ノートと板書と生徒からの質問はちゃんと連動しているか【塾講師バイト編】
生徒の質問には原因がある
生徒さんが質問をしに来た事はありますか? その時、しっかりと答えられたでしょうか。もしも一度もそのような経験が無いとしたら、注意した方が良いでしょう。教え方が完璧であるという可能性よりは、あの人には質問したくない、もしくは分かり辛くて何処から聞けば良いのか分からない、と思われている可能性の方が高いでしょうから。
さて、実際に講師である我々はある種の得意科目を教える事の方が多いでしょう。生徒にしたって、「英語だけはどうしても駄目なんだよね」という先生に英語を教わるよりは、「英語なら任せろ!」という先生に教わりたいと思う方が自然です。しかし、ここでどうしても齟齬が生まれます。良く言われる「何故分からないのか分からない」という現象です。英語が得意な人にとって、中学3年生でありながらbe動詞の使い方があやふやなまま、というのは正直理解に苦しむでしょうし、それが自然だと思います。
本稿では、そういった「何でこの子はここが分からないんだ?(どう教えれば分かるんだ?)」という疑問に対してアプローチしていきます。筆者は家庭教師の経験が長い為、得意科目も苦手科目もひっくるめて全部教えています。筆者は英語が苦手で数学が得意、という生徒でしたが、家庭教師では5科目全部を担当しているのでそういった発見は塾講師だけをしている方々よりは多いだろう、と思っています。
また、記事の特性上、特に大人数を教える講師の方にとってより身近な問題を解決していく事になります。少数クラスの講師の方にもご利用いただける価値があるとは思いますが、特に大人数クラスの講師の方を意識したものである事をご了承ください。
齟齬を認識する事
とても分かりやすいので英語を例にこれから説明していきますが、本質的にはどの科目も一緒です。自分の担当科目に当てはめて理解していって頂ければと思います。
「先生、疑問詞が分かりません」
と、生徒が質問に来たとしましょう。ちょうど初めてのWhatに困っているようです。講師からすれば、疑問詞は「初めにyes/noで回答出来る疑問文を作り、頭に疑問詞を付ける。その後答えになる部分を文章から省く」というだけのシンプルな項目ですが、どうやら生徒はそれを理解出来ていない。
問題は、その「理解出来ていない」部分になります。質問に来ている以上理解出来ていないであろう事は分かりますが、それだけでは「何故分からないのか」「何処で躓いているのか」が分かりませんし、となれば勿論どう教えれば良いのかも分からないでしょう。その原因を探る必要があります。どうやったら垣間見る事が出来るでしょうか。
原因を探す
最も良い方法は、類似の問題をその場で解かせる事です。
これは筆者が見て来た生徒の事例ですが、例えばwhatが文の頭に来ていないとします。これはもう、そもそもの「疑問詞の使われ方が分かっていない」という事が分かりますから、「私たちが理解している疑問詞の使い方」ーーつまり、「 初めにyes/noで回答出来る疑問文を作り、頭に疑問詞を付ける。その後答えになる部分を文章から省く」というルールについて教えましょう。同時に疑問詞を用いた文章を見せれば、「whatを無くすとただの疑問文になる」事や「必ず文頭に付く」という事が認識されます。
そしてもしもwhatを隠して「今までの疑問文通りだよね?」と言っても「?」な顔をされたとしたら、その生徒は疑問文自体を理解出来ていないかもしれません。そこまで遡って教える必要がある、という事が分かります。
しかしこの方法には問題があります。生徒一人に多くの時間をかける必要が出てくることです。特に大人数の教室になれば、質問にくる生徒が増えてしまう訳ですから。全員に類題を解かせて、一人一人違うであろう理解度に併せて教え方を変えて、では時間の都合上不可能であるかもしれません。
そういった場合は、事前準備が必要になりますが次の手段が簡単で、かつ最適でしょう。それは「ノートを見る」という事です。この方法をとる為に必要な事前準備とは、つまるところ「日頃からノートを取らせる」という事に尽きます。家庭教師ではノートを書かせる時間は取れないので学校のノートを見せてもらったりもしていました。ノートを取らせると言っても、答えだけ書く様な形式では無意味です。見ても私たちには何の事だかさっぱり不明です。単元毎に、全問である必要はありませんが数問、しっかりと過程を記述して解かせましょう。これには、私たちが見て分かりやすいというだけではなく、生徒達も自分が「どこで分からないのか」を自分自身で認識出来るという利点もあります。
すると、質問の仕方が「疑問詞が分かりません」ではなく、「疑問詞の、訳し方がどうしても分かりません」だとか、「普通にやる分には分かるんですけど並べ替えになると困ってしまいます」とか、或いは「What time~?って形はどうして直後にtimeがくるんですか」等、具体的な質問が出やすいでしょう。
すなわち、先の方法では講師が行っていた「何処で躓いているのかを探す」事を生徒自身にやってもらうという事になります。一見するとこちらの方が最良の方法にも見えるかもしれませんが、ただ教えるという事を考えるとたまに難点があります。生徒の字がとても読めなかったりするので、それはそれで要らない苦労をしたりするのです。生徒に合わせてやり方を変えられるとより良いでしょう。
では最後に、そのノートについてお話しします。もしも折角ノートが取られているとしても、ごちゃごちゃで、見直す意味が無い様なノートでは結局生徒は自分の間違いを探す事が出来ません。ここからは、 そのノートをよいものにさせる為に講師が考えなくてはならない事を、書いていきます。
よいノートの取り方
ノートの取り方にも個人差があります。綺麗に書く人がいたと思えば、お前これ自分でも読めないだろとでも言いたくなる様なノートまで様々です。
まず前提ですが、これからお教えするノートのとり方は「ノートを日頃から取っていない」或いは「ノート書いてるのだけど全然奇麗にならないし整理されない」という、ノートを取る事が苦手な生徒さんに対しておすすめの書き方です。既に自分の中でしっかりとそれが確立されている人に押し付けるものではありませんので、そういった事はしない様に。
ノートを取っていた頃、何を見て書いていましたか?
先生が板書した、黒板ですよね。
既に書き方を確立している生徒は先生の板書がごちゃごちゃでも勝手に整理するでしょうが、そうもいかないという生徒も大勢います。なので、生徒がどういうノートを作ると見やすいか、そしてそういったノートにさせる為にどのような事を考えて板書すればよいのかを本稿の終わりの項として記述していきます。
全科目共通で意識させるべき事=ノートを惜しまないこと
どうしてもノートが綺麗にならない人の多くが、この「ノートを隙間無くびっしり書く」症状に捕われています。勿体ない、であるとか何だとか。しかし書いても見辛く見直さないノートの方が無駄になってしまいますよね、と諭し、ノートに余白を作る事を受け入れさせてあげて下さい。
英語
英語は学校の授業だとどうしても教科書の本文に焦点が向きがちです。ですから塾ではそうではない事に力を出した方が良いでしょう。特に文法の話をする時には、一つの英文を訳して、文法の繋がりを書き込んで、SVOCといった記号を書いて、とするのでは見辛くなってしまいます。そうではなく、同じ文章を何度も書いて、そのそれぞれに日本語訳や文法などを書き込んでいく方が良いでしょう。
そのそれぞれの要素を書き込むフォーマットは全ページ共通にできるとなお見やすくなりますね。1文法につき1見開き、といった感じですね。授業の時に、そのままノートに書けば見やすくなる様な書き方で黒板を書けると良いのではないでしょうか。
数学
数学ほどノートが取りやすい科目もそうないでしょう。やる事は単純に、「問題と解答を書く」事です。ただしここで大事なのは、ノートの左側1ページを書き込んだら、右ページは余白にしておくという事です。この後、解答を見て答え合わせを行います。その時、右のページに間違っていた問題の正答を書ける様にしておく必要があります。
勿論、問題一つ毎にその下に余白を作っても構いませんが、場合によっては余白が狭過ぎた、という事態に陥る可能性もありますので、丸1ページあけておく方が確実です。黒板でそういった事はやりにくいと思いますので、一度講師の方で見やすいノートを見せてあげるのが良いでしょう。
国語
国語は基本的に英語と同じです。言語ですから。違うのは、翻訳の必要が無い事や、言い回しなどの意味を覚える必要があるという事です。古文漢文に至っては英語と殆ど同じで問題ありません。現代文の言い回しなどの独特な部分のみ、翻訳と同じ様に扱い、それ以外は翻訳の無い英語だと思って頂ければ困惑が少なく書いていけるのではないでしょうか。
理科
理科は物理系の計算をするにせよ、自然科学系の原理や部位の名称を書くにせよ、図を書く事が非常に多くなります。絵を描く事が苦手な人は教科書等からコピーをハッタリしても悪くはありませんが、下手でも自力で書く方が結果として良いものになります。自分で書いた図に、名称や物質の動き方等を書き込んでいくと、自分だけのノートになります。図は大きめに、ノートを贅沢に使うと良いでしょう。また、色ペン等を使って名称とそうでない部分とを書き分けても良いでしょう。
英語と同様、同じ図を何度も書いて別個に書き込んでも良いですが、流石に時間がかかってしまうので余りおすすめは致しません。講師の皆さんがするべき事は、黒板に積極的に図を書いていく事です。「あ、ノートにこの図も書いておこう」と思うきっかけを作りましょう。
社会
社会の地理は理科とほぼ同様です。自分の手で地図を書き、そこに地名や山河を書き込めば後々見直す気にもなれる良いノートになるでしょう。歴史は時代の流れと各地域の繋がりが分かる様に書く事が大事です。授業の時に、積極的に矢印などを使って生徒達がノートを取る時に視覚的に書ける様に意識しましょう。公民については、何度も同じ制度や条約などを書くのは気が引けるかもしれませんが、関連項目が出てくる度に書きましょう。
例えば女性参政権の話は、「歴史の流れを学ぶとき」「参政権についての話」「男女同権の話」の際、それぞれ話をしますし、板書します。決して「この前話した参政権も関係あるんだぞー」と口頭で済ませない様にしましょう。後でノートを見直した時に、「これ、ここでも出てくるのか」と記憶し直すきっかけになりますから。
生徒がノートを所持していない時
ここで最後に、特殊な事例と対処法について紹介しましょう。生徒が質問に来たのは良いが、その生徒がノートを持っていない時です。いくつかの可能性があるでしょう。うっかり忘れた、或いは夏期講習などの時期で普段のノートを持ってきていなかった、使い切ってしまった以前のノートに書いてある範囲だった等々。
しかし可能ならばその場で回答してあげたいですよね。その時の対応は二種類考えられます。
一つは、初めに述べたようにその場で類似の問題を解答させる事です。最もその時点での生徒の理解度に合わせた回答が出来るでしょう。
もう一つは、もう少し時間を短縮する必要があるときの為の物で、ルーズリーフなどの1枚の紙を使います。そこに普段黒板に書くように(英語ならば)英文を書いて、大事な所を強調します。分からない所を聞きつつ、そこに情報の補強を書き込んでいきます。そうして要点がまとまった用紙が作られますので、それをそのまま生徒にあげましょう。帰宅したらノートに張り付けるか、写すかしておくように言いましょう。
分からない問題を、もう一度説明したからといってそれですぐに理解できる事ばかりではありません。講師が教え直す時は、生徒が再びその情報を参照する事を意識して教えましょう。
まとめ
黒板を記述する時も、「空白を作って見易さを意識する事」や、「より視覚的に内容の理解を深められる書き方をする事」は重要な事になります。ノートは後に見直す為に書きますが、それはつまり「見直した時に理解出来る」事を目的としています。黒板の板書も、「見て分かる」為に書くのであれば、そのサイズや見る人数が違うだけで本質は変わりません。
より良い黒板を書く為に、一度講義前に自分でノートを書いてみるというのは、おそらくは思っているよりもこれからの流れをスムーズにしてくれます。是非一度、試してみて下さい。
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