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【採用担当者向け】経営の3要素による考え方

2015/04/18

人事戦略を考えるうえで、絶対に知っておきたい“経営の3要素”とは?

皆様こんにちは!
人材教育コンサルタントの上田です。

前回は「講師を採用するときに最も重要なことは、利益を生み出すことができるか否かである」という視点から、講師採用戦略の概要をお伝えしました。
(前回の記事:http://www.juku.st/info/entry/1179


それを踏まえ、今回は人事戦略を考える際に役立つ“経営の3要素”をお話ししていきます。
(※ここでは正社員・アルバイトで分けるのではなく、人材としてまとめて考えてまいります)

 

経営の3要素とは

まず、経営の3要素から簡単に説明していきます。


経営の3要素とは、組織運営に必要不可欠だと考えられている3つの要素のことで、ヒト・モノ・カネの3つがあります。


ヒト:人材(派遣社員やアルバイトも含む)
モノ:商品に加え、生産に必要な設備
カネ:現金、預金、債券、株式などすぐに換金できるもの

塾・予備校業界では、以下が代表例となるでしょう。


ヒト…講師、職員、チューター、警備員、清掃員など
モノ…授業、テキスト、教室、自習室など
カネ…資本金、利益剰余金など

これら3つの資源を有効活用して、利益(=付加価値)を増やすことが、経営マネジメントの基本です。

ですから経営者からみると、「人材」はヒト・モノ・カネと呼ばれる“経営の3要素”の一つであると捉えることができます。

さて、これら3つの資源には、それぞれ特徴があります。
具体的に見ていきましょう。

 

カネは最も扱いやすい資源である

3つの中で最も簡単に扱うことができる資源は「カネ」です。

なぜなら、客観的に価値を決めることができる資源であるためです。


例えば“100円もらえる権利”と“1000円もらえる権利”があれば、だれでもすぐに「1000円もらえる権利」のほうが良い!と判断することができます。
これが建物になると“築20年だが駅10分の教室”と“築3年だが駅15分の教室”、同じ賃貸料だったら、どちらが良いか判断するのは、難しいですよね。


人材ならなおさら難しくなってきます。(詳細は後述します)

また、保存性が高いことも特徴です。
銀行に預けたり、債券に置き換えたりすることで、すぐに“蓄える”ことができます。

 

対して、塾の生命線である授業は、保存することがとても難しいですよね。
もちろんDVD等に残すことはできますが、それは生授業とは異なるものであることは、講師をご経験していれば誰もがわかることかと思います。

モノは管理コストがかかるが、塾業界ならではの考え方も…

では、モノはどうでしょうか。

経営の3要素 モノ

 

カネに比べると、価値を判断することが難しい資源であることを、先ほど簡単にお伝えしましたね。
加えて、モノは場所を取ることから「管理コストがかかる」という特徴があります。
(要は在庫管理をする必要がある、という意味です)


塾においてモノとは、主に授業(商品)と教室・テキスト(原材料)を指します

ここに、塾業界の特殊性があります。

原材料だけでは、多くの塾は付加価値を生み出すことができません。
そこで授業を展開するわけですが、そこに介在するのは“ヒト”という資源です。

結果、以下のような特徴が生じてきます。

・在庫管理コストがほぼ不要(先生を教室にしばりつけておく必要はない)
・商品が見えづらい(価値を客観視することが難しい)
・1つの製品で、1つの価値を提供するわけではない
 (冷蔵庫なら“食品を保存する”という価値だけですが、講師は様々な価値を提供できます)

つまり、塾業界では、商品はヒトに近い資源になることを知っておきましょう。


カネとモノの共通点

ここで、今までご紹介した2つの資源の共通点を見ていきましょう。
実は、モノとカネは似ている部分もたくさんあるのです。

価値を客観的に判断できる

お金はそのまま、数字を数えるだけで客観的な判断が可能です。
また、モノについても“○○円”という売価を設定できるため、価値がわかりやすくなります。

私たちは無意識に“高いもの=良いモノ”と考えがちですよね。
これはまさに、価値と価格が比例している、と判断しているためです。
このように、多くの商品価値はカネで比較し、考えることができます。

 

販売されないと価値を生み出さない

モノは、製造しただけでは、1円の利益にもなりません。
誰かに販売してもらわないと、価値には結び付かないのです。
(むしろ、製造原価の分だけ赤字になってしまいます)

カネも同様に、置いておくだけでは、何にも役に立ちません。
誰かが運用(これは販売の一形態です)してくれないと、価値には結びつかないのです。
(保存することはできますが、増えることはありません)

 

カネとモノは交換が容易である

資源を他の資源に交換したい、と考えるとき、カネとモノは交換が簡単です。
商品が売れさえすれば、モノはカネに交換されることになります。

もちろん販売することが大変な商品がありますが、ニーズが既にある商品を、安い価格にすれば(利益が出るかどうかは別にして)交換することは容易です。
カネを他の資源に交換することも、よほど希少性が高い資源でない限り、自由に行うことができます。

 

今の価値から増えることが無い

カネはデフレのときを除き、相対価値が増えることはありません。
モノは電磁的なもの(データ)を除き、価値はどんどん目減りしていきます。
(出来立てのケーキも、3日たてばただのゴミになってしまいますね)
ですから、なるべく早く売ることが重要になってくるのです。

 

ヒトは他の2つにはない、特徴がある

さて、これに比べて「ヒト」は実に特殊な資源であると考えられています。
その理由を、いくつか例を交えながら考えてみましょう。

 

経営の3要素 ヒト

1、価値を客観的に判断することが難しい

モノやカネと違い、ヒトの価値を客観的に判断することは容易ではありません。
例えば日本において、大卒の初任給平均額は200,400円です(平成26年)

 

ですが、これは果たして適正な数値なのでしょうか。

本当に彼らは20万円の価値を発揮してくれるのでしょうか。

また、仮に10人採用した場合、その全員が全く同額の価値を生み出すのでしょうか。

 

ここを詳しく扱うことはしませんが、モノ・カネと比べて“絶対に正しい”と言える基準が存在しないことは、ご理解頂けたと思います。

モノであれば性能や価格で、ある程度客観的に価値を判断することができます。
ですが、人材の場合は価値判断がかなり難しい、ということをは知っておきましょう。

 

2、適材適所を考える必要がある

また、ヒトの価値はそのままでは生み出すことはできません。
どんなに優秀な人を雇ったとしても、ただ座らせているだけでは価値を生み出しませんよね。
(もし空気清浄機なら、コンセントにさしているだけで価値を生み出してくれます!)
ヒトに価値を発揮してほしいなら“適切な”仕事を与える必要があります。

しかし、この“適切な”というのが実に難しいのです
全ての能力が均一に高い、という人はめったにいません。
(仮にいたとしても、その人の雇用コストは相対的に高くなってしまいます。)

そこで、1人1人に合わせた仕事配置を考える必要が出てくるわけです。
塾の現場では、以下のような点を考慮しなければいけないでしょう。

 

・個別指導か、集団指導か
・補習を担当してもらうか、受験を担当してもらうか
・他の先生との組み合わせ(国語の先生は厳しいので、数学の先生は優しい先生を配置する、など)

 

3、安易に資源を切り替えることが難しい

カネをモノやヒトに変えることは、とても簡単に行うことができます。
モノも価格を考えなければ、換金することは比較的容易に行うことができる資源です。

ですが、ヒトはそうはいきません。

多くの塾では、講師の方と「雇用契約」を結ぶことになります。
(業務委託契約の会社様もあると思いますが、それについては割愛します)
日本において雇用契約を結ぶことは、労働基準法をはじめ、労働法規に縛られることに他なりません

そのため、退職の4要件をはじめとした様々な制約から、安易に資源を切り替えることが難しくなってしまいます。
(明日からクビ!と言って、雇用にかかっていた費用を取り戻すことはできないわけです)

「うちは非常勤で雇用しているから、そんなことは関係ないよ!」と思われるかもしれません。
ですが「今月も生徒がいないので、授業をお任せすることができません…」と度々言われたら、講師はどう思うでしょうか。当然、別の塾に行ってしまいますよね。

 

つまり、一度雇用してしまうと、反復的にカネを使い続けなければ、資源を維持できない特徴があるのです。


さて、このように他の資源と比べて扱いが難しい“ヒト”ですが、実は人材ならではの“良い特徴”もあるのです。
次回、その点について詳しく考えていきましょう。

まとめ

経営には3つの要素が必要不可欠である

カネ・モノは共通点が多く、比較的楽に考えることができる

ヒトは経営資源の観点から見ると、実に特殊で難しいことを理解する

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