講師の皆様こんにちは!
前回まで、水のはたらきをどう教えるか、考えてきました。
(前回記事:http://www.juku.st/info/entry/900)
今回は今までの内容をおさらいしながら、「地層」の教え方をお伝えしていきます。
特に生徒がやってしまう失敗
地層のでき方がイメージできない岩石の名前を覚えようとしない、特徴をつかんでいない
化石を「示相化石・示準化石」しか覚えておらず、得点が取れない
地層では大きく分けて
・覚える必要があるテーマ(岩石の名前、化石など)
・考える必要があるテーマ(ボーリング調査、地震の計算問題など)
の2つに分けることができます。
最初に、「覚えなければならないもの」を明確にしたうえで、きちんと覚えさせることが重要です。
なぜなら生徒の立場からすると、覚えるべき問題と、考えれば解ける問題の区別がつきにくいためです。
授業で伝えるべきポイント及び伝え方
地層のでき方は2パターンある
最初に、前回の内容(水のはたらき)を軽く復習してあげましょう。
内容は平易ですので、ある程度の生徒はしっかり覚えていると思います。
さて、ここから地層のでき方の説明をスタートしますが、最初の切り口は「地層とは、石の積み重ねである」と定義してあげることからはじめるとよいかと思います。
過去の授業で「粘土、砂、小石」の積もり方を説明しているはずですから、これを再度図示したうえで、これが固まると地層と呼ぶんだよ、と伝えるとわかりやすいでしょう。
しかし!
これだけで終わらせてしまうと、火成岩の説明で生徒が混乱することがあります。
なので、地層とは“基本的には”水のはたらきで行われるが、特殊要因として火山の活動があることを必ず伝えてください。
具体例としては凝灰岩(火山灰が積もると層ができるよね!)を挙げるとわかりやすいはずです。
ここで、生徒に質問を投げかけてみましょう。
「どうして砂は石のように固くなることができるんだろう?」答えは、積み重なったものの重みで押し固められるからです。
このことを自分で発見したら、すかさず「じゃあ、下の方と上の方、どっちのほうが新しい層になると思う?」と聞くことで、理解が深まります。
もちろん、答えは上の層であることを、生徒自ら発言してくれます。
きちんと褒めたうえで、次に進んでいきましょう。
岩石の種類は丸暗記する
次に教えるべきことは、堆積岩の種類です。
これはつべこべ言わず、丸暗記させましょう。
万が一反論してくる生徒がいたら、以下のように対応すればよいでしょう。
(これは暗記単元で常に使えるテクニックです)
「名前の由来をいちいち考えていたらきりがないよね。どうして土は土と呼ぶのか、どうして算数の「足す」は「+」と書くのか。どうしてテレビのリモコンを押すと、テレビがつくのか。気になる気持ちは立派だけど、今はとにかく覚えよう。」
さて、堆積岩は全部で6種類を覚えさせるようにしましょう。
(※基本的に良いごろ合わせは今のところ存在しないようです。資料集や写真を見せて、イメージとともに暗記してもらいましょう)
れき岩 | 河口や扇状地に多い。 小石が砂などと一緒に固まってできた岩石 |
砂岩(さがん) | 海岸近くの浅い海の底に多い。 砂が固まってできた岩石。粒の大きさはほぼ同じ。 |
泥岩(でいがん) | 海岸から遠く離れた海の底や、水の流れが緩やかなところに多い。 粘土が固まってできた岩石。非常に粒が細かい。 |
凝灰岩 | 火山の噴火による火山噴出物(おもに火山灰)が固まった岩石。 地層調査の重要な指標となる。 |
石灰岩 | 炭酸カルシウムをもつ生物の死骸が堆積した岩石。 薄い塩酸をかけると二酸化炭素が発生する。 |
チャート | 二酸化ケイ素をもつ生物の死骸が堆積した岩石。 |
先述したとおり、良い覚え方はないのですが、私は以下のように教えています。
まず、れき岩・砂岩・泥岩については「レキサデイ」と粒の大きさ順で一気に覚えます。
そして凝灰岩・石灰岩・チャートの順に「行設置(ギョウセッチ)」と覚える!
(ちょっと苦しいですが、これで生徒は覚えてくれています)
また、岩石について黒板などに板書するときは、なるべくコンパクトにまとめる方がよいです。
というのも、生徒はこれをそのまま丸暗記しようとするわけですから、長いと覚える気を失わせかねないためです。
さて、この表に載っていないが知っておくべき重要な性質を箇条書きでまとめていきます。
いずれも授業では触れるようにしてください。
・堆積岩の基本的性質
堆積岩は凝灰岩を除き、構成している粒の角が取れて丸みがあります。
これは水のはたらきによって丸く削られているためです。
また、化石は堆積岩にしか含まれていません。
これは火成岩だと熱により溶かされてしまうことが原因です。
・れき岩での注意点
よく、れき岩は何でできている?と聞くと、小石!と答えてしまう生徒が後を絶ちません。
確かに正しいのですが、小石だけではれき岩はできません。
なぜなら、接着剤となるべき粘土・砂が必ず必要になる為です。
この点は講師も知らないことが多いですので、注意しましょう。
・凝灰岩を火成岩に入れない理由
火成岩の定義は「マグマが冷えてできた岩石」ですから、凝灰岩は含まれません。
・凝灰岩が地層調査で重要な理由
火山が噴火することはそう頻繁におこるものではありません。
加えて、火山灰は広範な地域に降り積もります。
そのため、離れた場所にある2つの地層を比較するときに、凝灰岩の層があれば同じ時期にできたものと推察できます。
このように、年代を比較するときに用いる層を「かぎ層」と言います。
・石灰岩とチャートの違い
石灰岩の特徴は「炭酸カルシウムで構成される」というところ。
主に貝殻、サンゴ、ウミユリなどの生物由来と、海水由来の2つが合わさって作られます。
それに対し、チャートは二酸化ケイ素が特徴です。
主に放散虫・海綿動物などのプランクトンが由来となっています。
入試対策上は「チャートに塩酸をかけても期待が発生しない」ということを強く伝えましょう。
余力があれば、チャートは極めて固いことを伝えてもよいでしょう。
また、受験間近など発展的な内容を抑えたい場合、以下の点を指導しましょう。
・れき岩、砂岩、泥岩の分類
泥は0.06mm以下、れきは2mm以上を指します。泥とれきの中間が、砂です。
なお、れき岩は砂利道の舗装、砂岩は土木建築に、泥岩はすずりに利用されます。
・凝灰岩は東にできやすい
日本で噴火が起こった場合、偏西風により火山灰の多くが東に飛ばされていきます。
そのため、凝灰岩は東側にできやすくなります。
・泥岩の変化
泥岩は時間がたつにつれ、頁岩(けつがん)、粘板岩(ねんばんがん)に変化していきます。
化石も丸暗記するしかない!
化石には2種類あり、示相(しそう)化石と示準(しじゅん)化石と呼ばれています。
ここで出題されるのは「どの生き物が、どのような意味を示すか」ということです。
示相化石
地層が堆積した環境を表す化石です。
相≒環境、と教えると、比較的理解がスムーズになるかと思います。
また、環境がわかるということは、現在も生きているという意味であることを伝えましょう。
示相化石の例として覚えるべきものは
・サンゴ…あたたかくて浅い海
・シジミ…淡水と海水がまじる河口
・ブナ …やや寒い気候
・ホタテ…冷たい海の沖合
の4つになります。
示準化石
地層が堆積した年代を表す化石です。
準=年代の基準、と教えるとよいでしょう。
先ほどとは異なり、絶滅しているからこそ、年代が特定できることに注意して下さい。
覚えなければいけないのは、以下の名前と年代です。
古生代(約5億4200万 - 約2億5100万年前)
三葉虫・フズリナ・ウミユリ
中生代(約2億5217万年前から約6600万年前)
アンモナイト・恐竜・始祖鳥
新生代(約6,500万年前から現代)
サメ・ナウマンゾウ
注意:波の跡は化石と呼ばれない
実は、波の跡は地層に残ることがあります。
これを漣痕(れんこん)、あるいはリップルマークと呼びます。
たまにこのことを「波の化石」と呼ぶこともありますが、生物には関係がないため、厳密には化石とは呼びません。
あくまでも化石は、生物由来(生物の痕跡を含む)というのが条件であるためです。
かつて受験で問われたことがありますので、ハイレベルであれば教えてもよいでしょう。
生徒ががんばって覚えないといけない項目が目白押しでしたね。
多くの生徒は嫌がりますが、「覚えれば点になる」ということを強調して、必ず覚えさせて次回の授業に臨ませるようにしましょう。
次回は火山活動と火成岩について扱っていきます。
まとめ
地層のでき方は最初に2種類あることを例示しておくとよい(堆積・火山活動)
堆積岩は出題頻度が高いので、しっかり覚えさせる
化石は具体的な例(サンゴなど)を覚えさせることが、得点につながる
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