いよいよ入試も大詰めに入り、(2月の段階で執筆しています)大学受験が終わった生徒もちらほら出てきている頃ですね。
2月から3月というのは、塾にとって、2つのことにおいて重要な時期だと思います。
その2つとは
①生徒の入試の結果を出すこと
②4月以降の新年度体制へ向けて新人講師の採用を図ること
です。
多くの塾は①の数字を基に、良かった点や課題点を分析した上で来年度に向けた体制づくりを模索します。
その体制づくりの中でも最も大事なことの1つが②の講師の採用なのです。
定年退職をする方はもちろん、本年度をもって大学を卒業して辞めていく講師の空いた枠を探さなければならないからです。
本稿を読んでくださっているみなさんにも、新年度の4月からのお仕事として塾講師を始めようと思っている方、お世話になった塾で働くことがすでに決定している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これからその魅力について詳しく述べていきますが、塾講師はとてもやりがいのあるお仕事です。
ぜひ、自分のこれまで学んだことを存分に生かせるよう、学びにより磨きをかけ続けてくださいね。
どの職種でもそうですが、お仕事を始めると最初のうちは初めての事だらけで戸惑う事も多いものです。
「塾講師を始めよう、だけど自分に務まるだろうか」こう思ってしまうのは誰にでもあることなので、そこはあまり気にしすぎず、不安を自信に変えられるようにしっかりと努力を積み上げていきましょう。
本稿では上記のような思いから、具体的に、
塾講師を始める前に意識しておきたいこと
について説明いたします。
1.前提
まずは、塾講師という職業の前に、社会人としての前提を確認しましょう。
(1)常識的なこと、基本的なこと
服装や身だしなみは大丈夫でしょうか?もし自分が親だったら自分の子供を預ける先生にどのような身だしなみでいてほしいか?こういったことを確認しながら整えましょう。
男性であれば、髭をきちんと剃ったりワイシャツにはきちんとアイロンを掛けて清潔感のある見た目にすることです。
それからよく学生の講師で靴下のチョイスを間違えてしまう新人がいます。たとえば、スーツの靴下にくるぶしまでの短いものを選んだり、私服に合わせるようなカラフルなものを履いてきてしまうなどです。
試してみるとすぐにわかると思いますが、とてもみっともない印象になってしまうので黒地や紺色の靴下を忘れないよう気をつけましょうね。
女性の服装についても本サイト塾講師ステーション「知らないと恥ずかしい!スーツの着こなし術【女性編】」などを活用してご確認いただけたらと思います。
また、言葉づかいについてです。
上司とのコミュニケーション、保護者とのやりとり、そして何より大切な生徒との信頼関係を築くためにも
言葉づかいはとても大事です。
丁寧な言葉がけはもちろん、生徒たちが大人になった時の見本としての姿を見せられるようにしましょう。
そして、研修の時にも指導が入ると思いますが、授業が始まる時間の15分前には出勤するなど、
遅刻や無断欠勤を絶対に行わないこと、そして致し方無い場合には必ず早めの段階で上司に報告・相談するなどの事前処置をとるようにしましょう。
(2)勤めている塾講師や塾の状況をよく見ること
「塾講師」と一言でくくってみても、その中身はさまざまです。
集団の授業に特化した塾、個別指導を対象とする塾、その両方の側面を持つ塾、そして難関大学を志望する
生徒のニーズに合わせた塾や、学校の授業についていけず補習をしたい生徒が通う塾など、ほかにもたくさんあります。
まずは、自分の勤めることになる塾はどのような生徒の層が多いのか、そして塾が目指しているものは何か
などを注意深く観察してみてください。
通う生徒、そして塾が目指すものによってその役割も変わってくるからです。
そうしたことを踏まえた上で、たとえば「社会科が苦手な生徒をむしろ得意教科にする」や「今度の学期末テストで90点以上を狙わせるような指導にする」という具体的な目標をたてられます。
2.塾講師にとって授業は「命」である
先述したとおり、学校の授業に加えてさらに高いレベルの学習を求めてやってくる生徒、その反対で学校の授業についていけなくて補習をしに来る生徒など塾へのニーズは様々です。
しかし、いずれの生徒に対しても、講師は高い専門性に基づいた指導を行い、成績が向上するという結果を残さなければならないという事は共通です。
そして、それこそが、わざわざ高いお金を払って塾に通っている生徒・保護者に対する責任でもあるのです。
その責任を果たす、つまり生徒の学力を向上するための時間が「授業」です。
塾講師にとって授業というのは最も大切にしなければならないものであるということを改めて認識するようにしましょう。
授業を行うにあたって大切なこと
では、授業を行うにあたって具体的に何が大切なのか、という事について述べていきます。
さまざまな意見があると思いますが、筆者の経験から述べるとそれは
①伝えたいという「心」②それを実現するための技術
の2点であると考えています。以下具体的にご紹介します。
①伝えたいという「心」
これは、言い換えれば「何故〇〇を学ぶのかということを、生徒の心の琴線に触れるように伝える」という熱い心の事です。
みなさんも授業を受けていた際に感じたことがあると思うのですが、「これをなぜ学ぶのか」というのが漠然としているより、学ぶ目的がはっきりしている方が身を入れて勉強することが出来たはずです。
たとえば、歴史であれば「これは過去で終わったことではなく、今にもつながる問題だからしっかり考えなくては」などということです。
つまり、塾講師目線から言えば「それを学ぶことが生徒にとって何故大事なのか」ということを突き詰めた上で、「〇〇が大事だからこそ、生徒たちに伝えなくてはいけない」という気持ちがなければいけません。
②それを実現するための技術
せっかく①のような思いを強く持つことが出来ても、実際に授業で体現することが出来なければ、意味をなしません。
自分の授業が①を達成するものになっているのかどうか自問自答しながら、授業の前に十分な準備をするようにしましょう。
筆者の拙稿「日本史の授業準備における4つのポイント!」で具体的な準備方法をご紹介しています。日本史のみでなく、他の授業にも当てはめられる部分が多いと思うので良ければご参照いただけたらと思います。
実際に授業を良くしていくアドバイスとしては、授業の前に授業案を作って、一度先輩の講師や同期の講師に見てもらい、事前指導を受けることをおすすめしています。
授業を行っている講師は、ビデオで録画でもしない限り自分の授業を客観的に見ることはなかなか出来ないからです。
なので、一度客観的に観察してもらって意見をもらうことで、説明に飛躍や矛盾がないか、わかりにくい所
はないかというような事に気がつけます。
また、他の塾講師の授業を見るなどして自らの授業へフィードバックすることも1つの手であると思います。
その点についても拙稿「授業研究の方法~よりよい授業のために~」で詳しくご紹介しているのでよければこちらもご参照ください。
しかし、あくまで一番大切なのは「教える内容(知識)を自分のものにしているか」という点です。
全てにおいてそうですが、教える内容を自分がしっかり理解していてはじめて人に説明できるものです。
その教える内容を理解させるための教材、体系、意義などの引き出しをたくさん作ることがあって初めて
「どう教えるか」というところにたどり着けます。教える技術というのは常に下線部の先にあるのです。
まとめ
本稿では春から新しく塾講師になる方に対して、働く前提として意識しておかなければならないことと
塾講師の生命線となる「授業」において大事な「伝えたい心」と「それを実現する技術」の2点をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
最後に塾講師をやっていておそらく全ての塾講師が一度は感じることをお伝えして本稿の締めとします。
それは「生徒たちは素晴らしい人間である」ということです。
授業を行っていると生徒たちの感受性、洞察力の豊かさに驚かされます。
どれほど授業の準備を入念に行っても良い意味で予想を超える発言をしてくることも多々ありますし、自分の上手く説明できないところはすぐに見抜いてきます。
正直その反応の正直さをこわく感じてしまった事もありますが、それ以上に温かい部分も併せ持っています。
自分の教える教科を通して、一生懸命頑張っている生徒の心の扉を叩いてみてください。
きっと想像もつかなかったような感動ややりがいを感じる瞬間があるはずです。
これから塾講師として働く全ての方の船出を心より応援しています。
本稿は以上です。ここまで長文ご精読ありがとうございました!
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