前回記事では、集団指導で本当に苦労する話を書きましたが、
今回はそれをどう解決したのか、そして最終的にどんな感想を持ったのかを綴っていきます。
自分の授業を見つける
教室の秩序は崩れ、生徒は言うことを聞かなくなってしまいました。
けれども、9月ごろになるとさすがに慣れてきて、自分なりの授業を見つけるようになります。
自分なりの授業というのは、
最も自分がやりやすいと感じ、最も生徒のためになると信じられるような授業です。
これを思いついたのは事前準備のときです。
塾講師をデビューしてから9月に至るまでの試行錯誤の結果、「これだ!」って感じたんです。
すると、すごく授業がやりやすくなりました。
自分だけの授業の進め方を持つと、授業の構成について毎日悩むこともなくなりますし、自分だけの授業は自分にあっているやり方なので、緊張も一気に軽減されるんですね。
集団指導の最初は、右も左もわからない状態ですが、
慣れてくると、本当にその教室が「自分の空間」のように思えてきますので、面白いです。
Tips:自分だけの授業を見つけるためには?
とにかく毎回の授業で事前準備をすることです。
そして事前準備するときは、その授業の構成を考えるだけではなく、生徒が「理解する」に至るプロセスはどのようなものか、生徒が宿題をしようと思うのはどうしてか、といったワンランク上の抽象的な問いを考えるのがいいかもしれません。
自分が思いついた疑問一つ一つに自分なりの答えを出し、
それを集約したものを「授業」という商品として完成させたのです。
秩序を取り戻す
授業以上に難しかったのは、秩序を取り戻すことです。
宿題をやらせる、きちんと授業をきかせることも講師の役目です。
これについては試行錯誤をしましたが、
社員さんのアドバイスから、授業の冒頭の雑談、で集中力を高めることを学びました。
言葉を使って
基本的に説教のようなものです。授業の冒頭で、私が話を始めるわけです。
「そういえばこの前、ある生徒がこんなことを言ってたんだが〜」
という感じに。
その内容は本当に様々です。あるときは「勉強全然しなかったけど80点取れた」という人が多かったために、その人達に向けたメッセージを発したり、あるときは勉強しないことを自慢する人たちを叱咤するような喩え話をしたものです。
これが案外効くんですよ。
そんな話をきっかけに勉強してくれる生徒もいて、すごく嬉しかったです。
その生徒は英単語が苦手だったのですが、急に勉強するようになり、受験直前期には単語集を4周していて驚きました。
こんな感じで、自分の話が生徒に影響することが少し嬉しかったので、授業前にはきちんと話を考えることをしていました(授業の中身は型ができて、あまり時間をかけず準備できたのもこれを助けていますね)。
無駄話を使って
秩序というより、講師に対する関心を高める手段として無駄話を使ったこともあります。
説教することが特にないなと思った時は、授業の冒頭でクイズを出したりしました。
その一例が、
「犯罪の取り締まりを厳しくしたら、犯罪率が急上昇した。それはなぜか?」
「アイスクリームの売上高が上昇すると、水難事故が上昇する。それはなぜか?」
といったものです。
単純なクイズではなく、応用の効くようなものをクイズとして採用したのはけっこう受けがよかったです。
生徒たちってやっぱり考えることが好きなんですね。
それで正解した人をすごく褒めてやったりすると、彼らもすごく喜んでくれて、その後の授業に集中するようになります。
集中の一つのきっかけを作る方法として、クイズは本当によかったです。
授業後に、もっとクイズ出してと食いついてくる生徒もいました。
クイズは、生徒と仲良くなる手段の方法になるんだなと実感しました。
ちなみに上のほうの回答は、「取り締まりを厳しくしたら犯罪がより多く発覚するから」で、
下のほうの回答は、「アイスクリームも水難事故も気温の上昇にともなって上昇するから」です。
入試直前
自分なりの授業を見つけて授業の質を高めて、クイズや説教で秩序を取り戻すと後は本当にうまくいきました。
私は受験生のクラスも担当していましたので、入試直前になると少し雰囲気が変わりました。
授業自体は、教える内容が変化するだけで特に変わりはないのですが、
問題は授業の前後です。
自分の進路に悩みだす生徒、自分の成績に不安を覚える生徒、いろんな生徒が出てきます。
私もその問題に対応することになりました。
しかし質問内容の大半は、
「国語の成績が上がらないのですが、どうすればいいんでしょうか?」
といったものです。
国語というのは成績を上げることが難しい科目ですからね。
しかしこの質問が本当に多かったので、国語の成績を上げる方法・読解法をA4用紙2枚分にまとめて、資料として渡すということもしましたね。
もしかしたら読者の中には「よくもまぁ面倒なことできるなぁ」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
けれど塾講師をやってたらわかるんですが、数ヶ月教えてくると生徒たちに愛着が湧いてくるんですよ。
この子たちのために、できることは全てやりきりたいと思うようになります。
それに、自分が資料を作って渡した時の生徒たちの目の輝きが本当に嬉しかったというのがあります。「これがあれば頑張れそう」と信じてくれる希望の目です。
最後の授業から合格発表まで
入試直前の最後の授業は、実に普通でした。淡々といつものことをやる。
一応最後には応援のエールを送ります。
自分がこれで君たちを教えることが最後だということを強調するわけではなく、みんなが本当に頑張ったってことを伝えて、礼をして授業を終えました。
このときは本当に感慨深かったです。
自分が彼らのために何ができたんだろう。
彼らは入試本番で全力を出せるだろうかと振り返りました。
そして受験当日には塾の最寄り駅に朝から張り込み、受験生の一人ひとりにエールを送ることもやりました。
一人一人に考えていたメッセージを送ることも苦ではなかったです。
そして受験が終わり、生徒たちが合格の報告を塾にしにくるとき。
私は模試の点数入力の作業をしていたのですが、生徒たちの大半は見事合格を勝ち取り、その報告をしにきてくれました。
私が本当に「これが最後なんだな」と思ったのは、彼らが卒業アルバムを持ってきたときでした。卒業アルバムは、彼らが一生大切にするものです。
そこに、「メッセージを書いてください」と言われたときや、書いた後に「1年間ありがとうございました」と言われたときは、心にグッとくるものがありました。
あのときは本当に、「この仕事をやっててよかった」と思いました。
後半戦の感想
「この仕事をやってよかった」
この一言に尽きます。
集団指導を始めたときは本当につらいことが多かったのですが、最終的には生徒たちと一緒に目標に向かって頑張ることができたのは、私の誇りです。
最後に、この仕事を通じて今でも生きていると思ったことはいろいろあります。
プレゼンテーション能力や論理的思考力といった、ハードな能力が強調されることが多いのですが、本当に身につくことは、他者の視点に立つことだと思います。
何かを教えようとすると、どうしても生徒の視点に立たないと話が始まらないのです。彼らが「勉強しよう」と思える話ってなんだろう、彼らはどうしたら「理解した」と思えるのだろう、そういったことを常に考えます。生徒の思考力に立たなければ話は通じないのは当然ですからね。
これが私が1年をかけて得た、経験でした。
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