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お金稼ぎは二の次?大学生のアルバイトに対する価値観の変化

2015/03/20

1.仕事が長続きしない原因

「塾講師を長期間定着させる秘訣とは?」では講師がなかなか定着しない原因として環境的要因について分析しましたが、講師が定着しない原因として他にも考えられるものがあります。働く環境などについての話ではなく、働くことから実際に得られるものと、働き手が求めているものが乖離してしまっていることが考えられます。

「なぜ働くか?」という問いに対する答えは人さまざまで、また「働くことから何を得られるか」ということもその職種や環境によってさまざまなことかと思います。採用側が働き手に求める能力や性格に応募者が当てはまっているかどうかは採用基準をもとにした面接や筆記試験などで把握しやすいことと思います。しかしながら、働くことに対する価値観についてはなかなか把握する機会がなく、また応募者からすれば正直に話すことをためらってしまう場合などもあるかと思います。

 

2.大学生のライフスタイル          

塾講師になるのは学生だけではなく、社会人や主婦など様々なバックグラウンドを持つ方がいらっしゃるかと思いますが、今回は大学生に着目して考えていこうと思います。

〇大学生が普段興味・関心のあることとは

独立行政法人日本学生支援機構が実施した「平成24年度学生生活調査」(全国の学生2,961,747人の中から91,349人を調査対象。有効回答数40,924人。)によると、、大学生の不安・悩みについてアンケート調査したところ、「経済的問題」に関して「大いにある」または「少しある」と回答したのが51.9%であったのに対し、「将来や就職」に関してと「大いにある」または「少しある」と回答したのが74.6%でした。

〇収入と支出

同じく「平成24年度学生生活調査」によると、2013年度の大学生の1か月あたりの平均収入は34,116円で、その内訳としてアルバイトからの収入の平均は30,133円でした。参考までに大学生の1か月あたりの平均支出は35,716円と平均収入を大きく上回ります(授業料など除く、自宅生のみ)。もちろん平均なので一概には言えませんが、収入だけではお金が足りず、お年玉などで蓄えてきた貯金を切り崩している学生が多いのではないでしょうか?

 

3.大学生のアルバイトに対する価値観

そもそも、大学生の本分は学問であって、社会的には働くことを義務付けられた存在ではありません。では、いったいなぜ働くのでしょうか?

〇なぜ働くのか

2、で述べたことから窺えるのは、学生は昔からお金がないと言われるように確かに大学生はお金について気にかけていることが多いようですが、金銭的問題を解決することを第一としてアルバイトをしているかといえば決してそうではないようです。もちろん副次的には金銭面も考慮の上だとは思いますが、収入が足りなくても、多くの人にとって最後の学生生活となる貴重な時間だからこそただお金のために働くというわけではなくいかに自分の成長や将来に役立つかということをアルバイトに求める学生は多いようです。

〇初バイトを始めたきっかけは?

株式会社インテリジェンスが公表している「an 若年層白書」によると、大学生が初めてバイトを行うようになったきかっけとして、「自分で自由に使えるお金が欲しかったから」と回答している人が約40%なのに対して、「将来のためにいろいろな経験をしておきたかったから」と回答している人は約21%、「社会に触れておきたかったから」と回答した人が約18%です。このことから、大学生全体ではアルバイトに自己成長や社会経験を求める人が多いですが、大学生でも入学当初やまだ学年が低いうちは自由に使えるお金が欲しいと考えてアルバイトを始める人が多いようです。おそらく中学生や高校生という自由が制約された世界から大学生という世界へ出るとその自由さゆえにお金についても自分で稼げば自由に使えるということからアルバイトに興味を持つ人が多いようです。しかし、学年が進むにつれ様々な仲間に出会ううちに互いに刺激され、将来について深く考えるようになる人が多いのではないでしょうか。これに伴ってアルバイトに求めるものもお金から経験へと変化しているようです。

〇初バイトを知ったきっかけは?

また、同じく「an 若年層白書」のアルバイトを知ったきっかけに関する調査結果は興味深いものとなっています。大学生では上位から順に「Webの求人サイト」が約27%、「友人から勧められた」が約15%、「親から勧められた」が約13%となっています。これに対し、フリーターでは上位から順に「友人から勧められた」が約23%、「Webの求人サイト」が17%、「よく行くお店に張り紙があった」が8.5%となっています。

このことから、大学生になって初めてアルバイトを行う層(受験終了後春休みの高校生や入学直後の大学一年生)では、アルバイトに関する情報源はWebであることがわかります。これに対し社会経験が多いフリーターではアルバイトに関する情報源はWebではなく友人・知人であることが窺えます。同じ大学生でも、学年が上がるにつれて自分と興味や専門、志を同じくする仲間が増え、そこから得られる情報も格段に増えることが予想されます。先ほどアルバイトに対する価値観が変化していくと述べたことと同じように、アルバイトについての情報源も変化していき、またその中でアルバイトの選択肢がWebで広く一般に募集されている仕事から、知人・友人を通じて知る募集情報の少ない職業にまで広がり、より自分の将来設計や得たい経験に見合うアルバイトに出会うことが多くなると考えられます。

4.「塾講師」という選択肢はどのように捉えれているか

いままで述べてきた、

①大学生のアルバイトに対する価値観は変化する

②大学生のアルバイトの情報源は変化する

という2点を合わせて考えると、受験終わりたての大学生がまずは自分で使えるお金が欲しいという興味からWebで比較的広く募集されているメジャーな塾講師という仕事を始めるケースが多いのではないかと思われます(必要とされる能力も適しています)。

しかしこういったケースがすべていけないというわけではなく、大切なのは「働き手が求めるもの」と「働くことで得られるもの」が乖離しないように、あるいは乖離していない人を採用するように心掛けることです。「塾講師」は世間的には給与面も良いとされる仕事ですので、どうしても給与面に目が行って選択してしまう人も多いはずです。その人がアルバイトに本当に求めているものは何か、仮に働いてもらうことになったらその仕事内容や職場の環境からその人へ与えられることは何かと考えることで、より良い採用活動が行えそうです。

 

 

 

 

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