やる気の科学的な技術【成功者に学ぶ】
催眠術のようなイメトレ
※※注意事項※※
①本記事をお読みになる前に、「経済学の知識を使って生徒のやる気を上げる!?」を一読することをおすすめします。というのも、この記事で取り扱われている数式が本記事の前提になっているためです。特に数式の文字式、pが本記事に関連してきます。
②タイトルには催眠術とありますが、実際にやっていることはイメージトレーニングそのものです。しかし、世間で使われているイメージトレーニングとは異なり、”外部から作用を働かせるがために、あたかも催眠術のようだ”ということで、このようなタイトルにしました。
③ここで述べられていることは科学的に証明されているものではなく、筆者個人の見解を存分に含んでおります。
今回紹介するビジネスツールは「イメージトレーニング」と呼ばれるものです。イメージトレーニング自体はビジネスに直接活用されているものではありませんが、いわゆる経営者層はこの手法を取り入れていると言われています。
イメージトレーニングはスポーツによく取り入れられていますが、これはスポーツだけではなく、生徒にも適用することが可能なのです。
イメトレとはなにか
スポーツで用いられているイメトレを想像していただけたらわかると思いますが、イメトレとは理想の自分を思い描くことです。スポーツでは理想の動きをしている自分をイメージすることで、本番で実力を100%発揮することができると言われています。
イメージトレーニングが効果を発揮するのは、脳の働きに作用しているためだと言われています。
右脳が発想や空間認識を支配し、左脳が論理的思考力を支配するわけですが、イメージトレーニングは右脳に働きかけます。右脳をより活発化させ、空間認識力を高め、スポーツでのパフォーマンスを高めるといったものです。
私の考えでは、イメージトレーニングは確かに右脳に対する働きかけにすごく有効なのですが、それだけではなく、将来の自分の気持ちを、現実のように感じるといった効果があるのではないかと思っています。
というのも、いわゆる成功者と呼ばれる人たちは将来の自分を強くイメージすることでパフォーマンスを保っているといった実例がかなりあるからです。
皆さんは小さなとき、ヒーロー物のアニメを見て、その主人公と自分を重ねあわせたことがありませんか?
勇気のある主人公、力を持つ主人公、頭のいい主人公…それらと自分を重ねあわせたとき、現実のものではないのだけれど、なにかすごく気持ちのいい状態になったことはありませんか?
すごく周囲からチヤホヤされている人と自分を合わせて、その気持ちよさに酔いしれたことはないでしょうか?
イメトレとは、右脳を活発化させるのみならず、将来のことを現実のように感じてしまう、つまり妄想状態を作り上げる方法とも言えるのです。
そしてこれは、拙稿「経済学の知識を使って生徒のやる気を上げる!?」にある、pの値に作用させる力があるのではないかと考えました。
イメトレの方法(pを向上させる方法ーその1)
イメトレとはすなわち、将来のことを現実のように体感させることです。普通であれば、未来の想像とはそんなに深く考えず「たぶんこうだろう」とざっくり予想するものなのですが、イメトレはざっくりを許さず、五感を含めてまるで現実のようにイメージを呼び起こす方法なのです。
これを実行することで、生徒は将来の利益を獲得しようと、現在の努力(対価)を支払おうとします。
以下では具体的に私が実行したイメトレを紹介したいと思います。
①〜⑤が合計で20〜30分ほどで、⑥が定期的に行われるものです。
①状況を説明する
まずは状況を説明してあげます。将来、生徒はどんな状態になっているでしょうか。時間、場所、持っているもの、近くにあるもの、小説の導入部分のように語りかけます。
「君は今、2月○○日12時頃、○○大学の校門の前にいる。君は私服で、持っているものは財布と小さなかばんのみ。周囲には君と同じような年の人が、次々に大学に入っていっている。きっと同じ受験生だろう」
②五感を加える
次に行うことは、五感を加えることです。何が見えて、何が聞こえて、どんな匂いがするのか。それを1つ1つ加えていきます。できることなら、生徒自身にも五感を追加してもらいましょう。五感を詳しくすることで、イメージはより強くなります。
質問例:「何が見える?」「どんな匂いがする?」「後ろには何がいる?」
③感情を問いかける
これについては生徒自身にやらせましょう。その状況のとき、どんな気分なのか?その感情をより明確にすることで、リアリティを増します。できればその感情を「○○したときと似たような気分」というように、過去に経験した感情をもう1度湧き起こすのが望ましいです。
質問例:「君はどんな気分だ?」「色で表すと何色?」「嬉しい?どう嬉しい?」
④状況を動かす
状況を設定したのでしたら、次は動かしてみてください。風景がどう変わっていくのかを次々に説明するのです。
「君は校門に足を踏み入れた。掲示板まで100mほどあるが、そこにはたくさんの人溜まりがいる。そこをどんどん歩んでいき...」
といった感じに。状況が刻々と変わることを植え付けることで緊迫感が増します。
⑤決定的瞬間までをイメージさせる(できれば後日談も)
「君は合格掲示板の前に立つ。たくさんの数字が並んでいるが、番号順になっているのでそれを追う。しばらくして君は...○○番を見つけた!」
本当に喜ばしい状況まで、状況を動かし、そこを徹底して詳しくイメージしましょう。全ての五感を駆使するだけではなく、感情の深いところをはっきりとさせるぐらいに。
そしてできれば合格した後の話をしてあげるとよいでしょう。
生徒にとってはこちらの方が重要だったりします。学校の説明会だとか、新歓だとか、あるいは周囲からの賞賛だとか、そういったプラスとなるものをとにかくイメージさせます。(私の生徒はけっこう自尊心の高い子でしたので、周囲からの賞賛を中心にイメージさせました)
⑥イメージを継続させる
以上のイメトレを軽く、20分ぐらいした後、今度はそのイメージを損なわないよう継続してイメージを湧き起こさせます。その手法としては以下のようなものがあります。
・志望校のパンフレットを渡す
・履修ブックを渡す
・合格発表日の風景、写真を見せる
とにかく合格当時のことを妄想させるのです。自分が合格しているシーン。履修を組んでいるシーン。あらゆる場面にいる自分を想像させ、強固にさせます。これを毎回の授業の冒頭に行うと、忘れようにも忘れることができなくなりますし、その日の集中力を向上させることに大きく寄与します。
考えてもみてください。20分間のイメトレをやられて、そこから定期的に楽しそうな写真を見せつけられるのです。そこにいる人物の1人が自分であると妄想しても仕方ないですし、おそらくワクワクして仕方ないでしょう。
余談ですが、これを受けた生徒は「合格発表で自分の番号を見たとき、思ったより嬉しくなかった」と生意気なことを言っていました。まぁ言ってみればそれは当然といえば当然で、この方法は期待値を上げすぎる効能を持っています。ゆえに、現実が妄想に追いつかないことがあったりもするのです。
※イメトレが効かない場合もあります
実はイメトレが効かないパターンがあります。まず1つは本人がイメトレの結果にあまり魅力を感じていないこと。例えば、本当はピアニストになりたいのに、大学に無理やり入れさせられるような生徒であれば、あまり効果はありません。すでに別の方向でイメトレが完了しているのですから。もう1つは自分の実力と結果があまりにも乖離している場合。本人がイメトレの結果を、実現不可能だと思っている限りそれを妄想させることが難しいです。これの解決策は拙稿『学習戦略論【原則編】』にありますので、ご一読ください。
イメトレはポジティブでなくてもよい(pを向上させる方法ーその2)
私はイメトレを何度か行いましたが、先に説明したようなポジティブなイメトレではなく、あえてネガティブなイメトレを行って成績を上げることに成功したことがあります。
私は、成績が悪いがために両親に私立高校を退学させられそうになった生徒を受け持っていたことがあります。ご両親は、次の数学の試験(1ヶ月後)で、平均点を取らなかったら退学させると宣言しました。しかしその生徒は今まで数学のテストは下から5位以内しか取ったことがなく、しかもテスト2週間前に至るまでに勉強を一切しなかったのです。
そこで私は最終手段と思い、1時間ほどの面談を設け、次のようなセリフで話を切り出しました。
「よし、じゃあフリーターになったときの君の物語でも作ろうか!(笑顔)」
ちなみに物語は次のようなものでした。
「君は目標の点数を取ることができず退学することになってしまった。高校を卒業していないから中卒というこことになる。君は学校に行かなくなるから、友達と触れ合う機会もなくなる。今までの友達と会おうにも、友達からの冷たい視線だとか、ひそひそ話とかが気になるから会うこともできない。家にいても家族から働けと言われる日々。とはいっても外には出たところで働き口も見つからないし、何もすることができない...」
こうした物語を私が語り、あとは生徒自身にイメージさせるということをしました。イメージをもっとふくらませるための質問をして、さらにどんな気持ちになるのかを詳しく問い詰めました。
正直、これはかなり残酷な方法でした。実際話の終盤の方では涙を流すようになり、最終的には私にさよならも言わずに帰宅してしまいました。しかし、そこから2週間、生徒は猛然と勉強したので間違いはなかったと思います。
その生徒はすごく部活に熱心な子でしたので、部活はサボることなく全部参加し、それが終わった後家で今までだらだらしていた時間を全て勉強に費やしました。
結果は....
平均点より5点高い得点を獲得しました。
無事、退学を免れたのです。
確かにイメトレとはポジティブな話をするわけですが、本人が将来の自分に対してそこまで強い自身を持っていなく、かつ危機的な状況にあるときはネガティブを回避しようとする力を利用するのもありなのです。
ネガティブイメトレを使うべき時
本当に成績がまずい生徒には、この方法が効果的でしょう。なぜなら、通常用いられるような「クラスで1位になると嬉しいよ」とか「いい大学に行くといい職につける」とか、そういった将来の希望の話を信じないからです。なにせ、今まで成功したためしがないのですから。ですから成功体験を一度でもいいから作るためには、最悪の状況を回避しなきゃいけないと本人に認識させるのが1番なのです。もしそれで、最悪の状況を回避したらどうでしょうか。それはすなわち、成功です。そこから「君だってやればできるじゃないか!」と褒めて、そこからスタートすればいいのです。成功の嬉しさは、一度体験しないとわからないのです。
”将来の夢”について
よく、やる気を上げるための方法として”将来の夢”を持たせることという主張があります。
確かにそれは必要なことではあるのですが、重要な点を忘れています。
「こうなったら楽しい!ワクワクする!」
あなたは妄想をしたことがないでしょうか?好きな人が隣にいると妄想すると、少し幸せな気分になりませんか?あるいはあなたは自分がヒーローになること、何かすごい能力を持った人である場面を妄想したことがないでしょうか?
そのとき、必ず脳内がバラ色になっているはずなのです。
将来の夢が大切なのではなく、頭の中で何かを妄想し、そうなったらいいなと本気で思うことです。
将来の夢を何かもったとしても、それを本気で思っていない限り、あるいはそれを妄想として抱けない場合にはほとんど効力を持ちません。
どんなに下品な夢でもいいですし、どんなに現金な願いでもいいのです。
本当に大切なことは、将来の夢を論理的に考えることではなく、直接感情にグッとくるものを抱かせることです。とにかく強い欲望、強い妄想を抱かせてください。
そのためにイメトレ、いや、催眠術はきっと有効であることでしょう。
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