大学入試改革のこと、ご存じですか?
大学受験が抜本的に変わること、ご存じですか?
講師の皆様こんにちは!
人材教育コンサルタントの上田一輝です。
今回のテーマは「大学入試改革」。
2020年から大学受験が抜本的に変わり、約28年続いてきたセンター試験が廃止されます。
ニュースでも取り上げられていたのでご存知の方も多いと思いますが、ほとんどの方は詳しい内容までは知ら
ないのではないでしょうか。
私たちの業界にも大きな影響を与えるこの改革。
そこで、今回は2020年の大学入試改革について、ゼロから確認していきます!
一緒に方向性を知り、自分のキャリアや指導に活かせるようにしていきましょう。
大学入試の歴史
もともと大学入試は、私立・国立で個別に入試問題を作成していました。
国立大学は試験の時期によって、一期校と二期校に分かれており、2回受験できるしくみだったそうです。
その後、1979年から共通一次試験というものが始まりました。
これは国立大学を受験するために受ける試験で、受験資格を定めるために使用されました。
さらに大学入試センター試験に代わり、私立大学でもその成績を利用できるようになりました。
加えて独自試験(2次試験)の配点を大学ごとに変えることが出来るようになり、センターの結果のみで合否
を決める学校もあれば、センターを受験資格(足切り)のみに使う学校もあります。
とはいえ、共通一次試験とセンター試験は、試験形式・内容に大きな変更はなく、あくまでも運用上の違いでした。
言い換えると、日本の大学入学試験はこの30年間、ほとんど同じ仕組みで続けられてきたのです。
高大接続システム改革とは
センター試験は優れた仕組みでしたが
- 受験が1回しか出来ず、その日の成績しかみることができない
- 知識の暗記・再生や暗記した解法パターンの適用の評価に偏りがち
- AO・推薦入試に筆記試験が課されるケースが少なく、大学入学時の質が低下している
等の課題点が生じてきました。
そこで
「多様な背景を持つ子供の夢や目標の実現に向けた努力をしっかりと評価し、社会で花開かせる高等学校教育改革、大学教育改革及び大学入学者選抜改革を創造すべく、これらをシステムと捉え、一貫した理念の下、一体的に改革(高大接続システム改革)に取り組む」
ことが決まったのです。
この会議は2015年3月から全14回、1年間にわたって開催され、最終報告として2016年3月25日に提言され
た内容は、日本の教育制度を大きく変えるための方向性が示されています。
今回はその中でも“大学入試改革”に焦点をあて、話を進めていきます。
(参考)
この提言には、アクティブラーニングの実践に関する記述も含まれています。
詳細について知りたい方は以下のURLよりどうぞ!
http://www.juku.st/info/entry/1734
大学入試改革の概要と意図
大学入試は今までにない、大きな変更が行われることになります。
その最大の特徴は「高大接続」という観点。
高校教育と大学教育の改革とあわせて、両者を接続するものとしての「入試」のあり方を見直すものになりました。
検討の対象はセンター試験だけでなく、個々の大学の個別試験まで含んでいます。
具体的には以下のようなことが行われる予定です。
・センター試験の廃止と、「高等学校基礎学力テスト(仮)」と「大学入学希望者学力評価テスト(仮)」の新設
・現在、原則として学力検査が免除されているAO・推薦入試についても、筆記試験を導入するように促す仕組み
・一般入試においても調査書や学習計画書を積極的に活用する
・採用する具体的な評価方法ごとに基準日を設定
例:面接(8月~)、推薦書の提出(11月~)、各教科・科目のテスト(2月~)
引用:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/033/shiryo/__
icsFiles/afieldfile/2015/12/22/1365554_03_1.pdf
これらの改革は、学力の3要素である
(1)十分な知識・技能
(2)それらを基盤にして答えが一つに定まらない問題に自ら解を見いだしていく思考力・判断力・表現力等の能力
(3)これらの基になる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度
を育むことを目的に行われます。
より具体的・現場的な話をすれば、これは現在のセンター試験の課題である
数値結果という一面的評価しか捉える仕組みがない(努力を評価しにくい)
社会的教養科目(主要科目以外の学習)がおろそかになる
受験合格以外の目的で勉強する生徒が少なく、学校外での学習活動が行われない
という点を解消するためです。
ただ知識を知っているだけではなく、より幅広く、主体的に学ぶ人材育成を行う。
そのために、高校から大学教育を一貫して考え、ルールを変えようとしているわけです。
2つのテストの違い
その中心となる試験方式は2つ。
「高等学校基礎学力テスト(仮)」と「大学入学希望者学力評価テスト(仮)」です。
具体的にどのような位置づけなのか、確認しましょう。
「高等学校基礎学力テスト(仮)」
「高等学校基礎学力テスト(仮)」は学校単位で受験し、基礎学力を図る目的で設置されます。
2019年度から英語・数学・国語の3教科で実施され、複数回受験することも可能です。
この試験は元々、大学入学者選抜においても活用される予定でした。
しかし、高大接続システム改革会議で検討された結果、2022年度までは「基礎学力テスト」を大学入学者選
抜に利用しないことが決定しており、今後どのような位置づけで運営されていくのかは、まだまだ未知数の部
分が多い状況です。
「大学入学希望者学力評価テスト(仮)」
この試験は名称通り、大学入学希望者を評価する目的で設置されます。
現状と異なる点として、「知識・技能を十分有しているかの評価も行いつつ、「思考力・判断力・表現力」を
中心に評価する」と記載されていることから、知識中心の内容ではなくなります。
例えばマークシート問題においては、式やグラフを作成させるなど思考力重視に転換する方向です。
採点結果は点数だけなく、得意分野や不得意分野について分析することも検討していきます(模試のイメージ
ですね!)。
更に記述式問題も導入されることが決定しており、難易度は現在のセンター試験よりやや高くなることが予想
されています。
他にも
- 次期学習指導要領での導入が検討されている「数理探究(仮)」や「情報」についても出題
- 英語の「話す力」についても評価
- 複数回実施
などが検討されており、まさに抜本的な改革と言える内容となっています。
ただし、最終報告ではもともと予定していたいくつかの部分について、事実上の延期が行われている部分もあります。
具体的には
・記述問題は当面数学・国語のみで実施。採点結果は1点刻みでなく、段階的別に表示するが、採点には1~2ヶ月かかる、との予想もあり、別日程で実施する案も検討
・短文記述問題の導入からスタートし、高校の新学習指導要領に準拠する2025年度入試からは、長文記述式問題の導入を検討
・パソコンなどコンピューターを使って出題・解答するCBT(Computer Based Testing)方式は、2024年度から始まる予定。キーボードで文章を入力する、音声を入力するといった使い方についても検討
となっています。
試験制度の目玉であった複数回実施も、見送られる可能性が高くなっています。
出典:http://www.keinet.ne.jp/dnj/20/20kaisetsu_02.html
一連の改革に対応した、塾業界の動き
さて、ここまでは大学入学改革について、まとめてきました。
これを踏まえたうえで、塾業界はこの変化にどのように向き合っているのでしょうか。
実は業界の動きとしては、入試改革は認識しつつも、特段の対策や具体的なテキスト改訂の話はでていません。
この大きな理由は「まだ具体的な内容が判明していない」ためだと考えられます。
2018年にはプレテストが実施される予定となっていますが、現時点では具体的な問題例も出ていないため、
どのような形式になるのかが見えていません。
そのため、対策を立てようにも“敵が見えない”状態になってしまっています。
また、具体的な記述問題対策は、難関大学を中心とした分析はあるものの、まだまだデータも少ないのが現状
です。
今後、具体的な問題例が出てくると、一気に動きが出てくると思われます。
講師としては、いち早く新傾向問題に対応できるようにし、授業の中で話ができるようにしておくと良いでし
ょう。
とはいえ、講師が主役です
残念ながら、まだまだ形が見えてこない大学入試改革。
ですが、確実に言えることは「受験がなくならない以上、塾も必要とされ続ける」ということです。
すべての大学が全入時代…ということは、どんなに少子化が進んでも起こりません。
また、補習需要もなくなることはありません。
対象が内申点から、「高等学校基礎学力テスト(仮)」に変わりますが、この対策は強いニーズが生まれるこ
とが予想されます。
そして、(良い悪いは別として)具体的な指導内容がスグに変わることはないでしょう。
なぜなら、それを教えられる人が育つのには時間がかかるためです。
今後、塾としてはいち早く対策を練り、良質なテキストをつくるとともに、指導できる講師を増やすことが急
務になってくると思います。
講師自身も、これからの大学受験改革の方向性を知り、それに備えておくことはとても重要でしょう。
今後は「自分にも影響をもたらす」という思いを持ち、ニュースなどで動向をチェックしてみてくださいね。
参考)より詳しく知りたい方はコチラhttp://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__
icsFiles/afieldfile/2016/06/02/1369232_02_2.pdf