こんにちは!国語科講師の中林です。
新年度も始まり、皆様授業準備などでお忙しくされているかと思います。
それにしても近年、ますます少子化が進み(特に浪人生の減少が著しいですね)、放課後の塾・予備校や、予備校の浪人生クラスは受講生の確保が困難になりつつあると思います。
もちろん原因は少子化だけでなく、集団授業から個別指導・映像授業へのニーズの移り変わりとか、複合的な要因が絡み合っているのでしょうが、何にしても塾・予備校講師が集団授業だけで食べて行くのがどんどん困難になっていく厳しい現状は否めないと思います。
ですので、以前私も記事で書かせて頂きましたが、学校の非常勤講師と塾・予備校を兼務することによって稼いでいく先生方も、今後増えていくと思います。私も学校と塾・予備校の両方で働いて来たから分かるのですが、授業態度の悪い生徒は圧倒的に学校の方が多いですね。
特にいわゆる「成績下位クラス」などを受け持つと、理解力以前にそもそも授業に取り組もうとする姿勢自体が見られない生徒も数多存在します。まあなにしろ学校はほぼ全ての子供が通う教育機関である一方で、塾・予備校はそれとは別にお金を払って通う民間の教育機関であるので、授業に臨む生徒のやる気も違うでしょうし、塾・予備校は成績別のクラス編制や個別指導など、指導のバリエーションも多く柔軟性も高いですからね。
私立の高等学校などの一部は、学力別に細かくクラスを分けて上記の様な柔軟な教育を行っているところもありますが、大半の学校は伝統ある黒板一斉型の集団授業で、様々な学力や性格の生徒を一カ所に集めて授業が展開されています。したがって、当然やる気の無い生徒もその中には入りやすいのです。
よくある問題としては、
予備校のみでずっとやってきたベテランの先生が学校で教えることになったが、学校の指導スタイルに合わせることができず、さらには一昔前のパワハラ・モラハラ紛いの発言をして生徒や保護者からクレームが来る
経験年数の少ない若い先生が、生徒に舐められて授業にならない
などが挙げられます。
これらは勿論、講師本人のスキルや考え方の問題が一番なので、改善することは可能なのですが、中には本当に対処が難しい教室も存在します。特に昨今は子どもを叱ることが非常に困難で、「叱らない教育」などという考え方も広く認知されています。
そういう指導が困難な生徒を含む教室で、講師はどのように授業をしていけば良いのでしょうか?
塾・予備校以外にも、実際に学校でクラス担任・出張授業の講師などをやってきた中林がお話させて頂きます。
目次
・基本的な考え方(教師は生徒の奴隷ではない)
・初回授業で伝えるべきこと
・終わりに~体罰だけは絶対にダメ!!!~
基本的な考え方(教師は生徒の奴隷ではない)
最初に申し上げますが、「どうしてもこの教室で授業したくない」「これ以上この教室に出講したら自分が壊れてしまう」というような状況になったら、無理せずその学校の担当者(教科主任、学年主任で、教務主任など)に報告して、対処をお願いしましょう。先輩講師や同僚に相談しても良いですし、とにかく「自分は先生なんだから生徒の対処を他人に頼っていては駄目だ」と、一人で抱え込まないことです。
「生徒に良い授業を提供する」のは、貴方の仕事に過ぎません。仕事は貴方の人生すべてでは無いでしょう。
それ以前に一人で抱え込んだ結果貴方が体調を崩したり(場合によっては命を絶ってしまうことも)して授業ができなくなったら、そもそもの仕事にも穴が空きます。そうなる前に、適切な対処をして自身を守るのも、プロの仕事です。
「生徒のことだけを考えろ」とか「生徒のために死ぬ気でやれ」とか、そういった根性論を振りかざす教育者はいます。「生徒の幸せが教師の幸せ」という人もいますね。
私はそういう考えを全否定はしません。その人はその考えで心身を充実させて仕事ができているならそれはそれで結構です。でも、そういう人は他人にもその考えを押しつけようとすることが多い気がしています。自分の考えと違う人間を「そんな考えで教壇に上がるな。そんな人に教わる生徒がかわいそうだ」と罵倒する人もいます。
そういう押しつけは気にしないで、御自身の幸せを考えてください。貴方が心身を充実させて働ける環境は、必ずどこかにあります。要するに、合わない学校や合わない職場に固執しすぎることは無いと言いたいのです。
まして非常勤講師は基本的に一年契約なので、専任の教員よりフットワークは軽いはずですからね。
もちろん、御自身の授業や生徒へのアプローチに不備がある場合、それらと向き合うことは大事ですが、その職場・教室の中で御自身にできる対処法がどうしてもない場合は、無理せず他人に頼ることも大事ですし、場所を変える勇気も必要です。集団授業がどうしても苦痛なら、通信制高校などで個別・少人数教育に携わるという方法もあります。
生徒に勉強を教え、導くのは講師・教師の仕事ですが、中にはどうしても言うことを聞かない、そもそも貴方と合わない・・・そんな生徒もいるでしょう。一つの教室に様々な子どもが何十人もいる教室なら当然のことです。
貴方がしっかり授業のルールを伝え、注意しても従わない、それどころか貴方に暴言を吐いたり、脅したりする子どももいるかもしれません。そういう子どもに対して、無理して自分一人でなんとかしようとするとお互いが感情的になってトラブルに繋がります。体罰をしてしまっては問答無用で指導者側の負けです。
注意の言い方一つをとってもハラスメントに敏感なこのご時世ですから、とにかく冷静に対処する方法を身につけて、実践して、自分を守ってください。
初回授業で伝えるべきこと
下位学力層の子が多いクラスでは特に「しっかりと授業のルール・決まりごとを伝える」ことが大事です。
勉強の成績が悪い子には、(もちろん色々と原因がありますが、その中でも)特に「他人の話をしっかりと聞けない」「やっていいことと悪いことの区別が自分でつけられない」子の割合が多いと感じます。
なので叱られても「先生そんなこと言ってなかったじゃん」とか「なんでそれやっちゃいけないんですか?」となるのです。実際に生徒が何か悪いことをした後にお説教して、上記のような反論を彼等にされるということは、要するに彼等に伝わるように最初に講師が授業のルールを伝えていないということです。
この場合、講師側もただ「あの時言いました!」と反論してもしょうがないのです。結局その生徒は聞いてなかったのですから、彼等からみた事実は「あの先生は言ってなかったのに、言ったことにしている」となるのです。「言った・言わない論争」は、なんの意味もありません。
ですので、以下の方法で伝えるべきことを彼等にしっかり伝えましょう。
1,生徒全員がこっちを向いて、静かにしているのを確認してから話し出す
一億歩譲って、教科自体の指導中は、その内容が「もう塾などで知っている」とか、「聞かなくても分かる」という生徒が内職をしていたりするのを認めるのは分かります(本当はいけないのですが)。
ですが、授業の最初に話す「授業に臨む際のルール」を聞かないで良い生徒なんて、教室内に一人もいて良いわけがありません。生徒全員が静かにこちらを向いている状況になってから、しっかり生徒に伝わる様に話して下さい。
「静かにしなさい」と言っても生徒が言うことを聞かないなら「全員が静かにするまで話しません」と言って、10分でも20分でも教卓で待てば良いと思います。ここをいい加減にして説明を始めてしまったら、最悪の場合「一年間ずっとガヤガヤする生徒に大声で対抗しながら授業をする」はめになりかねません。真面目に聞こうとしている生徒が可哀想ですし、貴方もストレスが溜まると思います。
もし、上記の措置をしても尚平然と騒いでいる生徒がいたら、もう授業をストップして職員室に行ってそのクラスの担任に報告しに行って良いと思います。完全な「授業妨害」であり、「他の生徒の授業を受ける権利を阻害」しています。学校には「生徒指導部」があるはずですから、その生徒に対して学年・学校として正式な指導処置がなされるでしょう。
2,授業運営に関わる大事な事務的事項は、プリントや掲示物にして、できるだけ形にして残しておく
こっちを向いて聞いていたとしても、すぐ忘れて「そんなこと言われましたっけ?」という生徒もいます。それに対して「ちゃんと説明しましたし、ここに書いておきましたよ」と説明する為にも、大事な事は形に残しておいた方が良いでしょう。
3,説明中によそ見や私語をしている生徒がいたら「○○君、今言ったことを皆に説明してあげてもらえますか?」と、ちゃんと聞いているかの確認をする。
これは体罰でもパワハラでもありません。「教育的行為」です。もし答えられないは以下のように注意しましょう。
「○○君、今私が説明した授業のルールを聞いていましたか?ちょっと皆に説明してみて下さい」
「え?あー、、、えー、、、すいません、聞いてませんでした」
「ですよね。1年間の授業全体に関わる大事な説明なので、しっかり聞いておいて下さい。」
授業全体に関わる大事なルールをちゃんと聞いていない生徒をそのままにしておいては、後々必ずトラブルになります。とにかく毅然として対応することです。
そして、「何を伝えるか」ですが、もちろんこれは先生によるので、絶対的な正解はありません。
ただ、一般的なものを示すなら、次の様な感じです。
1,授業の成績の付け方(平常点の範囲・授業態度は成績に加味されるか・定期試験の範囲など)
勉強の嫌いな生徒ほど、「何さえすれば成績・単位がもらえるか」という情報だけは押さえようとします。要するにできるだけ少ない努力で済ませたいわけです。
逆に言うと、ここに関しての情報の行き違いが講師と生徒の間にあると、トラブルの元になります。全部は教務上伝えられない場合は、伝えられる範囲だけでもしっかり伝えましょう。
2,授業中にしてはいけないことの説明(どこまで許すか・何は許さないか)
一番大事な所ですね。
「授業中に机に覆い被さって寝ない」「グループワークや特別に講師が発言を許した時以外は勝手に喋らない」「忘れ物は○回で平常点●点減点」など、とにかく年間通して守ってもらうルールをしっかり伝えましょう。
もちろん、ただ伝えるだけでなく、その後もそのルールを破った生徒をしっかり注意して行かなければなりません。そしてできれば、してはいけないことをした場合「どういう措置を加えるか」まで通告しておいた方が良いでしょう。生徒によっては「やっても怒られるだけだし、あの先生怒っても怖くないし」と馬鹿にして、平然とルールを破るようになる場合もあります。
3,自分はどういう先生か・自己紹介
どこまでやるか、何を紹介するかは本当にその人次第です。
例えば私みたいな予備校と高校非常勤講師を両立している人間の場合、初回の授業で自分がどこの予備校でやっていて、どういう活動をしているかを先に話して、生徒に「こういうことをやっている先生なんだ」と知ってもらうようにしています。
私の知り合いの先生には「不登校から立ち直って努力して教壇に立った」という経歴を持つ人もいて、彼も最初の授業でそのエピソードをして、生徒に「こんなに努力して来た先生なんだ」と知ってもらうらしいです。
ただこういう時に「生徒と距離を縮めすぎない」自己紹介の方が、成績下位クラスの場合は良いと思います。まるで生徒と友達かの様に語りかけると、その後注意するべき時に注意しづらいなあなあな関係になってしまいますからね。
終わりに~体罰だけは絶対にダメ!!!~
さて、いかがでしたでしょうか?今回の記事は前半で、次回の後半では「授業態度が悪い生徒への具体的な対処法」についてお話します。細かいことは次回書きますが、ひょっとしたら今回の記事しか御覧にならない方もいらっしゃるかもしれませんから、すでに述べましたが一番大事なことをもう一度申し上げておきます。
くれぐれも、感情的になって体罰を行ったりしないで下さい!
そのクラスの授業担当から降ろされるどころではなく、もしその様子が他の生徒に撮影されてSNS等にアップされたら、二度と教育関係の職に就けなくなるかもしれません。専任の教員なら多少学校が守ってくれるかもしれませんが、非常勤講師を「学校自体の評判を落としてまで」わざわざ守る学校など無いと思って下さい。どんなに生意気な生徒が相手でも、先に手を出したら大人としてもう敗北です。
では具体的にはどうすれば良いのか・・・は、次回の記事でお伝えします。
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