躍をお祈りしております。
以上です。ここまで長文ご精読ありがとうございました!