【学生講師向け】BSCを使おう!ー指導編ー【ビジネスツールを応用する】
BSCは指導にも使える!
【ビジネスツールを応用する】はビジネスマンに紹介されるツールを塾講師に応用してみようというシリーズです。
世間には様々なツールが存在します。PDCAやMECE、SMARTといったツールもあれば、少し専門的になれば先行指標や遅行指標といった、目標達成を数値化するようなツールまでもあります。
しかし、それらはビジネスマンによって活用されることはあっても、学生にはあまり紹介されることなく、学生たちは自分なりのやり方を見つけていくしかありません。
ビジネスマンが使うようなツールを塾講師が身につけ、それを生徒に適用させていく。あるいは、自分自身で使ってみるのもいいでしょう。
企業も講師も進捗管理は必要
私が商学部ということもあってか、私は塾講師を一種の「マネージャー」であると考えています。マネージャーとは、野球部やサッカー部のマネージャーというようなサポート役の意味ではなく、”Manager”すなわち「経営者」だと思っています。
確かにそこには組織構造だとか、資源だとか、そういった難しい話はありませんが、一人の生徒(企業)がある目標に向かっていくのをどう運転してあげるかを考えることは、経営者と似ているところがあると考えます。
経営者は企業がどのような方向に向かえば、社会に役立ち、利益を創出できるのかを一生懸命考えますが、塾講師も生徒にどう助言し、どのような授業を行えば、成績が向上し、彼自身のためになるのかを一生懸命考えます。
経営者は企業の未来を、塾講師は生徒の未来を考えて行動しています。
そして、その目標のもと、両者とも、何かしらのマネジメントを行っているのです。経営者は自分の所属する組織やその人員、そして資源をマネジメントします。一方で塾講師は生徒自身をマネジメントします。
さて、こうしたことを念頭において、企業はどのように目標を達成していくのかを見て行きましょう。ビジョンだとか、ミッションだとか、そうした説明については別の記事に譲りますが、企業は必ず何かしらの目標を掲げるわけです。「10年以内に市場シェア1位」とかですね。
こうした指標は塾においても使えそうです(というか使っているかもしれませんが)。今回の記事では、指標の役割を再確認し、そしてどのような指標が適切なのかを紹介します。
指標の役割
企業では主に2つの観点から指標を捉えています。1つは現状把握、もう1つはインセンティブです。
現状把握
目標に向かう際、私たちは今どこにいるのかを把握することはとても大切なことです。例えば「来年度までに売り上げを30%向上」という目標を掲げたとしたら、もちろん売上高が一番良い指標ということになります。その売上高を見て、半年たっても売上高が5%しか伸びていないとしたら、残り半年でなんとかしなきゃいけないということで、何かしらの施策を打つことを考え出します。現状が予定よりも良くないとわかったら、なんとかしなきゃと考える、これが現状把握の重要性です。もしこうした指標が無視されていたら、そのまま来年度に到達して、売上高10%上昇のままで終わってしまいますからね。
現状把握ができてこそ、改善ができるのです。
インセンティブ
指標の重要性は現実を把握することだけにはとどまりません。もう1つは指標そのものがインセンティブにつながるということです。例えば、皆さんの手元に何かしらの仕事が与えられたとしましょう。しかしその仕事というのは、それが誰のためになるのかがわからない仕事。
それだと当然やる気はでません。その仕事が何の役に立っているのかがわからない状態なのですから。いえ、言われれば、確かにわかるんでしょうけど…
そこで指標を与えるのです。「あなたがこれだけの仕事をしてくれたおかげで、会社の業績が5%あがった」と。自分の努力と、誰かの成果が結びつく。それを明確にしてくれるのが指標です。そうなると少しやる気がでませんか?
塾に適用した場合
企業に必要とされる指標ですが、これは塾においても同様のことが言えます。
現状把握
塾においても現状把握は必要です。抽象的な言い方にはなってしまいますが、試験に合格するかどうかがわからないという不確実性が、指標を要請するのです。企業の場合と異なり、塾に通う生徒は志望校を決めなければなりません。志望校を決める基準はもちろん自分の将来のビジョンに合わせるのが一番なのですが、現実として自分の実力に見合った志望校というのが必要です。
実際に受かるのかどうかは、受けてみるのが一番いいのですが、残念ながらチャンスは一度きり。そういうことは許されません。ですのでそうした不確実性を排除するために、事前に模試を受けて、現状把握をするのです。
もちろん志望校を決めるだけではありません。志望校を決めた後に、そこのレベルに到達しているのかどうかの確認も必要です。先ほど申し上げましたとおり、チャンスは一度きりですので、その一度を無駄にしないために、そして、「受かる保証」をできるだけ確保するために、模試で実力を測定します。
インセンティブ
企業の場合と同様に、インセンティブも重要です。生徒さんは単に勉強するだけではどうにもやる気が起こらないことがあります。その原因の一つとして、自分の今の勉強がきちんと合格に結びついているのかを不安があるからです。今やっている勉強は無駄じゃないのか?今の勉強はきちんと合格に寄与しているのか?そうした不安を払拭するためにも、指標は大切です。
たとえ話をしましょう。
「英単語を4000単語覚えたら、ほかには何もしなくても東大に”確実に”合格する」
というルールがあったらどうでしょうか?それは文字通り、”確実に”だとしたら。おそらく全ての受験生は数学とか国語とかの勉強をせずに、英単語4000単語を覚えるでしょう。そして日々、「今日は○○単語覚えた」という確認をするはずです。これは単なる勉強とは違い、きちんと自分の今日の成果が、合格に近づいていることを表してくれるので、やる気がでるはず。あくまでたとえ話ですが。
BSCを用いる
指標とは目標を達成するために不可欠なものであり、そしてやる気を高めるためにも必要なものであることを確認しました。それではその両方を効果的に生み出してくれる指標とは、どのようなものがあるでしょうか?
私は便利な指標として、バランススコアカード(BSC)を紹介したいと思います。BSCとは、目標をできるかぎりブレイクダウンして、それを最終的に指標まで落としこんだ表のことです。詳しくは次の参考記事を御覧ください。
参考記事:【学生講師向け】BSCを使おう!ー教室運営編ー【ビジネスツールを応用する】
こちらの記事では、教室運営のためのBSCの活用方法を述べていますが、使い方はほとんど同じです。もちろん違いはいくつかあります。
視点は単元/分野ごとに分割する
教室運営のときは、視点として組織・講師・生徒・財務の4つが上げられましたが、ある科目の点数を上げるといった目標の場合、その科目を分野ごとに分割するだけで十分です。英語であれば、長文・文法・リスニング、数学であれば単元ごとに。教室運営のように難しいこと考えず、機械的に視点を設定してください。
重要成功要因(CSF)はその分野をクリアするのによく言われる能力を設定
例えば、長文という視点の中で、その力を伸ばすためには何が伸びればいいのかを考えるわけですが、基本的によく言われるものを設定すればいいのです。よく言われるのが、単語力、文法力、慣れです。
業績評価指標(KPI)は問題集の進捗、または小テストで測定
そして次に設定するのがKPIなわけですが、こちらも難しいことを考えず、2つの方法で測ればいいのです。単語力がついているのか否かを測定したければ、最終的に自分で小テストをやって実力を試せばいいわけです。逆に測定が難しいと思った場合には、問題集を3周すると設定し、それの進捗をそのまま指標とするのもありです。もちろん両方を実行するのもOKです。
実際に生徒のためのBSCを作成したら、以下のようなものが出来上がりました。
生徒がBSCを持つ意義
BSCには素晴らしいメリットがあり、それは教室運営に留めるだけはもったいないです。生徒がこうしたBSCを持ち歩くことによって、以下のメリットが想定できます。
現状把握しやすい
最初にあげたメリットと同じです。BSCの右側に現状を書く欄を作っておけば、毎日そこを更新することができます。自分が目標値まで、どれだけ進めることができたのかを確認できるのです。
インセンティブ
例として、作成したBSCが意味していることは「君はこの数値を達成すれば、偏差値60を突破する」なのです。右側に具体的な数値目標が書いてあるわけですが、それを左にたどっていくと、どういったロジックで目的に貢献してくれるのかが一目でわかります。そしてその数値にどれだけ近づいてのかは、一番右の欄を参照するのです。
短期計画を立てやすい
BSCとカレンダーを見比べてください。生徒は各々の指標を確認するために今日どれだけやればいいのか、1週間でどれだけ進めればいいのかの計画を立てることも容易になります。
生徒と講師のコミュニケーション
おそらく講師にとって一番のメリットはこれでしょう。BSCを生徒に持たせて、毎回の授業で持ってきてもらえれば、生徒がどれだけ勉強したのかをひと目で確認することができます。そして状況が良くないと思ったら生徒にアドバイスができます。ちなみにここで活用できるビジネスツールがPDCAサイクルですね(参考記事「【学生講師向け】PDCAを回そう【ビジネスツールを応用する】」)。これも合わせて進捗管理をやってみてください。
まとめ
指標の大切さからBSCについて解説したわけですが、いかがでしたでしょうか。
BSCというのは、作成するまでは確かに大変ですが、一旦作成してしまうと後は楽です。20世紀末に開発され、今では各市町村・各企業で活用されています。それだけに有用なツールなのです。
計画は立案するまでではなく、そこからきちんと進捗を管理するところまでやらないと意味がありません。
BSCはそれを手助けしてくれる、最強なツールです。
イメージしてみてください。生徒がみんな1枚のカードを持っていて、そこには自分の勉強計画が全て書いてある。先生はそれを見れば、生徒は何を目指しているのか、何を達成しなきゃいけないのか、今どこまで進んでのかが一目でわかるのです。
是非、活用してください。
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