これだけ!教案の作成テクニックPart3~教案の実践的活用方法~
教案ができてから、実際に活用する方法を伝えます!
講師の皆様こんにちは!
人材教育コンサルタントの上田です。
2回にわたり、教案作成のテクニックについてお伝えしてきました。
Part1:http://www.juku.st/info/entry/992
Part2:http://www.juku.st/info/entry/1020
今回は最終回として、教案の活用法を中心にお伝えしていきます。
4,実際に書きながら模擬授業をやってみる
皆様のお手元に、ようやく教案ができました。作成お疲れ様でした!
これを片手に、実際に板書などを行いながら、模擬授業をやっていくことになります。
「え、教案は作ったら終わりじゃないの?!」と思うかもしれません。
確かにこの作業はとても面倒ですし、時間がかかります。
ですが、初めて教壇に立つ・初めて教える内容であれば、必ず一度は予行演習をしておいた方が賢明です。往々にして皆様が作った教案は、詰め込みすぎているケースが目立ちます。
具体例として挙げさせていただきますと、私が90分の授業で書く板書量は、多くてもA4用紙1枚に収まる量です。
もしこれ以上であれば、生徒と対話することなく、授業が終わってしまいかねません。
対話がない授業にならないよう、意識して模擬授業を行う必要があります。
(対話力についてもっと詳しい記事:http://www.juku.st/info/entry/971)
どうしても時間がない・すでに経験がある人は、せめて導入部分だけでもチェックするようにしましょう。
ここで、自分の授業を最もよくチェックする方法はなんだと思いますか?
少し考えてみましょう。
…
…
…
わかりましたか?
答えは「ビデオで自分を撮影する」ことです!
講師にとって重要なことは、自分が話している様子を知ることです。
話している姿を、生徒は見ることになり、私たちは評価されていきます。
しかし、自分で自分の話している姿をチェックした経験は(塾講師を経験していた場合を除き)ほとんどないはずです。
だからこそ、スマートフォンやビデオカメラで確認してみてください。
(個別指導の方は、椅子に座った状態で話している姿を撮影すればよいでしょう)
動画を見ながらチェックしてほしい点は以下の通りです。
・話す速度
基本的に遅すぎる人はいないので、早すぎないか、をチェックします。
日常的に話している速度では早いです。
英語でネイティブの速度を聞くと、たった数分でも相当に疲れてしまいますよね。
生徒が感じる負担感は、それと同じぐらいになります。
ですから、TVのアナウンサーのように、ゆっくり明瞭に話すようにしましょう。
なお、受験学年など既習分野の復習をメインで行う場合はある程度早くて構いません。
・話の間(ま)
どんなに適切な速度で話をしていても、“間”がないとまるでお経のようになってしまいます。
話の途中では、必ず間をいれるようにしましょう。
ここで、おススメの手法を紹介しておきます。
1.板書やメモを適宜取り入れることで、一時的に話さない時間を作ることができます
2.生徒に発問を投げかければ、間を意図的に作ることができます
3.個別指導の場合、説明のあと演習に入ることにより、間を作ることができます
・自分が書いた文字、書いているときの姿勢
自分の体で文字が隠れて、ノートに写せない状態になっていませんでしょうか。
また、書いているときに不自然な格好になっていませんか。
特に集団指導の場合はうしろすがたを見せることになりますから、書いているときの姿勢が重要になります。
対して個別指導の場合は、生徒に書いたメモを保護者の方も見ることになりますから、最低限ていねいに文字を書くようにしてください。
5,気になった点を修正する
授業が無事終わりました!
大半の場合、生徒がいちいち感想を言ってくれることはないですから、自分で授業を振り返ることになるでしょう。
その際、ぜひおススメの手法として「教案の修正をしながら授業を振り返る」ということです。
Part1で述べたとおり、教案は自分の講義力を向上させるためのツールです。
いくら入念に教案を作り込んでも、100%の授業ができた!とはならないはずです。
決して「1回作ればもういいや」とは思わずに、毎回の授業後に、見直しを入れていって下さい。
それでは、具体的な修正方法について一緒に学んでいきましょう。
・生徒の反応を書き込む
間違えるポイント・質問が多かったところが、講師の予想と外れることがあります。
これについては必ず書き込み、次回質問が来ないように予め補足してあげましょう。
授業中に「○○の部分、わかりにくいよね?」と先生が先回りして話してくれると、生徒は「自分たちのことを分かってくれているんだ!」と安心してくれます。
加えて、生徒が突っ込んだ質問をしてきた部分や、笑いが起こった部分についてもメモしておくとよいでしょう。
ちなみに、反応はクラスごとに変わりますから、必ずしも翌年同じような状況にならない可能性があることは頭の片隅に置いておいてください。
・授業時間から板書量・説明量を微調整する
授業時間が異なる教案を1から作るのは大変ですよね。
そこで、時間を考えながら、板書量や説明量を微調整すれば、すぐに教案を作ることができます。
(例)
集団授業で、60分英語(文型)の授業を行った
→個別指導で、80分英語の授業を行うことになった。学力は前の授業より低い生徒が対象。
→演習も取り入れる必要がある為、例文説明を追加して、そのまま演習時間を確保する。
代わりに、第4文型から第3文型への変換を削除すれば…
・新しい知見を取り入れる
毎年新しいニュースが出るのは、決して社会だけではありません。
理科であればIPS細胞・スーパームーンなど、多くのトピックがあります。
また、学習指導要領の改定やセンター試験の廃止など、全教科共通の知見もありますので、その点を雑談も兼ねて、教案に入れ込むとよいでしょう。
これで教案の修正も終わりです!
教案から自分の授業をレベルアップさせるコツ
基本は上記のスタイルでいいのですが、もしさらなるレベルアップを目指すのであれば
作成した教案を「80%程度の時間で作りなおす」ことを考えてみましょう。
冒頭にお伝えしたとおり、多くの新人講師の教案はまるで「教科書」です。
あまりにも内容が濃くなりすぎています。
そうなってしまう理由は、不安が原因だと私は考えます。
話すことがなくなったらどうやって間をもたせよう…
あれも教えたい、これも教えたい…ああ、これも復習させたいなぁ…
と考えているうちに、ひたすら詰め込まないと終わらない教案になっていませんか?
これをブラッシュアップしても、残念ながら根本的な解決には繋がりません。
授業は一方的に演説を繰り返す場所ではなく、生徒との対話が重要です。
そして対話をしているうちに、思っている以上に時間はすぎるもの。
だからこそ、教案は本当に教えたい内容に絞り、授業時間の80%には終わるように意図して作りなおしてみてはいかがでしょうか。
余裕を意図的に作り、以下のような形で時間を有効活用するとよいでしょう。
1,今日学んだ内容をもう一度講義する(ローコース推奨)
学力があまり高くない生徒の場合、話を集中して聞くことができていないケースが多いです。
そこで、もう一度要点を絞って同じことを2回、講義してあげましょう。
とはいえ同じ内容をそのまま話すのは、真面目に授業を受けていた生徒には退屈です。
ですから、積極的に問いを投げかけながら、答えを引き出してあげましょう。
(ここでしっかり発言できている生徒=きちんと集中できている、発言できない=集中できていない、と考えて構いません。発言できない生徒に対しては、個別に指導が必要なケースも有りますので注意してください)
2,演習を通し、学んだ内容を復習させる(ミドルコース推奨)
一番スタンダードな方法です。
その日の内容を実践的に考えさせるため、数問解かせて解説してあげてください。
この際、あまり難しい問題は使わずに、あくまでも「うろ覚えの知識」でも解けるような問題がよいでしょう。
(記号選択や、空欄補充の問題が適しています。計算であれば複雑なものは避けましょう)
クラスの半分以上ができている問題は、解説しなくても構わないかと思います。
3,学んだ内容を自力で説明できるように考えさせる(ハイレベル推奨)
学力が高い生徒に対するアプローチとして効果的なのが「講師役をやらせる」ということです。
特に先生の力量が高いと、生徒はわかった気になりますが、実際に家に帰るとわからない、ということが起こりがちです。
それを防ぐために、その場で学んだ内容を話させる・書かせると良いでしょう。
実際にやってみると、かなりの生徒は学んだ内容を断片的にしか理解していません。
私が実際に行っているやり方をご紹介します。
まず、「今日、先生が話したこと、重要だと言ってたことを、100字でまとめてごらん」と問いかけ、まとめさせます。
次に、隣の生徒と見比べさせてみましょう。あまりの差に笑いが起こります。
そして自信がある生徒数名に発問させ、それを板書しながら正しい点、間違っている点を講師が指摘します。
最後に、重要ポイントを講師が板書し、ノートに書かせましょう。
最後に
今まで3回にわたり、教案作成のポイントを見てきましたが、いかがだったでしょうか。
最初に教案を作るときには、ここまで手間がかかるものです。
ですが、教案を作ることは何よりも自分のために繋がります。
生徒との対話をする余裕を持つことができるようになりますし、クレームを頂く回数も減ります。
損して得とれ、ではないですが、教案を作成しないで惰性で授業をしているリスクを回避できることは、皆様にぜひ知っておいて頂きたい点です。
頑張ってよい講師を目指してください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
まとめ
教案作成後は、ビデオを使って自らの授業を客観的に振り返るとよい授業後に次回に備え、教案を修正しておくと教案が財産となる
(参考記事)
あまり話してくれない生徒との接し方:http://www.juku.st/info/entry/518
講師研修で高い評価を得るには?:http://www.juku.st/info/entry/559