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授業態度が悪い生徒へのプロ講師の対処法とは?(後編)【キャリアコラム#85】

こんにちは!国語科講師の中林です。

この記事を書いている今は「子どもの日」でして、近くの家でも鯉のぼりを飾っている家庭がちょこちょこ見られます。

そういえばあの鯉のぼりの鯉ですが、よくある「黒」「赤」「青」の3種類は「お父さん」「お母さん」「子ども」ではなく、黒が「お父さん」、赤と青は両方とも男の子で、赤はお兄さんに当たるんですよね。

あれは元々「男の子の健やかな成長」を祈る行事ですからね。

人生の逆流に負けずに戦い抜ける、強い男の子に育って欲しいという大人の愛情が込められているんですね。

さて本題です。今回の記事は前回の「授業態度が悪い生徒へのプロ講師の対処法とは?(前編)」の後編となります。是非、前編を御覧になってから今回の記事を御覧になって頂けたらと思います。

そして今回は前回より具体的に、授業態度が悪い生徒への対処法をお話致します。前回の記事でも書きましたが、どうしても言うことをきかない生徒や、一切貴方を助けようとしない上司の間で悩んだ挙句に、一人の未来ある教員・講師が壊れてしまうことが一番許しがたいことだと私は思っているので、一人で悩み続けず、今回の記事の内容を含めてできる対処法はやれるだけやってみて下さい。

目次
ケーススタディ①「授業中に私語をやめない生徒への対処法」
ケーススタディ②「授業中に居眠りをやめない生徒への対処法」
ケーススタディ③「授業中に授業と関係無い事をやめない生徒への対処法」
ケーススタディ④「講師・教師に暴言を吐く生徒への対処法」
ケーススタディ⑤「クラス担任や学年の先生が問題児に対して何もしてくれない場合の対処法」
終わりに~「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」(刑事訴訟法213条)


ケーススタディ①「授業中に私語をやめない生徒への対処法」

大人でもそうですが、「思った事がすぐに口から出てしまう」生徒は存在します。後はおしゃべりが好きな生徒も当然存在します。

問題なのは、講師が許可した時以外に勝手に私語をするのは「授業妨害」であり、「他の生徒の授業を受ける権利を阻害している」という事実です。複数回注意してそれでも喋り出す生徒にはこれをはっきり伝えて下さい。

また、授業妨害は公務執行妨害と同じく犯罪行為です。刑法によって『3年以下の懲役』もしくは『禁錮』または『50万円以下の罰金』に処されます。ただ、御存じかと思いますが、14歳未満は刑罰に処されることなく、少年法によって『少年院送致(11歳以上)』などに処されます。

また、授業妨害を計画したり、そそのかししたりした場合は、犯人と同罪です。

つまり、授業中の勝手な私語を注意されてもやめない生徒は「犯罪をしている」ということをしっかり通告してしまってもよいわけです。そこまで言っても私語をやめない生徒はもはや貴方個人で対処できる範囲を超えています。授業を中断してでも職員室へ行って、

1、○君(さん)の度重なる授業妨害によって授業が進行できない
2、授業担当としてできうる限りの対処をしたが、それでも効果が無い

ということをクラス担任か学年の先生・あるいは生徒指導の先生に伝えて、生徒指導処置を加えて頂きましょう。

ちなみに、こういう処置をするときはヘラヘラしながらではなく、必要以上に大声や怒鳴り散らすように言うのではなく、逆に淡々と事務的に(無表情に)通告&対処した方が(私の経験上)効果的です。「あ、あの先生ガチでキレてる」と、生徒に伝わりやすいと思います。

 

ケーススタディ②「授業中に居眠りをやめない生徒への対処法」

これは私語と違って、直接的には授業妨害と認識しがたいので難しいところです。寝てる生徒を放置して真面目に聞いている生徒に向かって授業をするというやり方も成立はしますからね(勿論、最善の方法ではありません)。

前提として「ならべく眠くならない授業を展開する」というのはありますが、今回はその上で寝てしまう生徒への対処法です。

まず、これは私のスタイルなのですが、生徒には「机に突っ伏して寝るのは指導者に対して失礼だからやめて下さい」と言っておきます。ですので、席に着いて顔を前に向けようとしているのに、どうしても眠気が覚めなくてうつらうつらしている生徒には優しく「顔洗っておいで」とか「背筋伸ばして大きく伸びをしてごらん」とか、眠気が覚めるようにアドバイスします。あるいは教室の窓を開けて換気をしたり、「一回気分転換に全員起立!はい全員大きく伸びをして頭に酸素を取り込もう!」等と簡単な体操をさせてみたりします。

その上で机に覆い被さって爆睡している生徒の場合ですが、まず、いきなりひっぱたいたり、机を強く蹴ったりするとこれは体罰になるケースが多いでしょう。私も調べたことがあるのですが、寝ている生徒を叩いた場合、体罰にならないケースが2つあるらしいです。

1、生徒との合意がとれている場合(「先生!俺が寝てたらひっぱたいてでも起こして下さい!」と生徒が自発的に言ってきた場合です。まあそんな真面目な生徒ばかりだったら良いんですけどね(笑))

2、先生の正当な業務といえる場合(法律関係はこういう曖昧な表現が多いから困りものです。ちなみに私は持ってる下敷きとか冊子とかで
全力で寝ている生徒をあおいで風を送って起こします。この程度ならば正当な業務と言えるでしょう)

後は、寝ている生徒を起こしてこう言うのです。「どうした?体調悪いの?それなら保健室に行きなさい。この教室にいるならちゃんと起きて授業を受けなさい」

ちなみに、予想される生徒の反論とその返答を書いておきます。

1、「昨日遅くまで起きててどうしても眠い」
→「授業内に起きていられない位眠いならそれは体調不良と同じです。保健室に行ってきて必要な対処を受けて来て下さい。教室の環境は全員で作るものです。何をして夜遅くまで起きていたのかは知りませんが、どんな理由であっても君個人の都合で全体の環境を破壊する行為は、学校という集団生活を勉強する場では許されません」

2、「授業がつまらないから眠い」
→「まあ好みがあるから私の授業をそう感じる人もいるでしょう。でもそれは寝ていい理由にはならない。学校の授業を集中して受けることは君たち学生の仕事であり、(高校や私立なら)授業料を払って下さる親御様への最低限の礼儀です。授業内容に不満があるなら、授業後に私に相談に来るか、授業アンケートなどで不満な内容について書いて下さい。寝るという形での意思表示は間違っています」

3、「お昼食べた後だし、ちょっと寝た方がその後の授業にかえって集中できる」
→「そういう脳科学の研究も確かにありますね。でもその睡眠は学校の休み時間などに行って下さい。学校で規定された授業中に寝てよい理由にはなりません。」 

他にも色々ありそうですが、ポイントは「学校という集団生活を送る場所で、決められた規則を破るのはいけないこと」という姿勢を遵守することです。指導者側も、諦めずにその姿勢を守り続けましょう。もちろん睡眠障害とか、様々な事情の生徒もいるでしょうから、そういう場合は担任や学年の先生としっかり情報&対処法を共有して、特例措置として対処すれば良いと思います。

また正当な理由無く、何度注意しても机に覆い被さって頑なに起きようとしない生徒がいた場合、これも私語の場合と同じくクラス担任か学年の先生・あるいは生徒指導の先生に伝えて、生徒指導処置を加えて頂きましょう。


ケーススタディ③「授業中に授業と関係無い事をやめない生徒への対処法」

スマホをいじっていたり、漫画を読んでいたりといった感じですね。大前提として、授業には集中させるものですので、以下のような受け答えが考えられます。

1、「だって授業聞かなくても分かるんだもん」
→「つまらないから眠い」と同じく、授業を集中して受けることの意義を説明してください。もしくは講師の権限でその子に自習を許可して、少なくとも自身が受け持つ科目の勉強をさせましょう。

2、「授業がつまらない」
→「つまらないから眠い」と同じです。

なお、注意する際に「次やっているところを発見したら没収します」とか、具体的な措置を通告しましょう。

それでもなおやっていたら「もう許しません、今やっていたものを出して下さい」となるわけですが、中には素直に出さない生徒もいるでしょう。その場合、つまりその子は「指導者の指示に従うつもりも授業に参加するつもりもない」という意思表示をしたということです。その場合も、前述の生徒指導措置の流れになります。むりやり奪い取ろうとして、生徒の身体に傷をつけようものなら、体罰となります。あくまで冷静に対処しましょう。

 

ケーススタディ④「講師・教師に暴言を吐く生徒への対処法」

最近の生徒には少ないかもしれませんが、生徒の中には、講師から指導されて、反発する際に「うるせえ!」などと暴言を吐く子もいるかもしれません。

これは前述の通り生徒、教師関係無く犯罪行為です。

以下の様に対応しましょう。

「確認しますが今私に対して○○と言いましたね、(周りを見渡して)皆さん、聞こえましたよね?この言葉は生徒教師の立場に関係無く、一人の人間に対するはっきりした侮辱行為なので、生徒指導措置はもちろん、私個人として法的措置も視野にいれて対処させて頂きますが、それも踏まえてもう一度お聞きします。○○(暴言を吐いた生徒の名前)さん、今貴方は私に対して○○と言いましたね?」

1、素直に謝罪してきた場合:「すみませんでした。」 

「分かりました。今回限りは貴方の謝罪を受け入れます。ただ次こういうことがあった場合は一人の大人として厳格に対処させて頂きます。未成年だからといって何をしても許されるわけではありませんよ。貴方の行動の責任をとるのは親御さんですし、あなた自身の将来にも大きな障害を及ぼすことにもなりかねません。大人子ども関係無く人との関わり合いにおいて守るべきラインはちゃんと理解してください」

2、抵抗してきた場合:「いえ、言ってません。」 

「いや、はっきりとそう聞こえました。つまり貴方は指導者に暴言を吐いた上に、それを隠蔽するつもりですね。つまり反省していないということで、今後も同じようなことを繰り返す可能性があります。これを放置しておいては授業を進める事ができません。授業を少しでも円滑に進めるための措置として、一回ここはストップしてお互い納得いくまで話し合いましょう。○○さん、職員室まで来て下さい。学年の先生方も交えて話し合いましょう。申し訳ありませんが、皆さんはそれまで自習していて下さい」
→生徒を職員室に連れて行く or そこで生徒が謝罪すればパターン1に戻る

3、激しく抵抗してきた場合:「うるさい、お前が〜〜〜!」

「どんな状況であれ、相手が誰であれ、君が相手の名誉を破壊する暴言を吐いたのは事実であり、それを放置はできません。正式な指導措置をまずはさせて頂く必要があります。職員室まで来て下さい」

 ポイントはこれを「真顔で、淡々と」行うことです。

「やばい!大人を本気で怒らせた」と、子どもである生徒に思わせることです。

日頃優しく、楽しく授業している先生が、いきなりこのようなことを真顔で言い出して、平然としている生徒はなかなかいないでしょう。

相手に言葉尻を捉えさせない表現で、冷静に、静かに、怒っていることを伝えましょう。


ケーススタディ⑤「クラス担任や学年の先生が問題児に対して何もしてくれない場合の対処法」

偏見混じりですが、学校は「事なかれ主義」の体質を持つところが多いので、クラスのトラブルに対して「面倒くさいなあ」という感じで嫌がる教員の方々は沢山います。

「その子に指導しておきます」と言って、実際は何もしない先生もいますし、「そういう生徒を指導するのも先生の仕事ですよね」という、「それができないから相談に来ているのに」と言いたくなるようなことを言ってくる先生方もいます。そういうときはこうしましょう。

・クラス担任に言って対処してくれないなら、学年主任に直訴
・学年主任に報告してもだめなら、管理職(教務主任・副校長・校長)に直訴
・それでだめなら、学校の外部の組織に報告
・そこまでして面倒をかけたくないなら、さっさとその学校を退職してよそを探しましょう。

前述の通り、大事なのは貴方の心身の健康です。

非常勤講師として働く先生方を大事にしない学校というのは正直沢山あります。「嫌なら辞めていいよ」というスタンスの所も沢山あります。そんな所にしがみつく必要はありません。授業力をアップさせて、新天地を求めましょう。

 

終わりに~「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」(刑事訴訟法213条)

教育委員会のHPには「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について(通知)」という項目があり、そこには

特に校内での傷害事件をはじめ、犯罪行為の可能性がある場合には、学校だけで抱え込むことなく、直ちに警察に通報し、その協力を得て対応する

学校が指導を継続してもなお改善が見られず、いじめや暴力行為など問題行動を繰り返す児童生徒に対し、正常な教育環境を回復するため必要と認める場合には、市町村教育委員会は、出席停止制度の措置を採ることをためらわずに検討する

などの文言があります。

昨今の授業崩壊などの事案を受けて、国としても生徒の問題行動に厳正に対処するべきという流れが強まりつつあります。

タイトルに持ってきた刑事訴訟法は少々大袈裟だったかもしれませんが、要するに「子どもであろうが生徒であろうが、ダメなものはダメ!未成年でも犯罪的行為は断固として許さない」という姿勢を常に教育者たるもの持ち続けることが大事だと思うのです。

子ども達の中には、最近流行りの「叱らない教育」の影響で、やっていいことといけないことの区別を親からしっかり教わっていない子達も少なからず存在します。そういう子相手であっても、「正しい叱り方」で叱ることが、教員にはできるはずです。それで子どもがショックを受けたと言って親が文句をつけてきたら、「悪いのはそれまで自分の子どもにちゃんとした教育を行っていない親である」ということを忘れないで下さい。

もちろん、本当は生徒が集中できるような魅力的な授業を展開することが、一番なんですけどね。。。

ではまた次回の記事でお会いいたしましょう!

 

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中林 智人

記事執筆者:中林 智人

高校教師から塾講師・予備校講師に転身し、現在は河合塾・早稲田予備校にて国語を担当しつつ、都内の高校で非常勤講師としても活躍。講師業だけでなく執筆なども行う。「納得できる知識・論理的読解技術」「制限時間内に問題を解き偏差値を上げる戦略」「楽しく国語を勉強できる面白ネタ」をモットーに日々生徒に向き合っている。

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