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非常勤講師(中学・高等学校)と塾講師の両立という生き方【キャリアコラム#3】

非常勤講師(中学・高等学校)と塾講師の両立という生き方

こんにちは!国語科講師の中林です。

前回はプロ講師として必要な素養についてお話し致しましたが、いかがでしたでしょうか?

今回はプロ講師として働いて行く際に、実際に私が行っている一つの形をお話しさせて頂きたいと思います。

それは、学校の非常勤講師と塾・予備校講師の掛け持ちです。

ではまず、学校の非常勤講師の仕事から説明していきます。


中林 智人 なかばやし ともひと

高校教師から塾講師・予備校講師に転身し、現在は河合塾・早稲田予備校にて国語を担当しつつ、都内の高校で非常勤講師としても活躍。講師業だけでなく執筆なども行う。「納得できる知識・論理的読解技術」「制限時間内に問題を解き偏差値を上げる戦略」「楽しく国語を勉強できる面白ネタ」をモットーに日々生徒に向き合っている。 


 目次
非常勤講師とは?
両者を掛け持ちした場合の週のスケジュール例(中林ver)
理想的な掛け持ちのスタイルとは? 
掛け持ちのメリット
終わりに〜自分の人生を自分で組み立てる楽しさ〜

 

非常勤講師とは?

はじめに申し上げておきますが、ここでの非常勤講師とは「中学・高等学校などで働く」場合を言います。(つまり、塾・予備校ではありません。)

ご存知の方も多いと思われますが、特に私立の中学や高等学校にはクラス担任業務や学校行事に参加しないで、ほとんど授業のみしか行わない「非常勤講師」という職種の方々がいます。

これはそういう業務契約をしているのであって、別にお仕事を怠けているのではありません。まず、この非常勤講師の特徴を以下に簡単にまとめ、説明致します。

大きく特徴は、

契約した仕事内容は基本的に授業と、それに付随する教務内容(テスト作成・採点等)のみ給与は授業したコマ数に応じて支払われる(学校によって少額の賞与や、特別期間講習の出講料が支払われる)専任教員・常勤講師等が本来入れる社会保険(教職員共済・私学共済等)に入れない(一部条件を満たした非常勤講師は除く)兼業が可能

となります。一つひとつ説明致します。

契約した仕事内容は基本的に授業と、それに付随する教務内容(テスト作成・採点等)のみ

学校の専任教員には「校務分掌」というお仕事の割り当てがあります。

例えば「教務部」でしたら年間行事予定表の作成や生徒の成績処理など、「生活指導部」でしたらいじめなどの校内問題の対応の中心となったりあるいは登下校指導・校内巡回などの業務も担当します。

ですが基本的に非常勤講師はそういうお仕事は担当致しません。

授業、授業に小テストやプリント作成・定期試験の作成・採点、自分の科目の成績処理等・・・授業に関することがほとんど、ということです。

ただし、たまに非常勤講師でも部活動の顧問などをやっていらっしゃる方もいますが、そうすると放課後の時間がかなり取られるので、前述の塾との掛け持ちは極めて困難になると思います。

ちなみに、専任教員であれば部活動の指導も給料に入っているので別ですが、非常勤講師で部活動顧問を担当すると、基本的には授業のコマ給以外に、「部活動指導手当」が支払われます。

ただ、これはほとんどの学校があまり高くありません。

地方公務員である公立高校で、休日4時間以上の部活動顧問をやって1日最大3000です。

私学は学校によりますが、公立に準じた額が大半です。プロ講師として塾・予備校で授業をすれ1時間で稼げる額ですね。

自身がその部活を現役時代やっていて、その部活の指導に心からやりがいを感じる人であれば問題無いとは思いますが、(あくまで個人的な意見ですが)私からすれば、それなら頑張って専任教員になって、その立場から部活の指導者になった方が良いと思います。

理由は、授業をやって、放課後部活の指導もやって、さらに休日に部活動の指導や引率をするなら、専任教員として携わった方が収入も安定していますし、ここで私がお勧めしたい「プロ講師」としての働き方とは異なるからですね。

もちろん、専任教師になることを否定しているわけでは一切ありませんので、ご留意いただけますと幸いです。

 

給与は授業したコマ数に応じて支払われる(学校によって少額の賞与や、特別期間講習の出講料が支払われる)

この辺りは塾・予備校と似ていますね。

非常勤講師の募集要項には大体「一コマ1万数千円」などと書かれていますが、これはその授業を週1コマとして、月あたりで支払われる額のことだと思って構いません。

つまり月曜1限の授業がひと月に4週なら4回あるので、4回分の合計がその一万数千円ということになります。

例えば首都圏近郊の高等学校なら大体50分1コマなら2500円〜3000円位が相場というところでしょう。

これに追加して少額の賞与が頂ける学校もありますし、後は夏期講習などの長期休暇の講習に出講すると別途その分の報酬が頂けることになります。

ただ、昇給率は一般企業や専任教員と比べると大変厳しいですし、基本は1年契約なので、その年の勤務状況が勤務先の学校の求めるものを満たせていなければ次年度の契約の更新を断られてしまうこともあります
(これについては実は少々例外があるのですが、それはまた別の時にお話しますね)。

専任教員・常勤講師等が本来入れる社会保険(教職員共済・私学共済等)に入れない(一部条件を満たした非常勤講師は除く)

いわゆる一般企業の正社員が加入できる「厚生年金」などの制度は、学校教員の場合「教職員共済」や、私学の場合「私学共済」などがあります。

当然、冠婚葬祭を初めとした様々なことに対して手厚い補償が頂ける事が多いです。 

一方、非常勤講師の場合は、大半がこれらの保険に入れず、自分で「国民健康保険」「国民年金」に加入することになります。

ただ、非常勤講師でも、その学校でのコマ数や出勤日数などの一定の条件を満たすことによって上記の専任教員と同じ保険に入れる場合もあります。

あるいは予備校でも「学校法人」として営業している所でしたら、同じように私学共済などの保険に入れる場合もあります。そこは入社時よく確認する必要があります。 

ただ、その条件は各学校によりますが、「週5日以上その学校で授業を持つ」ことや、「最低○○コマその学校で授業を持つ」等様々です。総じて「その会社だけでの勤務量や収入が生計の中心になり得る」レベルの仕事量を求められます。

例えば、ある学校で非常勤講師として私学共済に入る為に週5日、週18コマ前後授業をするとします。これだけで授業準備や定期試験業務も含めて通常の社会人として十分な労働量と言えます。

学校によりますが、おそらく年収にすると250〜350万位でしょうか。その上で、放課後に移動して塾や予備校で授業をするということです。

日によっては朝から夜遅くまで授業をしっぱなしということにもなるわけです。

お分かりでしょうか?体力的にかなり大変だと思います(私はそれをやっていた時期があります。詳しくは後述します)。

 

兼業が可能

上記の3つを考慮に入れると、いわゆる一般企業の正社員、もしくは専任教員並みの収入をプロ講師として稼いでいこうとなると、兼業が必要になってきますが、非常勤講師は「非常勤」なので、空き時間に塾や予備校を始め、他にも様々な仕事をすることが現実的に可能になるわけです。 

両者を掛け持ちした場合の週のスケジュール例(中林ver)

 さて、非常勤講師というものがどういうものか大体お分かり頂けたところで、ここで一つ私が実際にこなしていた両者の掛け持ちによる一週間のスケジュールをご覧頂きましょう。

これは高校非常勤講師としての私学共済に加入していて、その上で塾と予備校を掛け持ちしていた時期なので、正直非常にハードでした。以下の通りになります。

・昼の高校の非常勤講師として週に22コマ
・予備校の授業(2社を掛け持ちしていました)合計9コマ(うち2コマは隔週)
・塾(2社を掛け持ちしていました)合計3コマ

週の合計授業コマ 34コマ 

いかがでしょうか・・・

ちなみに合計すれば分かるように学校・塾・予備校合わせて5社の仕事を掛け持ちしていたので、夏期講習などの予定調整はもはやパズルのような複雑な組み合わせであちらこちらを飛び回ることになりましたし、全部の会社の源泉徴収票を確定申告で申告しなければならなかったので、本当に大変な1年間でした。

日曜日ですか?そんなもの授業の予習と溜まった家事の消化で潰れました。

 

お断りしておきますが、この勤務例は悪い例して出しております。

掛け持ちする際は、言うまでもありませんが、体を壊すような無理なスケジュールを組まないようにしたほうが良いです。

働けなくなった場合の保証が正社員と比べて薄いのが非常勤講師です。

やむを得ない事情ならともかく自分のスケジュール管理のせいで体を壊して授業に穴を開けるのはプロ失格ですし、それでなくとも授業を多くしすぎて一つ一つの授業のクオリティーが落ちてしまうと授業アンケートにも響きます。予習の時間も満足に取れませんよね。

 

また、掛け持ちをしすぎると夏期講習・冬期講習などの期間が大変なことになります

この時期は塾・予備校は最大の稼ぎ時なので、朝から晩まで様々な講習を設置して、講師に出講依頼を下さいます。

高校の方も、私立ですと夏期講習などを実施し、所属する講師にも出講依頼が来ることがあります。

当然、何社も掛け持っていると、それぞれのスケジュール調整が困難を極めます。

日時だけでなく教室ごとの移動距離なども計算に入れ、各社に出講が出来ない日程を連絡して調整してもらいます。

基本的にどこの会社も、できるだけレギュラーで授業を持っている先生に、夏期講習・冬期講習にも入って頂きたいと思っているはずです。

なのにその期間に他社との都合でその講師が入れないとなると、生徒にも申し訳無いし、その会社での印象も良くありません。 

また、教室は教室ごとに他の教科の授業との兼ね合いや生徒の都合も計算して授業スケジュールを組んでいるので、講師の都合だけで授業予定を組むわけにもいきません。

なので会社としても、できるだけ自社のスケジュールに合わせてくれる講師と長期的に契約したいと思うはずです。

繰り返しますが、沢山授業を持てば沢山稼げるからという安易な理由でやたらに授業を増やさない方が賢明です。

年度の途中でイレギュラーな仕事や用事ができた時、体調が崩れた時、生徒にも会社にも迷惑をかけることになってしまいます。

理想的な掛け持ちのスタイルとは? 

では非常勤講師と塾・予備校の掛け持ちはどのようにすれば良いのか・・・

もちろん教科や個人差があるので一概には言えませんが、あくまで私の主観的な目安を以下にお話し致します。 

掛け持つ会社は3社以内(学校1つ・塾や予備校2つ)

夏期講習などの予定の組み辛さを考えるとこれくらいが良いと思います。

それに会社が変わればそれぞれの会社のニーズに合わせる必要も出てきますので、自分の中での切り替えが大変になります。

それでなくとも一つの会社で複数のクラスや学年や教科(国語科の場合は「現代文」「古文」「漢文」「小論文」など)を担当することもあるので、最初から掛け持ちすぎると頭がついて行かなくなります(苦笑)。

また学校は塾や予備校と比べて各社の方針の違いが激しい上に、定期試験期間は拘束時間が多いので学校の非常勤講師同士の掛け持ちはお勧めしません。

合計コマ数は25コマ以内

あくまで人によるのですが、学校ですと定期試験時期には定期試験の作成・採点業務などが授業に加わります。

その際授業を持ちすぎると授業・予習にプラスしてこれらの教務が加わり、手が回らなくなったりミスが発生しやすくなります。

まずは学校・塾・予備校合わせて25コマ以内位で回してみましょう。

数年やってみて要領を掴め、「もっと行けそうだな」と感じたら少しずつ増やしてみてはいかがでしょう?

あまりにも欲張って授業を入れ過ぎた結果、一年間の授業スケジュールを確定させた後に年度途中でそれらを投げ出したりすれば、当然会社の信頼を大きく失いかねません。

コマ単価の増額を目指す

これに関してもいずれまた別の記事で詳しく書かせて頂きますが、加齢に伴って体力も落ち、担当できる授業数も必然的に減っていきます。

自己研鑽を続け、生徒数の増加や授業アンケート等の結果を出した上で、積極的に給与交渉をしていくのもまたプロの仕事です。

この少子化の御時世にコマ単価を大きくあげるのは非常に困難ではありますが、それでも常に意欲的に自身の授業の価値をあげ、それに見合った報酬を求めていく姿勢は大事だと思います。

ちなみに学校の非常勤講師は契約で予めコマ単価の規定があるところがほとんどなので、攻めて行くなら塾・予備校ですね。

参考書・映像授業などの「副収入」獲得を目指す

正確には授業に関わる(映像授業などは実際収録のために最低一回は授業をするので)収入なので副では無いのですが、要するに実際に授業をしていない時にお金が入ってくるシステムを獲得することですね。

参考書は「印税契約」であれば、売れれば売れるだけお金が入って来ます。映像授業に出講し、自分の授業を利用する生徒が増えればその分収入になります。

これらで収入を得られる講師になるにはかなりの知名度が必要になって来ますが、「プロ講師」を本気で目指す以上は、目標としてみても面白いのではないでしょうか?

また、そういった実績を出すことによって、通常の対面授業でも「ああ!あの○●の参考書を出している先生ですね!」となり、知名度が上がり、給与交渉に有利に働きます。

もちろんそこから「先生の授業を受けてみたい!」という生徒が集まり生徒数が増えれば、さらにコマ給増額の交渉もしやすくなります。一石二鳥、いや三鳥、もっとか・・・焼き鳥屋が開けますね(スベりましたね!)! 

掛け持ちのメリット

さて、ここまで読まれた方は

「なんか非常勤講師と塾・予備校の掛け持ちって色々大変だな。塾・予備校だけで良くない?」

と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

確かにそれぞれの求めるものを読み取って臨機応変に複数の会社を渡り歩くのは大変ですが、その分メリットもあります。 

私の感じるメリットは、やはり視野が広くなるということが大きいかなと思います。 

特に塾・予備校などで来る生徒が、学校で何を教わって、どういう生活を過ごした上で放課後のこちらの授業を受講しに来るのかが分かります。

学校で教わった基礎に、塾・予備校としてどう色付けをしていくのか・・・私は塾・予備校で授業をする際は、よくそういうことを考えています。

塾・予備校の講師は学校の授業とは一味違うプロらしい授業を展開する必要がありますが、だからといって生徒が学校で学んだ基礎を全否定する必要はありません。

むしろ生徒が一日の大半を過ごしている学校で学んだこととうまく関連づけて、そこに塾・予備校講師としての専門的な知識やアプローチをプラスするというイメージです。

その方が効率良く生徒の成績の向上に繋がると思います。

その為には生徒に学校と塾・予校の両方で関わり、両方の教育システムを把握していること、これは武器となると思います。

終わりに〜自分の人生を自分で組み立てる楽しさ〜

さて、いかがでしたでしょうか?

今回は学校の非常勤講師と塾・予備校講師の掛け持ちというプロ講師の一つの働き方を御提案させて頂きました。

大変なことではありますが、会社の言われたままの業務をただただこなす人生より、自分の仕事、ひいては人生を一つ一つ組み立てて生計を立てていく楽しさを存分に味わえるのではないかと思います。

働いた分、頑張った分、その一つ一つが明確に収入に結びついて行き、その上生徒に尊敬され、社会で必要とされる、そういう働き方に、興味はありませんか?

ではまた次の記事でお会いしましょう!

中林 授業風景

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中林 智人

記事執筆者:中林 智人

高校教師から塾講師・予備校講師に転身し、現在は河合塾・早稲田予備校にて国語を担当しつつ、都内の高校で非常勤講師としても活躍。講師業だけでなく執筆なども行う。「納得できる知識・論理的読解技術」「制限時間内に問題を解き偏差値を上げる戦略」「楽しく国語を勉強できる面白ネタ」をモットーに日々生徒に向き合っている。

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